2024/06/20 のログ
ご案内:「第二教室棟 屋上」にポーラ・スーさんが現れました。
ポーラ・スー >  
「――『はるちゃん』も『りんちゃん』も、残念ねえ」

 屋上の鉄柵に寄りかかり、遠く――街の方を眺めている。
 その蒼い色には、なにも映らない。

「『はるちゃん』に絆されそうになっていたのに、惜しかったわぁ。
 今度、お見舞いに行ってあげないと。
 ――あら、それくらいいいでしょう?」

 髪に隠れた右耳。
 埋め込むように取り付けた通信機から聞こえる声。
 ポーラ・スー(かいぶつ)の飼い主たちだ。

「おかしいわぁ、どうしてそんなに警戒するのかしら。
 顔見知りの生徒のお見舞いに、教員が行くだけでしょう?
 ――なぁに?
 なにかしても、いいのかしら?」

 通信機からは何時ものように聞き慣れた怒鳴り声。
 それを聞いても、けらけら、と笑うだけだ。

「やぁねえ、冗談に決まってるじゃない。
 この学園は生徒たちの、子供たちのものよ。
 罪も、痛みも、後悔も、苦しみも――そうそう、悪意も憎悪も狂気も――。
 ぜぇんぶ、あの子たちのもの。
 ――そうでしょう?」

 そう独りの屋上で、心の底から愉快そうに笑う。
 ――笑っている。
 ――あまりにも無邪気に。
 

ポーラ・スー >  
「でもねえ。
 わたしは、『りんちゃん』が追い詰めると思っていたのよぉ。
 それが『はるちゃん』に先を越されちゃって――ふふ、あんなになっちゃうなんて、ほんっとに、かわいいわぁ」

 風紀委員の姉妹を想いつつ。
 身を挺して『怪物』(憎悪)に向き合った妹は、不幸にも重傷を負い。
 その知らせを聞いた姉は、その妹への愛情を溢れさせてしまった。

「――期待?
 ええ、してたわあ。
 もちろん、『りんちゃん』ならできると思っていたから、お手伝いもしたのだもの。
 でもこれで、わからなくなっっちゃったわねえ。
 分署の愛らしい『つーちゃん』は、どうするのかしら」

 くすくす、と笑いながら。
 目を細めて、街を眺める。

「『つーちゃん』は追い詰めるのかしら?
 それとも――ふふ、どちらでも愛おしいわねえ。
 とぉっても愛らしい『ぽんこつつーちゃん』
 あなたは、『誰』(どちら)に会うのかしら。
 ――ああ、ふふっ、そうねえ、もう」

 ――誰だかわからないかもしれない(こわれちゃってるかもしれない)けれど。

「あは、それはほんとうに――なんて愛おしい結末かしらねえ」

 ――狂っている、と。
 そんな声が通信機から流れる。
 けれど、ポーラ(狂人)はただ、純粋に、楽し気に笑うばかり。