2024/06/22 のログ
ご案内:「常世公園」に千里 ヒカゲさんが現れました。
千里 ヒカゲ > ぱて。ぽて。ぽて。

小さな足音が公園の道を撫でる。サンダルのせいで、それなりな音を立てながら、焦るでもなく、ゆったりとしたテンポ。
その音の主である少女は、両手を後ろに組んで、堂々とした有様で道のど真ん中を歩いていた。

彼女こそ、千里に渡って日を遮り、この世界を暗く染め上げた張本人(自称)。
古代植物からの転生体(自称)。
太陽光をこの世の誰よりもその身に受け、もはやその力は太陽に等しい(自称)。

という少女(これは事実)である。l

その名は千里ヒカゲ。そのままだ。

千里 ヒカゲ > 「暇じゃのう!」
千里 ヒカゲ > 大きな声で口にすれば、んぅー、っと渋い顔で天を仰ぐ。
あれだけ近かったはずの太陽が、どうにも遠く、そして暑い。

「あの頃はもうちぃとカラッとした暑さだったように覚えておるのだがのう。
 太陽の奴も焼きが回ったのか、太陽だけに。
 奴はずっと焼けとるわな。」

首を横に振って、ため息一つ。
軽口を叩きながらも、暇でかつ暑いという事実は変わらない。

千里 ヒカゲ > ちょこん、と頭の上で大きなお団子を二つ作った緑な少女は、ぽてぱてぽて、とのんびり歩き続ける。

「この暑さなら百貨店でも行けばよかったかのう。
 でもそこまで自由に使えるお金も無し。
 やっぱりこの世は金なんじゃのう………」

せちがらい。
お金に不自由していないような雰囲気ではあるが、彼女は今のところ学生の身分だけは与えてもらった住所不定無職だ。

「やーっぱり学生寮に住んでバイトしかないのかのう……
 いやじゃなぁ、働きとうないなぁ………」

千里 ヒカゲ > 「そも、ワシ美少女だしぃ? 働かずとも保護されるべき存在であるしぃ?」

がま口財布を取り出して自動販売機に投入しながら、「ぃ?」の部分を思いっきり上げて社会への不満を口にする元植物。
この世は間違っておるなぁ、なんて理不尽なことをぼやきながら、炭酸の無果汁ジュースをがこん、っと購入。

今更天然植物の汁求めるわけなかろう。が持論である。化学の力ってすごい。

「それに、ワシに何の仕事ができるんじゃ………。
 ワシ働かずとも光浴びてれば生きてはいけるからこそ、特になんも考えておらんぞ………。」

炭酸ジュースをぐい、っとあおって、ぷふぁ、と吐息を吐く。

千里 ヒカゲ > 「まあよかろう。
 人の世に限らず、世は移りゆくものである。
 この世を支配した巨大なトカゲどもも、その身の巨大さ故に己を滅ぼしたものじゃし。

 だから賢いワシはちっこくなったもんねー♪」

ドヤ顔ダブルピース。いぇーいティラノとトリケラ見てるー???
ワシこんな美少女で現代で暮らしてまーす。


「この世界に合わせて己をあっぷでぇとできん奴はやっぱりダメよ。
 その点ワシはもう万全じゃし。」

千里 ヒカゲ > 「さて、それではせっかくだし、百貨店にでも行くかの。
 今日は何かヒーローショーとやらをやるんじゃったな。

 ワシあれじゃなあ、そういうアクション的なものがええかもしれんの。このサイズでキビキビアクションできるの他におらんじゃろ。」

空き缶を手の中でくるくると回して、そのままくるりと左足を視点としてスケートのように回転して。

「そりゃぁっ!! んきゃぅ!」

缶を思いっきり投げる。その瞬間にわずかに残っていた飲み残しの炭酸が遠心力で噴出して少女の目に直撃した。

缶はからんころん、と屑籠の中に落ちた。


「うぉお、目がぁっ……! ワシの目がぁっ………!」

目を押さえながら公園から出ていく元植物。美少女らしい振る舞いって百貨店で買えますか。

ご案内:「常世公園」から千里 ヒカゲさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
夕暮れ前の公園にはしとしとと雨が落ちる。

当然、雨の公園には誰もいない。
数人遊んでいた子どもも、雨に降られ足早に走り去った。

そんな中、一人。
雨に降られることなんて気にも留めず。
公園のベンチに座り、俯いている少女がいた。

ご案内:「常世公園」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 >  
雨間(あまあい)なくあけすけと降りしきる雨模様。
雨曝しと成ればしとど、濡れぼそる楚々成り手弱女(たおやめ)
たりとも、艶やかな濡れ姿を遮りしは紺の雨傘。

「……体に障るぞ、凛霞。」

つとに其処に居たかのように、傘を携えし男は(さえず)る。

伊都波 凛霞 >  
……髪に落ちる雨粒の感覚が止む。
それから、聞き慣れた声が、頭上から雨の代わりとなって降りかかる。

…それでも、少女は顔をあげなかった。
あるいは、あげることが出来なかったか。
声に応えることもなく、俯き続けていた。

そう在る理由は──風紀委員の負傷の報だ、公安委員にも共有されているだろう。
推して、知ること叶うか。

紫陽花 剱菊 >  
静寂と、雨音。
甘雨足れど静寂には一入雨音は良く響く。言葉も無い。
深々と雨音ばかりが身に沁みる。

「……其方(そなた)の家族の話を聞いた。命は助かったとな。其の心に立ち込める暗雲は、其の彼女の事か?」

静寂破りて、さゆる声音が事問う。

伊都波 凛霞 >  
「───……」

言葉は続く。
家族…そう、大事な家族だ。
それこそ、宝物。
子供の頃から可愛くて仕方がなくて。
一生懸命に後をついて来る様子が愛らしくて。
頑張って立派なお姉ちゃんになろう。
そう誓って。

「………」

声の先へ向けて、漸くその(おもて)をあげる。
雨に濡れた前髪が頬に張り付き、向けられた瞳は濁り昏く…常日頃の覇気はない。

「……大丈夫だから」

「独りにして、くれませんか」

雨音にも負けそうな声は気弱く、今にも泣き落ちそうな色に染まる。

紫陽花 剱菊 >  
(みぎり)、天真爛漫さは烏有(うゆう)に帰した。
根の如く黒き(まなこ)に映るは余りにか細く弱々しき女子(おなご)
せせらぎ、耳朶に流れど聞き入れぬ。
幾ばくの沈黙と共に佇み、気色(けしょく)を変えず、雨音を縫いて事問う。

「命だけ助かっても、其方(そなた)は満足せぬと?」

伊都波 凛霞 >  
「………」

そう。
一人にしてはくれない。
私が同じ立場でもしないだろうと思う。
それなのに、
それを受け入られないくらい、ズタズタだ。

向けた、昏い視線を再び、雨に泥濘む足元へと落とす。

「……九死に一生」

「まだ、妹は絶対安静です」

報告書の内容では詳しいことまではわからなかった。
けれど現場の痕跡や状況を見れば、一目瞭然…。
機界魔人(テンタクロウ)の伝播ソリトン弾。
あんなものを生身の人間に向けて……普通は、助からない。
良かった、なんて言葉を使いたくもないけれど、運が良かった。
……そう、運が良かっただけだ。

「……誰かと話すと」

「うじ黒い…嫌な感情が湧き出てきて、それが漏れてしまいそうで」

「だから……一人にしてください」

故に…己を気遣うだろう父や母のいる、自宅にも帰らず──こうしている。

紫陽花 剱菊 >  
乙に済ます事も無く、おくびに出す事はない。
悔恨、底根國(そこつねくに)のような仄暗さが目前に有り。

「……真、私は武芸以外取り柄は無い。然れど、友垣(ともがき)の為、(かみしも)を脱ぐのは是非も無い。」

如何に嫌悪しようが心根蝕む心底の玉響(たまゆら)
刃足りとも人成れば見過ごす事罷りならぬ。
斯様、繕う事もなく伸ばされた武人の手は手弱女(たおやめ)の頬に触れる。
(くろがね)の如き冷ややかさ、然れどなかんずく人の温もりは有りて、佇むのみ。

伊都波 凛霞 >  
「大丈夫だ、って言ってるのに」

「一人にしてほしいって言ってるのに───」

言葉は徐々に震える。
雨ぬ濡れて冷えた唇が勝手に震えただけ…なんていうのは、無理があるかな。

そういうの、また泣きそうになるからやめて欲しかった。

そうして、顔をあげれば漸く視線が交わされる。
今朝は多少なり薄化粧でごまかしたけれど、それも雨で濡れ落ちて。
散々に泣き腫らした後の、少女の顔がそこに在る。

紫陽花 剱菊 >  
しどけなく、泣き腫らした女子(おなご)の顔。
鬼雨に濡れぼそり涙にのたうつ。雨足さえ気に止めぬ程深い悲哀。
故に彼女が如何にして妹に情を抱いていたか仄見えよう。
慰めの言之葉も作法も存ぜぬが故、唯々佇む居住まいは穏やか成り。
すずろのまま、紅差し指(くすりゆび)がしめやかに唇をなぞる。

涙も言葉も、如何様に受け止めようぞ、と。