2024/06/08 のログ
ご案内:「第一教室棟 屋上」に先生 手紙さんが現れました。
先生 手紙 >  
この島のメインを張るだけあって、この学園は結構な規模を誇っている。デパートくらいデカいんだからデパートみたいにエレベーターもあっていいンじゃないかなって思うがそれはそれ。

兎にも角にも報告連絡相談。からの注意や調書、果てはなぜか手伝いまでさせられて気づけば放課後の鐘が鳴っていた。

男は階段を上り、扉を開けた。なんの為の苦労か。ひとえに学内でいちばん近い喫煙所が、この屋上にあったからに他ならない。

「ふへぇ疲れた……」

風と景色は良いモノだけどさ。楽を求めて苦労するの、本末転倒じゃない?テガミくん。

先生 手紙 >  
「よいせ」と声に出してベンチに座って、しまったと思った。このような日常的アクションに掛け声が無意識的に必要とされる場合、それは若さの衰えで――

こほん。咳をしてもひとりなのである。当初の予定通り煙草を取り出し銜え、ライターで火を点ける。

「ふー……まァ。ロケーションはいいよね」

紫煙と感想を吐き出しては、横に置いた缶コーヒーのタブを指一つで空ける。

制服を着た学生なのだが、昼休憩のサラリーマンめいた哀愁と労がそこには在った。

先生 手紙 >  
手入れをされた花壇。溢れないように定期的に捨てられているであろう灰皿の中身。背もたれより後ろのフェンスの強度の確認と保持。それらは自分の知らない、誰かがしてくれている、営みの結果だ。利用する人間の内、当事者を除いてどの程度がその『当たり前』を保全する『誰か』のことを想えるのだろう――喫している煙草も、この手に収まるまでに何人もの手を経て、今ここにある。異能や魔術、奇跡がどれだけ明るみに出ようとも、この根幹――人間は、一人では決して生きられない生物だという事実――は覆せない。

……などという思索。優先順位的には他に考えるべき事案はいくらでもある――とりわけ中間考査や、或る夜に出くわした怪異の仔細。でもそういう「やらなければならない」から解放されたい時だってあるじゃん。例えば今。安い缶コーヒー飲みながら煙草吸ってると幸せなのよおれ。

先生 手紙 >  
「……まァ。青春の謳歌には相応のカロリーが要る、ということで」

都合煙草一本分。その時間を無為に費やすことで、思考の並行性を取り戻した。

「……SS級怪異、紅き屍骸」

掃討には相当の苦労が必要とされるだろう。自身が出くわした毒持ちの大蜘蛛。その本質は大蜘蛛の怪異であることより、絶命に至る直前まであった紅さにある、と報告の時に聞いた。屍を増やす、無理矢理に枠をかければ一種の病気――殺傷感染とは畏れ入る驚異の生態だが、自身の能が天敵であったことが幸運だろう。積極的に討伐に加わることは、スタンス的にしないけどね!

先生 手紙 >  
「おれは、おれの味方をする」

二本目。一緒に飯食った相手と次の日殺し合いになろうが何も引け目を感じたりはしないが、そこだけはブレない。

「ふーっ……」

紫煙を吐きながら思い切り仰け反る。反転し、上に広がる街並は、夕陽の橙を反射しながら、紫紺と混ざり始めていた。

先生 手紙 >  
「あ゛ー……」

現実ゥー。これを吸い終わったら帰るわけだが。また階段を下りてだなんだと帰路への苦労はそこそこある。正直言って面倒くさくなっちまってるのであった。でも瞬間移動とかそういうの出来ないからなーおれなー。

……気を抜くために屋上に来て、気合を入れて帰路に就く。なかなかどうして、人生の縮図めいている。

ご案内:「第一教室棟 屋上」から先生 手紙さんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 ロビー」に葉薊 証さんが現れました。
ご案内:「第一教室棟 ロビー」から葉薊 証さんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 ロビー」に葉薊 証さんが現れました。
ご案内:「第一教室棟 ロビー」におこんさんが現れました。
葉薊 証 > 「ふー。そろそろ大体分かるようになってきたな~」

夕暮れ時の第一校舎ロビー。この頃になると、夕暮れといっても夕方というよりかは夜が近い時間帯となる。
昼間であれば他生徒がたむろしているロビーにも、自分以外の生徒の姿はない。
自分も普段であればこの時間には既に帰宅しているか外の巡回をしているか。
今日は校内巡回の担当だったからいるだけである。

とはいえ、誰かが見ている訳でもなければ何かあからさまなトラブルが発生するでもない校舎内の巡回は非常に退屈だ。
自販機前のソファでミネラルウォーターを買ってくつろぐぐらいなら、誰も咎めたりはしないだろう。
入学から二か月、広大な学び舎の構造を大体理解してきたことを感じながら、ミネラルウォーターを呷った。

「中学の頃は七不思議とかあったっけ。常世にもないのかな、そういうの」

肝試しはしたことがない。妖怪も霊も空想上のものではない現代において、肝試しとは危険な行為と言っても差し支えない。
とはいえ、その手の話題は尽きないものだ。世界中だけではなく他世界からも人と物があつまる常世になら、そういったものの一つぐらいあるんじゃないか。
そんな事を考えながらソファに深く腰掛け直した。

おこん > 「今日の授業も頑張ったんじゃよー。」
類が触れていなかったもの…すなわち、異能・魔術・異邦人などなど。
そういったものについて教鞭を振るうのは、とても疲れる。
満足げな表情で教室を出てから、ちょっとだけ元気がいい足取りで廊下を歩く。

「今日は何にしようかのう。 酒とニラ玉とボンジリでもやるか…。
 いやでも冷凍庫がいっぱいになっとったのう…。
 精気のひとつも吸いたいのう…。」
うんうんと悩みながら階段の踊り場を下っていく。
3階、2階、1階と降りたところでロビーに出ると、
ソファに深く腰掛ける男子生徒を見て軽く手を上げた。

「おう、勤勉じゃのう!」
ソファに腰掛けているということは、この時間…
夕暮れまで校舎で何かをしていたのだろう。
尻尾を揺らしながら、片手を上げて気さくな挨拶。

葉薊 証 > 「?ありがとうござ―」

冷たい水を胃袋に流し込んで適当な事を考えていれば、集中力とは鈍るもの。
それがほぼ安全な校舎内ともなれば猶更。
頭上方面から響く幼い声は右から入って左から抜けてしまっていた。

とはいえ、直接話しかけられれば流石に気づく。
なんとなく褒められた気がするから適当に応じた所…
視界に入ったのは、獣人の幼子。
幼子の方を向きながら口を開きっぱなしでぱちぱちと瞬きを繰り返す。

「変質者…?」

相手が教師とはつゆ知らず、ぽつりと零す。
常世にはこんな幼い生徒もいるのかとか、制服が自由とは聞いているがこれほどとはとか、そんな事よりも。
着崩し方がひどすぎる。平らな上半身をほぼ露出させる着物の着崩しは服の役割を果たしているのか謎。
そして、平らな体とはいえ健全でまだ幼い少年にとっては少々刺激が強い。
欲情する程ではなけれど、見てはいけないものを見ているという背徳感のようなものを感じてしまう。

「…って、どんな格好してるんですか!裸族は否定しないけど学校ではちゃんと着てください!」

両手を慌ただしく動かし自分の視線を遮り、視線を顔ごと逸らした。
顔は赤く、口元は不定形に緩み視線は定まらない。ラッキースケベなシチュエーションとも言える状況だが、それ以上に見てしまった罪悪感と幼子の容姿への驚きが勝って混乱してしまっていた。

おこん > 「ウム!」
きちんとお礼を言ってくれた生徒に破顔して去ろうとするも、
少年の次の言葉にピタリと足を止めた。

「へ、変質者!?」
ぴんと獣耳を立て、慌てて周囲を見回す。
まさかこのロビーに変質者が侵入しているとは。
現在生徒が何人残っているのか、教師陣で止められるのか、
どんな種類の相手なのか、目的は何なのか…。
一瞬警戒モードに入るけれど、相手の指摘を受けて自分を指さした。

「お、おお。 ワシか? ワシ!? ちょっと落ち着くんじゃよ!
 着とる!ちゃんと胸隠しとるじゃろって!
 いやまあでも驚かれていては話もできんのう」
いそいそ。頑張って上を手繰り寄せ、
”がんばって必死に服を羽織っている、はだける寸前”な状態に
持ち込むと、相手に声をかけた。

「驚かせてすまんのう。 みんなワシに慣れとるから、
 最近は何も言われなくてな…。 ワシもちょっと油断しておった」
きちんと頭を垂れて謝る。 この困惑から見るに、
まだ入学して日の浅い生徒なのであろう。それならこの反応も頷ける。

葉薊 証 > 「き、着ましたか?着ましたね?見ますよ…」

胸を隠しているとか、そういう話ではない。局部が隠れていればいいの理屈が通るのであれば町中下着姿の人々であふれかえる筈である。
そんな事を漠然と考えながら恐る恐る幼子の方を向き直ればきちんと着直してくれたようで。
まだ少し騒がしい心臓を抑えながら「ふーーー」と長く息を吐く。

「慣れるって…ちゃんと着なきゃだめですよ。変質者に襲われたりしたらどうするんですか。
それに、風紀的に良くありませんからしっかり着てください」

目の前の幼子が教師であるなんてまだ分っていない少年は風紀委員っぽい感じで説教を始める。
口ぶりからして先輩ではあるっぽいので敬語は使うが、とはいえ流石にあの格好は良くないだろう。
本来、もうちょっとへりくだった伝え方をするべきなのだろうが、その辺は若さ故…

「それに…そんな恰好で何してたんですか?学生証見せてもらってもいいですか?」

一応風紀の先輩報告した方がいいのだろうか。そんなことを考えながら、見せたほうが良かった時の為に身分の確認を試みる。
ため息交じりの、呆れたといった様子の態度である。
…到底教師にとる態度ではない。なんなら先輩でも良くない。

おこん > 「お、おう…。そうじゃな、変質者が現れたら困る…。
 まあ風紀的には…うーん……みんなみんなだと、確かに困るのう。」
確かに彼のいうように、変質者が学校に出たら大騒ぎだ。
よもや自分を襲う存在がいるとも考えずに大人しく頷く。
とりあえず息をついてくれたところを見るに、服装的にはOKではあったのだろう。
自分も安心である。 知らぬ生徒を困らせるようなことはしないのだ。

「そんな格好で何してたって、歩いとったんじゃが…。それともアレかのう?
『この妖艶な肉体をもって男子(おのこ)の精を啜りに来た』とか
 そういうのの方がいいかのう!? まあ男子たるもの、な!
 狐の語源も”来つ寝”というのもあるしな、わかるんじゃよ…。」
問いかけに目をキラキラさせて答える。
さっきの態度といい、眼の前の彼は自分に欲情しているのでは!?!?
そんな期待を抱くも、普通に生徒証を要求されて少し尻尾から力が抜けた。

「生徒証は持っておらんが…。 他のじゃだめかのう?」
先生だから生徒証はない。恐る恐る聞いてみることにする。
生徒にマウントを取ったりはしないのだ。…特定のタイミング以外では。

葉薊 証 > 「な、なにを言ってるんですか???」

なんだか妖艶な感じの妄言を口走る幼子に対して理解できないを前面に押し出した呆け面を見せつける少年。
先ほど見てしまった体つきと妖艶の言葉の意味を照らし合わせ、自分の知識が間違っている可能性をやんわり考える。
ませているのだろうか。

「生徒証はちゃんと持ち歩いてください。身分証明証のようなものなんですから…
代わりに何を見せてくれるんですか?」

もう呆れてばかりである。再び大きなため息を溢す少年。
着実に失礼ポイントを積み重ねていく。

おこん > 「何ってそりゃあ…おぬしが喜んでくれるかと思ってじゃのう…。
 男子はみなそういうのが好き…というわけではないが、それなりに
 魅力があると思って追ったんじゃが…。」
精一杯のサービス精神を発揮しようとしたがもっと困惑されてしまった。
ちょっぴり獣耳から力が抜けて垂れる。

「だってワシ生徒証持っとらんもん…。代わりにって言ったら、これじゃな。」
相手に差し出したのはいくつものカードであった。
クレジットカード、なにかの会員証(ビデオショップと書かれている)、
量販店のポイントカード、アーケードゲームに使うカード…そして教員証。

「この中のどれかで、おぬしの希望する情報が手に入らんかのう。」
そわそわ。 相手の要求が満たされるといいな、と期待した表情で見やるのであった。

葉薊 証 > 「よ、よろこぶって…そそそんな訳ないじゃないですか。
幼女にそんなことさせたいだなんてお、思う訳ないじゃないですか!」

献身的な言葉と共にケモミミから力が抜けていく様子に先ほどとはまた違った罪悪感を覚える。
それと同時に、幼子がこれらの言葉を本気で言っているのではないかなどと、考えてしまう。
健全な男子、されど多感な時期。そういった事に肯定的な姿勢の女子に対して少々やましい事を考えてしまうのも、仕方ないと言えよう。
結果、多少口ごもってしまったり強気な言葉を投げかけてしまうことは致し方ないとも言える。
消極的に視線を逸らしつつちらちらと幼子の残念そうな表情を見て頬を染めるのも、健全な範囲内だ。

「と、とりあえず見せていただきますね」

気まずい。さっさと身分の証明が出来そうなものを見せてもらって立ち去ろう。
なんて考えながらソファから立ち上がり、幼子の前で屈む。
そして、差し出されたカードを受け取って一枚ずつ確認する。

「会員証…クレカ…教員証…ポイントカー」

それが何かを口に出しながら一枚ずつ捲って確認。
…しているうちに、とんでもない物を見た気がする。
赤く染まっていた頬は打って変わって青くなり始める。
緊張しながらもどこか緩んでいた表情筋が硬くなる感覚が浸食してくる。

「きょ…教員証?????」

捲ったカードを一枚戻す。
そこには確かに教員証があった。教員証、それは教師であることを示すもの。

「す…すみませんでした!てっきり学生の先輩とばかり!!!」

焦りのままに倒れるぐらいの勢いで土下座をかます。
カードは少年の近くにばら撒いてしまったが、それぐらい焦っているという事。
ああ、なんて失礼な態度をとってしまったんだ僕は、とか思っても手遅れである。
重ねに重ねた失礼ポイントは無くならない。
説教覚悟で頭を地面に擦りつけながら再び失礼な事を言ってしまうのは、若気の至り…で許してもらえるだろうか。

おこん > 「いやー、本当はワシももっとでかかったんじゃよ。
 今でこそ霊峰と言われておる富士山を腰掛け代わりにしたりのう…。」
嘘か真か、つらつらと言葉を続けながら、相手の確認に同意した。

「うむ、うむ、うむ……。」
差し出したカードの束を丁寧に確認してくれている様子を見て頷く。
独り言のような問いかけには、気軽に手を上げた。
「おう、そうじゃよ! ワシはコミュニケーション学を教えておって……
 オワー!?!?」
自責の念に耐えかねたのであろう、マッハ土下座にこちらが驚く番であった。

「顔を上げてくれて構わん! あの、アレじゃよ!!!
 教師が生徒に土下座させてるってことになると、怒られるぐらいじゃすまん!!
 頼む、顔をあげてくれえ!!!」
しゃがみこんでカードを回収しながら声を掛ける。だいぶ必死だった。

「それに知らぬということを責める愚行はせぬ!
 知らずに失礼をしたと知ったなら、この後からいくらでも
 りかばりー?が効くじゃろ?な? だから顔をあげてもろて…。」
キョロキョロとあたりを見回す。 カメラなし、生徒なし、教師なし、
生体反応ロボその他もろもろの動体なし。大丈夫だ。たぶん。

葉薊 証 > 「は、はい…
えっと…本当に…すみませんでした…」

顔を上げてと言われれば、恐る恐るその顔を上げる。
目の前の幼子教師が随分必死な表情をしている様子に先日風紀の先輩と会話した時のことを思い出しながら体を起こして…
正座した。

「まさか先生だとは思っていませんでした…生意気な事ばかり言ってしまってすみません」

打ち付けた為に額が赤く、表情もすっかりしょぼくれてしまった少年。
年上への敬意ぐらいは持ち合わせている故に自分の発言の数々がそれから外れたものであることはよくわかっている。

…というか、先生という事はこの人は恐らく年上で、ケモミミと尻尾があるから多分人間じゃなくて…
ってことは、さっきまでの変態じみた言動は…

「と、ところで…さっきの…さ、さそってるっぽいことは…揶揄ってたってことですか?」

そうであってほしい。じゃないとなんか寝れなくなる。
年上の女性に誘われた?とあっては今夜は寝れない事になる。
少年は健全なのだ。
頼む、肯定してくれと心拍数の高まりを感じながら伺うだろう。

おこん > 「うむ、気にするでない!な!
 若いものは己の使命に一生懸命になるものじゃからな。
 おぬしとて、刺々しくしてやろうとしたしたわけでもないであろう。
 そんな顔をするとワシも申し訳なくなるでのう。」
明るい調子で相手を励ます。 わざとではないからこそ、
失礼を働いてしまったという事実が辛いのだろう。
避けられたりしなければ、大丈夫だとばかりに相手の肩を
軽く叩こうと手を伸ばした。

「ワシは普通におぬしが色香に弱いと見て言ってみただけじゃ。
 殿方はああいうのに弱いし、お主は特に若く青く……うまそうに見えたからのう。
 何しろワシは人間の精が大好きじゃからな、そのへんを嗅ぎ取るのも秀でておる。
 風紀のものであるなら、先輩などにワシのことを聞いてみるが良い。
 おそらく対応マニュアルに書いてあるぞ。
 『発情したおこん先生を見つけたら冷たい水をぶっかけてください』とな!」
からからと軽く笑う。 人ならざるものとしての特徴を説きながら、
はっと我に返って手を打った。

「おお、そういえば名乗っておらなんだな。
 ワシはおこんじゃ。 コミュニケーション学をやっておる。」
よろしく、と手を差し出して握手待ちの構えを取った。

葉薊 証 > 「そう言ってもらえると…ありがとうございます」

気軽な感じで肩を叩いてくれる幼子教師の様子に救われる少年。
幼子教師の思うように、少年は決してわざとやっていた訳ではない。
むしろ異常な服装を正そうとしたのは間違ってないだろう。

「そ、そうですか…」

何とも言えない返答が返ってくる。
年齢で言えば高校生。自分ではもう青くないぐらいの感覚で居た少年にとって、幼子教師の言葉は少年の心を軽くえぐる。
プライドが高い訳ではないし、普段なら余程傷心することはないのだが、状況が状況なだけに、クリティカルヒットした。
にしても、本当に人外の類なのだな、発情したおこん先生を見つけたら水を…

(おこん先生…?聞いた事がある気が…)

「もしかして全裸で街中を徘徊していた…おこん先生ですか?」

風紀内の報告の中に流れてきていた一文を思い出す。
もしやその人物なのではないか、と思いおこん先生の瞳を見つめておずおずと尋ねてみた。
先に名乗らないのは、若気のなんとやらである。

おこん > 「うむ。 おぬしの一生懸命であるところは美徳じゃ。
 だが、自身でそれを良く自覚せねばならぬ。 そうしないと…。
 ワシみたいなのがおぬしをぺろりとやってしまうかもしれんからな。」
なんかちょっと悲しそうな顔になっている相手を励ます。励ましてるつもりだった。
肩を叩く…軽く触れるだけでも、彼の溌剌とした精気にふれることができる、
場所が場所であれば、今にも体を擦り寄せるところだが
初対面の相手に正しく接する理性はまだあった。

「おお、ワシの名前を聞いておるのか! それなら話は早い。
 そうそう、そうじゃよ! ワシがそのおこ……なんの誰が何って!?」
全裸で徘徊。驚愕の事実に思わず大きな声が出えた。
「ワシ、そんなことしておらんが……?なにかの間違いではないか?
 風紀の情報網にワシ全裸徘徊するって書かれておるのか…?
 ま、まあいいじゃろ。 それは情報の出どころを確認する必要があろう。
 いくらワシでも全裸でうろついたりはせんからのう。」
全裸みたいな格好でも服は着とるし、と続けたあと、腕を組んでウウムと唸った。
もしかしたら、他人のそら似とか、あるいは幻覚系の異能であるとか、
通報者はそういったものに引っかかったのかもしれない。

葉薊 証 > 「は、はい」

ぺろり、ってどういう意味だろう。
なんてちょっとだけ困惑する健全な少年。
それ以外の部分は、凄いまともな事を言っているのだが…
頭に入れておこう。

「あ、違うんですね。失礼しました。

…あ、僕が言ったって事は秘密にしておいてもらえませんか…?
勝手に外部に漏洩したってなると怒られちゃうんで…」

あの格好をする人ならワンチャンあり得る、とか思っていた事は内緒だ。
それより、しれっと情報漏洩してしまった事に気づき追い打ちで隠蔽を謀る少年。
別にこの程度なら大丈夫なのだろうが、少年は割と真面目なのである。
恐る恐ると言った様子で両手を合わせた。

おこん > 「うむ。 今はそれでよい。」
ずっと昔から人間を見てきた記憶はだいぶ朧気ではあるが、
それでも彼のような若者はたくさん記憶している。
もちろん、その若さゆえに悲しい出来事が起きたことも。
文字通りの老婆心でアドバイスをしてしまったことが
ちょっぴり照れくさくて、はにかみながら相手に頷く。

「うむ、言ったりはせぬ。 ワシとおぬしの約束じゃ。
 誰にも言わぬ、二人だけの秘密じゃな……?」
手を伸ばし、自分の小さな両手で、合わせられた相手の両手を
挟み込むようにして包む。 成熟しきったオスほどではない、
少し柔らかみのある手の感覚に目を細めながら、
相手を見上げてにっこりと笑いかけた。

「これで約束は成ったのう。 お互い口外はせぬ。」
よしよしと相手をねぎらうかのように、自分の手で相手の手を撫でさすった。

葉薊 証 > 「は、はい。秘密です、約束、します」

此方の手を包み込むおこん先生の手は、その外見に反して艶やかで…なんだか、色気を感じる。
ふにふにと柔らかな肌が触れ合う感触に気恥ずかしさを感じ、顔が熱くなるのを感じる。
ただ手を触れあって、笑いかけられただけなのに…
気を紛らわす為にも、気丈に保つ為にも笑み返そうとするもぎこちない笑顔。
笑顔というより、内なる感情が漏れ出したことにより”にやけ”と言った方が近い表情を表に出してしまった。

「はぃ」

小さくて柔らかいすべすべの手が確かな意思を持って触れて来る感触。
幼児の可愛らしい接触と、母親に撫でられるような安心感。その二つを同時に感じこれまでに経験したことのない気分に力が抜ける。
快楽を感じている訳ではないのだが、蕩けた表情を見せてしまう少年。

「ぁ…そ、そうだ
僕の自己紹介がまだでした」

しばしされっぱなしであったが、ハッとしたように口走る。
蕩けた表情を元に戻し、まだ気恥ずかしさの残る少々紅潮した面で続ける。

「僕は一年生の葉薊 証と言います。風紀委員をやってます。よろしくおねがいします」

握られた片手を一度引き、お互いの手が交互に重なる様に添え直す。
そして、頑張って作ったまじめな表情で自己紹介をした。

おこん > 「うむ、約束じゃ…」
破ったらどうこう、という話すらない、素朴な取り交わし。
小さな手が、相手の指を、手の甲をなぞるように動く。
少しだけ丁寧に相手の手を撫でるも、相手の力が
抜けてしまったのを感じるとちょっとだけ動きを止めた。

「うむ、おぬしの名前、覚えたぞ。 ワシを見かけたら仲良くしておくれな!」
お互いの手が交互になる形に添え直される。相手の手のひらの感覚に
大きな尻尾を揺らしながら鷹揚に頷いた。

「ふふふ…それにしてもおぬしの手は触り心地がよい。
 適当なところで離さぬと止め時を見失ってしまうのう。」
ふむふむと小さくうなずきながら相手を見上げ、笑いかけた。
手を撫でて…触れたくなるのは、人外のもの由来のそれではなく、
根源的な地母神的な性質もあるのだろう。

葉薊 証 > 「は、はい。こちらこそお願いします」

仲良く、出来るだろうか。やましい気持ちが浮かんでは消え、消えたと思ったらまた浮かんでくる。
別に苦手だとかではなくて、ただ普通な感じで仲良くするには少々妙なイメージを抱いてしまった気がするというだけで。
なんなら今も手を触られ続けているのは、少し距離感が近すぎる気がする。

「そ、そんなにですか?」

分からない、と言った感じであたふたする。
自分の手に対して特別何か感じたことは無い。
もしかすると、自分がおこん先生に感じている感覚と同じようなものなのかもしれないと思うと少し合点がいくが…
このまま触られ続けていると、少々気恥ずかしい、を越えてかなり気まずい。
この気持ちを例えるのであれば…甘えたくなるというか。短い人生の中で、親含め他人にあまり甘えてこなかったのだが…
これはなんというか、妙な安心感を覚える。
実母以上に実母な感じがする。
紅潮、というより安心してじんわりと上がった体温の影響でうっすらピンクが肌に浮かんでくるだろう。

「と、ところでおこん先生はこんなところで何を?」

気持ちを逸らす為にも少々無理やりに話題を作って問いかけた。

おこん > 「んふふ……そうじゃ、おぬしの手は愛らしくて…」
やさしく手を撫でていたところで、ぴたりと止まる。
そっと手を離してから、小さく咳払い。

「お触りタイムはこれで終わりじゃ!
 この辺にしておかねば、もっと触れてしまいそうじゃからな!」
努めて明るく振る舞う。 本当はもっと触れたいけれど、
頑張って自分で抑え込む。 問いかけには小さく頷いて、階段の方を指さした。

「上の方の教室で授業をしておった。
 コミュニケーション学はいろんな生徒に受けてもらいたいでのう、
 たくさん講座を設けておる。
 おぬしこそ、こんな時間まで熱心に勉強しておったのではないか?
 勤勉は良いことではあるが、じょじょに教師や生徒も帰ってしまうからのう。」
夕暮れまで残って何かをしていたからには、なにか調べ物か勉強でも
あったのかもしれない。自分がその邪魔をしてしまった…ということはないだろうが、
念の為に問いかけた。

葉薊 証 > (よ、よかった)

おさわりタイム終わり。その言葉に心中胸をなでおろす。
おこん先生の歯止めが利かなくなるように、こちらもこれ以上は何かが我慢できなくなる気配を察していたのだ。

「いえ、僕は風紀委員の巡回中です。大体見て回りましたしちょっと休憩していたところでした」

コミュニケーション学なんて授業もあるのだなあと思ったが、内心に留めておく。
多分、それを言うとおこん先生は多少ショックを受ける気がした。
そして、自分の発言で「あー」と思い出したような感じで視線を上に向けた。
そういえば巡回中の小休止ぐらいのつもりでここに居たのに、これでは完全にサボりである。
怒られたりすることはないだろうが、サボりとなると自分が何となくいやだ。

「そういえば巡回中でした。そろそろ戻らないと…」

そう言って急ぎ気味に立ち上がる。放ってきた水を拾いにソファに近づき、拾い上げれば残っていた水を一気に飲み干す。
イッキするには多かったのか、少々苦しそうにしながらゴミ箱にペットボトルを捨てた。

「ああ…おこん先生、最後にですけど。」

水でタプタプのお腹を手で摩りながたおこん先生の方に向き直る。

「服はちゃんと着てくださいね。委員会の方には…今回は言わないでおくので」

なんて、ちょっと目をそらしながら伝えた。

おこん > 「おお、そうじゃったのか! 休みのところに驚かせてしまってすまなかったのう。」
彼の言葉に驚く。 ぴんと尻尾が伸びた。
せっかくの休憩時間中に彼規定でいうところの服を着ていない人が現れたのだ。
申し訳ないことをしたという申し訳無さがちくちくと自分を苛む。

「引き止めてしまったのう。 どれ、巡回に励んでおくれ!
 なにかあったらワシに連絡してくれても構わんでな。」
もちろん風紀は風紀のネットワークで動くのがセオリーではあろう。
しかし、とんでもない状況や困った状況が発生した場合は、
教師の手も借りたい…という状況もあるかもしれない。
優しげな表情で相手に呼びかけたところで…。
相手の指摘に穏やかな表情を浮かべた。
「わかった。おぬしといるときは羽織っておくでな。」
今にも肩からずり落ちそうなそれを引っ張り直しながら相手に応じる。

「ふふ…約束がもう一つ増えたのう」
嬉しそうに笑うと、大きな尻尾が左右に元気よく揺れた。

葉薊 証 > 「はい。困ったときは頼るかもしれないです」

コミュニケーション学を請け負う先生なのであれば、頼る時があるとすればそれはきっと個人的な問題が生じた時であろう。
そういう時には、きっと頼らせてもらおう。そう思いながらも、少々苦笑しつつ応じる。
何故苦笑かというと、先生としてとても頼りがいのある発言でありながらも、このどこか幼さのようなものを感じさせる人に頼るというのもなんだか妙な気がしたからだ。
それでも、きっと頼りがいのある人なのだろうということはなんとなくわかった。

「ありがとうございます。」

出来れば自分がいない時もそうして欲しいが…慣れている人もいるようだし、おこん先生のアイデンティティの一種のようなもの?なのだろう。それを制限するのも違う気がした。

「また会いましょうおこん先生。それでは失礼します。」

ぺこりと一礼し、廊下を歩いて去っていく。
そのままゆけば、教室二つ分ぐらい進んだ先の曲がり角で振り返るであろう。
その時まだおこん先生がそこにいれば、きっと笑顔で手を振るだろう。


翌日、先輩にこの日の事を話してみた。
服の事は、『ああ、いつもの事だし大丈夫』とさらりと言われ、自分の価値観を疑う事になるのだが、それはまた別の話。