常世学園の象徴である「橘」が文字盤に掘りこまれた巨大な時計塔。
鐘がついており、学園内のチャイムはすべてこの時計塔のものである。
非常に高くそびえており、登れば常世島が一望できる。だが、危険のため基本的には生徒は立ち入り禁止になっている。
しかし、特に警備がいるわけでもないので入り込むのはたやすい。
参加者(0):ROM(1)
Time:20:47:55 更新
ご案内:「大時計塔」からギジンさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から伊都波 悠薇さんが去りました。
■ギジン >
「そういうのは正しく生きている存在に言ってあげてください」
拒絶の色と共に、少女と共に時計塔を降りていく。
死を拒絶する絶対の輝き。
闇から光への移行。
神の存在の証明。
人はそれをエランプシスとも呼んだ。
■伊都波 悠薇 >
「どうでしょう」
ならないで、と言われると。
「……センパイが、死んじゃったらなっちゃうかもしれません」
なんて、遠回しに。
「はい。帰りましょう。送りますよ、センパイ」
■ギジン >
「悠薇さん」
「僕のことを悲しいと思うのなら」
「決して僕みたいにならないでください」
諭すように言葉を使った。
これ以上、傷つきたくなかったから。
「冷えますね、そろそろ帰りましょうか」
■伊都波 悠薇 >
「はい」
さみしい。
ひとりでいることが、その人に会えないということが。
自分が経験したことのない感情がきっとセンパイの胸のなかでじくじくと、痛んでいるのかもしれない。
「……私も悲しいです。センパイが、そんな、気持ちでいることが」
ひとつひとつ。
その感情に、返していく。
今センパイの気持ちを聞いているのは自分なんだから。
■ギジン >
「僕は」
言葉を選んだ。
どんな詭弁を弄しても、眼の前の存在は拒絶したりはしないだろう。
だからこそ、僕は彼女に対して真摯である必要があるんだ。
「寂しいよ」
顔の一部が剥がれて落ちたら、こんな言葉にもなろうという。
無価値で無遠慮で無意味で、ついでに無計画で無定見な言葉だった。
「何をどうしてももう彼には会えない」
いっそ泣き喚けば良かったのだろうか。
そんな自意識があれば、僕にも可愛げというものがあったのかも知れない。
■伊都波 悠薇 >
少し、悩んだ。
でも。
「はい。あくまで、これは私の考えです。現実に出てこず、思い出の中でじっとしていてほしいという、私の考え
世の中不思議なことがあって、妖怪とかそういうのもありますから。
一概に、私の言葉が正しいとは思っていないんです」
でも伝えるのは自由だから。
「いいですよ。巻き込んでくれても。今日はこのあと予定はないので。
センパイが話してくれるならご一緒します」
■ギジン >
「僕はそうは思いません」
彼女の手を離して、夢想する。
もうどこにもいない“大切”のことを。
「光があれば、影があるんだなと誰でも想像ができます」
「雨が降ったら水たまりができますし」
「青空を見れば雲の一つだって」
少し躊躇して、言葉を選んだ。
自分のウェットな感情に彼女を巻き込んでいる。
そういう自覚はあった。
「死んだ人に永遠がないのであれば、僕という影や水たまりや雲も存在しないと同義」
「死者にも尊厳や、尊重されるべき遺志はあるべきで」
「そう願うことでしか真っ直ぐ二本の足で立てない女もいるんです」
「悠薇さん、今日はもう帰ったほうがいいです」
「ろくでもない会話に巻き込まれていますよ」
■伊都波 悠薇 >
「死人に、特権はないと思います」
ぴしゃり、と。
自分の考えを告げる。
そも、死人にはなにもないのだ。
死んだ時点で、なにも。
その事象に、なにかを。
思うのは、生きている人だけ。
特権は、生きている人にだけ。
「永遠も、ないですよ。あるとしたら。センパイが、永遠にしてあげてるだけです。
……そうしてあげるのは、センパイの優しさだと思いますけど。でも、永遠にせずに、となってほしいと私は勝手ながらに思います」
■ギジン >
手を包まれる。2人分の温もり。
何時振りだろう。そんなことを考えたりもした。
「そうですか……」
迷いなく言い切る彼女を、少し眩しく感じていた。
正しく誰かを信頼できる自分が、遥か遠くに見える。
「大事だと思えることが生きている人の特権なら」
「死んだ人の特権とはなんでしょうね?」
「永遠であることでしょうか」
自分がまた詭弁を弄していることに気付いて、視線を外した。
自分が傷つかないために、どんな言葉でも使う自分が嫌だった。
■伊都波 悠薇 >
仕草を見たあと。
ちょっと迷う。勇気のいることだし。 なんなら緊張もする。
でしゃばっているのではないかともおもうけれど。
嫌がらなければと、センパイが見つめている手を、自分の両手で、包んでみた。
「いいえ? 姉にそれを抱いたことはほとんどありません。
姉を尊敬していますし、姉はいつまでも、私の自慢です」
言いきり。
「謝ることなんてないですよ、センパイ。そうして、振り返ったりできるのは生きているからです。大事、だと思えるのは生きている人の特権です」
■ギジン >
「悠薇さん、弱いことは決して悪いことではありません」
「僕は少し感傷的になりすぎているようです、申し訳ありません」
そこまで言ってから、手のひらを見た。
少し荒れた、一人きりの手を。
「伊都波凛霞さんにコンプレックスを抱いているのですか?」
その言葉を、慎重に放って見せる。
僕にとっての弱さなんて、こうして吐き出して終わりだ。
だけど、まだ終わってない彼女は違う。
■伊都波 悠薇 >
難しい話だ。
死した人が。なくなったという事実が。
今、目の前のセンパイの全てなのだろう。
その悲しみに、なにも色を感じない。
感じてたものすら、覆い尽くしている。
そんな、ものなのだろうかと。
「弱いのは悪いこと、ですか?」
でも。
「弱いのは、悪くないですよ。弱いのが悪いなら、私も、どうしようもない妹です」
■ギジン >
「そうですね、貴女の言う通りです」
結局のところ、頼るものも縋るものも持てなかった。
それが終わってしまった女という結果を齎した。
それだけなのかも知れない。
「彼のことを思い出そうとすると」
「彼が死んだことを告げられた日につながっていくんです」
「今はその悲しみが私という女の形を切り出しています」
「彼との思い出を忘れながら、彼との思い出に縋り付いている」
「弱くてどうしようもない、私はそんな女です」