2024/09/12 のログ
NPC > 『あ、…ええっ?!』

いきなり何かとんでもない事を言い出した上にしかも声が大きい。これだから異世界人は…あぁもう…。とでも言いたげに眉を寄せて困った顔をしている。

『いえ、あの… 』

男はあぁ、そうか。と察した。
小銭を入れずに電子マネーでの支払いを知らずに、このやかましい子は自分をドロボウか何かだと思ったに違いない、と。

『えぇと、今のはー』

イクトミス > 「確かに見ました!あなたは何をどうやったのかわかりませんが!絶対にお金を払ってはいません!!ジハンキとやらを騙せてもこのイクトミス=アルカスの目はそうやすやすと欺けはしませんよォ…!!」


問答無用、と男の言葉を遮るイクトミス。



「さぁ、大人しくお縄に着きなさい!」


その騒ぎを聞きつけたのか人だかりがわずかに出来始めると、その施設の係員も苦笑いを浮かべながらやってくる。時折こういった勘違いを起こす「地球オノボリさん」が居る事は彼らも把握しているのだろう。



「ああ…!良い所に来ました!
たった今、…そこの彼です! 彼が…無銭飲食を…ッッ!!」

イクトミス > 10分後・・・







「大変、申し訳ありませんでした・・・」



事情を説明して貰った後のイクトミスである。



ああああ、やってしまったぁぁぁ!という表情を思い切りアウトプットしながら、もう面目が立たないといった様子のイクトミスは視線を落としてひたすら先程の男性に謝罪を述べた。

まさか透明なエネルギー的概念のお金が在るだなんて…。
いくら知らなかったとはいえ、ご迷惑をおかけしてしまった。



………

そしてまた椅子に座りながら、だが今回は思い切り頭を俯かせている。

思い切りドロボウ呼ばわりしてしまったし、だけれど待合席で座っている人達はこちらを見てなにやらクスクス笑っているしでもう恥をたっぷりと掻いてしまいました。



別の人からは『おもしろかったよ嬢ちゃん』とか言われて飲み物を貰えたのは嬉しかったですが。恥ずかし過ぎて飲み物に手を付けるどころではない。


「うぅ、、、う… 」


「ワタシと、したこと、がが…っが…ぁぁぁ…」



『まぁ来たばかりの人はですね、そういう風に判断してしまう方も少なくはないですから…♪』と、ニヤニヤしながら…っ!くううううっ!恥ずかしいぃぃぃいいいいい!!!ああああああ!!!!


木のうろの中に頭を突っ込んで、この際鍋の中でもいいです!思い切り叫びたい!!

係の人 > 『193番の方~こちらの窓口にお越しください~』
ご案内:「委員会総合庁舎 各種窓口」にポーラ・スーさんが現れました。
イクトミス > 「ううっ…よ、呼ばれた… ッ  ぐぐ、、うう…っ」


しかも読んでいるのはさっきの人。
あああ、こっちを見て笑っている。
知らなかったんです!ああもう!知らなかったんですよォ…!


ずん、ずんと窓口まで向かうその足取りは重い。
椅子を引いて、係の人を見る。
すごいニコニコしている…というか笑っている。
うう、いきなりこんな…。


「先程は、…失礼しました…。」

「てっきり、盗みを働いている人がいたのかとばかり…」


係員は『まぁまぁまぁまぁ』と笑いながらも『よくある事だ』とフォローをしてくれているが…。赤っ恥だ。

そしてそれからしばらくまたやり取りは続く事になったが、どうやらワタシは常世学園という場所にこの世界の常識だとか…後は色々と学ぶために学校、に入学する事になるらしい。

そこの学園の中にある寮で住む場所は与えてくれるのだとか。仕事をして学費を稼ぐ必要があるので学園でまた仕事について詳しい説明を受ける事になるのだそうな…。


なのでもう一晩は昨日と同じ施設でお部屋を借りて過ごす事になるらしい。半日以上をここでずっと過ごしていたけども…これが一体何になるのだろうか?
 後は病気だとか異能、というモノの検査があるらしい。
それは強制ではなく、本人が希望すればという事で一応ワタシはそれに頷き学園で改めて検査を受けてみる事に同意した。

学園だけでなくこの場所には同じように他の世界から来た人も多く、仲良くできる人もきっと見つかるだろうと励ましを頂いた。それからも何か分からない事や困った事があれば気軽にご相談下さい、と言われた。


今日だけで沢山の綺麗な紙を貰った。
そこには何故か見慣れない文字なのに、その言わんとしてる事の意味が分かる事に不思議だと思ったが。それについてもどうやら何かしらの影響で言葉や言語の壁が取り払われているのだと説明を受けた。

だが理解出来ない事、知らないこの世界についての事はこれからしっかり勉強しながら覚えていけばいいと優しく教えてくれたのだ。


・・・



「長かっ た・・・」

ポーラ・スー >  
「――はぁい♪
 そこの可愛らしいお嬢さん」

 そんな疲れきっている少女の後ろから、ぽん、と軽く肩を叩きながら朗らかな声がかかる。

「とぉってもお疲れみたいよ?
 よかったら、この『つぶらなLemon』どうかしら。
 爽やかな酸味ですっきりするわよ」

 そう言いながら、320mlほどの小さな缶を差し出しつつ。
 どこか楽し気な笑みを少女に向ける、和装の女。
 

イクトミス > さて、そろそろ帰ろうかと思ったが帰りはどうにか自分で、と言ったので自力で戻らなければならないが…一応このスマートンという端末を与えられたのでこれを遣えば道が分かるらしい。

異世界から来た人でも簡単に使えるように画面には『帰り道』というショートカットがそこにはセットされているし、今の自分の位置も分かるらしいのだ。



さぁ~て…、少し帰り道には景色を楽しみながら色々見て学んで帰るとしましょう。この世界には刺激的な事が沢山ありますから…。いつまでもオノボリさん気分でいるのも良くない…。


しかし今日はまた、やらかしてしまったなぁ。
大声を指摘されたりだとか、ヒト様をドロボウと勘違いしたり…。




「はぁ…


   ッひぅ ワァァァー!?!?」



驚いた!驚いた!ビックリシタァァァ!!!?



「って・・・あ…これ、は。」

あのジハンキから出てくる飲み物ではないか。
しかも冷えている!思わず差し出された飲み物を手に掴むと表面の冷たさと水滴が気持ちがいい…。


「えっ、いいんですか! でも今ワタシ何もお返しなんて…」



うぅわ、綺麗な人だ。
『倭美人』という言葉があったが、まさしくそれに当てはまるだけの美しさと優雅さとしとやかさを纏った様な、そのまま、という印象の人が…。


「綺ぃ麗な人……」


つい見惚れてしまって言葉に出してしまうイクトミスは飲み物の事も一瞬頭から飛んでしまう。

ポーラ・スー >  
「あらあら、悲鳴も可愛らしいのね?
 はいはい――大丈夫よ、異邦の地に来たばかりだと大変よね。
 そういう時は、少し気分転換も必要だもの」

 そう言いながら、少女の手に冷たい缶をそっと押し付け。

「まぁ――!」

 少女から、つい、という調子で零れた言葉に、口元を袖口で隠しながら目を丸くして。


「まあまあまあ!
 わたしってば、とっても罪作りなのね!
 出会ったばかりの愛らしいお嬢さんを見惚れさせちゃうなんて」

 そう言って、とっても嬉しそうに少し小さな両手を合わせ。

「ふふっ、愛しいあなた?
 あなたもとぉっても可愛らしいわ。
 特にさっきの、『お縄に着きなさい!』は、可憐でかっこよかったわ!」

 そう、花が咲いて舞うような朗らかな笑顔で言った。
 

イクトミス > 「アハハー・・・・あっちでもこっちの世界でもよく声がデカいとは言われました~~~! そんな風に褒めて貰ったのは初めてかもしれません~~いや~ふへへ~…!」

そうだ、ここには自分以外にもこうして流れ着いた人がいるのだろう。その人たちも自分と同じように困惑もしただろうし、戻るに戻れない苦悩を抱えているのだろう。



「あー・・・はい。別の国とかじゃなくて、別の世界ってコトらしいですし…、あちらの世界の仲間も、ご主人様とか奥様の事も心配ですし…。」


わっ、冷たい。
にしても本当に便利。買ってそのまま旅に出てもこれがあれば持ち歩けそうだ。


「愛らしいだなんてそんなそんなぁ~、でもすごく綺麗ですね。お姫様なんじゃないかって驚いちゃいましたもん。」

振る舞いから装いまで、その表情の微細な変化一つをとっても優雅で、まるで気品漂う雰囲気は貴族というよりも王族のそれに近く思えるのだ。しかし驚いた、そんな綺麗な人だって分け隔てなくこうして親切にしてくれるのだから。この世界に来てからというもの、いい人に立て続けに出会っている。人に恵まれているだけ自分は幸せだなぁ、と心底思う。


「はい!見惚れました!まだまだ見惚れて居られる自信がこのイクトミス=アルカスには御座いますよーっ!!」

ふんす、と鼻を鳴らすと思わず拳を握り込んで手にした缶が少しへこんでしまう。それにアッ!と声を上げてあたふたしだすイクトミス。



「おなわに・・・」


「・・・」


ハッ!?


「結構前からじゃないですかァァーーー!?」




「いやーー・・・お、お恥ずかし過ぎて木のうろに頭を突っ込んでしばらくずっと天地が鳴動する程に叫び続けたくなります…!!!」


その話になった途端、美人の視線に耐えかねて視線も顔も逸らす。
なんだなんだこのシチュエーションはー!

にしても恥ずかしい所を見られていたとはこのイクトミス=アルカスの一生の不覚!どうにかして忘れて貰いたい!!いやー、顔が熱い。なのでこのご厚意で頂いた飲み物を早速飲んでみよう。

「いや、あついです。あつい。この国はとても、暑いですよね。汗もすぐにかいちゃいますし…飲み物頂きます…!」


・・・?

・・・、かり、かりっ。
コンコン。 ツンツン。 メコッ―――?


「ん~~~~~~~~~~~~~??????」


疑問符の数だけ連続で瞬きをしながらまん丸な目で缶ジュースを覗き込むとどこからどうやって飲むのかを確かめる。さっき他に飲んでいた人は軽い音を立ててからすぐ飲んでいたが…。

ポーラ・スー >  
「声が大きいのは素敵な事だわ。
 だって、声が大きく無いと、あなたの愛らしい声が遠くまで届かないでしょう?」

 くすくすと、微笑みつつ――

「そうねえ、別の世界と言われても実感するのに時間がかかると思うし、お知り合いやお友達も心配よね。
 でも焦らないでいいのよ」

 そっと、少女の手に白く雪のように淡い色の手を添える。

「少しずつ、ちょっとずつ慣れて、折り合いを着けて行けばいいのだから。
 ――まあまあ、そんなに褒められても、本当の事だから困っちゃうわ!」

 片方の袖口で口元を隠しながらくすくすと楽しそうに笑い。

「――ええ、あなたが手続きにやってきてからずーっと見ていたの!
 ああ、この子はとっても可愛い子だって。
 だって、可愛らしい美少女には、誰だって見惚れてしまうものでしょう?」

 そう少女の反応を面白そうに笑いながらも、その様子を愛らしいと思っているのは本心のようで、楽し気である。

「だからね、心配しないでいいわ。
 馴染むまでは大変だと思うけど、ココにはあなたの味方だってちゃんといるんだから」

 そう言いながら、缶ジュースを飲もうとする少女の手に自分の手を重ねて、ボトルの蓋を軽く捻って一緒に空ける。
 蓋の空いたボトルからは、爽やかな柑橘の香りがふわり、と漂った。

「――ね?」

 そうしてから、再び少女に微笑みかけた。
 

イクトミス > 「そ、…そうでしょうか!?」


まさか声が大きくて怒られない日が来るとは想像もしていなかった!しかし、やはり…まさかとは思っていたがこれは自分にとっての長所だったか~~~・・・・とシミジミ。こんなきれいな人が心を込めて語ってくれているのだから間違いではない気がする。

直感で分かる。
この人はとてもいい人…!!
だってワタシのもしかしたら唯一かもしれない長所をだ…こんな僅かな間に見出してくれたんだから!!


 「あ  」


重ねられた手は柔らかくて、自分の熱くなった手よりは体感的にはほんのりとひんやりと気持ちが良かった。そして優しい声で今のこの状況や気持ちについても共感をしてくれて、すごく優しいままで耳から心に浸透するみたいに色々な事をほぐしてくれるようだった。


「いや~~、見る目がありますねぇ~~~!」


ふへぇ、ふへぇ、とこんなに褒められた事はない。
なんだか心も顔も緩み切ってしまってにんまぁ~~~と満面の笑みを浮かべながら嬉し過ぎて目も瞑ってしまいそうだ。


わ、開いた。


「味方、…」



なんて優しい世界だろう。
優しい世界には優しい世界が居るんだ。


「はいっ!」



この世界に来てから、やっぱり人とのめぐり合わせは素晴らしい事になっている。最初のあの荒れ果てた場所は魔物が現れてびっくりしたけど、その後カズミンさんて方にも助けて貰ったし、寝床を用意して貰ったりもしたし。ドロボウ扱いをしてしまったにも関わらず許してくれる人もいるし。


そして今はこうして出会えたこの綺麗な人もまた優しくしてくれる。


「あ、ワタシ、イクトミスって言います!イクトミス=アルカスです!趣味は楽しい事ならなんでも!あとあと、あとは好物がカミオの実・・・って。ワタシの世界の果実なのでわからないと思いますけど!そういう甘いものがあってですね!おいしいんです!」

空けて貰った缶を、少しぎこちなくも口に近づけるとさっそく飲んでみる。いや、おいしい。おいしいぞこれは!初めての味だ。


うわ、おいしい!すごい!おいしい!!

ポーラ・スー >  
「ええ、わたしって美少女を見る目だけはあるの!
 と、く、に!
 あなたみたいに、とっても素直な子は特別よ」

 微笑みに笑顔を返す少女に、女は『胸が高鳴りそう(・・・・・・・)』だった。

「いくとみす――うーん、それじゃぁ、『とみちゃん』ね!」

 いつも通り勝手な愛称で少女を呼んで、良い事を思いついたとばかりに、ぺちん、と両手を合わせた。

「まあ、甘い果実なのね?
 いつかわたしも食べてみたいわぁ」

 そう言って美味しそうに、新鮮な味を楽しむ少女に目を細め。

「わたしは、ポーラ・スー。
 生活委員で、学園の先生よ。
 あ、わたしの事は『あーちゃん(・・・・・)』って呼んでね。
 きっとこれから会う事が多くなると思うから、困ったことがあったらいつでも頼って頂戴?」

 そして楽しそうに少女の前に回って、自分の両手は後ろに回り。

「趣味は、そうねえ。
 あなたみたいに、とっても愛らしい美少女にちょっとしたサプライズをしてあげたりする事、かしら?」

 そう満面の笑みで向かい合いながら、気持ち少女を見上げるような姿勢で。
 身体の後ろから右手をすっと横に。
 なぜかそこには、青白くほんのり光る拡声器。
 少女から見れば、円筒形の奇妙な道具にしか見えないだろう。

 ――しかしなぜか。
 周囲の庁舎の委員の面々は、どこか面白そうであったり、苦笑を浮かべていたり、またか、とでも言いたそうな表情を浮かべていたり。
 

イクトミス > 「あっはっはっははァ~~」


いやいや、褒められるというのも嬉しいものだ。
こんなに褒められた事があっただろうか?
褒められた事よりもお叱りに逢う事の方が多い。
多分普通はみんなそんなモノだと思うんだけども。


「おおっ!けど惜しいですね~!実はト・ミ・ィーなんですよ!トミィです!トミィ~~~!仲良くしてくれてた人達からはそう呼ばれてました…!」


まさか愛称までこんな簡単に言い当てられるとは…。
やはりこの方はただの綺麗な人とは訳が違う!


「はい!いつかあっちに戻ったら、こっちにまた戻ってそれをごちそうします!おいしいですよ~!」


まだ元の世界からこっちに流れ着いて
それがまだ、たった二日間。

それでも不意にその距離の遠さを感じて苦しくもなるが。
めげてはいられない。どんな時でも元気で、明るくいなければ。


でないと沢山の人に心配を掛けてしまう。



「ぽーら、すー、さんですか。」


「・・・学校の…」



ん?と思ってさっき係の人から受け取った紙の束を持ち上げるとその内の一枚を一番前に持ってきてもう一度見てみる。


「常世学園・・・まさか、この常世学園ですか?!」

「あ、あ、…あーちゃんさん!先生、すごい!先生をやってるなんて、すごくすごい人なんですね…!? でもよかった!知ってる人が知らない場所に居てくれるなんてそんなのありがたすぎます…!」


何かよく分からないが、運が回ってきている!
これも日々のあれこれが良いからなのか?


「ふ ぇ ッ はははっ! サプライズばっかりですよ!この出会いも、それであーちゃんさんとお近づきになれた事も!しかも学校の先生…ん?」


しかし、年下くらいに思ってたんだけどもまさか先生とは。いやいや元居た世界でも自分より年下でも秀でた人はいましたし。しかしまさかこんな綺麗で可愛いのに。頭もいいなんて。


「ん?それは・・・?なんだか盃みたいなカタチ…」

一体なんだろう?この世界のモノは全て一目見て判断できないものが多い。それともそこに飲み物を注いでいっぱい飲むのだろうか?確かに沢山飲めそうではあるが…。

ポーラ・スー > . 
「あらっ、惜しかったわね。
 でもそれじゃあ、『とみちゃん』はわたしだけの呼び方って事よね?
 それって、とっても特別だわ!
 改めてよろしくね、『とみちゃん』」

 そう言いつつ――

「うふふ、そうよー、先生なの!
 それに、初等教育と基礎教養――そうねえ、あなたが必ず履修しないといけない講義を担当する事になると思うわ。
 だから、学校でも安心して、この世界の事をゆっくり学んでいってくれたら、とぉっても嬉しいわ!」

 なんて、教員らしい事も言っているが――そう、この庁舎に居る委員たちは知っている。
 この『ポーラ・スー』という女の、面白くも憎めない悪癖を。

「これはね、『録音再生機能付き特別拡声器バージョン00EX』って言うのよ。
 だからね、こうやって――」

 女がスイッチをぽちり。

『確かに見ました! あなたは何をどうやったのかわかりませんが! 絶対にお金を払ってはいません!! ジハンキとやらを騙せてもこのイクトミス=アルカスの目はそうやすやすと欺けはしませんよォ――!!』

 と、少女の大見得を切って宣言した台詞が、すっかりそのまま、窓口周辺に大音量で響き渡る。

「――ね?」

 そうにっこりと言ってから、女はくるりと身を翻し。

「みんなぁ~!
 イクトミス=アルカスちゃんを覚えてあげてねっ。
 とぉっても可愛らしい仲間が増えるんだものっ!
 素直で愛らしくて、とってもいい子だから、みんないっぱい仲良くしてあげてねっ!」

 そう、拡声器を使って庁舎全体に響くような声で、喧伝しながら庁舎の中をひらりひらりと走り去っていく。

『お恥ずかし過ぎて木のうろに頭を突っ込んでしばらくずっと天地が鳴動する程に叫び続けたくなります――!!!』

 なんて、少女の言葉を時折、大音量で再生しながら。
 女は少女の事を庁舎全体に知れ渡らせるほどの勢いで、しばらくの間、録音された少女の声と、楽し気な女の声が庁舎に響き渡る事だろう――。
 

イクトミス > 「・・・!」


言われてみれば、それも『そう』だ。
なんてことだ。このあーちゃん先生は先生だけあって発想までユニークで天才的ではないか。これは1本取られてしまったと認めざるを得ない。


「はい…! こちらこそよろしくお願いしますあーちゃん先生さん!」


学校か。
確か、自分が幼い頃に居た元の世界では通っていた記憶が少しだけ残っている。
しかしそれも殆ど薄くなってしまっていてなんとなくしか覚えていない。


それが本当に元居た『別の地球』での事なのかもあやふやだ。
実の両親の顔も覚えてないくらい記憶力が良くなかったのだろう。


「・・・ふむ、ふむ??」


なんだか楽しそうだ、とそれを手に何やら操作している様子をすぐ隣で眺めながら。さて一体何がどうなるんだろう?興味深そうになにやら弄っているが…なんだかワクワクする。


「ワタシの声が…?!こッ、こここここ声がァー!?!!?」




周囲に居た利用者たちはそれぞれの反応を示しながらも、彼女の行動には柔らかそうな反応で返す者ばかりでそれほどに認められているのだという事がなんとなしにではあるが伝わってくる。


「いーやはや・・・!そんなに褒めても今はまだなぁんにも出せませんですよ~~~ウェハはははッ…!!」


そうして彼女の『宣伝』にはこちらも舞台上のスターよろしくお辞儀をしながら手を振り、笑顔を向けてはよろしく!よろしくお願いします!と二人並んで、そして改めて名乗りを上げる。


「イクトミス=アルカスともーします!以後お見知りおきを!!」


「常世島のみなさま!よろしくお願いします…!!」


そして盛り上がっていくテンションに後押しされたのか口が回ればボリュームも上昇してく様子を見かねた係の「方々」からその後、流石に注意されたのだとか…!大変すみませんでしたぁっ!!


テテン!

ご案内:「委員会総合庁舎 各種窓口」からイクトミスさんが去りました。
ご案内:「委員会総合庁舎 各種窓口」からポーラ・スーさんが去りました。