2024/07/12 のログ
柊庵 >  
「そうかな?どんな理由でも、暴力は肯定できないけどね。
 ちょっとの怪我でも、心配する人はいるんじゃないかな。キミ、人望はありそーだし。」

それこそ案外モテそうな雰囲気は感じている。
だったら怪我すれば相応に誰かは心配しそう。
何よりも喧嘩に何処か肯定的なのは難色を示した。

「……喧嘩でコミュニケーション、ね。
 私にはよくわからないけど、それでわかりあえるようなもの?」

当然だが、そんな暴力的な行動を肯定は出来ない。
その行いは須らく"悪"というべきだ。但し、頭ごなし否定だってしない。
眉を顰めて、どことなく気難しい表情。それは果たして、本当にコミュニケーションなのだろうか。

「それがいないと無いみたい。
 "扱えない"と"暴走"じゃあ、ぜんぜん違うしね。」

「ふぅん、ロックとかそういうのも興味なかったり?」

武知 一実 >  
「そうかい、別に肯定されたいって訳じゃねえから構わねえよ。自分にはそれしかないって奴らは確かに居て、そいつらに付き合ってるだけだしな。
 生憎。……呆れられたりはするけどな。まあ部活で転んで擦りむいたとか、骨折ったとかそういうのと同じだろ」

怪我をするという面において言えば喧嘩も部活も大差ない。
風紀なんかは委員会活動でも怪我をする事だってあるし、あまつさえ命を落とす事だってあると聞く。
それらと何の違いがあるんだろうか、と思わなくもない。

「分かり合える時もあれば、そうじゃねえ時もある。
 普通に会話したって同じだろ? ただ方法が原始的ってだけだ」

中にはどうしようのない連中だって居るが、そういう奴らが屯するところには近づかない様にはしてる。
あくまで一生徒として活動する範囲で売られる喧嘩を買ってるだけだからな。

「そうなのか。
 まあ、異能なんて絶対に使わないといけないもんでもねえし、使わないで居られるならそれに越した事ぁ無えんじゃねえか?」

オレだって極力使わないで居られるならそうしたい。
が、感情と関わって来るとなるとそうも言ってられないのが御し難いところだ。

「興味が無いというか、何も知らねえっつぅ方が正確だな」

柊庵 >  
「部活もよるけど、スポーツとかなら流石に違うよ。
 ルールがあるのと、何でもありじゃ比較しようがないでしょ。」

「いないとは言わないけど、わざとボールをぶつけたり、観客に暴力振るったりはないでしょ?」

言いたいことはわからなくもないが、則ったルールの中と外では全然違う。
どちらも怪我をする可能性を秘めてはいるが、その形は違う。
端的に言えば悪意の差。無差別に振るわれる可能性があるものとは流石に比較しきれない。
それは暴論だよ、と少し唇を尖らせた。

「まぁ、そういう人種がいることはわかるよ。私も知ってるし。
 ……なんていうか、お人好しだね。キミ。わざわざ体張って付き合っちゃうんだもの。」

それこそ放っておけばいい、関わる必要のない人種だ。
なのにわざわざ、自分から身を削っている。お人好しだ。

「ちょっと、心配になっちゃうな。」

そんな不器用なやり方ばかりしてたら、何時か身が持たないんじゃないか、って。

「それは私も同意かな。
 使わないに越したことはないけど、いざ制御できないと周りに迷惑かけちゃうもん。」

だから制御できる位にはならなきゃいけない。
小さい島とは言え、社会性がある場所だ。他人に迷惑をかけるだけでは、生きていけないのだ。
音楽を知らないという彼の言葉に目をぱちくりした後、トントン、とケースを叩いた。

「素人ではあるけど、ちょっと聞いてみる?」

武知 一実 >  
「ルールなんて第三者が審判するためにあるもんだろ。
 じゃあルールの無い練習中の怪我は許されねえのか?そんな事無いだろ」

喧嘩だって別に何でもありだからって無法ってわけじゃねえんだが、まあ理解されたい訳でもない。
オレ自身周囲が良い目で見てないのを承知の上で喧嘩してるわけだしな。むしろ、だからこそ喧嘩してる節もある。
別にそうしなきゃいけないっていう義務感も無え。ただ、オレが出来ることをやってるだけに過ぎねえし。

「まあ、オレも同類ってことなんじゃねえか。
 ああだこうだ口で言うよりは、殴り合った方がまだ相手が見れると思うし」

言葉では良い様に言っても、腹ン中じゃ何考えてるか分かったもんじゃねえ奴らなんてごまんといる。
だったらまだ殴り合う方がマシだ。拳なら加減は出来ても嘘は吐けねえ。

「心配されたとこでオレにゃ何の得も無えしな」

頭を掻きながら正直に思ったところを口にする。
心配……よくされる事はあるが、心なんて配られたところで何かの足しになった事もねえし。

「なら迷惑掛からねえところで訓練するか、迷惑掛かっても問題ねえとこで訓練するかしかねえだろ。
 まあ、そういう意味でもオレにとっちゃ喧嘩の場が丁度良いんだけどな」

オレの場合は後者、迷惑を掛けたところで屁にもならねえのが喧嘩だ。
何でもあり、ってのは不可抗力さえ容認してくれる事だってある。

「聞く機会が授業くらいでしかねえんだよ……今、ここで?
 アンタが演奏すのか?……、……まあ、断る理由は無いけどよ」

柊庵 >  
「…………。」

視線を反らして思案顔。なんていうか、凄い思考だ。
もしかして、喧嘩する人間は皆こういう感じなのかなって思ってしまう。

「……なんていうか、野生児みたいな考え方だね。」

素直な感想、忌憚のないなんとやら。
目をパチクリさせながら小首をかしげた。

「キミがどういう経緯で入学したかは知らないけど、私達は社会の中で暮らしてるんだよ。
 そりゃそうだよ。第三者が審判って言うけど、そういうの決めるための決まり事、秩序って奴だよ。」

「怪我自体は許す許さないじゃなくて、出来ることの経緯が問題だよ。
 学校の中でキミが"弁えている"事は、そっくり外のまま学校の外、ひいては島の外でも同じなんだよ。」

「それとも、学校の中じゃキミは問答無用で殴り合いでもするの?
 そういう人種って言うなら、もう私から言えることはなにもないけどさ。」

人が生きるうえで必要だから社会が生まれ、法律という秩序が生まれた。
別にこの校内に限った話じゃない。凡そ、此の島の中外がそういうものなのだ。
無頼者だけの世界ならその理屈は通るけど、此の学園では通らない。
怪我そのものではなく、それがおきた原因が問題だ。無法の暴力は、ただの悪に過ぎない。

「損得の問題でもないんだけどね、心配も。
 ま、とりあえず難しい話はこの辺にしておこうか。」

思ったよりも凝り固まった考えをお持ちのようだが、今は根気よく付き合う気はない。
"そんな事よりも"とケースを開ければ出てくるのはアコースティックギター。
ボルテクスサウンド社のルーニアンシリーズ。赤色の鮮やかに染まったボディが特徴的だ。
そのままギターを取り出せば、断る理由の無い彼の了承も取らずに弾き始める。

「────♪──♪」

揺れる弦が奏でる音は、その派手なボディとは裏腹にシックでウィットに含んだ落ち着きだ。
ゆったりとした曲調はそれこそ目立ちはしないが落ち着いたメロディライン。
音が表現するのは、そんな無頼者を慰めるようなブルースだ。
歌詞のない高音(ソプラノ)のコーラスは、そんな彼等送る鎮魂のメッセージなのか。
音楽を聞いたこと無い彼に響くかはわからない。
ただ、先程までの一瞬の合間にでも庵の顔は"切り替わっている"。
真剣に、音と向き合い、聞くものに乗せたメロディが届くように、響くように。
自らの世界を、表現している。果たして彼の鼓膜に、心にはどう響くだろうか……?

武知 一実 >  
「オレからすりゃ、『規則だから』『ルールだから』『決まってるから』っつって、自分を律するならともかく他の存在まで従わせようとするのも、暴力と変わらんと思うけどな。」

手段が異なるだけで、目的は同じものなんじゃねえのか?
社会の中で生きるために必要、とは言うがそれは本当に必要な物なのか?
そもそも、その秩序を定めた奴は間違っちゃいないと言いきれる根拠は何なんだ?
疑問は絶えず湧いて来るが、まあそんな事を今この場で問答したところで結果なんて出て来る筈も無えし。

「――まあ、それで幸せだ、満足だって言うんなら大いに結構なんじゃねえかとは思うが。
 それがどうにも息苦しくて、死んでるも同然だと思ってる奴らとか、そもそも秩序側から一方的に見捨てられた奴には生き地獄だってこともあらぁなってだけの話だ」

でなきゃはみ出し者なんて居る筈がねえんだ。
そういう奴らを少しでも楽にしてやる事すら、秩序ってやつは許さねえんだろうか。
適者生存、そっちの方がよっぽど野生じみてるとすら思う。

「心配でも何でも好きにすりゃあ良い、しろともするなともオレぁ言わねえし。
 ただ、心配をされたところで今オレに出来る事ぁ無えってだけよ」

別に何かを否定する気もねえし、肯定して貰いてえわけでもねえ。
ただ、何にせよ御大層なお題目を引っ張り出して来て、本当に相手が見えてんのか?って疑問に思う、それだけだ。
――やっぱりきっと答えなんて出て来ねえと思うが。それでもだ。

「ん―――」

ギターを取り出したのを見て、まあ余計な事は考えるのをやめておくかと思考を振り払う。
初めて聴く曲調?旋律?まあ、何かそういう感じの音は落ち着いてるというか、なんか暗いというか……
ああ、やっぱりオレって音楽ってのに疎いんだなと実感させられた。
まあ、不快とか耳障りとか、そういう事では無いから静かに聞き届けるつもりでいる。

柊庵 >  
曲の終わりこそ、呆気ないものだ。
ピン、と張った弦を揺らしてそれで終わり。
目を開いて相手を見てみると、今一ピンと来ていないような雰囲気を感じる。
これにはちょっと、思わず苦笑だ。

「ごめん、私の力量不足だね。少しは何も知らないキミに響いてくれればいいと思ったんだけど……。」

頑張っては見たけどやはり素人の音楽だ。ちょっと無念だけど、仕方ない。
音楽に疎いのが問題じゃない。そんな彼の心を動かせなかった、自分の問題だ。

「もし次演奏する機会があれば、少しは感動させられればいいんだけど……。」

それこそ、そんなはみ出しものと言うアナタに届くような音色が出せればいい。
ギターをいそいそとしまえばケースを抱えて立ち上がる。

「まぁ、キミの考えも理解できるよ。全部を肯定出来ないけどね。
 難しいことはおいといて、また話してくれたり、曲に付き合ってくれたら嬉しい、かな。」

「私は二年生の柊庵(ひいらぎいおり)。……そろそろ降りそうだし、先に帰るよ。キミも気をつけてね?」

それだけ言えばひらりと手を振って、その場を去っていくのだろう。

ご案内:「第三教室棟 屋上」から柊庵さんが去りました。
武知 一実 >  
曲がどう終わるのか皆目見当もつかなかったが、思ったよりも早く音が途絶えた。多分終わったんだろう。
弾き終えたらしい奏者が目を開ければ、オレの反応が期待していた物とは違ったのか微かに苦笑を浮かべた。
確かに、オレが抱いていた感想は、ギターはこうやって弾くのか、という関心であって感動とかとは違ったけれど。

「うぅ……悪い。正直、こんな音なんだなあ、くらいにしか……」

どういった状態が、『響いている』状態なのかが分からん。
もし次があるのなら、それまでに調べておく……くらいはしておくべきかもしれねえ。
ギターを片付けるのを横で眺めながら、この後図書館でも寄ってから帰ろうかと思案する。

「ん、そうかい。 別に理解してくれとも、肯定してくれとも思っちゃいねえんだ、気にしなくて良いんだけどよ。
 ……ああ、別に他愛ねえ話とかなら歓迎だ、また聴けんならもうちょっと聴き方を覚えとく」

普段から必要以上に感情の起伏を抑えてるせいか、感性まで平たくなっている気がする。
余計に年相応に見られなくなるじゃねえか、とさすがにこれは反省。

「――庵、か。 ああ、気を付けて帰れよ」

立ち去る庵を見送って、空を見上げれば確かに降り出しそうな雲が立ち込めている。
オレも早々に校舎に引っ込むとするか――

ご案内:「第三教室棟 屋上」から武知 一実さんが去りました。