2026/03/02 のログ
ご案内:「大時計塔」にコトハさんが現れました。
コトハ > 風が吹く。
そろそろ春も近づいている頃合い。
どことなく暖かさもあるが、やはり冷たい。

「はぁ……」

下を覗き込めば、見晴らしのいい景色とそれなりに離れた地面が見える。
うっかりして落ちてしまえば、きっと怪我では済まないだろう、くらいの高さだ。
しかし、不思議と少女に恐怖はない。高さは怖さではないのか。

「……はぁ」

軽く身を乗り出しまま、携帯端末を眺める。
相変わらず、画面がどこかおかしい。それでも見れはする。
かつての友人に送ったメールは……返事がない。

「とっことか、送って……あれ、とっこのアドレスどこだっけ……
 あれ、あだ名で入れてなかったか……?」

頭がぐちゃぐちゃしてくる。
ガリガリと、口内で飴が音を立てる。

「あー……クソ!」

ふと、目に入るのは最近のメッセージ。
知り合ったばかりの相手からきたものだ。

「……ま、とりあえずは、な」

はぁ、とため息を付いた。

コトハ > 「結局、ガッコもいけなかったな……」

遠く眺める先には校舎が見える。
あそこに行けば、知り合った友人たちもいるだろうか、とぼんやり少女は考える。

「気づけば、こんなとこにいるし……ま、見晴らしはいいから、いっか」

またぼんやりと景色を見る。
よく見ると、校舎だけではない。色々なものが見える。
学生街、歓楽街、その奥になにか薄暗い街。
少し視線を変えれば、どこか雰囲気の違う街。異邦人街と呼ばれる場所。
山も見える。山の中に、なにか、見えるような……

「っ」

目が痛む。ぼんやり見ていたつもりだったが、案外凝視していたのだろうか。

ご案内:「大時計塔」に東山 正治さんが現れました。
東山 正治 >  
「────此処は、一般生徒は立入禁止だったはずなんだけどなぁ?」

そんな黄昏れているさなかの背中に投げかけられる男の声。
気づけば背後にはヘラヘラと笑う如何にも不健康そうな男の姿が見えた。
一見、不審者にも見えるが胸元から取り出した教員証をヒラヒラと見せつける。
先の言葉よりもわかりやすい証明だ。

「……確か、久森 琴葉ちゃん。だっけ?
 良くないなぁ、そういうのは。悪い子はいつか痛い目見ちまうぜ?」

教師であり、公安の仕事柄生徒のデータはある程度頭に入っている。
確かそんな名前の生徒だった。噂では、学業をおろそかにしているようだが。
東山はヘラヘラとした笑みを浮かべ、教員証を胸ポケットにしまい、ゆるりと近づく。

「で、今日も学校サボったの?そういう噂は聞いたことあるんだけど、さ。」

コトハ > 「そーだっけ?そんならちゃんと封鎖しとけよ。ガバガバじゃねーか。」

確かに立入禁止、となっていたはずではある。ただし、別に頑丈に封鎖されているわけではない。
まるで、どうぞお入りください、とでもいうように。勿論、そんな意図があるとも思えないが。
ただ、少女はその点を指摘する。

「……げ」

教員証を見る。真偽のほどは少女にはわからない。分からないが、仮にこんなものを偽造するのならろくでもない人間だ。
つまり、真偽のどちらが正解でもあまり状況は良くない、ということだけが確かなのである。
が、更なる言葉でわかったのはおそらくホンモノであること。

「……名前まで知ってんのかよ。キモ」

東山……先生。記憶を探ってみるも、授業を受けた覚えはない……はずだ。
見かけたことくらいはあるかもしれないが、その程度で覚えていることはないだろう。

「……サボ……まあ、そうなんだろうな」

実際に学校に行っていなければサボりの誹りは免れられない。
そこにどんな理由があろうと、教員にとっては同じことだろう。
ガリガリと、口中で飴が悲鳴をあげる。

東山 正治 >  
「それは俺も言ってんだけどねぇ、手が回らないのかやる気がないのか……。」

実際はご覧の通り。それを言われたら肩を竦めるしかない。
個人でやったところで翌日にはきっと剥がされているだろうし、
何より、ある意味生徒の憩いの場になっているのも事実だ。
何がどうあれ、ある意味自由性の象徴とも言えるかも知れない。

「ま、そんな事は俺ァどうでもいいのよ。
 それくらいでしょっぴくような理由にはならないし……ん?」

当たり前のように隣に座る東山。
地べたに遠慮なく座る姿はとてもじゃないが教員には見えない。

「こう見えて、教師職じゃ"勤勉"な方でね。
 生徒や教員、学園関係者のデータはそれなりに頭に入れてるワケ。」

「改めて、はじめまして。東山。東山正治(ひがしやまさだはる)。此処で教師をやってる。」

お近づきの印にどう?とおどけるように差し出したのは缶コーヒー。
微糖タイプのよくあるホットなタイプだ。

「そ、サボりね。学校が退屈だって?それとも、常世学園(ココ)が嫌い?」

コトハ > 「どうでもいいのかよ!なら思わせぶりに言うんじゃねーよ。
 ほんとに教員か?その教員証、偽造とかじゃねーよな?」

内情としてどういうことになっているか、などは少女が知る由もない。
とはいえ、注意されて然るべきなことは理解している。
となれば、この対応は肩透かしである。思わず噛みついた。

「……東山センセ、ね。んで、しょっぴく、とか物騒な言葉出たけど。
 そんな気ないんだったら、なんのつもりなんだよ。」

珈琲は手のジェスチャーだけでいらない、と拒否する。
別に飲めないわけでもないが、この相手からもらうのは、なんだか嫌だった。
そもそも、水分自体……

「……別に。アンタに関係ないだろ。そりゃ教師だからっていえばそうなのかもしんねーけど。
 教科も受けてねー、担任でもねーならほぼ無関係に近いじゃねーか。」

少女は胡散臭い男に最大限警戒する。

東山 正治 >  
「だって言っても直らないしな。言って直るならもうちょっと抗議してるさ。
 俺が偽物かどうかは調べりゃすぐわかるよ。尤も、私文書偽造する程怖いもの知らずじゃないけど、さ。」

恐らくこういう風に放置されていくんだろう。
自分で言っといて痛感する。噛みつく少女を横目にくつくつと喉を鳴らして笑う。

「何のつもり、ね。学校もサボって禁止区域にいる女子生徒がいる。
 "教師として"は声をかけるさ。そりゃね、大事があったら大変だ。」

どんな理由であれ、教師をしているなら放って置く選択肢はない。
手の上で何度か缶コーヒーを転がせば、その辺に缶を置いておく。

「その通り。個人的には"どうでもいい"。
 オタクがこっから足滑らせよーが、暴漢に襲われようが知ったこっちゃねぇ。」

そして、教師としてはあるまじき発言でもあった。
だが事実、東山としては一つも嘘は言っていない。
彼女がどうなろうと自己責任。学園の自由性は、そう言う所だ。

「ただ、だ。担任じゃないとか、教科とってないから、とかさ。
 そんなんでほっといたら教師なんていらないんだよね。
 特に此処は、学園と名ばかりのモデル都市だ。勿論、学園として機能してないワケじゃない。」

「けど、自由すぎる。別に教師がいなけりゃ学べないってワケじゃないしな。
 そんなこんなで教師と名ばかりっていうのは、俺は勘弁だ。職務にはマジメなつもりなんでね。」

だが、それはそれ。これはこれ。
個人の思想を教師の立場に入れ込むはずもない。
ご覧の通り胡散臭いのだが、それでも教員としては真面目なのは伺える。

「……にしても、意外と"お子様"なんだねぇ。
 もしかして、ミルクコーヒーのが良かった?」

……まぁ、嫌な奴には変わりはないが。

コトハ > 「……………」

不思議な物言いをする教員だ、少女は思う。
面倒くさがり、というよりもむしろ端々に滲み出るような嫌味や一種の倦怠感が思想にも表れている気がする。
世の中は簡単に変わらない。他人のことは知ったことではない。
少女が言語化できる範囲ではその程度の理解。
その割に、職務には忠実にあろうとする妙な生真面目さも顔を出す。

「変なセンセだな。こんな学校の教師なんてだいたい、教育がしたくてとか、
 生徒の面倒を見たくて、みたいなのじゃねーの?
 でも、そのどっちでもなさそうだし。」

違和感、というべきなのか。
確かに社会に出る人間全てが、必ずしも自分の好きな道に進めるとは限らない。
それにしても、こんなズレ方をしてまで仕事を続けるものだろうか。

「それしか出来なかったってか?だせぇ……と言いたいトコだけど、その方がよっぽどめんどくさそうだな。むしろ、キモい方が正解か?」

考えたことが言葉になって出てくる。
どうにも憎まれ口になってしまうのだが。

「そのくせ、マジメにしようって生きづらくね?もしやマゾ……?」

誰もが色々なものを抱えている。そんなことは先だって改めて理解していたはずだ。
それでも、この口はなんだか動いてしまう。

「別に。怪しいやつからモノを貰わないことにしてるだけ。
 水分も、特にいらねぇし」

知らない人から物を貰わないようにしましょう。
古から伝わる子どもへの教えである。

東山 正治 >  
思わずふ、と鼻で笑い飛ばした。

「生憎と、俺は好きで教師になったワケじゃないんでねぇ。
 まぁ、そうだな。言えば"手が空いてた"って奴だ。前職やめた後だったからな。」

人間的に問題ありでも、能力的に価値が在れば放っておかれなかった。
そして、それをどんな理由であれ受けた以上は真面目にこなす。
彼女の言うことは的を得ていた。だからこそ、笑うしかなかった。
乾いた力ない、笑い声だ。

「ハハ……全く以て。マゾってワケじゃないなぁ。
 罪人(ホシ)を追い詰める方が得意なんだけど、ね。」

まぁそんな事はどうでもいいさ、と横目で少女を見やった。

「へぇ、学校に来ない割にはそのへんはしっかりとしてんね。
 ……歓楽街の"奥地"に遊びに行くワリにゃぁ……いや、だからこそか?」

特に落第街(アッチ)で変なものを貰ってきたら、命が幾つあっても足りはしない。
しっかりものだと評価したが、一瞬だけ目線は冷ややかだった。
そう、それこそ"罪人"を射抜き、心底を見透かすように凍てついていた。
が、本当に一瞬だ。気づけば結局、嫌味な雰囲気に戻ってる。

「ま、俺はそれを止める気も理由もないんだけど、ね。
 ……水分がいらないのは特異体質か、異能の影響か。まぁいいさ。」

「ところでイロハちゃんはさ、法学……には興味ないか。
 一応聞いとくけど、学校で学びたい事とか、卒業後のことか考えてる?」

置いていた缶を拾い上げ、軽く開ける。
少し、いや、わざとらしいくらいにコーヒーの香りが風にさらわれた。