2025/01/01 のログ
ご案内:「学生通り」に泳夢さんが現れました。
■泳夢 >
夜も更けた年末の、日付を跨いだ元旦の真夜中。
時計の針が12時を揃って指さしてから、まだ半刻も経たない時間。
車椅子に乗って夜の街を散歩する少女がいた。
「……ん、この調子なら三社参りもいけそうかな。流石に除夜の鐘は突けなかったけど」
公園の階段から転落し、大事を取って一日の入院から空けて直ぐ。
既に身体の痛みは引いていて、痣や頭の傷も"何故だか既に"目立たなくなっていた。
少女自身はその事に全く違和は覚えて居らず、疑問すら持たぬまま。
暢気に鼻歌交じりに神社へ向かって車椅子を走らせていた。
■泳夢 >
凍える夜の風が白蝋のような白い髪を靡かせる。
整った顔立ちと、人形めいた作り物の四肢が外灯に照らされる。
辺りを見れば、やはりというべきか人気はそう多くない。
それでも普段を思えば、まばらには在る辺り、流石は年明けの夜か。
除夜の鐘の音はもう聞こえないが、代わりに遠くから人々の喧騒の音が聞こえてくる。
恐らくは神社周りにきっと人だかりが出来ていることだろう。
ともあれ少女はそんな道のりを、ゆっくりと進んでいく。
今年の願い事は何にしようかな…なんて、他愛のないことを考えながら。
ご案内:「学生通り」から泳夢さんが去りました。
ご案内:「学生通り」に泳夢さんが現れました。
■泳夢 >
新年の昼が過ぎ、日が傾いて夜も更けた頃。
車椅子の少女はベッドから起き上がり、ぐっと伸びをしてから身支度を始める。
顔を洗い、喉を潤し、装束を整えてから車椅子を玄関へと走らせる。
「ん…っ、夜更かししたとはいえ…流石に寝すぎちゃったな」
このような時間に彼女が起床し、外に出ることになった理由は単純なもの。
昨夜の三社参りが早朝にまで及び、返って来たころには眠気も限界でそのまま寝床へ。
ぐっすり眠って、気が付けば夕方になっていた…というワケである。
当然、朝食昼食も食べられていない為、お腹もぐぅぐぅ鳴っていた。
まだ買い溜めた食べ物なんかも残っているので、適当に其れを摘まんでもよかったが、
なんとなしに外の空気も吸いたくなったので、とりあえず外に出てみることにした。
適当なお店が空いてたらそこへ行って、空いてなかったらコンビニでも寄ってみようと。
■泳夢 >
冷えて来た夜風を浴びながら学生街の大通りを行く。
白蝋めいた髪が風に揺れる。月光に煌めくその髪は、彼女に合わせてゆらゆらと。
寒空で吐息を吐けば、白霧のようになって散っていく。
「……やっぱりみんな、家族と過ごしてるのかなぁ」
現在時刻は19時過ぎ。学生であれば、家族団らんの時間である。
きっと今頃、それぞれの家庭で楽しく過ごしている事だろう。
そんな光景を想像しながら、少女は夜の道を進むのであった。
ご案内:「学生通り」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
■泳夢 >
ともあれ、車椅子は少しずつ商店街の方へと向かう。
いつもより何処となく寂しい通りを進んで、丁度半分に差し掛かったところだろうか。
視界の端に、数日前に転落した公園が見えた。
「あそこ……」
ついついふと車椅子を止めてしまう。
時間にして1時間にも満たない邂逅で、それを見たのも一瞬だった。
もしもあの時、周囲に人がいなかったのならどうなっていたのだろう?
そんな事を思案すると、何故だか胸が高鳴って。
ふるふると少女は頭を振って、その感覚から目を逸らす。
■紫陽花 剱菊 >
さゆる北風、そぞろと乱れる少女の思考。
宵闇の帳、静寂の寒空が見下ろす街景色。
少女の背後より、気配はなくも、かつり、かつり、と、足音が迫る。
「──────たまさか、何か思う所がおありと見える」
少女の背に、音鳴り一つ。
艶やかな黒糸をざっくばらんに揺らす、男の姿。
あいも変わらず気配はないが、今宵ばかりは衣擦れ音がかすかに聞こえる。
斯様、何処かぎこちない居住まいであった。
「どうも、斯様な時間に手弱女一人とは感心せぬな。
……今宵も良くぞ冷える。然れど、眠れぬ日もあろう……」
口元に二本指、一礼。
独特なる異邦の挨拶。
■泳夢 >
最初に聞こえたのは小さな足音。
気配はなくて、本当にたまたま…黄昏ていたから聞こえた音。
くるりと首だけを傾けて、その後方へと視線を向ける。
車椅子の背もたれ越しに見えるは、あの病院で出会った男。
剣呑な雰囲気を持つ、実に我の強い人物の姿だった。
「わぁ、数日ぶりで。あけましておめでとうございま~」
ともあれ、出会ったからにはまずは新年のあいさつを。
これまた妙な偶然もあるものだと思いつつ。
或いはもとより、この辺りを調査でもしていたのだろうと、そんな想像。
「生憎、一人暮らしなのでそれはしょうがないかなぁって。
たまに様子を見に来てくれる施設の人とかはいるんだけどね」
■紫陽花 剱菊 >
僅かな戸惑い。
知らぬ挨拶であった。
「……あけまして、おめでとうございます。此れであっているだろうか?」
郷に入っては郷に従え。
此れが作法とあれば、従おう。
諸手を合わせて、再度一礼。
「此方の地より罷り越して早数年……。
聞き馴染みも無いが、時間帯以外にも礼節が変わる事があるとは……」
よもやよもや。
然るに此れは、如何にして日常に縁がなかったかの証左である。
ゆるりと虚が少女を見下ろす。
「左様か……」
人助けを極力避ける少女なれば腑に落ちる。
然るに、自由気まま、雲の流るるままに。
嘘偽り無き生き様を嘯く程、剱菊は無粋に非ず。
「夜風に当たるともすれば、悪くない。
何くれど、静寂に沈む宵闇に身を置くのは私も気が落ち着く」
「……兎角、何処か行く予定でも?」
■泳夢 >
「うん、あってるよ。お正月…新年の挨拶だね」
お正月という文化も初めてなのかな?と。
あるいは純粋に、その言葉を交わす機会がなかったのか。
そう思案しつつの言葉を返しながら、車椅子を反転させる。
ぐるりとその場で180°。中々小回りは利くようだった。
「気晴らしに風にあたるだけでも、何となく違うよね。
私は朝昼食べてなかった分を、コレから食べに行こうかなって。
そういうキミは、なんでこんなとこに?」
質問に答えつつ、素直に疑問を抱いたことを問うてみる。
■紫陽花 剱菊 >
「正月……此方に置ける年始め、だったか。
手間を掛けさせる。ややもすると、人とかかずらう事も無く、
鍛錬と仕事に明け暮れていた。次、某と出会う時に使う事にさせて頂く」
御推察通り、影より泰平を守りし男は、
元より日常的な縁もたけなむ事も無し。
日常に馴染まんとする男は、皮肉にも無辜の民を思う程に遠ざかる。
「……畢竟、腹を空かしていた、と。
いみじくも、私も同じだ。軽食の買い足しか、或いは何処か甘露でも、と」
徐ろに懐より取り出したるは麻袋。
買い物袋であるが、随分と使い込まれている。
■泳夢 >
「あははは…、確かに人付き合いになれてはなさそうだもんね。
三が日の間くらいは、あけおめしておいたほうが良いよ、きっと」
尤も少女の方も、そうやって挨拶する相手はそう多くはない。
記憶のないかつてはともかく、今は他者にアドバイスできるほどの人付き合いはないのだが。
「なるほど、じゃあ目的は同じだ。
……にしても、随分と古風なの使ってるんだね」
ともあれそれはそれ、これはこれ。
自分のほうが社交性があるのなら、それらしいことは口にするもの。
「せっかくだし、途中まで一緒に行く?
まぁこの公園通り過ぎたら、直ぐくらいの距離だけど」
車椅子をまたゆっくりと反転させつつ、そんな提案を投げてみる。
■紫陽花 剱菊 >
苦虫を噛み潰す、顰めっ面。
文字通り、図星を突かれた気まずさ也。
「……何くれど、
かかずらう努力はしているつもりだが……得も言えぬ。
必要最低限の作法は身につけつもりなのだが、いやはや……」
返す言葉もない。
何時ぞやの飯屋の一件を思えば、さもありなん。
「己が故郷より用いていた物。
今は亡き家族が、母が使っていたものだ」
剣呑たる風体が、僅かに綻ぶ。
久遠の地、血染めの記憶にも掌。
よほど、家族には思い入れはあるようだ。
麻袋の染みをなぞっては、懐にしまい込む。
「よろしければ、御一緒させて頂こう。
此の前の詫びとは言わぬが、何か欲しければご随意のままに……」
■泳夢 >
「そういうのって、やっぱり慣れとか経験だもの。
魔術とか…身体動かすのだってそうでしょ?」
だから、経験を積んでいけば慣れるものだと。
そんなニュアンスで、さらりと少女はフォローを入れる。
「…そっか、思い出の品って奴なんだね。
そりゃあ幾らボロボロになっても使うってもんだ」
そんな彼の言葉にふむりと納得しながら瞳を細める。
あぁ、家族ってやっぱりそう言うものなのだなと、僅かな羨望を滲ませて。
「流石にそこまではいいよ。
別に私に迷惑が掛かったわけでもないんだし…さ」
ともあれ反転させた車椅子は、再び道を進み始める。
速度はそれほど出さず、ゆっくりと徒歩の速さで。
■紫陽花 剱菊 >
「然り。故にやって見ている。
皆がやるように、先ずは気配を少し……。
が、得も言えぬ感触だ……自らの出す音等、
戰場以外で聞いたのは幾年ぶりか……」
最初の足音が文字通り、剱菊なりの歩み寄り。
何時ぞやの病院のように忽然と現れなかったのが証左。
行住坐臥を戰場に置く武人にとって、斯様なものは未熟の証。
故に感じる。全体的なぎこちなさ。
「其方ならそう言うと思っていた。では……」
一礼、同じくして歩み始める。
こつ、こつ、と自然な足音。
歩む姿はぎこちなくも、歩みは同じ。
然れど、少女の"歩み"には手を貸さず。
彼女の望まぬことをするほど、愚かには非ず。
「…………」
ふぅ、と吐き出す吐息の音。違和感は拭えない。
さゆる空気に、宵闇の静寂が肩を切る。
「……時に、其方の家族は?」
時として、ほんの刹那の少女の機敏を見逃しているわけではなかった。
羨望の色。思うべきものに、言問うた。
■泳夢 >
「戦場かぁ…想像もできないけど、人と言葉を交わす余裕なんてないんだろうね」
少女は戦場と言うものを、創作物の中でしか知らない。
否、そう言った知識や歴史資料こそ知ってはいるが、それは空想の中のもの。
現実にそうした空気を、場所を身を以っては知らないからこそ、そう返す。
ともあれ…ゆっくりと二つの影は夜道を進む。
傍から見れば、実に不釣り合いな姿であったのは想像に難くはない。
「いないよ、たぶんだけど」
その道中での返事は、実にあっさりとしたものだった。
隠していることでもなく、気にしすぎていること…と言うものでもないのだろう。
或いはどこか他人事のように、口にしているとも言えるだろう。
ただ、それでも先ほど羨望を見せたのは、どうしようもないものなのだろう。
それは幾ら孤独を望む人であっても、時には人が恋しくなるのと同じように。
「保護された時より前の事は分かんないけど、迎えに来る人もいないしね」
■紫陽花 剱菊 >
音も無く、頷いた。
「返礼は全て、武勇にて。言葉は不要。
我が故郷は乱世の世。戰場で生きてきた。
故に、未だ驚きを隠せぬのだ。此方の地の泰平に……」
無論、如何様にでも火種は燻る。
唯常に戦が起きる乱世の世とは違う。
斯様なことを民草が宣うのが驚きなのだ。
泰平の世に、慣れ親しんだもの。さもありなん。
少女の言葉を借りれば、慣れぬのであればその程度の事であろうよ。
「……、……左様か」
あっけからんと言ってのけた。
うらぶれるほどでも無くも、心に一つ、引っかかるものはあるとみる。
夜風がさゆり、互いの白と黒をざっくばらんと見出していく。
「然らば、私も同じだ。
疾うの昔に、私の家族もいない」
同調するわけでもなく、淡々と事実のうなべるのみ。
「保護、か。
……差し支えなければ、詳しく聞いても良いだろうか?」
■泳夢 >
「そっか。なら猶更、大事なものだったんだね、あの袋」
同情をするでも無し。ただ、「そうなのか」と受け入れるような少女の返答。
己には家族へ対する思い出がないからこそ、それがある事がよいことなのだと、少女は素直に感じたのだ。
記憶になくとも、家族は大事なものであるのだと、少女は知っていたからこそ。
「んー、半分くらい私も他の人から聞いた話になるんだけど」
少女自身も、当時の事を詳しく覚えていない、という事なのだろう。
他人事のように話すのも、それでは致し方がないことだ。
ともあれ、かつてを思い出すように頭をひねりながら、少女は続ける。
「ここにある"穴"…だったかな。そこで私は見つかったらしいんだけど…。
その時からこんな身体で…当時はもっと傷も色々あったんだって。
でまぁ、この島の人に保護されて色々調べたりなんだりしたんだけど…
結局、私の記憶がないものだから、なーんにも分からずじまい。
それから治療とか支援とか社会復帰プログラムやらを受けつつ今、って感じ」
■紫陽花 剱菊 >
大事な物。肯んずるべき言葉だ。
「……ともすれば、"未練"と言うべきが正しいのかも知れない」
大事ではある。
それ以上に、悠久の刻においてきた未練だ。
家族を語りて朗らか成れど、同時に眉を潜めるのは、苦渋。
「……妙に他人事かと思えば、覚えていなければ合点も行く。
……然るに、例の根の国、底の国やもしれぬ"穴"か……」
人呼んで、黄泉の穴。
謎多き佇む涅槃の先。
幾度も訪れたことはある。
彼女以外にも、出るものを"処理"した事も。
「空事の記憶、不足の少女……然もありなん、か」
無い袖は触れぬ。空洞には虚無しか響かぬ。
無い、無い、とくと何も無し。不足の少女。
「いわんや、尚の事其方は逞しいな。
斯様な居住まいで、一人で生きようとするのだからな」
頼らぬ事を咎めはしない。
虚言、空言無き孤独を求める。
素直に感服するより、他は無し。
故に、素直に疑問も過る。
「……然るに、斯様な佇まいでは苦労も多いであろう。
私は楽をすることが悪いとは思わない。何故そこまで手を払う?」
■泳夢 >
「未練かぁ……なんもないのと、どっちがいいんだろうね」
それは少女にもわからぬ事。
在るからこそ苦しむこともあれば、無いからこそ羨むことがある。
比べることは本来できぬのだろう。
それでも、ついぞ口から出てしまう。
「そういう事。記憶にないからどうしょうもなし。
まぁでも、生きていくだけの知識だけは残ってたみたいだし……。
それに今だって、一人で何て生きていけてないよ」
何という事のない。少女にとってそれは事実を口にしてるだけの事。
「義肢や車椅子だって、支援してもらってないと用意もできない。
毎日じゃないだけで介助に来てくれる人だっているんだし」
己はどうあがいても、他者の手を借りねば生きる事が出来ない。
「もしも義肢が無くなったら、それこそ食べるのにも人の手を借りないといけないしね。
ただ生きているだけで、人に手間暇を掛けさせちゃうんだ、私は。
だからまぁ…それを少しでも減らしたいって思うのは、普通だと思うよ?」
ただ、それだけの事なのだと。