2025/01/26 のログ
ご案内:「神技武練塾-神技堂-」に霞流 周さんが現れました。
霞流 周 > 少女がその場を訪れる事になったのは、ただの気紛れの延長の結果であっただろう。
休日の学園…偶然提出書類があり訪れた帰り。人気も少ないなら偶には学園内を散策してみようかと。
そのまま、ふらりふらりと彷徨うようにあちこち歩き回っていたら…辿り着いたのがここだ。

(…別に…そういうつもりは…無かったんだけど…。)

現在、その部室棟の最奥に座する【神技堂】という名の古い歴史ある武道場の中。
片隅にて、きちんと正座をしつつ刀を膝の上に置いてぼんやり光の無い銀瞳が稽古風景を眺めている。
少女が訪れた際、休日にも関わらず登校していた一部の生徒がここで修練をしていたようで。
偶々、中を覗き込んでみたら入部希望者と間違われ…咄嗟に見学者と切り返したのが駄目だった。

「……流石に…直ぐに帰るのも…気まずい…し…。」

結果、かれこれ30分ほど、隅っこで大人しく個々の鍛錬や実戦形式の稽古を眺めていた。

霞流 周 > 【神技武練塾】――最強を目指す武人や武芸者達が集う場であり部活らしい。
ちらり、と稽古風景から場内をぼんやりとした視線で見渡す。

(――『一心一刀』…『挑戦なくして勝利なし』…『武技を極め、人としての成長を遂げる』…。)

そんな事が掛かれている達筆な張り紙で目が留まる。…いわゆる部の理念というものだろうか。
ここの人達の失礼になると思い、少女は口には絶対に出さないが…どれも彼女にはピンと来ない理念。

―—何よりも、一番ピンと来ないのが…。

(――【最強】を目指す…というのが…私には…いまいち…分からない…なぁ…。)

最強の定義とは何だろうか?単純に一番強い人?それとも別の意味合い?分からない。

霞流 周 > 【最強】というものがよく分からない。故に少女はそんなものを目指してはいない。
ただ、生き抜く為に刃を磨いて実戦の中で何度も死に掛けた末に現在がある。
―—だから、そもそもの話…少女は、今、部員の人達がしているような鍛錬をした事がただの一度も無い

師は死地と混沌の街、振るう刀はありふれた無銘の数打ち。
武芸者が持つ信念も追い求める理想も目標も無い。

(…見ているだけで…新鮮では…あるけど…ね…。)

自分が今まで全くやってこなかった光景がそこに広がっているから。
それを見て、しかしだから鍛錬を自分もしてみよう…と、思い立つことも無く。

霞流 周 > 虚ろに熱は宿らない。彼ら、彼女らの動きは参考にはなるのだけれど。
参考程度で、じゃあ実際に打ち合ってみたいか?と聞かれたら答えは否。
なので、流れのままに見学する事になっているが、恐らくこれが最初で最後だろう。

(…【最強】を…追い求める人が…ここに集う訳…だし…。)

その最強にさして興味が無くピンと来ても居ない【剣士】――ではない【刃物遣い】。
そんな異分子が紛れ込んでも、不和と軋轢しか生まない…互いの為にならない。
何人か、少女が相応の使い手であると判断して声を掛けてきたが…そこは丁寧に断っている。

だから、ずっと隅っこで正座したまま殆ど微動だにせずに稽古風景などを眺めているだけ。

(…そう…別に…刀や剣を…振るうからといって…全員が全員…【剣士】である…訳じゃ…ないし…ね。)

霞流 周 > 生きる為に、我武者羅に…そして淡々と、他を一切顧みず…研ぎ澄ませた先に。
己を殺してまで突き詰めた【無私透徹】の剣。この歴史ある神聖な場には相応しくない。

「……あの人達は…一つしかない…【最強】の座を…求めてる…のかな…?」

それとも、個々の理想と目標の果てにある己が思う【最強】を目指しているのだろうか。
どのみち、【最強】の座はただ一つ――勝者は一人、他は須らく『負け犬』だ。

(…なんて…考えちゃ…いけない事だね…。)

小さく頭を周囲に気付かれないように振る。慣れていない場に居るからか、少しネガティブな思考に寄っている。

霞流 周 > そもそも、二級学生がこういう所に入るのは論外だろう。
ぼちぼち、見るものは見れたので近くに居た部員に声を掛ける。

「…あの、すいません…そろそろ…お暇します……見学出来て…良かったです…。」

本当に?良かったのだろうか?ただ、虚ろな自分と彼らの決定的な違いを再確認しただけにも思えて。

ここの理念に照らし合わせるならば。
振るう刃に信念も心も無く、【最強】に挑戦する気も無く、武芸を極を求めない自分は。

嗚呼…剣士の風上にも置けない奴だろう…と。

それは己の中で押し殺し、小さく部員達に無表情に会釈を一つしてからその場を辞する。
その去り際は、まるで霧のように霞のように…陽炎が揺らぐような不安定な…奇妙な足取りであった。

ご案内:「神技武練塾-神技堂-」から霞流 周さんが去りました。