2024/08/20 のログ
Dr.イーリス > 「蒼さんも今回の件で動いているのですね。とても頼りになります!」

蒼さんが主犯と言っても、言ってしまえば風紀委員のお仕事をこなしただけ。
イーリスは通行止めをくらった被害者だけど、加害者というか原因と呼べるのは暴動を起こしている方々。
それはそれとして、蒼さんが動いた事で通行止めになっているのは確かで、イーリスはそれに気づかない。

「……必要とされなくなるのは、残虐な事ですね。進歩の影で、いらなくなっていくものもあります。車が発展した事により、馬車が趣向品でしかなくなったように……。しかし、振り返っていては先には進めません」

神様も旧時代の技術も、必要とされなければなくなっていく。
残虐と言いながらも、イーリスはそれ等を振り返らず技術発展を望んでいる。
つまりは、祈ることが減ったのは悪い事だけじゃない、という言葉の肯定である。

「ありがとうございます、蒼さん!」

蒼さんの激励に、イーリスはぱぁっと明るい表情をした。
義母が帰ってくるまで、頑張りたい。頑張ったら、願いが叶うのかな……。

「ゴミを漁る日々でした。私、元々はスラムの何の力もない子供でした。捨てられたジャンク品を解体して、構造を知り、それを参考にして真似てつくってみても全然うまくいかなくて……。色んなジャンク品を解体して、何度も組み立て直して、そうしてようやくまともに動くメカが出来上がりました。何度も、組み立てなおして新しいものを造るなんて不可能だと思いました。しかし、最初のそのメカが完成した時、私は諦めなくてよかったと思ったんです」

かつての、とても弱かった頃の自分を思い出して目を細めた。

「そうして少しずつ、次に次にとステップアップしてきました。その先にあるもの、それは何なのか見えないけれど、知りたいと思うではないですか。私の進んだ先にあるものが魅力的なものであるようにと、願ってしまうではないですか」

イーリスの瞳は純真に輝かせる。
昔にイーリスの心を躍らせ、そして少し前の不良時代には忘れかけていた心情だった。
蒼さんの言う通り、不良少女だった頃のイーリスは明日生きる事に必死で、だんだんと未来を諦観していた。
だけど、イーリスに手を差しのべてくれる人達がいて、イーリスの曇ってしまった瞳に光を取り戻してくれた人達がいた。

「彦星一号、どこいったのでしょう。どこかに仕舞っていると思います。二号はですね、織姫と合わせてあげようと思い、お星様にしたのです! そうですね、ロケットつけました! もう凄く遠くまで飛ぶロケットです! 今頃、織姫と会っているでしょうか。織姫一号がワキからビームが出るなんて、ありませんよ! 織姫一号は純粋に彦星三号を愛するとても良い子です! でも、蒼さんが彦星三号を消した時は少しやばかったかもしれません……。悲しみながらも蒼さんに殺意向けてました」

楽しそうに、織姫彦星メカについて語っていた。

奥空 蒼 > 「ありがとう、答えてくれて。」

くるり、と指を回した。
そして、窓の外へ向けた。

「頑張るキミに、」
「諦めずに立ち上がるイーリスに、」
「先へと歩み続ける眩い姿に、」
破壊神(わたし)の魔法を魅せよう。」
「七夕に似つかわしい、演出をね。」
「お礼というには烏滸がましい、ただの自己顕示欲だけど、…付き合って?」

蒼色の魔力が音を立てて集っていく。
さあ、御覧よとイーリスと、今日やってきた織姫と彦星へ眼差しを向けると。

「この先、要らなくなるかもしれない」
「魅力的だと思われないかもしれない」
「忘れられていくだけ、かもしれない」
「破壊神なんてって思うかもしれない」

残虐だけど、必要なこと―――そういわれると、私は、それを否定できなかった。
だって。
それだけ時代が進んだんだから。
でもね、本当は―――忘れられたくなんかない。

「でも」

「キミには見ておいてほしいんだ」

「さあ―――ッ!願い事、三回言ってみたら?」

きらり、と窓の外の空、青色魔力が満ちて…
流星―――青く燃え上がる星の雨が幾多も降り注ぐ。
それは、けれど―――何の被害ももたらさずに、
空の中で燃えて、消えて、顕れて―――それを繰り返した。
本来は絶大な破壊力を持つ魔法を、演出にのみ使った。


「ちょっとは殺意もマシになったかな。」
「まっ、織姫一号に殺される気はしないけどねーっ」

けらけら笑ってる。

「全く…メカの事になるとほんと、楽しそうに、一生懸命話してくれるんだからさー」
「一つ言うとなんでロケット付けたの?なんで飛んで逝って戻ってこないのわからなかったの?
キミはあれかね。ロマンを重視して自爆装置とレーザーキャノンをとりあえず取り付けられないか考えるタイプかね?
―――そういうの好きよ。」

「さてと。」

「休憩終わりね。」

一区切り、おいて。

「七夕と、星の魔法について説明するからさ、少し、手伝ってよ?」
「なあに、真面目に授業受けろなんて言わないよ。」

「私も―――」

奥空 蒼 >  


    「真面目にやらないからねッ!」


 

Dr.イーリス > 付き合って、という言葉にイーリスは微笑みながら、こくんと頷いた。

しかし、続く蒼さんの言葉には、イーリスは小さく首を横に振ってしまう。
必要になんてならなくならない……。
蒼さんは、素敵な人で、イーリスの呪いも破壊してくれた優しい人……。

「……いらなくなんてなりません。忘れなんてしません……。蒼さん、人は、好奇心や向上心の他にも、情で満ちていますからね」

そう口にして、イーリスは目を細めた。
好奇心だけで発展を追い求めても、ただ冷たい機械が出来るだけだ。
人情を持って、発展をしていければ、とイーリスは願っている。

技術発展で後ろを振り返らない事と、人情を忘れてただ冷たい心で発展していく事は違う。

窓の外を眺める。
そこに見えるのは流星。
その光景に、イーリスは目を見開きつつも満面の笑顔を見せた。
イーリスはぎゅっと両手を組んで瞳を閉じる。

「お義母さんに会いたいです……。お義母さんに会いたいです……! お義母さんに会いたいです!!」

十年前のあの日、義母がいなくなってしばらくした後に夜空で輝く流星。それに願った事とイーリスは同じ事を願う。
そうしてしばらく願い続けるイーリスの瞳に、一滴の涙が零れて頬を伝う。

「織姫はお空に浮かぶ大宇宙にいて、天の川が二人を阻んでいるのです! 彦星を大宇宙の織姫に向かって飛ばしたので、むしろ戻ってこない事が成功ですよ!」

お空の星々にいる織姫に向かって飛ばした彦星二号だ。
戻ってくる事なんて全く想定していなかった。

「蒼さん、ありがとうございます」

ロマンを理解してくれた蒼さんに、にこっと笑みを浮かべた。

「えええぇ!? 先生としては真面目な方、なんてさっきは思ってたんですけど!?」

イーリスの叫びが、教室に響き渡るのだった。

あまり授業が好きではなかったイーリスが、なんだかんだいってこうして授業に参加している。
なんだかんだで授業を楽しんでいるイーリス。

ふと、蒼先生は、イーリスが授業を楽しめるように気を回してくれたのかな、なんて思うのであった。

ご案内:「第三教室棟 教室」からDr.イーリスさんが去りました。
奥空 蒼 > 「――叶うといいね。その願い。
私は星神じゃないけれど……確かに、破壊神(わたし)が聞いたから。」

授業楽しむ彼女の横、蒼色は小さく呟いた。

ご案内:「第三教室棟 教室」から奥空 蒼さんが去りました。