2024/07/12 のログ
ご案内:「第一教室棟 教室」に出雲寺 洟弦さんが現れました。
出雲寺 洟弦 > PM 16:30:22 或る教室。


「…………っ~~~」


教室には自分と、数名の学生――否、もうじき居なくなるので、数名から一名だ。つまるところ、教室に一人となる。

常世学園へとやってきたのは今年度。割と新規編入という形。
17の誕生日に異能が発現して、その翌年でここへと来ることになってしまった。
……色々とおっかなびっくりではあるもの、それなりのコミュニケーション能力と、手伝い気質による人との当たり障りのない交流によってまずまずといったところ。
だから今日のように、

……今日のように。

教室の掃除を請け負って、さてという息をつくのも、何度目という事だ。


「……やるかぁ」

――こういうの、此処でもこういう感じなんだろうか。
袖を捲り、箒と塵取りでゴミを軽くかき集めるとか。
黒板――っていうか、この教室だとホワイトボードになるんだが、それを拭きとっていくだとか。
窓を少し開けてやったりすると、夏季の近くのところ、それなりにムワッと熱気の残る風が吹き込んだ。

「…………あっつ」

出雲寺 洟弦 > 掃除は別に嫌いじゃない。一人でやるのも苦じゃない。
むしろそれなりに好きなほうだ。

綺麗になっていく様を見るのはすっきりするし、整理整頓すれば見栄えもいい。
終わるまでの長い時間、割と何も考えずに済む。無心に掃除を続けて行ってみたら、自分なら半日は潰せるだろう。


いや、此処でそれは流石にしないつもりではあるが。
スマートフォンの液晶を時々光らせて、今の時間を見る。
……終わったら帰り道には、商店街で買い物をしようと考える。

「……薬味は冷蔵庫にあったから、蕎麦か、冷や麦……」

塵取りでかき集めたゴミはゴミ箱にバコバコ落として、
箒を杖にしながら脳内会議。

「……紫蘇か大葉……いや、梅干しをあたって汁に……うん、なら冷や麦だ」

財布にも優しいし。

出雲寺 洟弦 > ――――幾らか綺麗……という自分の目の範囲での判断を終えて、掃除道具を片づける。

……次に使う生徒や先生は、特に綺麗になった教室に何か想うこともないだろう。どうせ一日でまたそこそこ汚れてくる。

掃除の余韻を、窓を開けて夕陽を眺めながら噛み締める。


「……」


夏風が吹き込む。今日も昼間は暑かったというが、今位なら過ごし易くて良い。
ぼんやりと朱けていく空を見つめながら、ふと、眼下の下校していく他の生徒たちだの、部活動だのに勤しむ生徒だのを見つめる。


「…………」


昔、あんな中に自分もいた気がするが、余り多く人とつるむということもなかった。
……ただ、一人だけ。いつも、一緒に帰り道を歩いた子の顔。


「……元気に、してっかな」


――ずっと会ってない、その子の名前は……。