2021/10/30 のログ
ご案内:「◆白梟の住処」にO RLYさんが現れました。
■O RLY >
梟の巣というのは目立たない場所にあるらしい
まるでそれをなぞるかのように白梟の名を持つ彼女の部屋も深い深い場所にあった
部屋自体は質素でいくつかの本棚と寝所、そして机とその上にPCによく似た機械だけと
まるで飾り気のない上に明かり一つなく部屋は真昼でも完全な暗闇。
その片隅、何層にも重ねられた毛布の中から小さく寝息が聞こえてこなければ、
そこに誰かがいる事など誰も気が付きはしないだろう。
「んぁー…」
外ではもう日が大分落ちた頃、
小さなうめき声と共に毛布の中から腕が伸び机の上をまさぐる。
のそのそと机の上を探っていた指先は目当てのものに辿り着き
「ぁ」
半分寝ぼけていたこともあり、掴んだカップはひっくり返り
机の上に置かれていた数枚の写真と記憶端子を盛大に濡らしていった。
■O RLY >
「……ぁー。」
カップの転がる音、零れたコーヒーの香りと机の端から床へ滴る音。
毛布の衣擦れと肌に触れるその感覚。
上半身をゆっくりとおこしそれらの光景をぼんやりと見つめ目をごしごしと擦る。
肩を滑り落ちていく毛布を片手で横にどけ、肌に張り付く髪の毛を払いながら落ちていく雫へとじっと目を向けた。
「拭くのダルぅ……」
机の上の写真や記憶端子の情報は別に変えが利かないものじゃない。
別にどうでも良い。けれど珈琲というのは結構な染みになる。
主に床とか机の上とかが。
「シャツ何処だっけ…。」
自慢ではないが、寝起きはあまりよろしくない。
ぼんやりとしたままとりあえず身に着けるものを探す。
この部屋には空調はない。ある程度奥まった場所であることから気温変化は少ないが、
流石にこの季節ともなると裸のままでは少しは肌寒い。
■O RLY >
「あー、だっる。体重った…。マジはげる」
しゃがみ込みベッドの下にあった圧縮ケースからキャミを引っ張り出す。
それに腕を通しながらタオルを拾い上げると机の上へと放り投げた。
白いタオルにコーヒー色の染みが広がっていく。
「あとでランドリーいかないとだなぁこれ。」
ある程度吸い上げたところでくるくると丸めて箱に投げ込む。
別に洗濯物をためているわけでもないし綺麗好きを自称していないが
汚れものがたまるのは好ましくない。
ふとその下にあったものに目が向いた。
苦笑しながらその写真を指先で拾い上げる。
「……あれ絶対根に持ってるよね」
それは最近組織の中で噂になっている”証拠写真”。
とある人物の極めて個人的な事情に関するうわさを裏付けるために盗撮されたもの。
少々肌面積の多い写真は好事家にでも売れば小遣い稼ぎに位はなるかもしれない。
実際にそちらに流れたものもこの中にはいくつかある
「……確かに煽った私も悪かったけど。
腰抜けるっていうか意識飛びそうになるまでヤるなんてさぁ。
途中から演技飛んだわ畜生。誰が心配性だ」
まぁその分気持ちヨかったからいいんだけどさぁ。とつぶやきながらそれらを時系列に並べなおす。
情報の性質上、行為に至ったのは一度や二度ではない。
設定上、そういった関係をしばらく続ける必要がある。
それに、複数回場面を設ける事で、情報の出どころと流れを特定できる。
■O RLY >
「ん。……まぁあいつはほぼ確黒だなぁ。
泳がしておく価値はないし殺すかぁ。」
数日前の行為の写真が流出している時点である程度犯人なんか絞られるだろうにと
嘲笑を浮かべながら刺したピンに紐を絡めていく。
勿論カウンターポルノとしての本人の悪感情もあるだろうが
情報の鮮度とその他の情報ベクトルから見て
近しい位置で常習的に情報を流していたとみるのが妥当。
が、それに気が付いていないのが多いというのが問題。
良くも悪くも信用が無いため表立って主張したところで旗色は悪い。
そうやってちんたらしていたら証拠隠滅に走るだけの時間を与えることになる。
「……無許可でやるか。それが良いな。さくっとやっちゃお。
どーせいってもわかんないだろうし。」
本来であれば唐突に消えてもらうところだけれど今回は露骨に難癖でもつけて殺そう。そうしよう。
今の所の理想は内外のターゲットを己に向ける事。
そのついでに敵の排除と度を越えて靡いている奴は排除する。
対外的にはボスの愛人として、内部には”ボスの恩寵をかさに着て好き放題やっている狂人”
そうみられることが自分としては望ましい。
分かりやすい悪人。けれどそこに性的な物が絡むと途端に誰もが踏み込みにくくなる。
体のいい隠れ蓑といっても良い。
その分内外共に狙われて直接的な危険が増える事にはなるけれど、
自分相手に詰めれる相手がいるならそれはそれで面白い。特に内部に居れば万々歳。
「ま、その辺は把握してるだろうし?
心配しすぎって気遣いもあるんだろうけどさぁ。
材料としてはもう一押し欲しいんだよね。
はっきり言って御姫様はあてになんないしなぁ…。」
一応嗾けはしたけれど正直言って信用も、ましてや信頼などしていない。
ああいうタイプはどう転んでも毒にしかならないというのが目下の意見。
元々形式上の仲間すら信用しないタイプ。信じるわけがない。
つまり失敗を前提に動く方がよっぽど現実的。
「お姫様にはお姫様以外の役なんか出来っこないんだよねぇ。
まぁボスには”床じゃ気の強い女を屈服させるのが好き”とかいう評判が付いて回ることになるけど
役得なんだから必要経費ってことでいいね。うん。」
目的のためとはいえ性欲処理にこの体を好きに使える立場になったわけで。
それは今後も続いていく。どうせなら精々派手に使ってもらおう。
■O RLY >
「さて、と」
寝所の上に座りなおすと眼鏡を探す。
程なくして見つけたそれをかけると同時にブゥゥゥンと振動する音が鳴り、
ようやく部屋の中に一つ、明かりがついた。
そして光源となっているPCには同じく流出されるであろう動画が等速で流れ始める。
モニターに照らされた薄暗い部屋に洗い息と嬌声が響いた。
「♪」
その本人はご機嫌で空中に現れたホログラムパネルを叩いていた。
契約の関係でほぼ視力が無い以上、モニタや液晶などの画面に映し出されたものは裸眼では見えない。
それへの対応として使用しているのがこの眼鏡式ハーフダイブヘッドモニタ。
フルダイブの技術を応用したそれをかける事で、PCなどを操作する事が可能。
そしてどこでもこうしてお上品な情報戦にも利用できる。実に便利な代物です。
「んー、こんなもんかな?」
暫く作業を進めた後背伸びして方のコリをほぐす。
獲物をただ狩るだけでは取りこぼしは必ずある。
それらは狩るには小物過ぎるし仮に彼らを総ざらいしたとしたら物理的なマンパワーが減ってしまう。
だからこっちにはこっちで別の罠を仕込んでおく。
■O RLY >
「さーぁ、どこまで流れるかなぁ?」
画像データそのものには手を付けない。
コピーする度にわずかに画像が劣化するようにしておくだけだ。
コピーガードの手段として一時期使用されていたものだけれど
それをいじれば少し面白い使い方が出来る。
相手だって全員が馬鹿じゃない。馬鹿が多いことは確かだけれど。
流れてきた映像がただの情報データなのか精査するべきという頭を持った相手だっている。
疑ったところで出てくるのは下場の違法映像にありがちな安い劣化プログラムだけだけれど。
「せいぜい疑心暗鬼してろっての」
それで裏切者を疑ってくれれば結果として情報の流通を鈍らせる事が出来るし
何ならこちらから切りかかる口実だって作ってくれる。
情報の出どころそのものを疑いだしたとしてもそれを見極めるために取れるアクションは極めて限られている。
この映像を流出させることは対外的に見たらあまりにも意味がない。
弱点を無為にさらすのと同じだから。
「どうしても確信したかったらさぁ……喰いつくしかないよね?アタシにさぁ」
そのための撒き餌はふんだんに用意する。
際限なく放蕩に耽り、痴態を晒してあげよう。
■O RLY >
「……ま、それもうちのボスの”頑張り”にかかってるんだけど。
大丈夫でしょ多分。演技しないで良いってのは嘘じゃなかったし」
中々執拗だわ、タフだわでこっちがダウンしかけた後もお元気だった。いろんな意味で。
こっちは実は次の日丸々一日ダウンしていたりするというのに。何ならその状態からからでも続くし。
勿論楽しんでいるしヨかったけれど、それとは別に人に触られるのはとてもしんどいし体力を使う。
消耗した演技のふりをしているけれど、実際かなり消耗はしている。
けれど……そこは誰にも見せるつもりも悟らせるつもりもない。
梟は決して弱っている姿を外には見せない。
それにどれだけ体力を使おうとこれらはすべて必要な事の為なのだから。
「さてさて、どこまで嚙みつけるかなぁ」
後は待つだけと眼鏡を放り投げ、毛布の山に倒れこむ。
数分もたてばPCはスリープモードに戻り、部屋の中には暗闇が戻る。
その中でくつくつと喉を鳴らしながらしばらくの間笑い続けた。
判っている。これは必ず失敗する。
これはどう足掻いたって勝てっこない勝負。
「あーたのし」
だからこそ、とても楽しい。
■O RLY >
そんな笑い声も暫くすると小さな寝息に変わり
彼女は微睡ながら年若い少女の様に純粋な笑みを浮かべる。
もう少しだけ休もう。休んだら、シャワーを浴びてまたどこかに遊びに行こう。
「ん…ふふ……」
温かい泥のような暗闇の中でいつか訪れる筈の崩壊の時を待ちわびながら
人の笑みを張り付けた鬼は無邪気に空を飛ぶ夢を見ていた。
ご案内:「◆白梟の住処」からO RLYさんが去りました。