2024/06/05 のログ
伊都波 悠薇 >  
「え、えと、そんなこと、ななな、ないです、えへ」

愛想笑い、のつもりではあるが、緊張からか、顔が強ばってしまう。

前髪で目線を隠している理由のひとつ。
どうしても、笑顔が固くなり睨んでいるようになってしまうから、だった。

(綺麗な人)

よくよく、見てみると、思い浮かんだのはそんなこと。

和服美人、はなかなかそうお目にかかることのできるようなものでもないから。

「ひっひっ、ふー」

ばくばくした心臓を、深呼吸で落ち着かせて。

「こ、こひつじ、ですか?」

自分のこと、だろうかと質問してみることにした。

ポーラ・スー >  
「あらあらぁ。
 緊張したお顔も可愛らしいわねえ。
 いいのよ、りらっくすりらっくす~」

 強張ってる少女を見ながら、にこにこと笑っている。

「まぁまぁ。
 こんなに初心そうなこひつじちゃんがラマーズ法なんて。
 ママになるには、すこぉし早いんじゃないかしらぁ」

 少女の深呼吸にしては特徴的な呼吸法に目を丸くして、口元を手で抑えた。

「ええそうよ。
 とってもかわいい、迷えるこひつじちゃん?」

 そしてまた少女をのぞき込むように見上げながら、ゆったりとした表情で笑う。
 

伊都波 悠薇 >  
「か、かわ……」

ぱくぱく。
魚のように口を開いたり閉じたりしたあと、深呼吸をして落ちついたのか、胸に手を当ててもう一度ひっひっふー。

「ま、まま、になる予定は、ない…………です…………」

これが、一番はやく落ち着くのだからもう、癖のようなものだと心のなかで説明する。

実際に口にはしてないので、伝わるはずもないが。
口にできるほど、口は回らない。コミュ障の弊害だ。

「どうして、まよえる、こひつじ、なんですか?」

そんなことよりも、こちらを口に出すほうが優先されるから。

ポーラ・スー >  
「ふふっ、なのにその呼吸法なの?
 こひつじちゃんたら、愛らしいわねえ。
 その方が落ち着くのかしら」

 目を細めて微笑みながら、その心情を読み取ったかのように。

「あらぁ?
 こひつじちゃんは、こひつじちゃんでしょう?」

 よいしょ、と言いながらゆっくりと立ち上がった。

「悩んで迷って、いつも一生懸命なこひつじちゃん。
 とっても可愛い妹ちゃん。
 がんばりやさんの、愛らしい『はーちゃん』?」

 両手の袖で口元を隠すようにしながら、にっこりと花のような笑みを浮かべた。
 

伊都波 悠薇 >  
「はぁ」

こひつじは、こひつじ、と言われると、そうとしか出てこなかった。

意図を読み取るのは難しく、そう形容されるのは初めてだったからだ。

また、これが、諭しのようなものなのか、からかいを、含んでいるものなのか自分にはわからなかった。
だから、それ以上言葉が出てこず、真意をより深く口にして貰おうとしたところで、止まる。

「…………えっ、と」

自分を、妹と認識している人は珍しい。

口許を袖で隠すのも様になってるなと思いながら。

「…………ど、どちらさまでしょう? お、おあい、したこと、ありました、か?」

今度は「別な意味」でびくびくしつつ。

無意識に。

姉とは逆の、反応。

ポーラ・スー >  
「うふふ、安心して?
 ちゃぁんとはじめましてだから」

 緊張で震えている少女に笑いかけながら、ゆっくりとテーブルを回って少女の隣へと歩んでいく。

「『りんちゃん』も可愛いけれど、『はーちゃん』もとっても可愛いわねえ。
 はじめまして、初等教育担当の、ポーラ・スーよ」

 そう言いながら、少女へ、上向きに右手を差し出した。
 

伊都波 悠薇 >  
「あ、そう、でしたか」

露骨に安心したように息を吐いた。
ぼっちなのに、会ったことがある人の顔を忘れてしまうなんて、それはもうぼあぢちからはみ出すことの出来ない失礼な人になってしまう。

「…………」

名前を聞いて、首をくっと、右に傾げてしまった。

さらり、髪が流れて見える左目……

はっとして、慌ててぶんぶんと顔を横に振り。

「いとわ、はるか、です。よろしく、おねがいしましゅ」

差し出された右手の中指に、ちょんと、触るだけ。握手しようとしたのに。

触ったあと、ひゅっと息をのんで、手を引っ込めた。

握手なんて、レベルが高い。

「す、すみませ……え、えと、その、てあせ! そう、てあせがひどいのに気づいたので!」

急いで言い訳。

ポーラ・スー >  
「あらあら、『りんちゃん』と違ってとってもシャイなのね。
 せんせい、そういう子も好きよ、ふふ」

 手をひっこめられてしまっても、楽し気に笑うだけで、気分を害した様子は少しもないだろう。

「ええ、ええ。
 よぉく知っているわ。
 『りんちゃん』の妹の、悩み多きこひつじの『はーちゃん』」

 遠慮という言葉はポーラの辞書にはないのだろう。
 淀みない自然な動きで、少女の隣に座ってしまう。

「今日は一体どんなため息だったのかしら。
 折角だもの、『あーちゃんせんせい』に、お悩みを話してみない?」

 すい、と。
 少女の隣から身を乗り出して、前髪に隠れた顔をのぞき込むように顔が近づいてしまう。
 

伊都波 悠薇 >  
「ひぇ」

乗り出された分、身を引いて距離を保とうと努力する。
そうしないと、モタナイ。主に心臓が。

「あ、いえ、その。失敗、したので、迷惑をかけてしまったな、と。もう少しうまくできたらなぁ、のため息、でした」

素直に。
隠す意味もないゆえに、口にする。

それはずっと思っていることだから、言葉にするのは簡単だった。

ポーラ・スー >  
「まあ。
 失敗しちゃったのね。
 委員会のお仕事かしら?」

 口元を抑えながら、心配そうに目を細めた。

「えらいわねえ、ほんとにがんばりやさん。
 でも、いいのよ?
 失敗はたぁっくさん、数えきれないくらい重ねたっていいんだから」

 ふふ、と微笑みながら人差し指を立てて、少女の鼻先へ持っていく。

「『はーちゃん』が頑張ってること、せんせいはよぉく知ってるわ。
 『りんちゃん』と比べられちゃうだけでも大変でしょうに」

 そして指先は、ゆっくりと少女の鼻先、そこから年頃の唇へ近づいていく。
 

伊都波 悠薇 >  
「はい」

先生、なら、隠す意味もないゆえに頷いた。

「学生のうちにと、父にも言われます。が、でも、その、迷惑をかけるのはちが、う?!」

指が唇に近付くと、のけ反り、唇をいじられないように。

「そんな。姉と比べるのは、烏滸がましいというか、そんなあれでもないというか、そんな風に思っているので大変ということじゃ。その、がんばってもそれが形になりすぎないのも、その、まわりのかたには、あれではないかと」

自分よりも他人。
そんなふうに思う。

自分のことは、どうにかしようとできるが、他人を、どうにかするのは大変だから。

ポーラ・スー >  
「あらあら。
 ――迷惑と感じてるのは『だれか』かしら?
 それとも、『はーちゃん』かしら?」

 のけぞってしまった少女に微笑みながら、指をひっこめた。

「そうなの?
 それじゃあ、『はーちゃん』の気持ちの問題なのね。
 結果が出ないのは寂しいのでしょうね」

 そう言いながら気づかわしげに目を細め。

「はぁあ。
 わたし、『はーちゃん』のこと、たくさん褒めてあげたいわ。
 がんばりやさんは、わたし、とぉっても大好きなの。
 だから、『はーちゃん』の事も、大好きよ。
 ああもちろん、『りんちゃん』の事も大好きだけど」

 『うっかりキスしちゃったもの』などと、くすくすと笑いながら話す。
 

伊都波 悠薇 >  
「え゛」

うっかり、を聞くと硬直した。

その硬直は、3秒で解かれる。

ぼんっと、頭から湯気が出るのと同時だった。

「えと、その、休憩時間もあれなので、その、べんきょ、にもどりますね。あ、えと、その、さよなら!

ぽーら・すーせんせい!」

羞恥と、とある妄想でいっぱいになったので逃走するとする。

その動きはあまりに機敏だった。

「おはなしきいてくれてありがとござましたー」

たー、たー、たー、と、エコーをのこしながら。

退散していったのだった。

ご案内:「図書館 休憩室」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ポーラ・スー >  
「あらあら?
 あんなに慌てちゃってどうしたのかしら」

 それまでの様子からギャップを感じてしまうほどに素早い逃げ足は、ポーラには珍しく反応できなかった。
 しばらくぼんやりと、帰って行った少女の背中を見送って。

「ふふっ」

 楽しそうに笑う。

「『りんちゃん』に『はーちゃん』。
 とぉってもかわいい姉妹。
 とっても愛らしい、二人の女の子。
 ――もっと仲良くなれるかしら?」

 愉快そうに、両手を合わせて無邪気な少女の様に笑って。
 のんびりと弾むような足取りで、図書館を後にするのだった。
 

ご案内:「図書館 休憩室」からポーラ・スーさんが去りました。
ご案内:「図書館 休憩室」にシャンティさんが現れました。
シャンティ > 女は本と共にあった
それは過去から、現在までも

いつしか、まともに読めなくなっても
女は本なくしては生きられなかった

「……ふ、ぅ……」

一息、吐息を漏らす
久しぶりに本に溺れてだいぶ疲労してしまった

……弱くなったのだろうか
それとも――

「……」

気の所為、だろうか
思索を巡らせながら、備え付けの椅子に座ってじっとする姿は彫像のようでもあった

シャンティ > ……ずいぶんと時が経ってしまった気がしている。
少しだけ、昔に戻ってしまったような――

「……ぁぁ」

絶望と失意と諦観と
そうして、無気力に生きた時期

「……いけ、ない……わ、ね」

なんだか妙に感傷的な気分になる
何がそうさせるのか
そろそろ近づいてきている雨の時期のせいだろうか

「……なに、か」

まずは、何か動く理由をつけなければ
……考えてみれば、今此処にいるのもそれが理由だったか

「……本、だけ……読ん、で……と、いか、なそ、う……ね」

ご案内:「図書館 休憩室」に杉本久遠さんが現れました。
杉本久遠 >  
 なんという事はない。
 当たり前のようにありふれた、学園の平穏な一日。
 杉本久遠はそんな日常を好み、少々マイナーなスカイスポーツに打ち込む青年だった。

「――綺麗だな」

 そんな青年にとって、日常からほんの少しだけ幻想(やすらぎ)へと連れて行ってくれる特別な存在が一人、いる。

「シャンティ、今日は読書の日だったか?」

 そんな特別な女性がふらりと図書館へと入っていくのが見えた。
 それを何と無しに追いかけてしまってから、邪魔にならない様にひっそりとしていたが。
 休憩室に移ったのを機会に、ようやく声をかけたのだった。
 

シャンティ > 近づいてくる男が一人。
それは少し前からよく知るようになった男。
女とは逆の、快活で人当たりのいいスポーツマン。

実のところ、彼が居たのは『読めて』はいたが、相手が近づくでもなく、居たので。
こちらもあえては干渉しなかった。

「……あ、らぁ……久遠?」

彫像のようになっていた女は、わずかに身じろぎをして、男に向き直る。
薄い唇からは、よく知る気だるげな声が漏れる。

「ふふ……あなた、こそ……本、を……読む、日……だった、の?
 めずら、しい……わ、ね? トレーニング、の……教本、とか?」

男とて、全く本を読まないわけではない。
以前、本屋で読みやすそうな本の勧めなどもした記憶もある。
とはいえ、そこまで積極的に本を読むわけでもない……はずだ。

「本、は……いい、わ、よぉ……ええ。
 エアー、スイム……も、だけ、れど……ね?」

男の親しむスポーツ。
本の虫であった女が、珍しく惹かれるモノがあったそれを引き合いに出す。

杉本久遠 >  
「たはは、意外でもない、ような感じだ。
 もしかして気づかれてたか?」

 気づかれていたのだとしたら、正直、恥ずかしかった。
 本と戯れ、一人佇む彼女が、あまりに綺麗で見惚れてしまっていた、とは流石の久遠でも正直に言えない。

「ん、ああ、いや――」

 ほんのりと日焼けした顔を、少しだけ赤くしつつ。
 頬を掻きながら、ゆっくりと彼女の隣へと歩みよる。

「その、な。
 君を見かけたから、つい」

 一緒に居たくなってしまった、とまでは照れて言葉に出なかった。

「ん、んんっ!
 ああそうだな、本は、君のお陰で随分と好きになったぞ。
 君にも、オレの泳ぎで新鮮な楽しみを分かち合えていたらいいんだが」

 彼女と出会ってから、いつの間にかそれなりの時間が経過していた。
 気が付けば、彼女を女性と意識し始めた当初に比べると、随分と自然に接する事が出来るようになったと思う。

「――この間の大会も、パッとしない成績になってしまったからなあ」

 たはは、とどこか気の抜けた表情で笑いながら、そっと隣に腰掛けた。
 

シャンティ > 「さ、あ……どう、かし……らぁ?」

くすくす、と笑う。
それはからかうようでもあり、面白がるようでも在り。
不思議な笑みだった

「ふふ……そ、う。
 見かけ、た……から……ね?」

今度は笑い声はない。
ただ、小さく……薄い唇を曲げて。
わずか、笑みを浮かべていた。

「そう、ね……」

自然な動作で隣まで来る男。
女もまた、ほんの僅かに体を動かし最適なスペースを空ける。

「確か、に……成績、は……で、なかった、け、どぉ……」

薄い唇に人差し指を当て、小さく首を傾げて考える。
脳裏に浮かんだのは、超記憶の中に残る記録。

結果はでなかったが、男の矜持と想いが滲み出るような泳ぎ。

「えぇ。いい、泳ぎ……だった……わ?
 私、は……楽し、め……た、わぁ……」

女が”見る”のは、実際の動きではない。
ただ、無機質に並べられた文字の群れ。
それでも――そこには、美学があった。

「……そう、ね。久遠、は……今日、は……空い、て……る、の?」

隣に座った男に問いかける

杉本久遠 >  
「――そうか。
 君の記憶に記してもらえたなら、頑張った甲斐があったな。
 ただその、オレとしてはその、な?
 君に一度でいいからメダルかトロフィーに触れさせてあげたいとも、思ってるんだ」

 それは、ちょっとした久遠の意地かもしれない。
 愛しいと思える女性に、自分の集大成を見せたいという我儘とも言えるだろうか。
 とはいえ、久遠の今の実力では、大きな大会での入賞は難しいのが現実なのだった。

「ん――ああ、空いてる、というか。
 君に会いたいと思っていたところで、な。
 だからその、見かけてつい、追いかけてきてしまったんだ」

 結局、愛する相手の姿を見てここまで来てしまったという事まで全部言ってしまうのだった。
 ただ、表情にはいつものような少しの照れがなく、青年には珍しい気の弱さが読み取れたかもしれない。