2024/07/05 のログ
ご案内:「委員会街 公安委員会庁舎 -資料室-」にポーラ・スーさんが現れました。
■ポーラ・スー >
「――こういうのを、拍子抜けと言うのかしら」
普段は立ち寄らない資料室で、一冊のファイルを眺めて小さく息を漏らした。
「公安委員会、総合怪異監査部――ねえ」
そんな部署があった事は、微かに記憶にあった。
記憶に合っても、印象に残っていなかったのは、女とは活動の領域が違い過ぎるからだ。
表立って動く部署については基本的に関わる事がなく、関わる事があっても必要な情報はその場で共有される。
そして必要以上の事はお互いのために、知らない方が幸いと言うモノ。
「――蒼春千癒姫。
総合怪異監査部、副部長。
『蒼雪の治癒姫』の異名で呼ばれた、強力無比な治癒系異能の持ち主。
うーん、随分と可愛らしい女の子だけど」
ファイルのページをめくり、出てくる少女の写真やプロフィールを眺めつつ、首を傾げる。
不思議な気分だった。
こんな愛らしく有名な子が居たのなら、女が気づかないはずない。
だって、かわいいのだもの。
「こーんなに、愛らしい子なのに。
わたし、どうしてこんな子を知らなかったのかしら」
衣装の好みといい、きっと大変に気が合った事だろう。
公安委員としての仕事では関わらずとも、生活委員として異邦人の少女と触れ合う機会はいくらでも作れたはずなのだ。
■ポーラ・スー >
「そうねえ、雪の柄がとっても似合うから――きっと赤い色も似合うわ。
そうしたらきっと、この写真とはとっても印象が違って見えるでしょうね。
はぁ、わたしも会ってお話ししてみたくなっちゃう」
ファイルのページを行ったり来たり。
総合怪異監査部と蒼春千癒姫の項目を、うっかり見落としをしない様にゆっくりと読んでいくが。
「うぅーん――活動時期は、被ってるはずなのよね。
確かにわたしは、新参で、下っ端で、とぉっても不自由だったけど」
それでも、おそらく半年ほどの期間は確実に、活動期間が重なっている。
対人活動を主とする女にとって怪異はまるで専門外であるとはいえ。
「永劫融けぬ蒼雪、なんて素敵な名前なのかしら。
使う時に名前を叫んだりするのかしらね?
こうやって――永劫融けぬ蒼雪ッ!」
――しーん。
■ポーラ・スー >
びしぃっ!
と、右手を突き出したキメポーズ。
哀しいかな、誰も見るものは居ないのであった。
■ポーラ・スー >
「――えーっと、学籍番号は■■■■■■■■■■■■、っと。
――あら」
電子端末に数字を入力しても、返ってくるのはエラー。
少しだけ考えてから、生活委員のデータベースにアクセスして、再度入力する。
「うん、大当たり♪
やっぱり、わたしってば何でも出来ちゃうのね!」
本心からの自画自賛。
生活委員会にある、異邦人の記録にその少女のデータはしっかりと残っていた。
「うーん、ヘンな経歴も、困った記録もないわね。
公安委員会としての活動も公表されているものだし、怪しいところはない、わよね?」
そうなると、それはそれとして困ってしまうのだ。
なにせ彼女は――
■ポーラ・スー >
「――総合怪異監査部は、蒼春千癒姫の行方不明によって壊滅。
彼女の生死は、いまだ不明。
捜索依頼は出ているけど、それ以来、目撃情報は存在せず」
■ポーラ・スー >
「『とても不愛想で、性格の尖った、治癒異能の頼もしい副部長』」
ここに来るまでに話を聞いた、少女の評判を復唱する。
そして――
「『あちらの方から「ファンです」と押しかけられたんですよぅ…!』」
――二つの情報が『繋がらない』
「困ったわぁ。
これじゃあ、またわたしの『お月様』が翳っちゃうかも」
■ポーラ・スー >
なにが起きているのか――専門外の事とはいえ、これだけ情報があれば十分すぎるくらいである。
ただ、それは少々――いや、かなり、女には都合が悪い。
「う~ん――でも、約束しちゃったのよね」
別にただの口約束である。
守らなければいけない理由はない。
伝えたくないのなら、黙っていればいいだけなのだ。
「――なんて、そんな事したら嫌われちゃうわ。
もし嫌われちゃったら――ああ、やだやだ、そんな事になったらわたし――」
――チクり、と。
首の傷痕が痛んだ気がした。
■ポーラ・スー >
「――ふふ」
興味を失ったように、ファイルを閉じて放り投げた。
デスクの上に背表紙から落ちたファイルは、でたらめなページを開く。
「あら――?」
そこにファイリングされていたのは――
「■■■■■■計画――■■■■■。
■■保持者、■■■■、■■■、■■■■、■■■■■――」
そこに並んでいる名前は全てよく知っている。
けれど一つだけ、名前が足りない。
――ページを捲ったのは、確信があったからだ。
「――■■保有者、『焔城鳴火』
■■■■■■との■■■■、■■%。
■■順応率、■■■。
■■■■■■計画■■■、■■■■」
そこまで読んで、女はそのファイルを閉じ、元の場所へと戻す。
女と■■■■■■計画を知る者しか読む事が出来ない、特殊な■■文字で書かれていた資料は、他人からすれば意味のない文字の羅列でしかない。
「あは――」
自分の首筋をなぞる。
そこには、決して消える事のない■■。
「――まだ続けるつもりなのね■■■■教授」
そして、自分の胸に手を当てる。
そこからは――なんの音もしない。
「でもね――それはダメよ」
■■■■■■は、■■■■■なのだから――
ご案内:「委員会街 公安委員会庁舎 -資料室-」からポーラ・スーさんが去りました。