2024/06/11 のログ
ご案内:「商店街」に深見透悟さんが現れました。
ご案内:「商店街」に桜 緋彩さんが現れました。
深見透悟 > ――放課後の商店街

天気が崩れがちな時期だけれど、本日は朝から空模様は概ね良好。
こういう運は良いんだよな、とどこか誇らしげにテディベアは商店街の入り口、門型のアーケードの下にて人待ちをしていた。
数日前に商店街にて買い物を手伝って貰った風紀委員がその相手。
前回は鯛焼き屋を食レポして貰ったのだが、今回も商店街で評判のお店をリサーチして欲しいとお願いしてみたのが経緯である。

「正直、委員会で忙しいかと思ってたんだけどもー……」

近頃何だかきな臭い噂を耳にしていたからダメ元で提案してみたのだが。
案外すんなりと同意を得られたので、
これは商店街の警邏も兼ねてるんだろうか、と勝手に案じてはご苦労様だなあ、と勝手に労ったりしながら相手の到着を待っている。

桜 緋彩 >  
商店街までの道を駆ける。
別に時間に遅れているとかではなく、移動は走るが癖になっているだけ。
アーケードが見え、さて待ち合わせ相手はと目を凝らす。
なんせ相手はテディベア、人ごみに紛れてなかなか見付からない――

「――っと、お待たせいたしました!」

と言うわけでもなかった。
なんせテディベアが人を待っているのだ。
となれば道行く人がそちらを見るので、地面を見る人の視線が集まる場所に待ち人がいる。
彼の前で足を止め、一礼。

深見透悟 > アーケードの下でテディベアが人待ちをしてる姿は、事情を知らない人が見れば捨て置かれている様にも見えた事だろう。
だが、そのテディベアはしっかりと手入れされているのか、年季が入ってこそすれど目立った汚れは無く、何より二足で直立している。
それが門型アーケードの柱に寄り掛かって、ぼんやりと空を眺めているのだから、珍妙極まり注目は集めども話しかける勇気のある通行人も出なかった。
なお本クマは人目を引く事自体は慣れっこなのでどこ吹く風だ。

「あ、桜センパイ。ぜーんぜん、俺もさっき来たとこだから~
 それより、呼び出す様な事してごめんねえ? 委員会、今忙しんじゃない?」

人混みの中から少女が現れれば、柱から背を離してもふもふの手をひらひらと振って一礼に答える。
直前まで考えていた『もしかして忙しかったのでは』という懸念を口にしつつ、桜を見上げて小首を傾げる。
テディベア相手にも一礼する姿は律儀な人だなあ、と素直な感想を抱く。遅刻して来たわけでもないのに、と。

桜 緋彩 >  
「いえ、大丈夫ですよ。
 風紀の方も問題はありません」

刑事部みたいな一部の部署は何やら忙しそうにしているが、一般風紀の自分はそんな大したこともない。
精々とこコレ!の警備が普段の仕事の合間に入っただけで、こうして遊ぶ時間ぐらいは十分取れる。

「ところで今日はどちらに?」

商店街の店を巡るとは聞いていたが、詳細な行先迄は聞いていない。
今日はどこへ行くのかと尋ねてみて。

深見透悟 > 「あ、そーお? どうやら要らん心配をしてたみたいだ、はっずかしー
 いやさ、こないだの鯛焼きをあまりにも美味しく食べてたもんだから今回はクレープでもどうかなって、そのついでにちょっとぶらぶらしよっかなーと思いましてですね」

風紀委員なら一律忙しいものだと勝手に思っていた手前、透悟は思い違いに顔が熱くなるのを感じる。
恥ずかしい、と口にしながら両手を自身の頬に当てくねくねと身を捩った後、今日の詳細を訊ねられればそのまま答えて。

「あとは魔法薬の材料の買い出しのお手伝いもちょーっとだけ。
 あ、それは最後で良いから……ま、総合的に言えばセンパイの息抜きにでもなればなーって感じで。
 それじゃ行きまっしょい?」

アーケードをくぐって商店街へと進む様に促しながら。
とはいえ前回よりも人通りが多い気がする。油断してると気付かれずに蹴っ飛ばされそうだ、と内心冷や汗が垂れる。

桜 緋彩 >  
「なるほど、それは良いですね。
 甘いものは大好きです!」

笑顔で頷いて見せる。
彼なりに忙しそうだと気遣ってくれたのもあるのだろう。
その気遣いが嬉しい。

「魔法薬の材料と言うと、ヤモリの黒焼きとかそう言うのでしょうか?
 なじみはありませんが、だからこそそちらも楽しみですね」

マンドラゴラとか名前も聞いたことの無いハーブとか。
黒いローブを被ったおばあさんが鍋をかき回しながら接客している店が思い浮かぶ。
歩いていれば人の脚を避けながら歩く彼が気になる。
足元に注意を払う人は少ないのだろう、なんどかひやひやする場面があって。

「――あの、やはり私がお持ちしましょうか……?」

思わずそう言った申し出を。

深見透悟 > 「風紀のお仕事とか剣術の鍛錬とかで頑張ってるんでしょう?
 たまには肩の力抜いて楽しく学生しないと損しちゃう、せっかく生きてるんだからさ!」

笑顔が眩しいぜ、と目の上に手を翳して嘯く。
そう言う己自身は霊魂の類だけれどそれはそれ、死んでても楽しく学生する気は満々だ。

「そうねー、魔法薬と言われるとそういうのがイメージされるよね、分かる分かる。
 昔からの伝統を意識する魔術師は、今でもそういう風にしてるっぽいけども、俺ってば現代を生きる天才魔術師だからさ!」

近頃はどちらかと言えば錬金術に近いものになりつつある。
なりつつある、というのは正しくないかもしれない。より正確に言うならば錬金術と融合しつつある、と言うべきか。
期待に応えられるかちょっと不安ー、とケラケラ笑いながら進むテディベアだったが、周囲の足の動きを気にするのは些か辟易して来たらしく。

「あー、えーと……お願いしてもよろしうございます?」

前回は荷物を持って貰っていた為断る理由もあったが、今回はそういった手も使えず。
何よりこのままだといずれ蹴られる、という予感もしていた透悟は、足を止めると桜を見上げて頷いたのだった。

桜 緋彩 >  
「透悟どのにそれを言われると、流石に説得力が違いますね」

なんせ彼は死んでいる。
死んだ人に「せっかく生きている」と言われてしまえばなかなか反論は出来ないだろう。

「と言うことは透悟どのの作る魔法薬と言うのはもっと違うものなのですか?」

そう言われれば、昔魔法薬の授業で習ったのはなんかもっと違うものだった気がする。
二年生ぐらいの時に興味本位で取った授業な上に赤点ギリギリだったのでもう覚えていないが。

「かしこまりました!
 それでは失礼いたします」

頷いて彼を持ち上げる。
そのまま身体の前で、両腕で抱きかかえるように。
ちょうどテディベアの後頭部が胸に埋まる形。

深見透悟 > 「でしょでしょー?
 ま、そうは言っても何も特別な生き方なんてして来なかったし、未練とかそういうのも……無いわけではないけど」

死んでいるのにこうして存在しているからには、未練がこの世にあってこそと思われるかもしれない。
未練が無いと言えば嘘になるが、かと言って何が未練かと言われるとあまり公言して良い類のものではない。特に女子生徒相手なら尚の事。

「うんうん、もっとシンプルに……まあ普通の薬学とどう違うんだって言われたら困る様な感じで……」

基本的には症例に合った薬を調合するというもの。
ただその症例というのが、呪いだったり魔術の後遺症だったりと現代医学では解析が難しいもの、というだけだ。
授業で学ぶものよりは、独自性も織り交ぜられている分馴染み易いだろうか、と微かに首を傾げ。

「は、はーい。よろしくお願い致しますわよ!
 ありがとねえ、桜センパイ。蹴られても別に痛くは無いんだけど汚れちゃうからさー……っと」

そのまま肩にでもちょこんと乗せられるのかと思えば、抱きかかえられて。
モフモフとフカフカがぶつかり合い、モフモフが埋もれる形となれば、そわぁ、と少し落ち着かなくなる思春期男子。

桜 緋彩 >  
「やはり成仏出来ていないと言うことは、未練が残っていると言うことなのでしょうか。
 そもそも透悟どのは成仏されたいのですか?」

よく成仏できないのは未練があるから、と言うのだけれど、本当のところはどうなのだろう。
確かに心残りがなくなれば、この世に用はないと言われればそうなのだが。
そして彼は未練を失くしたいのかどうなのか、ちょっと気になった。

「普通の薬学は科学的に効果が出るものですから、魔法薬はやはり魔力とかそう言うものに作用する薬、と言うことでしょうか?
 魔力を回復する薬、みたいなものは科学的な薬学ではどうにもなりませんし」

イメージとしてはそうなのだろう。
そこに独自性、と言われると、そもそも一般的な薬学がよくわからないのだけれど。

「では道案内をお願いします。
 どちらに向かいましょう?」

こちらとしては男子高校生と言うより動くぬいぐるみと言う認識だ。
胸に押し付けたところで何も思うところはない。
先導して貰うことは出来なくなったので、向かう先を教えてくれ、と。

深見透悟 > 「さあーてねえ、どうなんでしょ。
 実際のところ、今こうして魂だけになってるから、俺は俺が死んでるもんだと仮定してるに過ぎないんだけど
 未練……というか、やりたい事はいーーーっぱいあるけどもね!」

自分の遺体を確認したわけでもないし、死の瞬間の記憶は曖昧だ。
幽霊を自称するのも置かれている現状を省みての自己判断でしかない。
そもそも、本当に死んでいるという確証すらないのが現状だ。

「そうそう、飲み込みと言うか理解がホント早いよねセンパイ。
 魔力を回復するのもそう、あとは変身薬とか……若返りとか、そういう感じ」

ほぼイメージ通り、と肯定する。
機会があれば披露したいところではあるが、それは後の楽しみということにして。

「あ、は、はい。かしこまりました。
 とりあえず今の通りをまっすぐ進んで頂いて、そんで魚屋さんが見えたら角を曲がって、
 レストランと喫茶店を過ぎたとこ、だったかな」

案内を促されて妙に強張った口調で道筋を伝える。
後頭部に当たる柔らかさに気が気じゃないし、今振り返ったらどうなるだろう、という好奇心と下心もふつふつと。
ひとまず、後頭部へと神経を集中させた。

桜 緋彩 >  
「そもそも透悟どのはどちらの生まれで?
 と言うか私より年上と言うこともあるのでは?」

幽霊は年を取らない、かどうかはわからないけれど、亡くなった年によっては自分よりも年上の可能性がある。
彼からは先輩と呼ばれてはいるが、実際いくつなんだろうか。


「なるほど。
 ざっくり「この世のものならざる効果」が起こる薬、ぐらいの認識で良さそうですね!」

実際に起こっているからこの世のものの効果ではあるが。

「かしこまりました。
 魚屋を曲がってレストランと喫茶店の先、でございますね!」

言われた方へ歩き出す。
抱えたテディベアと喋る女生徒、と言う割と珍しめの組み合わせなのでそれなりには人目を引くが、そこは常世島。
言うほど珍しくもないので不審な目を向けられるほどではなく。
魚屋の角を曲がり、やがてレストランが見えてきた。

深見透悟 > 「俺はこの世界の生まれじゃないんすわー……よく似た世界ではあるけど、別の世界。いわゆる異邦人ってやつ
 ふふ、先輩的にはデートするなら年上の男の方が良かったり?」

確かに幽霊になってから年は取っていない。老ける事も無いし、怪我や病気とも無縁だ。
実際にどちらが年上か年下か、確たる証拠も無いので軽口で受け流したが、さてどうなのだろうと自問する。

「そーゆーこと!
 まあ、超常的な異能や身体能力が散見されるこの島じゃ、そこまで驚く様な物でもないけどねぇ」

目を瞠るほどの魔法薬はあったかしら、と自分が作れる物のレパートリーを思い浮かべながら。

「左様で御座いますですの。
 お運び頂いて大変恐縮にて候ですますわ。」

言語野絶賛ショート中。
注目を集めることよりも、女生徒が歩むたびに後頭部が揺さぶられる事の衝撃が強いせい。
テディベアで来て良かった、と感動を噛み締めざるを得ず、そんな事をしている間に食欲をそそる香ばしい匂いが漂う区画へと到着した。

桜 緋彩 >  
「でッ――い、いえ、その、年上か年下かと言うことはあまり重要ではなく、その、楽しく過ごせる方がいいかな、と……」

急に飛び出したデートと言う単語。
驚きで身体を跳ねさせ、恥ずかしそうに語る。

「おぉ、良い匂いがしますね……」

しかしそんな気持ちも飲食店が立ち並ぶエリアに来ればどこかに霧散する。
肉の焼ける匂いとか、揚げ物の上がる匂い、甘い匂いもする。
ぐう、とお腹が鳴った。

深見透悟 > 「あっはは センパーイ、こないだもだけどその反応は可愛過ぎでしょう。
 俺はセンパイと居るのめっちゃ楽しいっすよ、センパイはどうです?」

落ち着いてるかと思えば妙に初心だったり。
先輩として敬う事をうっかり忘れそうになる程度には、共に居て楽しいと素直に告げる。

「この時間帯のこの辺りは夕飯に向けて全力だもんねえ、匂いと音の包囲攻撃……
 ……センパイ、クレープはデザートだし……入らなくならない程度に、何か食べていきます?」

抱えられていればお腹が鳴るのも包み隠さず伝わって来る。
単純だなあ、と思う反面それだけ体を動かしてるのだろうと思えば、食レポ前に軽く何か食べようかと提案して。
たとえ今ここで何か食べても、この先輩はクレープも美味しく頂いてくれるという確信が何故かあった。

桜 緋彩 >  
「うぅ、あまりからかわないでください……。
 た、たのしい、ですよ……?」

顔が熱い。
赤くなっている顔をぱたぱたと手で仰いで。

「むう、朝ごはんは食べてきたのですが……。
 そうですね、これだけ店があって何も食べないのはお店にも失礼ですから」

食欲をそそる匂い。
ぬいぐるみを抱きかかえたまま、とりあえず一番手近なたこ焼き屋に突撃。

深見透悟 > 「ごめんなさーい……あ、でも可愛いってのはマジです。大マジ。
 そいつぁ良かった! いやー無理強いさせてやないかとヒヤヒヤしてたもんで」

からかい甲斐があるところも含めて楽しい人だ、と再認識。
あまりにも素直な反応に、もう少しからかっちゃいたくなるなあ、と宣って。

「まあきっと多分メイビー成長期なんでしょ!成長期だからしょうがない!
 それじゃあいっちょレッツゴーといきまっしょい!」

たこ焼き屋に向かう桜の腕の中でゴーゴー!と腕を振り上げるテディベア。
でもちょっと待って、たこ焼き受け取ったら先輩の両手塞がらない?と我に返る。
……まあ食べてる間は大人しく地面で待ってましょ、とすぐに切り替えて。

桜 緋彩 >  
「もう……」

若干頬を膨らませながらたこ焼き屋へ。
選んだのはネギたこ焼き。
彼を抱えたまま財布を取り出し、支払いをして受け取る。
落とさないようにちょっと強く抱きしめるので、より胸に埋まるだろう。

「苦しいかもしれませんが、申し訳ありません」

そのままたこ焼きを食べ始める。
ぬいぐるみに零さないように注意して。
当然その間、腕の中のテディベアは胸に後頭部をぎゅうぎゅうに押し付けられているだろう。

深見透悟 > たこ焼き屋店員の生徒と桜のやり取りを頭上に聞きつつ、さていつ下ろされるかと心の準備だけしておくテディベア。
流石に往来を行く訳じゃないので蹴飛ばされる心配は無いだろう、
その間たこ焼きを美味しそうにもぐもぐしてる先輩を見られればそれでヨシ!と目論んでいたが、一向に手が離れる気配がなく。
むしろより一層強く抱き締められて埋もれていく。
アレ?俺、前世で何かすっごい徳でも積んだ?と素で考えてしまう透悟。

「いやまあ、そのあの、どうぞごゆっくり召し上がって頂ければ……俺の分まで……」

結局そのまま地面に下ろされる事無く、先輩はたこ焼きを食べ始めてしまった。
ていうか流石体育会系、器用だなぁという気持ちと荒ぶる思春期のリビドーが2:8くらいでせめぎ合う。素数なんて付け入る隙も無いくらい。
ぐわんぐわんとパンチドランカー並みに思考が揺れる中、どうせならいっそと思春期が暴走モードに。

「あ、のー、センパイ? 食べづらかったら、俺の方からセンパイにしがみついときましょか?」

素直に離して大丈夫、とは言えなかった程度には助平なテディベア。
しっかりと掴まる事は出来なくとも、腕を回してしがみつくくらいは出来ると提案してみる。
そうなると当然と言うか必然、埋まるのは後頭部ではなく顔だ。
下心がバレて断れたら?――その時は大人しく地べたで敗北者と化すさ、と無駄にカッコつける透悟であった。

桜 緋彩 >  
「ふむ、これは本場の自重を支えきれないタイプのたこ焼きですね。
 揚げたこ焼きのようなカリッとしたものも嫌いではないですが、たこ焼きと言えばやはりこのタイプの方が私は好みです。
 そしてネギたこ焼きと言えばソースではなく出汁。
 あっさりめの出汁とネギ、そこにからしマヨネーズがアクセントとなっています。
 タコも大きくしかし柔らかい。
 とてもいいたこ焼きです」

はふはふしながらたこ焼きを頬張る。
中はとても熱いので、あらかじめ割っておいて、冷たいねぎを押し込んでおく。
彼に伝わるように詳細な食レポをしながら食べていれば、彼からの申し出。

「よろしいのですか?
 ではお手数をおかけしますがお願いします」

二つ返事で了承。
腕の中でくるりと彼の向きを反転させる。
一応ずり落ちないように、たこ焼きを持つ腕で軽く押さえておこう。

深見透悟 > 「おおう、無い筈の胃がきゅううんってなりそうな食レポ……さすがセンパイ。
 本番前の小手調べにしても真に迫るレポートありがとうございます。
 ……てゆかホント美味しそうに食べるよねえ、作った人もめっちゃ嬉しいと思う。」

熾烈な理性と煩悩のせめぎ合いが脳内で繰り広げられながらも、桜の気遣いの籠った食レポは拾うテディベア。
というかそうでもしないと煩悩が理性を瞬殺しそうなので、気を紛らわしたいというのがド級の本音、ド本音である。
生前、食に関心のある人間が周囲に居なかったというのもあり、美味しそうに物を食べる人というのは聞いてるだけでも幸せになりそうな物であったが。

「……えっ、よろしいのですかですか?
 いえいえお手数だなんてそんな、じゃあいちにの、さんで――」

終始優勢な煩悩がほざき出した提案が二つ返事で了承された。
それならば此方の心の準備をしてから振り返って――と思う間もなく、桜の手によってくるりと反転させられるテディベア。
後頭部を襲っていた柔らかさの暴力と予期せず対面させられ、そのままぼふっと埋まる。

「………! !!  っ!!」

言葉にならない感情を押し殺しつつ、ここで変に狼狽えれば怪しまれる、と少女の胴にひしっと腕を回ししがみついた。
その姿は一見するとコアラの様で大変微笑ましい。

桜 緋彩 >  
「ごちそうさまでした」

あっという間にぺろりとたこ焼きを平らげる。
手を合わせて一礼。

「お隣は唐揚げ専門店ですね。
 こちらもいただきましょう」

器を店頭のゴミ箱に捨て、隣の唐揚げ専門店に突入。
特大唐揚げ五つ入りを迷わずお持ち帰り。
自身の拳より一回り小さいぐらいの大満足サイズが五個もある。
早速かぶりつく。

「――んんー、外はサクサク中はジューシー、お手本のような唐揚げ。
 おっと、肉汁が……」

これまた絶品である。
油断すると肉汁が胸のぬいぐるみに零れ落ちそうになり、慌てて前かがみでぬいぐるみの頭上から唐揚げを退かす。
より強く埋まる。

「大丈夫ですか透悟どの。
 掛かっていませんでしょうか?」

大丈夫だとは思うのだが、一応確認。

深見透悟 > 「よ、よい食べっぷり……」

大きくしかも柔らかい。
透悟の脳内では先のたこ焼きの食レポの一部が(ややもじられて)リフレイン。
しかし桜がたこ焼きを食べ終えたと聞けば、この状況も終わりかと残念なような安堵する様な気持ちになる。
が、

(――まさかのハシゴ!!)

日頃体を動かす事を主体とする女生徒がたこ焼きひと舟で満足する筈がなく、
間髪入れずに唐揚げに突撃するのは流石の天才魔術師も予見できず。
結局埋もれたまま唐揚げの購入から実食まで、状況は継続された。

肉汁が垂れることを、気を利かせて回避してくれた事によりより強く圧を感じる透悟。

中はジューシー
再びリフレイン。十代の瑞々しさ溢れる体はそりゃあジューシーだろう、と斜め上に深く同意する。

「だ、だいじょうぶ……ぜんぜんおっけー
 もうここまで来たらとことんまでやったらぁ!って感じ……」

ちょっと掛かってしまっているかもしれません、落ち着きを取り戻せると良いんですが。
脳内でそんな解説が流れる程度にはオッケーだそう。

桜 緋彩 >  
「んんー♪
 唐揚げはやはりもも肉ですね。
 胸肉もあれはあれで美味しいのですが、やはりジューシーさが違いますので。
 透悟どのはもも肉と胸肉どちらがお好きです?」

今まさに胸肉に押し付けられている彼に好みを尋ねてみる。
口の中ではサクサクとジュワーが同居しており、大変幸せ。

「それはよかった――おっと、向こうにケバブが売ってますよ。
 唐揚げを食べたらあちらもまいりましょう!」

ケバブ屋を見付けて喜ぶ。
唐揚げを口に放り込んで次々飲み込んでいく。
その後もあちらこちらとテディベアを抱きしめたままハシゴを続け、クレープ屋にたどり着いたのは三十分も経った後だっただろう。
当然その間ずっとテディベアは抱きかかえたまま。
彼にとっては天国か地獄か、それは彼のみぞ知ると言ったところか――