2021/12/08 のログ
藤白 真夜 >  
「……――!」
 
 冷静に考えると。
 思わずなでてしまったものの、男の人にきちんと自分から触れたのもあんまり慣れない気がして。
 恥ずかしくて引っ込めようとした手が、けれど。
 どことなくワンコ味を感じるツンツンヘアーをしばらく、わしわし。なでた。

 撫でられる少年の姿には、温かいものしか感じない。
 ……きっと、いつまでも残るものがあれば。残らないものもある。
 果たして、良くない記憶がいつまでも残り続けたとしても。
 その意味合いが変わる時がきっと来る。
 だから、私は彼の頭を優しく……撫でた。
 ……あんまり撫で続けるのもなんですから、割とすぐ手を離してしまうんですけど。

 彼の様子を見て、気づく。
 ……元から、彼は独りなんかじゃなかったんじゃないか。
 それは、彼にしかわからないことだったけれど。


「――、」

 その言葉に、……迷うような、驚きのような、一瞬の間。
 ……私は、そこに入っているのだろうか。
 いや、でも。
 私だからこそ。

「はい、菖蒲さん。
 ……それが、“当たり前”です。」

 それは少しだけ、寂しそうに。でも。

「――だから、仮に、居てはいけなかったとしても。
 そこに居ようと努力すること。
 それだけは、絶対に正しいはずですから。
 そうでしょう?」

 続く言葉は、はっきりと力強く。
 貴方に勇気づけられて、貴方にも捧げるために。
 確かな意志を以って、告げられた。……自分に、言い聞かせるように。
 ……貴方が安心できるよう。
 小さな、微笑みを浮かべたまま。

芥子風 菖蒲 >  
結構気持ちよさそうに撫でている。
そんなに面白いのかな、頭撫でるの。
今度試してみようかなと思う少年だった。
これが通じるのが自分だからと言うのには気づいていない。

「……そっか。"当たり前"なんだ」

これが普段いる皆の目線。
自分が護りたいものなんだ。
まだ今一実感は出来ないし、彼女の心の奥にはまだ引っ掛かるものがあるのかもしれない。
少年はそこまで理解しきれなくても、間違いなくちょっと前よりは一歩進んだ気がした。

「ありがとう、真夜先輩」

でも、それは多分もっと長く付き合わなきゃいけない事だと思うから
もっとずっと、歩く様な速さでもいいから付き合っていこう。
お礼と共に薄らと微笑んだ顔は、何処か晴れ晴れとしていた。
何もない青空に灯る、明るい太陽のように。
月と夜と一緒に何処までも照らしていけるはずだから。

「あ、せっかくだから今日オレ泊まっていい?
 またお腹斬られるのイヤだし、歩くのちょっと遠い」

さて、打って変わって言い出したこの一言。
友達感覚だが男女の仲だのなんだの、そう言った距離感は勿論わかるはずもない。
この一言が普通ならばどれだけの意味を持つかなんてわかるはずないね。
ダメかな?なんて彼女を見やる位だ。

藤白 真夜 >  
「いいえ。
 私のほうこそ、ありがとうございます。菖蒲さん」

 いくつも、大切なモノをもらった気がする。
 それは、ぬくもりであって、昏い悦びであって、差し込むような空の光であった。
 例え陽の光が届かぬ夜であっても、あの月の光は太陽のモノと変わらないのだから。

 応える顔には、やっぱりかすかな笑顔。
 誰かのために、応えること。
 それは絶対に、“良いこと”だ。
 私は、良いことのためなら頑張れる。
 いつか胸を張って、私も当たり前だと言葉にするために。

「――は、はい?」

 ……???
 ……あれ?今なんと……いや、確かに、外暗くて、……あれ?

「……あ、あの。で、でも、あれ……?
 た、確かに、最近物騒だそうですし、病み上がりですし、病み上がりに歩かせるとか……。
 あ、あの、でも、私の部屋、何もなくて、……」

 自分の中で理論が出来上がっていく。
 とにかく自分のことが埒外になりがちな私の中では、病み上がりの菖蒲さんを歩かせるだなんてそれこそとんでもない真似だった。
 貞操だなんて言わないけど、当たり前の恥ずかしさはこれでも一応、あるのです。
 思わず、ベッドを見た。ひとつしかない。……当たり前だった。
 ……男女のどうこうよりも、私の匂いが彼に届いてしまうことのほうが、恥ずかしくて。

「………………………………」

 けっこう、かんがえこんだ。茹で上がるように顔が赤くなっていく。
 きっと、彼はあんまり考えていない。そう。だから断ると更に失礼なのだ。
 ――でも。あの保健室のことを、思い出した。
 彼は静かに、でも確かに、温かさを分けてくれたから。
 あの、添い寝のようなものになるのだとしたら――

「――、……い、いいです、……はぃ……」

 でもやっぱり、恥ずかしいものは恥ずかしいのでした。
 視線は落ちるし、顔は真っ赤だし。
 こと彼に至っては、別の誘惑もある。――ああ。恥ずかしがってそっちに意識が行かないのなら、別に良いことかもしれないわ。

 明日絶対。
 家具を買いに行こう。
 そう考えながら、現実逃避した。

芥子風 菖蒲 >  
少年もまた多くのものを得た。
或いは、初めから持っていたものに気づけた。
大きな一歩を踏み出しただけで十分だ。

なのでまぁ、愛だの恋だの、ましてや性欲だの。
そんなものがまだわかるはずもない。
少年にとってはまだまだそう言うのは先の話(?)だと思われるので
彼女が顔を赤くする理由なんてわからないのだ。

「? なんだか顔赤いけど、風邪?
 まぁいいや。じゃぁ今日はお願いします」

ぺこり。
頭を下げて今日はゆったり過ごす事にする。
自分の部屋とは違う、彼女の部屋。
けどなんだか少し落ち着いて、何時もの殺風景な一人の部屋より楽しくて。
何時もよりも楽しい夜を過ごせた気がする。


……夜がどうなったかは、まぁ、別のお話。

藤白 真夜 >  
(……ど、どうしよう。お部屋に人なんて呼んだことなかったから……! そ、そう、紅茶。紅茶があったはず。紅茶だけ淹れて、なんかいい具合のお話をして、そのままおやすみするだけ……。……え?ベッドで並んでお話してそのままおやすみするの……? …………………………い、いやいやまさか、私なんかが変な目で見られるはずが無いから、私だけ床で寝るだなんて言ったら菖蒲さんに気を遣わせちゃうし、……あ、あれ?……あれ?どうして、どうしてこうなったの……!なんかさっきまでちゃんと年下っぽい感じだったのに~っ)

 ……。
 結局のところ。
 私がしたことといえば、なんかひとりでわたわた慌てたり恥ずかしがったり考え込んだり。
 合間合間に彼と交わす会話の度。跳ね上がったりぎくしゃくしたりしてはいたものの。
 自分が恋愛対象になるだなんて考えは、私にもやっぱりまだ無かった。
 その、当たり前に入るのが、私の戦いだから。

 正直、頭の中はぐるぐると渦巻いてたし、目もぐるぐるだったし、口から何を言ったかあんまり覚えてないんですけど――、
 彼が、落ち着いていてくれるのを見るだけで、なんだか少し気持ちが晴れたような気がするのでした――。

 そして、精神的な疲れからか、いざベッドに入ればするりと寝入ってしまっているのでした。 
 それは安らかで、温かな、眠り。ほんの少しだけ、熱を帯びて――
 ……朝起きて、彼の顔を見て大声を出すのは、また別の話。

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