2024/09/30 のログ
ご案内:「第一教室棟 屋上」に夜見河 劫さんが現れました。
夜見河 劫 >  
「………。」

気力の欠けた顔で、屋上の一角にあるベンチに腰を下ろしてカロリーブロックを齧る人影。
顔に包帯を巻きつけた、暗い雰囲気の男子生徒である。

「………退屈だ。」

愚痴を言いながら、また一口カロリーブロックを齧る。
普段なら落第街かスラム辺りで「相手」を物色してるか因縁を付けられるのを
待っている所だったが、今も一部世話になってる研究機関から出席の催促が来た。

《そろそろ出席しないと日数が危ない。》

そう突かれて、渋々学園の方に顔を出し、最低限の授業を受けて過ごした所だった。
サボタージュをすれば、研究機関から差し向けられる連中が五月蠅い。
出席は不本意だが、研究機関からの連中の方がよっぽど嫌なので、出席を選ぶ事にしたのである。

「…………。」

ざく、と、またカロリーブロックを齧る。
腹を満たすなら、昼食はこの程度で充分。
それに此処はあまり人気も無い。
人目を気にする性質ではないが、風紀の人間に見つかって要らない説教を喰らうよりはいい。

そういう訳で、無気力感を持て余しながら、若者は珍しく学園に顔を見せていたのだった。
 

ご案内:「第一教室棟 屋上」に柊庵さんが現れました。
夜見河 劫 >  
そもそも、碌に出席もせず普段は喧嘩(潰し合い)に明け暮れていられるのも、
遺憾ながらこちらに引き取られた時に最初に世話になった研究機関のお陰ではある。
そういう意味では、自身は未だにあの研究機関に繋がれている身なのだろう。不本意だが。

「……メシ喰わないと、殴り合いで力が出ないからな…。」

無気力にぼやく。
やりたい事をやるにも、金が要る。食費がその最たるもの。
委員会にも入らず、碌な事もせずに、ゴロツキ紛いの真似をしているのに
生活できているのも、そちらからの助け(思惑)があってだ。

あの白い部屋で、無気力に苛まれる日々は御免である。
だから、せっつかれたらこうして出席程度は我慢しなくてはいけない。
 

柊庵 >  
庵は今は一般的な学園生活を過ごしている。
適当に昼食の場を探し、屋上へとやってきた。
ビニール袋をぷらぷらと揺らし、その背には黒いベースケース。
既に先客がいるようだが、何とも無気力。
湿気が漂ってきそうな浮かない顔だ。
だからってわけじゃないけど、自然と彼の前に足が向く。

「───────浮かない顔」

第一声は、それだった。
あんまりにもあんまりかも知れないが、
的確に彼のことを表す言葉だと思った。
じ、とベンチに座る彼を見下ろし、小首を傾げる。

「何だが随分と暇そうじゃん。
 ああ、さっきの授業つまんなそうだったし、そっか。
 ……確か同じ教室にいた、よね?同学年だろうし」

何となく見覚えがあった。
と言っても、よくある授業の風景とかでの話だ。
趣味の範囲の関係上、人の顔はついぼんやりでも覚えてしまう。
隣座るよ、と断りを入れれば有無を言わさず座り込んだ。
傍らにゆっくり、丁寧にベースケースをおけば、ちらりと横目で見やる。

「もしかして体調悪かったりする?
 顔色は……悪くなさそうだけど、悩み事?」

ガサガサとジャムパンを取り出し、無遠慮に訪ねた。

夜見河 劫 >  
「――――あ?」

声を掛けられれば、視線がそちらへ向く。
昼日中だというのに、光の無い瞳。
……敢えて形容するなら、どす黒く燃える炎のような雰囲気。
その雰囲気も、燃え滓じみて静かだが。

……確か、さっきの授業(内容はもう大分忘れた)で、同じような赤毛の頭を見た記憶。
授業を担当する教師の声から来る眠気で落ちないように気を張っていたので、
少々記憶の方は胡乱だった。

「……暇。」

無気力な頭がしっかりした思考を働かせる前に、言われた言葉の一部が鸚鵡返しに口から洩れる。
暇。暇、か。
いや、暇というよりは、

「……つまんねぇだけ。

授業も、こうしてガッコ―で過ごしてるのも。
つまらね。つまらな過ぎて死にそう。」

ふ、と視線を外しながら、顔を包帯巻きにした若者はひたすらにやる気がなさそうな返事を返す。
事実、この時間はつまらない。「生きている実感」が微塵も感じられない。
それを少しでも刺激させる雰囲気がない。

「今も正直つまんねぇ。」

無礼極まる一言を吐きながら、またカロリーブロックを齧る。
男にとって事実とは言え、話しかけて来た相手に対して何たる口の叩き方か。
 

柊庵 >  
虚ろな瞳を横目で見やる金色。
やる気のなさと言うより、奥底で何かが燃えている。
似たような炎を、昔つるんでいた"ろくでなし"連中で見たことがある。

嫌な感じだ

顔色一つ変えず、
男の吐き捨てる言葉を聞きながら、ジャムパンをかじる。
でろっとしたいちごジャム。ちょっとジャンキーな甘さ。
寧ろこのちょっと甘すぎるくらいが丁度いい感じ。はむはむ。

「要するに暇じゃん、それ。
 授業に関してはまぁ、気持ちはわかるけどね。
 授業がイヤなら、委員会にでも出たら?退屈はしないかもよ」

ただ卒業するだけ、単位をとるだけなら、
この学園は別に授業に出る必要はない。
各種委員会に所属し、活動をすれば取れるだけ。
事実上の公務員努めになるからの措置だ。
我ながらいい提案をしたな。
ちゅー、と吸い上げるいちご牛乳が美味い。

「……ふぅ……まぁ、そんな簡単な問題でもなさそう?
 だって、アナタ。本当に死んじゃいそうな目をしてるよ」

退屈で死にそう。
よく聞くようなフレーズだが、
冗談で聞こえないような人も初めて見るかも知れない。
こういう感じの人間は、無軌道な若者なら珍しくはない。
だが、それらよりはこう、所感ながら"根深そう"だ。

「ていうか、それ足りる?少食だったらごめん」

夜見河 劫 >  
退屈はしない、という提案に、思わず鼻で笑ってしまう。
委員会。確かに其処に行けばつまらない授業には出なくて済むかもしれない。

だが、それを大きく阻む理由がある。

「無理。
生きたまま腐りそうな気がする。
そもそも風紀に目ぇつけられてるから、入る入らない以前の問題。」

そう、この男、風紀委員の監視対象。
そんな奴を引き取ってくれるような、酔狂な委員会があるだろうか。
前向きに考えて、かなり難しいだろう。
そして、もう一つの理由は、

「――落第街で喧嘩してた方が、よっぽど充実できる。」

そう、それに尽きる。
この辺は少し「綺麗すぎる」。
品行方正、真面目な生徒や教師たち…ばかりだとは思わないが、まあ真っ当な社会生活を
遅れるような人間が大多数占めている事だろう。

そこには、「暴力」がない。
剥き出しの「戦い」がない。
――生きている「実感」が、結果として感じられない。

そんな所に居る生徒に暴力を働けば、後々が面倒だ。
その点、この男は妙にまともな面があった。

「…落第街(あそこ)はいい。
誰も守っちゃくれないが、誰に憚る事も無く、殴り合いが出来る。
殴っても碌に文句の出ない奴等ばかりなのが、いい。

ぶちのめすのもぶちのめされるのも、自分の責任だ。」

言いながら、カロリーブロックを齧る。
ちょうどなくなったので、余分に幾つか買っておいた分のもう一箱を開いて、また齧る。

「…晩を余計に食べればいい。下手に腹が膨れると、いよいよ授業で眠っちまう。」

ちょっと口が乾いてきた。後でスポーツドリンクでも飲もうか。
そんな事を考える。
 

柊庵 >  
風紀に目を付けられている。
成る程、問題児か。自分を含めて、
問題を抱えている生徒は数多けれども、
そこまで目を付けられるのは中々だ。

「やったこともないのに、随分と穿った考え方。
 ……今のは黙っといてあげるから、公言しない方が良いよ」

「"目をつけられてる"なら、余計にアナタが苦労するだけ」

忠告。
それが(ひず)みを生み、人間関係に(ゆが)みを齎す。
庵が落ち着いていられるのは、過去の経験があってこそだ。
平然と目をつけられてるなんて言ったら、
余計に問題視されて後々困るのは自分自身だ。

ぺろりといちごジャムを食べ終えると、
続けてガサガサとクリームパン。
ちょっと粘り気が足りない甘さだけのクリーム。
こういうジャンキーなのがたまにはほしい。
よーくみると、袋の中には菓子パンとジュースの山。
この女、よく食べる。

「……そういうのもあんまり公言しないほうがいいと思うけどね。
 まぁ、アナタが目を付けられてるのは何となくわかったけれども」

そういうタイプの人間か。
そりゃあ、既視感を覚えるわけだ。
素っ気ないままにいちご牛乳を吸い上げる。

「喧嘩、ね。
 アタシは暴力はそんなに好きじゃないから、
 共感は出来ない。けれど、生き甲斐なく燻ってるもどかしさは、わかるかな」

ほら、と彼の膝下に投げ渡したのはメロンパン。
カロリー爆弾と名高い、あれだ。

「男の子じゃん。食べれるでしょ?
 それとも、晩ごはんも実は足りなくて、
 喧嘩に負けた時の言い訳にでもしてみる?」

からかうように、クスリと笑みを浮かべた。

夜見河 劫 >  
「…"事実だから"仕方ない。
学校(こっち)来るのも、後々面倒なのが嫌なだけ。」

こうして話をするのも面倒なので、なるべく人がいない場所を選んだ心算だったが、
残念ながら本日は外れだった。まあ運が悪かったと諦めるのがいい。

「「苦労したくない」から、此処に来てる時は大人しくしてる…。
――こっちでまともにやってそうな連中にも、手は上げない。」

そのせいで頗る気力が削がれるが、どうせ今日一日を我慢すれば後暫くは好きに過ごせる。
その程度の苦労なら、仕方ないけど支払わねばなるまい。

「……別に、共感とか、誰かに分かって貰おうとか、情けない事考えてない。
俺の生き方だし、俺の問題。

……理解されないの位は、もう分ってるし飽きた。」

平穏に生きていて、「生きている実感」を感じられる連中は幸福だ。
そんな安全な生き方で「生きている事」を感じて充実できるのなら、いちいちレールを外れる必要はない。

「それが出来ない」から、道を外れた所を歩くしかない。
――いや、少し違う。
そんな所を歩く事を、「自分で決めた」。

共感も理解も、必要ない。
単純に、「生き方が違う」だけだ。そこに上も下も無い。
歩いてる場所が違うだけ。それでいい。

「――――結果はどうでもいい。
充実するまでぶん殴って、ぶん殴られて、それが出来るだけ長い事続けばいい。それだけ。」

そんな事を言いながらも、投げ渡されたメロンパンの封を切り、がぶりと齧りつく。
何と言うか、餓えた狼のような喰らいつき方。
 

柊庵 >  
「……アナタが決めた生き方にケチつけたり、
 泥塗る気はないけどさ。そういう生き方してると……」

歯止めが効かなくなるか、何時か本当に死んじゃうよ?」

何処か重々しい声音には実感が宿る。
曲がりなりにも裏社会に身をおいた事があったから見てきた。
そういう男たちに体を貪られたりもした。
ちょっとぞわっとする嫌な思い出を思い出す程度には、
彼の言動はよく重なる。無意識の内に、自身の腕を軽く擦った。

「アタシも人のこと言えるほど、人生歩いてはないけど、さ。
 そうやって飽きたとか退屈とか、腐った事言える間でいれるといいね。
 その間に、アナタの"飢え"を満たす何かが出てくれるといいけど……」

そんなに達観したことは言えない。
けど、外れた道っていうのは言葉で言えるほど軽いものじゃない。
その仄暗さは、よりもっと深く、暗くなる。
表では大人しくしてるとか、飢えとか、そんなものは際限ない。
こうしていられる内は、まだ優しいものだ。
そう、飢えた獣だ。その飢えは、際限無い。
少なくとも、今の人生に退屈が多いということは、
それだけ空白も大きいと言うことだ。
足を組み、頬杖を付きながら彼を見やった。

「とか言って食べるんじゃん。ヘンなの。
 ……他の趣味とか探したりしないの?」

人が食べてるのを見るのは好き。
本当に食らいつきいいな。
実は本当にお腹すいてるだけじゃないか。
ちょっと試してみよう。ぺい。今度は蒸しパン投げてみる。
バナナ味の糖分たっぷりの奴。

夜見河 劫 >  
「――――――。」

いつか本当に。

その言葉に、思わず小さく笑い声が漏れてしまう。
そうなる日が来るならどれだけいい事か

「……落第街で前に似た事言った奴が居た。
…悪意はあっちのがずっと上だったけど。

結局、そいつも俺を殺せなかったけど。」

メロンパンを齧りながら、暫く前の事を思い出そうとする。
……やたらイキってたけど、何の事はない、凶器にナイフを持ってただけだった。

腹を抉られたけど、結局死ねなかった
バケモノ見るような眼で見られたような気がする。
あれはちょっとだけ笑えた。そこから反撃に向かったらすぐに「潰れて」、拍子抜けだった。

「……珍しい。」

ぼそ、と呟く。
殆ど他人と話をしない中で、他人と意見が合ったのは、どれだけぶりだっただろう。

「俺もそう思う。
そんな相手が居たら、本当に退屈しなくて助かる。

出来れば、しつこくても確り相手してくれる奴だと、もっといい。」

そんな相手が本当に居るか、分からないので何とも言えないが。
噂の限りで一番見込みがあるのは…「落第街の狂獣」と言われる男位、だろうか。

「これ位なら、多分ギリギリ眠らないで済む。

――ガラの悪い、殴っても文句言われないし言わない連中のたまり場探すのは、多分趣味。」

そんな趣味があってたまるか。
蒸しパンはちゃっかり横領する構えだ。