2024/06/03 のログ
ご案内:「図書館 閲覧室」に焔城鳴火さんが現れました。
焔城鳴火 >  
「――よくやるわね、風花」

 閲覧室に入ってきたのは、白衣を着た教員。
 その手には三冊の分厚い本。
 右手を一杯に開いて片手で握る様に手を下げて持っている姿は、相当な握力が無ければ再現できないだろう。

「なに、委員会の仕事?
 暇つぶしにしては、視線が忙しそうじゃない」

 そうカウンターの席に座るのでなく、カウンターテーブルに背中から寄りかかるようにして少年に声を掛けた。
 

風花 優希 >  
「……ええと、焔城先生か」

ふと掛けられた声に、視線を向ける。
顔を上げた先に会ったのは、名前と顔だけは記憶してる教師の姿。

確か別の教師の幼馴染だったと、そんな話は聞いていたが…
明確に話したことは、事実上これが初めてであった筈の相手。

「まあ、そんなところですよ。
 これでも図書委員なので…まあ、ちゃんと仕事はしてるってことで」

教師が相手という事で、敬語は崩さず。
されども肩に力を入れ過ぎない程度の緩い態度でそう返す。

焔城鳴火 >  
「へえ、私なんかの名前をよく覚えてたわね。
 私の講義、取ってたかしら」

 カウンターテーブルにどさ、と本を置きつつ、感心したように小さな声で言った。

「図書委員ねえ。
 委員会所属を理由にして、仕事もしないで本を読んでるやるもいるってのに」

 眼鏡を外して白衣のポケットにしまうと、左手を少年に差し出した。

「知ってるみたいだけど、改めて。
 保体の焔城鳴火。
 で、あんたは風花優希――で、合ってるのよね?」

 そう言いながら、やや薄い緋色の瞳を少年に向けた。
 

風花 優希 >  
「先生たちの顔と名前は頭に入れてるので」

中々、力のある人だなと三冊も本を片手でカウンターに置く姿を見つつ。
確か保健体育の先生だったし、そういうものかと密やかに納得する。

「ま、それはそれで…監視がいるっていう名目だけでも警戒しますし?」

苦笑しながら、、差し出された手に軽く目を丸める。
なるほど、どうやら結構気安い感じらしいと、ほんの僅かに驚いて。

「じゃあボクの方も改めて…
 知ってるみたいだけど、風花優希…誰かさんにもでも聞きました?」

などと、少し軽口気味に返しながら差し出された手を握った。

焔城鳴火 >  
「それは大したものね。
 まるで優等生みたいじゃない」

 ふぅん、といいながら、口角が上がる。
 目つきが釣り目で鋭いのもあり、どこか猛禽類を連想させるような表情だ。

「それもそうね、少なくともあからさまに騒ぐヤツはいなくなるか」

 握られた手を軽く握り返してから、すんなり放した。

「はぁ誰かさん?
 別に、私も仕事柄、顔と名前を覚えるのは得意ってだけ。
 医者が患者の顔と名前を覚えられないんじゃ、話にならないでしょ」

 そう言って肩を竦めて見せた。
 

風花 優希 >  
「優等生のつもりですよ、一応」

少なくとも悪目立ちをしない生徒である、という意味合いで。
どうにもどこか鋭い視線には、肩を竦めるしかないのだが。

ともあれ、握られた手がすんなり離れればこちらも直ぐに手を収めて。

「ああ、ほらポーラ先生の幼馴染なんでしょう?先生。
 話でも聞いてたのかなと思ったんですけど…
 なるほど、普通に覚えていてくれてた感じでしたか」

焔城鳴火 >  
「ハ、いいじゃない優等生。
 素行不良がないのは感心だわ」

 目つきが悪いのも笑い方が下手なのも、生まれつきなのだった。
 少年の柔和さとは違って、人付き合いで損するタイプだ。
 しかも。

「あ゛――?」

 『ポーラ先生』と聞いた瞬間。
 あからさまに不機嫌そうな声が漏れ、眉間にシワが寄るのだから尚更、怖い顔になってしまうのである。

「――ったく、『霊亀』のヤツ。
 誰にでもペラペラ言ってんじゃないでしょうね」

 左手で眉間を指で抑えながら、吐き捨てるように言った。

「あいつ、他にも余計な事、話してないでしょうね?
 というか――あいつの事だから、迷惑かけたでしょう。
 悪いわね、昔からあんな調子なのよ、あいつ」

 どことなく苛立ったような様子から一息つくと、一転して申し訳なさそうな口調でたずねた。
 

風花 優希 >  
おっと、地雷だったか?_
…と、そのあからさまに不機嫌そうな声と顔に、肩を竦める。

幼馴染とは言えど、どちらかと言えば腐れ縁の類なのだろうか。
いや、あの先生もあの先生でアレな部分が見え隠れしているので、そのせいだろうかと頭をよぎる。

ここまで、考えるだけにしてもそれなりに失礼な話であるのだが。

「あははは…まあ、幼馴染だって聞いたくらいなので。
 ちょっとまあ、マイペースな先生ですけど、そこまで迷惑はしてないですよ」

そんな風に軽い調子で苦笑を返す。
色々と振り回されたような記憶もあるが、それもまあ良い経験ではあったから。

「しかし霊亀って…渾名か何かで?」

焔城鳴火 >  
「ハァ――それならいい。
 もしあいつに絡まれても、基本的に無視していいから。
 うっかり親しみなんて持ったら、どこまでも距離を詰めてくるわよ」

 腕を組んで、眉をしかめながらため息を吐いた。
 どうやら不仲、という程ではないような様子ではあるが。

「ん、ああ。
 まあ渾名で間違ってないわ。
 そうね――風花、あんたは魔術には詳しい方?」

 そう言いながら、視線で魔導書の類が並ぶ方を示した。
 

風花 優希 >  
「あははは…色んな意味で手遅れな気が……」

色々と、着せ替えられてしまったので。
そうでなくとも、あの先生の距離感は色々とおかしかったのだけれど。

「なるほど、名前のイメージと反した渾名だったから少し驚きました。
 ……して、魔術ですか……まあ、それなりには」

ともあれ、それらは恐らくは閑話休題というものだろう。
本題らしき話の切り出しに、少し目を細めて少しだけ暈かしながらも素直に答える。

焔城鳴火 >  
「――ったく。
 今度からあいつに絡まれたら逃げなさい。
 どんなトラブルに引きずり込まれるか、わかったもんじゃないわ」

 すでに少年が『霊亀』に気に入られてしまったのだろう事がわかったのだろう。
 明らかに同情の籠った視線が少年に向けられた。

「名前、ね。
 確かに『霊亀』なんて言われても、直ぐにあいつには結びつかないでしょうね。
 まあ、そうであるべきなんだけど」

 右手の親指と人差し指で、軽くこめかみをほぐすように揉みながら、またも大きなため息が漏れる。

「なら、古今東西の魔術において、『名前』が特別な意味を持つのは知ってるわね。
 ――もう十年は前になるのか。
 『私たち』は、互いの名前を呼び合うわけにはいかなくなった。
 同時に、面倒な『因縁』を押し付けられてね」

 腕を組んだまま、自嘲するように肩を竦める。

「それ以来、私たちは互いを『記号』で呼び合う事にした。
 『麒麟(きりん)』『応龍(おうりゅう)』『鳳凰(ほうおう)』『饕餮(とうてつ)』、そして『霊亀(れいき)』」

 組んでいた腕を広げて、肩の高さに手の平を挙げて、苦笑する。

「バカみたいでしょ。
 ま、若気の至り――自業自得に悪意と不運が徹底的に重なったオチよ」

 

風花 優希 >  
「はは…善処します」

逃げ切るには少年も押しが強い方ではない。
どうにも押されればズルズルと引っ張られてしまうタイプである自覚はある。
故にそうやって乾いた笑いでそれとなく、同情的な視線に返すしかない。

ともあれ、今は主題の話に耳を傾ける。

「ええ、言魂…言葉というものは力を持つ。
 故に呪文やら、詠唱やらがその力を高めるし…。
 呪いというものにおいて、名前は個人を結びつける縁になる。
 『真名』…なんて概念もありますし…」

納得したように、その言葉にこくりと首を縦に振る。

「”因縁”というものが押し付けられた、となれば頷ける話ですね。
 なにかしらその記号にも、意味を込めて居そうですし…
 四凶や四霊の名を使うなんて、如何にもじゃないですか。
 ……まあ、何があったのかは分かりませんが、難儀なことがあったのは察します」

焔城鳴火 >  
「へえ――」

 釣り目が細まり、少年を眺めた。

「なかなか博識じゃない。
 魔術の知識は、嗜んでいれば珍しくもないけど。
 瑞獣や凶獣の名前がすぐに繋がるのは、大したモノね。
 少なくとも、日本って国じゃ珍しい名前だったと思うけど」

 訝しむ――というよりは、興味深そうに少年を見て、口角を上げた。
 ただ、それも長くはなく、すぐに自嘲の吐息に変わる。

「ふん、生きてるだけ幸いだったとしか言えないわね。
 その上、『霊亀』は――」

 と、なにかを言いかけて、険しい表情で口を噤んだ。

「――ハ、お喋りが過ぎたわね。
 風花、あんた、医者に向いてるわ」

 ふ、と力が抜けたように笑って、ひらひらと手の平を振る。
 話すべきじゃない事まで話しそうになったのかもしれない。

「で、あいつが『霊亀』で。
 私は何だと思う?
 当たれば、そうね――一つ、どんなお願いでも聞いてやろうかしら」

 くっくっ、と笑いながら、気安い調子で。
 

風花 優希 >  
「日本の魔術式のその大本も、辿れば大陸から渡って来たものですよ。
 全部がそうとは言いませんけど…起源の一つに違いはない」

だから知っている、とでも言うように軽く本を手にしたまま手を上げる。
事実、少年自身の口にしていない事情としても、多少の知識はあって当然の事なのだ。

「……呪いでも受けましたか?」

瞼を軽く閉じ、問いかける。
口を噤んだそれを、軽く探る様に。

返答は期待しない。
これまでの話から、真っ先に浮かぶであろう懸念があるならそれだからこそ問うた。

「でも、医者って柄じゃないですよ、治療なんか得意じゃないし…。
 ……ついでに言えば、推理も得意って程じゃないんですよ?」

だから、そうやって続く言葉には苦笑と軽口を交えて返す。
何でもなんて言っていいんですか?などと笑いながら。

「真っ当にイメージから当てはめるなら…鳳凰とか?」

その名前から”らしい”ものをそのままに伝えた。

焔城鳴火 >  
「――呪いの方がマシよ」

 意外にも、あっさりと。
 しかし、吐き捨てるような言い方で答えた。

 そして、少年の答えに、大きなため息を吐きながら目を閉じ。

「――風花、あんたねえ」

 言いながら、がりがりと頭を掻いて。

「一応、どういうイメージから答えたか、は聞かせてもらおうかしら」

 目を細めて、じっとりとした視線で少年を見る。
 

風花 優希 >  
「……なるほど、それはまた難儀ですね」

呪いの方がマシ、とあまりにもハッキリと。
断言するようなその言い回しに、肩を竦めるしかない。

そんな素振りや様子は見えなかったが…相応にワケアリであるらしい。
今はそれだけを記憶にとどめて、追及せずにそこで話を打ち切った。

「凄い単純な理由ですよ。
 鳳凰なら火や焔…でしょう?」

そして、じっとり見つめる教師に向けて、軽口で返し問の理由をそう答える。
本当に…そこには大した理由もない、完全に名前のイメージでだけの返答で会った。

焔城鳴火 >  
「ハ――安直だって言われてるみたいでムカつくわね」

 そういう『鳳凰』は、言葉とは裏腹に面白そうに口元を歪めていた。

「腐れ縁の『霊亀』、『麒麟』と『応龍』で四瑞(しずい)
 後輩の『饕餮(とうてつ)』を入れて、『五衰(ごすい)』。
 まったく、笑えるでしょう。
 皮肉もいいところよ」

 そう明らかな自嘲を見せて言うが、その口調はどことなく楽し気ではあっただろう。

「やっぱり、あんた医者向きよ。
 で、どうする?」

 片目だけを開けて、片頬だけを釣り上げて笑いながら、手の平を上に向け少年に人差し指を向ける。
 人を指で示さない、という一般教養がどうやら適用されていないようだ。
 

風花 優希 >  
「あらま、大当たりでした?」

バツが悪そうに顔を歪めて笑う。
とはいえ、『渾名』であるのならばあたらからずも遠からず。
そう捻ったことをするでもなく、名残はあるもの。
そう考えての回答でもあったのは確かである。

「あぁ…四霊まではそろってる上で饕餮が居るのが不思議でしたが、なるほどそういう。
 五衰とはまた、”何かがあったのなら”因果な名称でしょうね、違いなく」

故にこそ、続く自嘲めいた言葉にそう返す。
その言葉に迷いも、戸惑いもなかった。

「これで医者に向いてるって言われるのもまた何とも。

 ……別段、そこまでして欲しいお願いなんてないですけどね?
 まあでも、折角のチャンスを疎かにするのももったいないので。
 今度、食事でもおごってもらえます?なんてのはどうでしょうか」

焔城鳴火 >  
「クッ、ハハ――いい性格してるわ、あんた。
 知識も幅広い、思い切りもいい、頭の回転も速い。
 嫌いじゃないわよ、お前みたいなやつ」

 思わず笑いだしてしまい、場所を考えて声を殺す。
 その表情は、どこか親しみを感じるような笑みに変わっていた。

「欲がないわね。
 思春期真っ盛りのエロガキなら、バカを言って私に殴られてたでしょうに」

 クックッ、と口元に手の甲を当てながら笑い。

「奢るくらいなら、作ってやるわ。
 あんた、好きなもんとかあんの?
 和洋中、大抵のものは作ってやれるけど?」

 そう言って、少年に少しばかり体を傾ける。
 少年に興味を持ったのだろう、視線の鋭さは変わらないが、その質は最初とは異なっていた。
 

風花 優希 >  
「ははは、それはよかった、好感触で」

少なくとも変に警戒されたり、嫌われるよりも良い。
期待され過ぎるのも、肩の荷が重くはあるが。

「生憎、そういうのとは縁がなくて」

冗談めかしたその言葉に、やれやれと言った顔を浮かべて。

「何でも好きですよ、和食でも中華でも。
 ああでも、興味があるのは洋食…ですね」

今の時代になって身近になった食事と言えばそれだなと。
軽く思考を巡らせながら、そう答えた。

焔城鳴火 >  
「縁がないんじゃなくて、興味がなさそうだけど?
 性欲は適度にあった方がいいわよ。
 人間でいるつもりならね」

 照れも羞恥もなく、当たり前のように言い放つ。
 異性であっても同性であっても、性愛に欲がないのもまた不健全だと考えているのだ。
 もちろん、持て余すほどにあるのも不健全ではあるのだが。

「洋食ねえ。
 ――そういえば、『方舟』で牛スジを煮込んでおいたわね。
 ビーフシチューでも食べる?
 明日にでも、弁当にして、持ってきてやるけど」

 鳴火の得意料理の一つである。
 その味は、施設の子供たちを夢中にさせ、店を出さないかと言われた過去すらあった。
 もちろん、鳴火にとってはあくまで、ただの趣味に過ぎないのだったが。
 

風花 優希 >  
「…ご忠告どうも、無いわけじゃない筈ですけどね」

恥ずかしげも何もない物言いにバツの悪い顔を浮かべるしかない。
此方の正体を見透かした…という訳では無いだろうが、それでもドキリとはするものだ。
とはいえ直ぐに、保健体育の教師故のストレートさである事には腑に落ちるのだが。

「いいですね、ビーフシチュー。
 お弁当じゃあ中々みない気もしますけど」

そしてなるほど、どうやら料理はだいぶ得意であるらしい。
施設育ちだと考えれば、それも当然なのかもしれないが。

焔城鳴火 >  
「ハハッ、もっと思春期しなさいよ、クソガキ。
 それとも思春期してるのは見た目だけなタイプ?」

 大変容以降、特に今の時代、世界情勢にあって、見た目は年齢の指標にはなりえない。
 目の前の少年が、学生ではあっても自分よりよほど長生きしていたとしてもおかしくはないのだ。

「ま、弁当向きの料理じゃないわね。
 でも今時は弁当箱も便利なもんがあるのよ。
 他にもリクエストがあれば聞いてあげるけど?」

 そう言いながら、ポケットから携帯端末を取り出してメッセージを送る。
 送り先は、散々言っていた『方舟』の管理者だ。

「とりあえず『霊亀』のヤツに買い物行かせるから。
 この際、なんでも言いなさいよ。
 どんな無茶振りでも、美味くしてやるわ」

 と、自信満々に言う。
 

風花 優希 >  
「思春期男子のつもりですよ、これでも?」

否定も肯定もしなかった。
事実見た目だけでもあり、されども身体と模倣した精神構造は確かに見た目相応の筈で。
故にただ、その言い回しがある種の肯定のようでもある物言いとなった。


「あー、ずっと暖かいままのお弁当箱とかあるらしいですもんね。
 実物は見た事ないですけど…そういうのなら?」

この機にそれも見れるのならば儲けもの。
美味しい食事を嗜めるのなら一石二鳥だと。

「ビーフシチューとセットになるなら…
 マカロニグラタンとか?
 あんまり洋食、詳しくないのでぱっと浮かばないけど」

焔城鳴火 >  
「つもり、ねえ。
 ま――保健室の先生だから、なにか困ったらいつでも来なさい。
 放課後は大体、第二教室棟の、第四保健室で暇つぶししてるから」

 なるほど、と。
 知見の深さと落ち着き、その理由の一端を垣間見た気がした。
 ならば、なおさら伝手を繋いでおいた方がいい。
 鳴火にとって――『五衰』にとって、それがプラスになる可能性は非常に高いのだ。

「ふぅん、マカロニグラタンね。
 悪くないじゃない?
 スキルを試されてる気分で、面白いわ」

 唇を愉快気に歪めながら、寄りかかっていたカウンターから、身体を離した。
 手早く端末でメッセージを送り、またポケットに戻す。

「風花、なかなか笑える時間だったわ。
 とりあえず明日は楽しみにしておきなさい」

 そして反対のポケットから眼鏡を取って掛け直し、三冊のハードカバーを片手で軽々と持つ。

「今度は『鳳凰』の囀りなんかより、お前の話を聞かせなさい。
 思った以上に、『風花優希』に興味が出たわ。
 それじゃあまたね、優等生さん」

 そう、上機嫌に言い残して、『鳳凰』は羽音を置き去りに図書室から出ていくのだった。
 

風花 優希 >  
「第四保健室…ですね。
 分かりました、記憶しておきますよ」

思考の端に情報をメモする。
何かしらの益を見出された事だけは確信して。

「やっぱり、アレ、結構難しい奴なんですね。
 ……それじゃあ、明日を楽しみにしておきますよ」

本を再び持ち上げて、背を向ける教師を視線で見送る。

「こちらこそ、気になる話をありがとうございました、焔城先生」

そうしてパタンと頁を閉じて、カウンターに本を置く。
離している最中に時間も程よく経過していた。
後は軽く片付けて仕事上がりだ…と、少年もまたその場を跡にするのであった。

ご案内:「図書館 閲覧室」から風花 優希さんが去りました。
ご案内:「図書館 閲覧室」から焔城鳴火さんが去りました。