2025/01/20 のログ
ご案内:「第一教室棟 職員室」に東山 正治さんが現れました。
■東山 正治 >
何時しか、"人"という言葉は人間を指す言葉から遠く離れていた。
■東山 正治 >
正確には人種が増えたという表現が正しい。
何時しかそれは、この大変容した世界に住まう者々を指す言葉に変わっていた。
別にそれ自体に感慨はない。差別は須らく是正すべき気持ちはある。
「……アイツ等、問題起こしちゃねーだろうな?」
誰もいない夜の職員室。
僅かな明かりに灯された自身のデスクに向き合い、教師東山は眉間を抑えていた。
自身が受け持つ、面倒を見る生徒は何かと"クセ"が強い。
特に今最も懸念しているのは名無しのクソガキ。
信用がない訳では無いが、根本的に更生もしていない"人"に信頼はおけない。
「全く……」
悩みのタネは尽きない。
東山の周りには何時も増え続けている。
■東山 正治 >
人は良くも悪くも変わっていく。
きっかけか、時の流れか、不朽不変があるとすればきっとそれはもう人ではないのだろう。
精神性、思考、或いは身体そのもの。おかしいことだとは思っている。
だが、恐らく客観的に見れば既にそれは珍しいことではないのかもしれない。
異能、魔術、人間ならざるものからの堕落。方法は様々。
多様性を含んだ"人種"は、今や大変容前の性別差別なんか比で無い程だ。
「…………」
淀んだ瞳が、ノイズの走るホログラムモニターを凝視する。
無数の島民のプロファイル。生徒から教師、"来訪者"から何まで集めたものだ。
最早暗号めいた文字の数であろうと、一つとして見逃しはしない。
「……すっかりと、俺の周りも変わっちまったな」
こぼす呟きには、何処か諦めが混じっている。
数多の神秘が、不可思議が、人々に影響を及ぼした。
それを受け入れるものもいれば、受けいられないものもいる。
自分の周りは比較的前者だ。わかっているとも、許容してしまえば楽なものだ。
だが、変容してしまったことにより被害を被った無辜の声を東山は知っている。
■東山 正治 >
人々が神秘を受け入れるかはさておき、既に世界はそうなってしまった。
事実、今や魔術は当たり前のように文明技術の一つであり、
それに付随するように数多の飛躍的進化を遂げてきたのだろう。
当然、それをもたらした者。異界の地よりの来訪者も、今や地球にとっては当たり前になってきた。
決して豊かさだけを齎されていたわけではない。
その裏で、"しわ寄せ"を受けたものだっているのだ。
「……肩ひじ貼らずに暮らせる世の中、ねぇ……」
変わってしまった旧友に言われた言葉。"彼"は変化を受け入れた。
だが、東山は決して受けいられなかった。
異邦人問題、血筋の暴露による血腥い事件、共存できない文化による亀裂。
当然、来訪者たちだって皆が皆、望んだわけではないことを知っている。
だから、何だって言うんだ。
「──────許容しちまったらよ、それこそ笑えねぇよ」
決してそれらを過去にはさせない。
理不尽と言われようと、時代に合わなかろうと、
"しわ寄せ"を受けた無辜の「地球」人を知っているからだ。
腹の中に流れ込む、ドロリとした殺意が重苦しい声音となって、思わず漏れた。
■東山 正治 >
「……そういえば仕事、残ってたな。
異邦人街の……スクワット地区か……」
一つだけ、楽だと思うことがあるとすれば、
どうにも人間も人も思考は似てるらしい。
貧すれば鈍ずる、とは言わない。生きるのに必死なのは"お互い様"だ。
くっ、と喉奥から漏れる失笑。静かに首を振り席を立ち上がった。
「全く、異邦人街作るくらいなら、
島の外に作っとけよ。仕事ばかり増やしやがって……」
それでも犯罪者である以上種族関係なく取り締まるのが"律"である。
東山の中に、"現代の"司法に対する信頼はもう無い。
それでも尚、教師としてあり続けるために法を殉じ、職務を全うする。
内に秘めた感情を抑えつけねば、教師など出来やしない。
東山は、自分より感情的な人間を見たことがなかった。
「そろそろあの名無しにも仕事くれてやらねぇとな……。
少し位は学園側にいい顔位みせねーと……フェイちゃんにも、か」
ハァ、ため息と共に、全ての明かりが消える。
「全く、忙しくてたまんねぇよ」
暗闇に独り言ち、既にそこには誰の気配もありはしなかった。
ご案内:「第一教室棟 職員室」から東山 正治さんが去りました。