2024/10/12 のログ
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イベント:菓祖祭開催について >
【イベント:「菓祖祭」】
去る十月九日、常世神社にて合祀祭が執り行われた。常世神社の御祭神の一柱として、「田道間守命」(祭神としての名であり、田道間守の正式名称に「命」が付くというわけではない)が合祀されたのである。田道間守を御祭神としてお祭する兵庫県の神社から分霊を受けた形である。
「常世」と深く関わりのある新たなる御祭神であるため、松明のみが灯る浄闇の中、極めて厳粛な形で合祀祭が斎行された。
合祀祭は神祭であり、厳かに粛々と行われるのは当然であるが、「田道間守命」合祀に伴う式典は合祀祭だけではない。神祭の後は華やかで賑々しい「祝祭」の時が来る。いわゆるハレの日である。合祀祭の後、「菓祖祭」として様々なイベントが催されることとなった。「菓祖祭」は祭祀局・式典委員会・生活委員会の合同主催である。
非時香「菓」を日本に持ち帰った田道間守は、日本国において菓祖(菓子の祖。菓とは本来果物を指すが、後に今で言う「お菓子」にまで意味合いが拡大された)として信仰されており、それは常世島でも同様である。菓祖神「田道間守命」に「菓子」を奉納する参拝者も多くあり、常世神社では奉納された「菓子」を神前に献った後、社務所や境内に設けられた幄舎(臨時に設置されたテント状の小屋)にて撤下品としてそれらの菓子が配られる。
「菓祖祭」は厳密に言えば「秋祭り」とは異なるものの、一種の秋祭りとしての色彩も帯びている。常世神社境内では十月後半まで様々な部活などによる出店・屋台の類は軒を連ねることとなり、常世神社の参拝者の数はかなり増えることとなるだろう。
しばらくの間は常世神社周辺などでの神輿の巡幸も行われ、一般学生や教職員も希望すれば神輿を担ぐことができる。
「菓祖祭」は常世神社境内のみで行われるものではない。常世神社周辺や学生街・歓楽街などでも「菓祖祭」にまつわるイベントが開催される。
生活委員会の監督の元、常世島菓子工業組合(常世島の菓子製造系の部活の組合)により、常世神社に続く表参道に多くの出店・屋台が出されており、様々な「お菓子」を楽しむことができる。なお、日本のお菓子に限るわけではなく、世界各国、果ては異世界の菓子までもが提供される。
提供されるものは、非時香菓に因んで「柑橘類」の食材を使った菓子などが多いものの、特に柑橘類に関わりのない菓子も奉納・提供されている。今回、多くの出店・屋台で使用される「柑橘類」――主に蜜柑――は、常世島の農業区の果樹園や温室で栽培されたものが使用されている。
学生街の商店街などでは「菓祖祭」を記念しての様々な「お菓子」関連のイベントやセールが連日実施されている。また、宗教は違えど、10月末のハロウィンに繋がるイベントともなっており、ハロウィン当日に向けてのお菓子の製造や、ハロウィンを先取りしたセールの類も「菓祖祭」に便乗する形で常世島全体で行われている。「菓祖祭」とは離れるが、ハロウィン仮装用のアイテムも多く販売される時期である。
今回は合祀祭に合わせて十月に行われたが、今後は田道間守の命日ともされる四月に「菓祖祭」は執り行われることが祭祀局・式典委員会によって決定された。
常世神社では「菓祖祭」に伴い、非時香菓である「橘」を歌った大伴家持の長歌をはじめとした和歌の披講を行う「橘の歌会」が催された。主催は式典委員会式部局(式部局は主に日本国に由来する式典・年中行事を管轄する部局。雅楽局とは兄弟関係にあり、祭祀局と連動して動くことが多い)である。
式典委員会式部局は、これまでも「曲水の宴」や「相撲節会」・「年始歌会」などを実施しており、今回の「橘の歌会」もまた滞りなく行われ、日本の王朝時代の装束に身をまとった式典委員会の委員の姿が多く見られた。
この「歌会」に付随して「茶会」なども開かれている。「茶会」については、一般に広く開かれているイベントであるため、気軽に参加することができる。点茶体験も可能で、希望者には式典委員会の委員が点茶の作法を優しく教示を行う。境内には毛氈の敷かれたエリアが存在し、秋の花などを愛でながら茶を楽しむことができるだろう。
また、抹茶を飲むことが出来ない者のために、カフェ系部活による抹茶ラテなども提供されている。
《資料:「歌会」で披講される大伴家持「橘の歌」(抜粋)》
かけまくも あやに畏し 皇神祖の 神の大御代に
田道間守 常世に渡り 八矛持ち 参出来し時
時じくの 香の木の実を かしこくも 遺したまへれ
国も狭に 生ひ立ち栄え――……
……――橘の 成れるその実は 直照りに 弥見が欲しく
み雪降る 冬に至れば 霜置けども 其の葉も枯れず
常磐なす 弥栄映えに 然れこそ 神の御代より
宜しなへ 此の橘を 時じくの 香の木の実と 名付けけらしも
――大伴家持「橘の歌」(『万葉集』巻第十八)
《現代語訳》
口にかけて申すのも畏れ多い古の天皇の大御代に、田道間守が常世の国に渡り、八矛を持って帰朝した時、時じくの香の木の実(非時香菓:その時ならぬ香の高い木の実)を畏くも後世にお遺しになったので、国中にいっぱいに生い立ち栄え――……
……――橘の成った実はひたすら照り輝いていよいよ見てめでたい程であり、雪の降る冬になると、霜が置いてもその葉も枯れず、常磐の如く、いよいよ映え栄えて、さればこそ、神の御代から、まことによろしくも、此の橘を時じくの香の木の実と名付けたらしいことよ。
※現代語訳は以下を参考にした(この注記はPLに向けたものであり、PCに公開されたものではありません)。
・澤瀉久孝『萬葉集注釋 巻第十八』 (中央公論社、昭和四十二年)
・小島憲之ほか校注・訳『萬葉集④(新編日本古典文学全集)』(小学館、平成八年)
「霊的島防」的意義
常世神社への「田道間守命」合祀は、無論常世島内の安寧を願ったものである。
「常世」と深く関わりのある田道間守を常世神社に奉斎するのは極めて妥当なことであるが、一方では祭祀局による「霊的島防」施策の一環でもある。
近頃島内に出現した《常世神》と、それを信奉する違反組織《常世神の翅》に対しての追儺的な意味合いを含んだものである。
常世神は古代の日本において邪神・邪教として滅ぼされた神である。その神への「信仰」が高まった場合、その神の力は強まる。御成敗式目に「神は人の敬に依りて威を増し、人は神の徳に依りて運を添ふ」とあるとおりである。《常世神》の力を弱めるために、「常世」の神としての少彦名神と、「常世」に渡った田道間守を顕彰し、神としての神威を高め、神徳の発揮を祈るのである。
本来、「常世」という言葉は永遠を含意するものであり、「常世国」は神仙郷的海上楽土である。しかしながら、《常世神》や折口信夫による死の国としての「常夜」解釈によって「常世」に暗い意味合いが付加されているのも事実である。
そういった暗い意味合いは《常世神》に力を与えるものである。《常世神》は、邪教として排斥された巫覡である大生部多が祭る神であり、現在の常世島の《常世神》も、そういったかつての歴史の中で排斥されてきた「巫覡」たちの神としての姿を持ち始めている。
ゆえにこそ、「常世」に関するポジティブなイメージを常世島内部で強化する必要があり、田道間守は合祀され、「菓祖祭」が開催された――
とはいえ、これもあくまで実施目的の一つに過ぎない。基本的な意味合いは、純粋な「祭祀」であり「祝祭」である。
【PL向け情報】
常世神社に「田道間守命」が合祀されたことを記念しての「菓祖祭」の告知です。チャットルーム「常世神社」に軽く「菓祖祭」に関する記述を記載する予定でしたが、分量が増えましたのでイベントとして開催することといたしました。
基本的に上述した通りのイベントですが、常世神社内での催しや、島内の出店・屋台の類についてはご自由に演出していただいて構いません。ご自身のPCなどが常世神社・屋台などで働くような描写も何ら問題ありません。こちらもご自由にどうぞ。
祭祀局・式典委員会・生活委員会主催としていますが、その他の委員会も関わることはあり得るでしょうし、運営に参加する学生・教職員、アルバイト等を行う者もいるでしょう。その辺りもご自由に演出してください。
開催時期:10/12~10月後半までを予定
ご案内:「【常世島の現在】」からイベント:菓祖祭開催についてさんが去りました。