2024/06/16 のログ
ご案内:「第二教室棟 屋上」に伊都波 凛霞さんが現れました。
ご案内:「第二教室棟 屋上」にポーラ・スーさんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
今日は人気のない屋上。
夏風に吹かれ長い長いポニーテールを棚引かせて、鉄柵を背凭れに佇む少女が一名。

「ふぅ…」

ちょっとアンニュイ。
周りは咎めることもなかったけど、テンタクロウ拿捕の失敗は失態だった。
一度肉薄して、瞬間昏倒まで持ち込んで……それで投降を促し隙を与えてしまったことで、逃走を許した。
どう考えてもそのまま追撃していれば仕留められた状況だったのに。
今後も彼の犠牲者、被害者が出たらそれは自分の甘さのせいと言われても仕方がない。
何より、自分が一番そう思っているし。

天を仰ぐ。
透き通るように青い空。
風に流される大きな白雲がこれから夏がやってくることを教えてくれる。

ポーラ・スー >  
 アンニュイな雰囲気の美少女。
 それも、とびっきりとなれば、絵にもなるというモノ。

「――あらぁ~」

 そんな美少女の背後に、気配もなく忍び寄る影。
 というか、鉄柵の向こう側からいつの間にかのぞき込んでいる視線!

「どうしたの『りんちゃん』、とっても可愛いお顔をして」

 そんなふうに、鉄柵越しに、声をかけてくるのは。
 神出鬼没を立体物にしたかのような、奇妙な教員だった。
 器用にまあ、鉄柵に掴まり、少ない足場に立って楽しそうにしている。
 ちょっとまて、どこから現れた――?
 

伊都波 凛霞 >  
「うわあ!?」

聞き覚えのある声が、聞こえるはずのない方向から!?
だって奥像の鉄柵に背を預けているのだから、背後は……。

慌てて振り返るとこちらを覗き込んでいるあーちゃん先生と目があった。

「何やってんですか先生!?危ないから早くこっちきてくださいってば!!」

どうしたの、どころじゃない。貴方が何やってんですかと大慌てである。
万が一突風かなんかで落ちたらどうするのか…。

ポーラ・スー >  
「うふふっ、驚いてる『りんちゃん』もかわいいわあ」

 振り返った少女の表情に、満足そうに笑いながら、両手を合わせる。
 そう、両手を合わせた。
 つまり、鉄柵を掴んでいる手が離れるわけである。
 そして屋上は風が強い。

「――あら?」

 しかも、この教員の服装は風の影響をもろに受けてしまう。

「――あらあらあら?」

 目を丸くしながらゆっくりと鉄柵から離れるように、上半身が傾いていってしまう――
 

伊都波 凛霞 >  
「あの!やめてください私を脅かすためにそんなこと──」

……え?

眼の前で、両手を離して笑っている先生の姿が。
屋上の風に薙がれるようにして───

「ちょ────とおっ!!」

この状況で慌てない人がいるだろうか。
…この島なら案外いるのかも。

そんな並列思考が浮かびながらも咄嗟に手を伸ばして、あーちゃん先生の手をがっしり掴む。

ポーラ・スー >  
「わあ――」

 少女の手でしっかりと手を掴まれる。
 すると、小さな足場に乗った足、ポーラの身体、少女との位置関係で、綺麗に三角形が出来た。

「まあまあ、『りんちゃん』ってば力が強いのねえ」

 と、少女に助けらなかったら真っ逆さまだったかもしれないというのに、のんびりとした事を言って。

「ごめんなさぁい。
 今そっち側に行くわねえ」

 そう言いながら、少女の手を頼りに鉄柵に掴まり直し。
 『よいしょ』と軽い掛け声とともに鉄柵を乗り越えて、少女の隣におさまった。

「ごめんなさいね?
 ちょうど、下から『りんちゃん』の背中が見えたから、登ってきちゃった」

 『やっちゃった』なんて、ちょっとした悪戯を嗜められた子供の用に、小さく舌を出して、てへぺろ。
 少女の隣で、少女の胸の高さしかない小柄な教員。
 まるで年下の童女の様にも見えるような仕草だ。
 

伊都波 凛霞 >  
「──し、心臓に悪いからやめてください…」

鉄柵の向こうから隣へと降りた先生に向ける言葉。
一瞬で死ぬほど疲れた…そんな疲労感を乗せて。

「登ってきた…!?」

ええー……と余計に疲れた顔…。
そりゃあ、こんな島だし、こんな学園だし。
屋上までよじぼってくる生徒も先生もいるだろうけど。

「あの、危ないし。真似する生徒がいてもいけないのでやめてください…」

出会ってからすでに3回目のやめてください、である。

ポーラ・スー >  
「はぁい。
 やっぱり風紀委員さんねえ。
 やあん、指導されちゃった」

 そう少女のお叱りを受けるのも、どこか呆れられるのも嬉しそうな様子で微笑みながら返事をする。
 本当に反省しているのやらどうか。

「でも大丈夫よ、よじ登ってきたわけじゃないもの。
 こうやってね、ちゃんと歩いて登って来たのよ?」

 そう言いながら、自分の目の前。
 自分のお腹の高さあたりに、平面の10cm四方ほどの『板』を造り出す。
 それは本来なら透明なんだろうが、びっしりとヒビが刻まれており、どこか脆い印象を与えるかもしれない。

「こういうのをね、階段みたいに作ってね?
 歩いてきたのよ?」

 こんこん、と『板』を叩いて見せれば、それは非常に硬質な音を出すだろう。
 そして『ね?』と、微笑む。
 なにが『ね?』なのだろうか。
 

伊都波 凛霞 >  
反省しているのかいないのか。
やんわりと笑ったままの先生。

そして眼の前に板を作り出して見せた。
それが異能か、魔法かは判別できないけれど。

「ええと…それでも危ないことには変わりないですから…。
 …なんか、ヒビがいっぱい入ってて壊れそうだし。危ないですってば…」

うーん、ちゃんとわかってくれているのかなあ。
そんなことを思いながら、はぁ…と溜息。
ね。って言われても。

ポーラ・スー >  
「はぁい、二回目は別の方法を考えるわね」

 反省していなかった。
 脆そうな『板』は直ぐに消えてしまい、いつものように口元を隠してくすくすと、楽しそうに笑う。
 悪戯好きの子どもよりも厄介そうだ。

「それでえ」

 さっきまでの少女と同じように策に寄りかかりながら、するする、と少女に近づく。

「どうしたの『りんちゃん』?
 なにか悩み事でもあるのかしら」

 そう言いながら上目遣いで少女を見て、そう言えば、とでも言うように。

「もしかして怪我が痛んだりするの?
 それとも、能力の使い過ぎ?」

 などと。
 まるで先日の『捕り物』を見て来たかのようにたずねた。
 

伊都波 凛霞 >  
「や、そうじゃなくて危ない方法で屋上に来るのではなく、校内の階段を使って来てください」

わざと問答がズラされているのかな…と思ってしまうくらいに噛み合わない。
疲労感が、疲労感が襲ってくる…。

「ん…悩み事は、人並みにはありますけど」

するする近づいてくる。
ほんのちょっとだけ、するする逃げる。
前のこともあるしね!

続けられた言葉に、えっ…と少しだけ驚いて。

「…怪我は、全然だいじょうぶですけど。
 ──異能の使いすぎは、確かに…でもどうしてそれを?」

ポーラ・スー >  
「あらあら、悩み事があると元気が無くなっちゃうわよね」

 と、心配そうに視線を向けるが。

「さあ――どうしてなのかしら。
 偶然、見ていたのかもしれないし。
 誰かから話を聞いたのかもしれないわねえ」

 そんなあからさまに嘘くさい事を言いつつ。
 懐に手を入れて、今時アナログな紙束を取り出した。

「そんな悩める『りんちゃん』にプレゼント。
 生活委員で把握している限りの、各学生の登下校時間。
 『あの時間』に学園内に居た子と、居なかった子に分けてあるわ。
 それと、生活委員の見回り中に見かけた子たちも別にまとめて置いたわ」

 その紙束には、時間別に学生たちがどこに居たかが詳細にまとめられていた。
 もちろん、生活委員が把握できる範疇であり、全校生徒とまではいかなかったが、それでも膨大な数だ。
 そして、後ろの方には、『捕り物』の後で病院や保健室を利用した学生のリストまで。

「すこぉしでも役に立つといいのだけど。
 風紀さんほどじゃないけれど、『わたしたち』の方が学生の生活に密着してるもの。
 意外と調べたりできる事、あったりするのよ」

 そう言いながら、そんな情報の詰まった紙束を少女に差し出すだろう。
 

伊都波 凛霞 >  
「いえ、それはもう、みんながそうですから」

だからこそ、人並みに…と。
実際には、色々な才気に恵まれている自分は人よりも悩みは少ないのかもしれないけれど。
それは測ることができないものだから。

「…これは?」

取り出された紙束。差し出されたそれを、受け取って…。

「───」

機界魔人(テンタクロウ)拿捕の作戦の顛末を知っているイようにも。
そして、風紀や公安が…彼の正体にある程度アタリをつけはじめていることも。
それらを知っている、とでも言うような、情報の束(プレゼント)

「…あの」

「どうして…?」

それはなぜ知っているのか、そしてなぜこんなものを用意してくれたのか。
そのどちらにも掛かる問いかけだった。