2024/10/13 のログ
ご案内:「第二教室棟 廊下」に蚕比古 玉繭さんが現れました。
蚕比古 玉繭 > 「っ…、…ふ……」


ふら、ふらと。
進む足取り、重苦しくて。
息を吸うのも苦しいよふな状態続き。
廊下にへたり込む。

魔王、だなんて。
何故このような学び舎にいるのか。
この島には色んな人種が集まっている、というのは聞ひていたけれども。

「…怪異、などと…」

元来、いるだけで害なのに。
怪なる者が我が物顔で存在するだなんて。
乙女のいた地では許されざること。

何より…
乙女にとってそれは。
近くにあるだけで身を蝕む独、であるから。

「…っ、……」

息が苦しい。立とうとする力も抜けて。
ぱたり、と。
床に倒れ伏してしまふかも。

ご案内:「第二教室棟 廊下」に水仙 倫太郎さんが現れました。
水仙 倫太郎 >  
「~♪~~♪♪」

今週のヒットチャート、ア・ラ・モードの「バイブス」
そんな流行りの曲を口ずさみ廊下を歩く倫太郎。
一応今日のカリキュラムは終わらせた。
とりあえず部室に顔を出そうかなーと考えていた矢先、だ。

「ん……?」

廊下の先に誰かいる。
いや、倒れてないかあれ。
目をゴシゴシ擦って再度確認。
真白の誰かがへたり込んでる。
ただ事ではない雰囲気だ。

「やっべ……!おい、アンタ!大丈夫か!?」

驚きに目を見開いたが、何よりも先に体が動く。
考えるよりも人助けが先だ。すぐに駆け寄り、
膝をついて安否確認。軽く肩を叩いて、意識の状態等を確かめる。

「大丈夫か?俺の姿が見えるか?怪我か?それとも具合悪いのか?」

蚕比古 玉繭 > 状態は、よくはないかも。
白い肌は蒼白といって相違ないであろうし、意識もあるかどうか、と言われると微妙だろう。
体温も低くて、ひどく震えているようで、

「ご心配、なさらず」

聞こえた声に、そんな風に返して、
立ち上がろうとして、へたり込む。

魂の糸を一度に多くちぎれてしまったのは、あまり良い事ではなかったのは、そう。


「怪に…あてられた、だけですので」

水仙 倫太郎 >  
誰がどう見ても強がりだ。
思わず表情をしかめてしまった。

「ハァ?どうみたって大丈夫じゃねぇだろ。
 強がるモンじゃないぜ、白雪のアンタ。ホラ、ちょっと大人しくしてな」

顔色も悪いし、そもそも立ち上がることすら出来やしない。
こんな相手、放っておけるはずもない。
他人の無茶にはしっかりと叱責しつつも、失礼と一言。
抵抗するか、出来るかはさておき両腕を回せば抱き抱えるだろう。
所謂お姫様抱っこという奴だ。鍛えてるんだ、人一人位余裕だ。

「怪……?怪異でもいたってのか?
 ……いや、まずはアンタだな。俺は水仙倫太郎(すいせんりんたろう)だ。
 とりあえず、最寄りの保健室に行くからよ。ベッド付くまで辛抱してろよ」

校内にいるとなれば穏やかではない。
特に、退治する側となれば警戒もやむ無しだ。
とは言え、仮に周囲にいたとしても今はこの状態、
弱ってる人間を抱えていくのは分が悪い。
何より、まずは彼女優先。早足だが、それこそ赤子を扱うように丁寧にダッシュだ!

蚕比古 玉繭 > 「ん、んぅ…」

抵抗などできるはずもなく。
抱えられた彼女の体は、まるで絹でできているかのように艶やかで軽い。
体重が無い、というわけでもないけど、華奢な体なのがハッキリとわかるほどに。

背に比べれば、それこそ羽衣のよう。


「蚕比古 玉繭…たままゆ、です…

 …ほけん、しつ…?とは…」

保健室、馴染みのない言葉だけれど。
何処か休まるところ、ということだろうか。

「…すみません」

「おねがい、します」

姫君のように抱えられ、君の腕に揺られながら…保健室まで運ばれるだろう。

水仙 倫太郎 >  
お、思ったより軽い。ちょっと心配になる軽さだ。

「……アンタちゃんと飯食ってるか?
 女性のどうこうってのは失礼かもしれねーけど、
 健康的で元気そうなアンタの方がきっと魅力的だぜ」

人間元気が一番だ。
特に女性はたまに無茶なダイエットもするらしい。
そういうのではなさそうだが、男としてはそっちのがいい。

「アンタ、学校とか行ったりしてねぇのか?もしかして異邦人?
 ま、何にせよ安心しな。体調が悪かったりする時に休める教室みてーなモンだよ」

逆に今時珍しい、とはならない。
人には色々事情がある。特に、この大変容後の時代は特にだ。
そんな後の若い世代に生まれた男だ。倫太郎は偏見などあるはずない。
簡単に保健室の事を説明すれば、あっという間に到着だ。
我ながらの脚力。褒めてやりたいところだぜ。

「付いたぜ。おーい、シャル先……いねぇし」

ガラ、と扉を開ければ薬品の匂いが鼻を突く。
良くわからない薬棚に標本だのなんだの。
後はきっと先生の趣味かなんかの机があるが気にしない。
だが、よりにもよってその先生がいない。困ったな。
とりあえず寝かせよう。備え付けのベッドにゆっくり、
それこそお姫様でも扱うように丁寧に下ろせば、胸元まで布団を掛ける。

「保険の先生いねぇし、落ち着くまでいるわ。
 寝るにしても、眠くなるまで暇だろ?付き合うぜ、たまっち」

適当な丸椅子に座り込み、ニシシ、と笑みを浮かべた。

「で、何があったんだ?怪、とか聞こえたけど、穏やかじゃなさそうだしよ」

蚕比古 玉繭 > 「先刻、留学したばかり、で」

ずいぶん世間知らずなよう。
どこぞの山奥にいたのだろうか、と思うくらいの、箱入り娘だ。

ベッドの上に横にされて、そのまま少し、息を吐いて。


「たまっち…?」

ち、とは?と思ふけれど、それはまぁ、些細な事。
自分の事だというのは、言い方でわかるもの。


「はい、ありがと、う、ございます…
 倫太郎様は、お優しい方なのですね」

くすっ、と笑って。あなたの方見て。
こんな素敵な方に運んでもらって幸運だった、と思ひながら。

「…魔に、弱いのです。
 わたくし、体質的に…そこまで強くはあらず。

 強い魔がいたもので。
 抵抗、したのですが…」

彼女の体に傷らしいものはない。
となれば、本当に近寄られただけなのかも。
それでこの憔悴のしきり方を見るに、本当に体が弱いのだろうか。

「倫太郎様は……体、お強いのですね。
 わたくしを抱えてるときも」

「とても、安心致しました」

くす、っと笑って

水仙 倫太郎 >  
「へぇ、もしかしてお嬢様学校にでもいたのか?
 俺もこの間、彼女と一緒に入学したばっかぜ」

てことはタメかな。
にしても随分とこう、箱入り娘感がある。
今どき世間知らずならぬ地球知らずだって珍しくない。

「たまっち。たままゆで、たまっち。
 人と仲良くするために呼びやすいあだ名付けたりすんの。
 あ、イヤならそう言ってくれていいぜ。普通に玉繭って呼ぶしな」

「別に優しかねぇよ、困ってる奴をほっとけねぇだけさ」

それがどんな存在であっても関係ない。
がむしゃらにでも手を差し伸べてしまうものだ。
さて、傷の類はないし本当に体調が悪くなっただけらしい。
生憎医学知識はゼロなので、どうこうわかるとか出来る訳じゃない。
それに、先生のものを勝手に触るのは良くないだろう。
もどかしいが、そこはきっちり抑えよう。

「さっきの怪がどうこうってのか……。
 もしかして、怪異にでも出会ったか?
 俺、こーみえて仲間と一緒に怪異退治したりしてんだよ」

「体鍛えてんのもその一環だな。
 良ければ詳しく話してくれねーか?」

もし本当に怪異だと言うなら見過ごせない。
じぃ、と黒い双眸が白い彼女を見ていた。

蚕比古 玉繭 > 「学び舎が、はじめてでして」

それまでは、個別で教育をされていたらしく。
まさしく世間知らずの、箱入り娘。

「……では、りんっち様?」

こてん。
もちろん冗談なので、くすくすっと後から笑い出すけれど。


「優しい、とはそふ言う事ではないでしょうか。
 わたくしは、そう思いますわ。


 何があったか…」

きっと相手としては大したことではなく。そして自分にとっては大した事。
だから、どう話そうか迷って。

「…魔王、と名乗っておりました。
 それが、学び舎を我が物顔で…

 神聖な学び舎に、あのように強い魔、がいるなどと。
 思いもせず……」

とっさに身構え、そして、気に充てられた、と。
そのよふな感じ、らしい。

「…りんっち様、いえ…倫太郎様は退魔士様なのですね。
 たくましく、強く……
 
 とても、素敵な方。
 退魔士の方、私、とても憧れます。

 退魔士を支えるのが、わたくしめの”お役目”ですので」

水仙 倫太郎 >  
「あり?学校とか行ったことねぇの?
 そういうのもあるとは思うけど……親御さんからとか?」

教育方針は人の家庭環境それぞれ。
なんだかふわふわしてるな、とは思っていたけど、
もしかして、自分が思うよりもお嬢様なのかも。

「ふはっ、俺に似合わねぇ~~~!」

思わず吹き出してしまった。

「そうか?人として、ツレに恥じねェ生き方をしてるだけだぜ?
 つか、ま、魔王。魔王な……なんか急に怪異とかのレベルじゃなくなったな……」

魔王って言葉通りの魔王なのか。
急に話のスケールがデカくなったぞ。
確かに神様とかそういうのが普通にいる世界だけど。
スケールのデカさに呆気を取られた。
いや、本当に悪い方の魔王だったら問題になってるはずだ。
なっていない、ということは多分……。

「もしかして、その魔王って生徒とかそういうの?」

の、可能性はある。
今どきそういうのも珍しくはない。

「倫太郎でいいよ、"サマ"とか畏まらなくてもいいぜ。
 対魔士……ってほどでもねぇけどな。そういうたまっちは、なんかそういう家系?」

支えるのが役目ときたか。
確かに雰囲気はそれっぽい。不思議そうに訪ねた。

蚕比古 玉繭 > 「これまではお付きの者が指南をしておりました」

だから、集団での学び事なんて初めてで。
まだ授業は受けてないから、楽しみだそう。

「そこまではわかりませんが…」

あれが生徒か、などはわかりようはない。
でも、気軽に学び舎に入っていこうとはしていたのは間違いなく。

「生徒、だとすれば。
 あまり良い事には思いません。

 学び舎とは…神聖なものですから」

少なくとも乙女にとっては、許すまじ暴挙に等しかった。

「そんな、呼び捨てなどと…
 先ほど倫太郎様には伴侶の方がいるとおっしゃってたではありませんか。

 恥ずかしいですわ」

ぽっ、と。顔を赤らめた。

水仙 倫太郎 >  
「おつきのもの。え、ガチお嬢様???」

なんか凄い高貴(?)な言葉が飛んできたぞ。
おつきの人がいるの、この人の家。じゃあガチか?
言われると美人だしお嬢様っぽい。此れがリアル箱入り娘か。
おめめも思わずパチクリしちゃうよ。

「まぁでもよぉ、問題アリって感じなら、そもそも何か対処されてるぜ?
 普通に校舎いたんなら、多分生徒か教師だぜ?今どき珍しくねーよ」

今や神や魔王は、所謂人種のニュアンスまで成り下がった。
特にこの時代の最先端たる常世島では、余り珍しいものじゃない。
自分の神社を住処に学校通いとかする(やつ)だっているほどだ。
だったら、魔王なんて存在がいても不思議じゃない。
校舎を闊歩できる"程度"なら、間違いなく関係者だ。

「つーか、普通に校舎にいるだけだろ?
 そんなにこう、悪い奴だったのか?なんかされたか?」

倫太郎にとって、存在が善悪とはならない。
問題は在り方だ。存在一つで邪悪という考えに、至るはずもない。

「お、おぉ……いるけども別に普通だって。
 友人(ダチ)なら呼び捨てじゃねぇと、むず痒いって」

何だこの物珍しい反応。本当にお嬢様じゃん。
なんかドラマとかで見たことある反応だ。ちょっとビックリ。
若干呆れつつも軽く手のひら振っておいて好きにしろってしておいた。

蚕比古 玉繭 > 「そう大したものでは。
 退魔に属した、神聖を備える羽衣を編む家系の生まれ、というだけですわ」

なんて、ふふふと笑い。

「ありふれた……珍しくないもの。
 ならばこそ、由々しき事態です」

乙女の価値観、ならでは。

「悪いかはわかりません。
 ですが、退魔とは魔を祓うという意。
 この常世島にはそのようなものがいる、とは聞き及んでいましたが……
 
 本来相容れるものではありませんので。

 そのために私のような、退魔に属するものがおります故。

 それに…
 こうして気をやってしまうものも出てしまうかもしれません」

しかるべき場所にいるべきだ、というような論調。
少々、過激なのだ。彼女の思想は。
特にこの常世島においては。

「…?
 ご友人であるなら、なおさら必要かと思いますが。」

友人としていてもらえるというのは、相手の厚意あっての事なので。
つくづく世間と離れた価値観なのかもしれない。

「…しかし、本当に不思議な地、なのですね」

魔王が闊歩し、怪異の遭遇率も異様に高い。
この間も、名も知れぬ怪異と遭遇したばかりというのに。

「この地が普通、とは違うというのは、よくわかってしまいました。
 わたくしも世間とは…少し外れたところにいましたが。

 倫太郎様はどのようなところにおられたのです?
 最近こちらにいらしたとお聞きしましたが」

水仙 倫太郎 >  
「羽衣?機屋さん的な?」

へぇ、服を作る。
今でいうと退魔用衣服とかそういうのだろうか。
成る程、そういう意味で仕える、と。
だから品性とか求められるのかな。気品とか。
物珍しさにじー、とその白い姿を見つめていた。

「由々しき自体……かはわかんねぇけどよ。
 祭祀局とか、風紀委員だっているんだぜ?
 個人の考えはわかんねぇけど、なんかこう、
 瘴気?悪い気?みてーなのも出したくて出してるワケじゃないかもだしな」

能力の制御が出来ないパターンだってある。
寧ろ、そういうのをするための学び舎でもある。
"相容れるものではない"。断言するとまで来るとは、
多分体質的にそこまでそういう属性の人物が苦手なのかもしれない。
んー、と軽く唸り声を上げればヘラりと笑う。

「相容れるってのが何処まで……ってのはあるけどよ。
 人間だって合う合わねぇだってあるんだし、いいんじゃね?
 けどよ、ソイツだってマジで悪いことしてなきゃ、生きてるだけだろ?
 だったら、認めるだけでもいいと思うぜ。そういう奴もいる、位だよ」

「気が合う合わない以前に、体質でって奴もいるし、
 たまっちの考えまではわかんねぇけど、そういうとこもあんじゃね?」

少なくともその魔王とやらに悪意があったかわからない。
片方の話を聞いてソイツが悪い、とまでは言えない。
けど、問題を起こしていないということはそういうものだと思う。
結局、怪異とか魔王とかも、名称程度にしか過ぎない。
ただ生きてるだけならそれでもいい。倫太郎は、そういう男だ。
ある意味で底抜けのお人好し。だから彼女のことだって、魔王だって否定しない。
二人の存在を肯定したうえで、生きやすい提案をするだけだ。

「いいんだよ。そりゃ、親しき仲にもって言うけどよ。
 ダチっていうなら、遠慮すんな。今日から俺等もダチだぜ」

ぐ、とサムズアップ。

「んまぁ、この島がめっちゃそう言うの多いかもな。
 島の外でもまぁまぁいるぜ?まぁ、地域とかにも寄るらしいけどよ」

「俺?フツーの田舎。マジで飯屋以外なんもなかったわ。
 なんか異邦人とかはたまにいたかも?けど、そんぐらい」

至って普通のド田舎。
娯楽と呼べるものも少ないような場所だった。

蚕比古 玉繭 > 「倫太郎様を困らせるつもりではありませんの。
 すみません、こんな話をしてしまって」

そう言って、じぃ…と羽織りを見られれば。

「ふふ、気になりますか?
 この羽衣もわたくしの”糸”で作り上げたものです。

 私の家系では、代々”異業”として…魂を糸にし紡ぐことができまして」

えへん、と少し誇らしげに戻って。試しに少し、毛糸のような糸を出して…簡単に、あやとりなど。

しようとしたところで、体が言うことを聞かずにふらふらとし始めた。

「私も祭祀局の人間、となっておりますので、尽力しておるのはわかっております。

 だからこそ、この地のように”境界線の薄い”地は、大変だと。

 …倫太郎様も、大切な想い人を歯牙にかけられたくはないでしょう?」

横になったからだ、少し持ち上げて。
貴方の瞳、紫の瞳がじぃ、っと見つめた。

「そういう危険を孕んだ地、ですので。
 私たちは守らねばならぬ、のですよ。

 無辜の民の為にも」

水仙 倫太郎 >  
「別に困っちゃいねぇよ、考え方は人それぞれだろ?
 ただ、その方が気ィ張らずに済むかもなって話だよ」

係合とは違う。ちょっと考えを変えるだけでいい。
狭い土地で生まれたが、世界が広いことは知っている。
だから、広い世界と付き合うために広い考えを持ったほうが、
単純に生きやすいだけの話。助言めいたものだ。

「そりゃな、そのために鍛えてるわけだし、
 やべー場所があるってのもわかってるけど……」

経験をしたわけではない。
余り実感がわかないのも事実だ。
ほんのちょっと困り顔で頬を掻いた。

「だったら尚の事、ちょっとはその中でも区別くらい持ってもいい気はするけどなぁ」

なんだか肩が重くなりそうな生き方だ。
排他的。いや、相手が本当に邪悪だったらわかるけど、
あんまり片方だけに入れ込みすぎるのもよくない。
とは言え、恋人と比較されると弱い部分もある。
アンニュイな感じになってきたら、"糸"という単語に眉を顰める。

「わたくしの、"糸"……?」

視線がその真っ白な髪の毛に移った。
そうだね、糸っぽいのそこしかないね。

「実はカツラ……?」

Q.彼はアホですか?
A.アホです。

蚕比古 玉繭 > 「もうっ」

ぷんすか。地毛です。

「おなごに失礼ですわ、そんなわけないですのにっ」

ぷんぷん。

「私の糸は魂から切り離されてできますの。
 それには強い神聖も。

 邪なるものを弾く力、故に退魔の衣となりますの。

 …そうですわ、倫太郎様にも」

手をこちらに、と手繰り寄せて、その手首にそっと、今作った毛糸を編んだ腕輪をつけて。

「多少の怪でしたら弾いてくれます。
 ふふ…こんな贈り物、想い人様に嫉妬されてしまうかも」

くす、と悪戯っぽく笑って。

水仙 倫太郎 >  
「わ、悪い悪い!自分の糸っつーからつい……」

じゃあ何処から出してるんだろう。もしや、ケツ……?
流石に?まさか?とは思ったが口には出さなかった。
彼女出来てなかったらもっとノンデリだったかもしれない。
それはそれとして失礼には反省。たはは、と後頭部を掻いた。

「魂から切り離されって……おいおい、大丈夫かそれ?
 文字通り身を削ってんだろ?なんか、いい感じはしねぇけど……って、お、おい!?」

実際に聞いてみれば思ったよりも重大そうだ。
一応退魔師の端くれ。魂の重要度とか、
そういうものの理解はしているつもりだ。
つまり、文字通り身を削っている。
同時に、神聖な魂だからこ邪悪を弾く衣に成り得る。
理屈は理解するが、玉繭のことを考えると、顔をしかめてしまう。
純粋な心配だ。だから、手首に付けられた腕輪にも顔をしかめた。

「気持ちはありがてぇけど、気軽にやるもんじゃねぇだろ?
 たまっち、自分の体の心配しろよ。ただでさえ今、弱ってんじゃねぇか」

「……腕輪(コレ)(もと)に戻したりは……?」

勿論気に入らない訳じゃない。
そんな事より、玉繭に元気でいてほしいだけなのだ。

蚕比古 玉繭 > 「このくらいでしたら、少し休めば回復しますわ」

だって、布にするくらいの糸を出さなければならないもの。
腕輪一つなんて自己回復する。しないと生きることもできないのだから。

「ここまで運んでくださった倫太郎様にお礼がしたいのです。
 それとも、迷惑でしょうか…?」

水仙 倫太郎 >  
「そうか……いや、迷惑なんかじぇねぇよ、
 せっかく編んでくれたならよ。大事にする」

戻せないならしょうがないし、
そう言われたら受け取るのが男だ。
ふ、と口元に笑みを浮かべたらぐ、と見せるように腕を軽く上げた。

「けど、次から一言言ってくれよ?
 嬉しいけど、俺はたまっちの体のが心配だよ。
 マジで無茶すんなよ?次出会うのが葬式とか、俺は嫌だぜ」

本当に儚い雰囲気が、本当になってしまったら、
流石にちょっと気が気でない。
今でこそ冗談交じりに言ったけど、実現は勘弁だ。

「さて、と……そろそろ部室にいかねぇとな。
 たまっちが寝付くまで見てもいいけど、どうするよ?」

蚕比古 玉繭 > 「では、長生きせねばいけませんわね」

くす、と笑って。
魂の糸がとても意味の強い、少し間違えれば命にかかわるものだというのは自分でもわかっている。
だから貴方の反応の意味も、分からない訳ではなくて。

「お付きの者がいたら叱られてますもの」

なんて、悪戯っぽく。

だけど寝付くまでいる、と言われれば、ぽっと顔を赤らめて。

「殿方に寝顔を見られるのは、その」

恥じらうように。

「はしたないですもの」

そう言って、布団にぱさりと埋もれたとか。

水仙 倫太郎 >  
「おう、是非ともしてくれ。……?」

一体何に叱られるんだ。
不思議そうに首を傾げるも恥じらい仕草には、
ちょっとずっこけそうになった。今更かよ。

「寝顔くらい減るもんじゃねぇけどなぁ、まぁいいや。
 一応ナースコールってワケじゃねぇけど、それ。押すとセンセー来てくれるから」

「後これ、生徒手帳(オモイカネ)の俺のIDな。
 生徒なら持ってんだろ?なんかあったら連絡くれ」

やれやれ、困ったお嬢さんだ。
とはいえ、この調子なら多分大丈夫だろう。
一応、もしものための教えと連絡先だけ教えておこう。
急事の時、仮に先生が来れなくても自分が動けるようにするのだ。
席を立てば、軽く伸び。

「んじゃ、俺はそろそろ行くわ。
 じゃあな、たまっち。ちゃんと元気になれよ~?」

へへ、と笑顔を浮かべてそのまま保健室を出ていくであろう。

蚕比古 玉繭 > 「ええ、また。
 お会いしてくださいまし、倫太郎様」

くすっ、とほほ笑み、言われた通りにして。

「不思議なからくりですのね…?」

ナースコールのボタンを見れば、不思議そうにころころ、手の中で様子を眺めたりして。

「本日は本当にありがとうございました。
 倫太郎様も、お気をつけて」

貴方を、見送るかな。

ご案内:「第二教室棟 廊下」から水仙 倫太郎さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 廊下」から蚕比古 玉繭さんが去りました。