学生街にある24時間営業のファミレス。部活の一種で学生の経営だが、島外のファミレスと遜色はなんら存在しない。
「ニルヤカナヤ」とは琉球地方に伝わる他界観、ニライカナイの異称の一つから来ている。
ニライカナイは日本の「常世国」との関連性も折口信夫などによって指摘されており、海の彼方の神の世界である。
外装としてはごく一般的なファミレスである。名前の元が南国のもののため、多少南国風にされている。
店内は広めで、テーブル席、ソファー席などがある。
メニューも一般的なもので、昼にはランチなどもやっている。
ドリンクバーもあるので、一種の学生のたまり場であり、長時間いても特に何かを言われることはない。
テスト期間が近づけば自習などに来る学生の姿も散見される。
売りにしているのが、常世国からタヂマモリが持ち帰ったという「時じくの香の木の実」、いわゆる橘を用いたデザート類である。
食べれば不老不死になれるなどとメニューに書かれているがもちろん冗談である。
ただ橘は食用に適さないので実際に使われているのはみかんなど他の柑橘類である。
店員なども随時募集しているとのこと。
風紀委員など学園を警備する者たちの立寄所ともなっているため、特に安全性は高いという。
なお、学生街以外にも店舗があり、歓楽街、異邦人街や開拓村などにも出店中である。
※ここでは学生街の「ニルヤカナヤ」としてご利用ください。
参加者(0):ROM(1)
Time:02:21:37 更新
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から青霧 在さんが去りました。
■青霧 在 > 「御馳走様でした」
食後の皿にしてはかなり綺麗な皿にフォークを置いて手を合わせる。
紙ナプキンで口元を拭き、コップの水を空にして食器類を通路側に寄せる。
席を立ち伝票を持って会計に向かう。
食後でも浮かないどころではない顔は据え置き。
むしろ足取りは重たい方。
食事で多少意識がそれたとはいえ、面倒事が消えた訳ではない。
風紀委員会は名誉挽回の為に要らぬ手間を強いられるし、活発化した違反部活の鎮圧は特別攻撃課の主たる仕事だ。
委員会内での内輪揉めや派閥争いは些細な噂すら火種とするだろう。
目に付く情報以外の情報も決して無視できない。
落第街の11体の死体の情報はきな臭さを感じさせ、違反組織同士の抗争の構図の変化だってバカにならない影響を生む。
ギフト騒動は未だ収まりを見せず、《インスティゲイター》の件も始まったばかり。
青霧が全てを把握し立ち回る義務はない。だが、全てが青霧になんらかの形で関与してくる。
把握を怠れば苦しむのは青霧だ。
とはいえ、休日まで潰されたくはなかった。
無人レジで手際よく会計を終えて店を出た。
「……ッチ」
時刻は14時半を回る。
既に昼休みと言える時間は過ぎ、人通りの少ない学生通り。
誰にも見られぬようにと、俯いて舌打ちをした。
■青霧 在 > 「これはかなりマシだな」
続く一件は風紀委員会の中でのとある噂。
済んだ一件に関連する噂らしいが…
「……」
青霧は微妙な表情を見せる。
第一級監視対象という肩書は、並大抵の物ではない。
それぞれが見合った咎を背負っており、相応の枷を嵌められている。
だから、青霧は自分と彼らを見比べた時、どう思えばいいのか分からない。
彼らに否定的な意見を持てば、本当に批難されるべきは自分なのではないかと考えてしまう。
だから、《凶刃》が銃を継承したと聞いてどう思えばいいのか、分からなかった。
慰安旅行でのある一件は参加した委員から聞いている。
それを加味して尚…青霧の心境は曖昧だった。
『お待たせいたしました。こちらの品で以上でよろしかったでしょうか?』
「……はい。ありがとうございます」
そんな青霧にボロネーゼを差し出す店員。
青霧とは対象的に笑顔を張り付けた店員は伝票を置いて去っていく。
その後ろ姿は仕事人のもの。客がどれほど接しにくい状態にあっても、明るい笑顔で対応し、乱れのない歩調で去っていく。
必要以上には我関せずの姿勢。今の青霧に足りない姿勢と言えよう。
「……俺には関係ないか」
携帯端末の電源を落とし、備え付けのケースからフォークを取り出す。
青霧は特別攻撃課だ。他部署とのかかわりがいくら多くとも、監視対象と直接接する機会は少ない。
つまり、意見を持つ必要はない。
そう結論付けた。
ボロネーゼの香ばしい匂いに少し心が透いた事も影響しているだろう。食は偉大だ。
手を合わせ、小声で「いただきます」と呟き、フォークで丁寧にボロネーゼを食べ始める。
食べきれる一口サイズで、必要以上に何も汚さないように。
丁寧にボロネーゼを食べ進める。
表情は相変わらず陰鬱なままだが、先ほどまでの度し難い状態からは脱したようだった。
■青霧 在 > 「俺にとってはこっちの方が問題だな」
続く情報は、とある違反組織と監視対象の衝突と、その周辺での出来事。
青霧を含む攻撃隊による制圧された2つの違反組織。
その跡地を巡った違反組織の争い。
そして、先日連行したばかりの監視対象がその場に居合わせ違反組織と衝突したという内容。
「葬式を爆破した連中。いや、張本人だな」
「活発な輩だ……」
問題点は別件と同じだ。
「舐められすぎだな」
風紀委員会の手が入ったばかりの場所に別の違反組織が姿を現した。
その行動はもはや風紀委員会をバカにしている。
風紀委員会という組織を舐め腐っている。
そんな風に取らざるを得ない。
夜見河が再びあの場に顔を出している事は……目を瞑ろう。
夜見河なりの生き方だ。彼なりに生きようとするのを青霧は否定したくない。
「こちらも監視の目を厳しくするべきだな」
「折角潰した分が大きくなってしまっては困る」
青霧が何も言わずとも、そうなるだろう。
風紀委員会が舐められている通りの組織ではないと思い知らせる必要がある。
一度両目を瞑り、感情を落ち着ける。
堪えきれない脱力感を抑えるのだ。
そして、瞼を上げればさらに画面をスクロールする。
まだある。
■青霧 在 > 「本当にとんでもない事だ」
顔を覆ったヴェールを退けて画面を直視する。
新宮はくだらない話を共有してくるが、くだらないと切り捨てて良い話は共有しない。
それはこのスクリーンショットにも言える事だ。
続きを読む。
「この投稿が拡散された事で風紀委員を批難する声が一部から上がっている…」
「そして、この投稿が拡散された後に活発化した違反組織が複数あるとの報告…」
「昨今のギフト騒動も相まって過激化の兆候が見られる…」
周囲に聞こえないようにぼそぼそとつぶやく青霧の姿は死者にも見える。
実際、青霧の休日を謳歌する気力は死んだ。
《お騒がせ犯罪者》はどうでもいい。正直、同じような肩書の人間なら誰であっても同じ事。
問題は犯罪者が学生街に紛れ込み、SNSでそれが拡散され、大勢の人間に認知されたと言う事実。
「とんでもない事をしてくれた……」
「警邏課も、コイツも……」
これを大勢がどう受け取るか。
犯罪者が生活圏に平然と入り込める警備体制への不安。
風紀委員会が名の知れた犯罪者を野放しにしているという印象。
それをその場で指摘出来た者がいないという、学生の危機感や自主性の低さ。
それが事実かどうかはどうでもいい。だが、印象として残ってしまっては大問題だ。
これまで積み上げてきた風紀委員会の信頼は大きく欠け、守ってきた治安が悪化する。
そんな状況は避けられないだろう。
青霧はこぼれそうになる溜息と舌打ちを堪え、苦々しい顔で画面をスクロールする。
そう、これだけではない。
■青霧 在 > 青霧が睨み付ける携帯端末には、彼の同級生であり友人である委員からの連絡が入っていた。
特別攻撃課でありながら他部署から頻繁に声がかかる青霧には様々な情報が入ってくる。
委員会の連絡網以外にもさまざまだが、その中で頻繁に利用される連絡手段が一つある。
それが、青霧の友人である新宮翔太からの情報伝達。
青霧は付き合いが悪い訳ではない。
その直視しづらい表情に目を瞑れば、十二分にコミュニケーションが取れる。
一時期、青霧の携帯端末の通知欄が大変な事になっていた時期がある。
職務に忠実である青霧の姿勢に凭れ掛かる部署や委員が過剰に発生したのだ。
頼めば都合をつけてくれる青霧。それを頼る大勢の委員。やつれる青霧。
そんな状況を見かねた新宮により、その状況は改善された。
青霧への個人的な頼みや、緊急性の低い内容は新宮を仲介するという事をとることで、青霧の状況は大幅に改善されたのだ。
「感謝はしている。しているが…」
「要らない情報まで入ってくるようになったのはどうにかしてもらいたい」
しかし、新宮を挟む事で彼の情報網由来の関連性の薄い情報が入ってくるようにもなった。
悪い事ばかりではないとはいえ、今日ばかりは文句の一つぐらい言わせてもらいたいようだ。
「警邏課の連中は何をしているんだ……」
「学生街に犯罪者が紛れ込んでいるだと?いつから常世学園は犯罪者と共存するようになった?」
共有されたスクリーンショットには、《お騒がせ犯罪者》がデカい犬と戯れる映像が映っている。
愚痴でも呆れでもない、悲痛な嘆き。手の届かない場所での不祥事に顔を覆って悲しむ。
■青霧 在 > 風紀委員会は島の治安維持において大きな役割を担っている。
その方法や活動は多岐にわたるが、その中の一つには威厳を保つというものがあるだろう。
風紀委員会存在する。その認識だけで違反や犯罪を抑制出来る。そういった環境づくりも風紀委員会の役割と言えよう。
無論簡単な事では無い。そして、現状実現に至っていない。
少なくとも、あのような投稿が拡散されている様ではそう思われても仕方がない。
そしてそう思ってしまうのも仕方がないだろう。
……
社畜気質の青霧にも休日は存在する。
しかし、その休日が必ず心休まる1日になる保証はない。
昼食には少しばかし遅い14時過ぎのニルヤカナヤ。
ピーク時間帯に席を埋めていた客が去る中、注文した品を待ちながら携帯端末を睨み付ける青霧がいた。
テーブル席のソファ、奥に詰めて座る青霧の表情は芳しくないなどという言葉では収まらない。
普段から目覚めの悪い寝起きのような表情をしている青霧だが、今日は特にひどい。
今にも舌打ちが飛び出しそうな口元だが、公共の場という事は理解しているのか舌打ちに至ることは無い。
「あいつ……いや、文句を言っても仕方がない、か…」
「クソ…明日の方が良かったか」
形態端末に表示されている内容がそれほどまでに酷いのか。
今日ではなく明日休日とすればよかったとぼやく。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に青霧 在さんが現れました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から恋ヶ窪 あい子さんが去りました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から『流れ』さんが去りました。
■恋ヶ窪 あい子 >
キョトンとした丸い瞳で男を見ていた。
確かに見て、その違和感に――まるで自分の意思とは異なる空白地帯に気が付いた――のだけれど、
さり気なく、然し実にスムーズに新たに流れ込む水に、微かな違和感は容易に浚われてしまった。
「そっか……そうなのかも。
友達はラブが惚れっぽすぎるのがいけないんでしょ、っていうから。
まあ、あたしもそう思うんだけど。」
薄らと苦笑いを滲ませて、鉄板に焦げ付くソースを肉で掬う。
小振りなハンバーグを、時間をかけて着実に減らしていく。
男の言葉に身に覚えがあるのか、口許に笑みを湛えたまま
翡翠の瞳だけが悲しげな色を宿す。ほんの束の間の揺らぎ。
「そうだね……でも、例え嘘でも、好きな人に好きだって言われたら信じちゃうかな。
信じたいものを信じている間って、幸せでしょ?
――よくないな、って、終わったら思うんだけどね。」
そうして反省しても、同じことを繰り返す。
そうしてこの愛に生きる少女はその道をひた走ってきたのだった。
「良いやつっていうか、ぶっちゃけちゃうとあの、おバカなんだと思う。えへへ。」
気まずそうに、恥ずかしそうに、笑顔がすこしばかり歪んだ。
さて、そうこうしている間に鉄板もスープカップも綺麗になっていた。
きっとポテトも話しながら二人で食べていたらお皿は空っぽになっているだろう。
「そんなことよりっ!
流れくん、デザートは?食べる?お腹いっぱいかな――。」
仕切り直しとばかりに意識して声を弾ませ、話題を切り替えてしまわんと。
ついでに男の胃袋の容量や好みなんかの具合を把握すべく努めたりして。
――もう暫く、楽しいお話をしていよう。
■『流れ』 > 「――おや。」
「であれば…カッカッカ、聞いてもらいたかったのかもしれないな。」
「…初めて会った時も…思い悩んでいたようだから。」
違和感に気付いたところで、
また新たな流れが、違和感を波のように攫う。
指摘したところで、それがおかしいだなんて確信するのは、
水を握りしめるように難しくって。
「気付いたら流れるように話してしまうって事も、あるだろうさ。」
「全部全部、捧げたくなるとはね。」
「あい子みたいないい子にそうされて、振っちまうとは贅沢な奴らだ事。」
「そうか、ケジメをつけて別れて、一途に愛して、好いてほしいって思って――」
自分とは、ある意味真逆かもしれないな。
「でも、……でもよ。」
「本当に悪い奴は、振る事すらせず、お前のその素敵で一途な献身的な愛情を弄び」
「程々に利用しながら真っ当に愛することもなく偽りの愛を囁く事だろうぜ」
「その力を、目当てに。」
クズだから、クズの事はよく知っている。
そして、そんなものは簡単に破綻する事も知っている。
故に男は偽りの愛を囁くことはしない。
長く、楽しく、心地よく―― 一方的に利用しよう、などとは決して考えない。
「お前はちょっと良いやつすぎる。」
「だが、…良いなあ、やっぱり。」
薄暗いタチの自分には、ちょっと眩しいくらい、一途だ。
■恋ヶ窪 あい子 >
男が至る結論に「あ。」って間抜けに口を開いた。
気まずそうに笑みを歪めて、眉を僅かに下げる。
「言ったでしょう?“よく振られちゃう”って。
惚れっぽいの、あたし。反省はするんだけど、してるんだけど。」
今だって、反省して、自制している真っ最中。
そんな余計なことは――それこそ流れを制御されない限り口にはしないけれど。
「でも、ちゃんと毎回、好きになるんだよ。
全部全部捧げたくなるの。なんでもしてあげたくなるの。
それで、あたしのことも好きになってほしい。
だから、言葉は少し悪いけど、あたしのそういうチカラが目当てで近付いてこられるのは嫌で
普段はこんな話――……あれ?」
そこで違和感に気付く。
なんで自分は会って二度目の、しかも気になっている人に話しているんだろう?
不思議に思いながら考え込む男を見つめる。
■『流れ』 > 「そりゃ凄い。」
流れるまま、何も違和感なく語られる言葉に素直に頷いた。
解説は確かに曖昧だ、が。
「力。パワー…純粋なる力を、惚れた相手に全て与える…か。」
「人によって、顕れ方は様々で――」
「だが以前と違った力が得られるって事は、明白なんだろうな」
「……相手の持ちうる何かしらのパワーを良いほうに変えられる力、かね……」
定義することは難しい。
……だが、異能の多くはそうだろう。
原理を探ったり、理由を探る事の方が愚かしい。
故に男はこう考える。
異能だろうが何だろうが、
人生をより楽しく豊かにする方法はないだろうか、と。
「……その溢れ出るパワーの使い方は、…どうも多岐にわたるようだ。」
「異能力、筋力、魔力、魂、運気――すべては、異質なもののはず。」
「にもかかわらず。」
「顕れ方が多様で、変換が可能。」
現段階で、分かっていない事は多いけれど、
……凄まじい可能性を感じてしまうような気がした。
条件はあるけれど……
「いやしかし…つまり、それだけいろんな人に惚れて来た事を、意味する…?」
話すのに夢中になって、好物のいちごシェイクを飲むのも止まりかけてしまっている。
食べる手だって止まってちょっと考え込んでしまうくらい。
■恋ヶ窪 あい子 >
会話をしている時以外は、基本手元に目線を落とすのだけれど、
時折不意にひとみを持ち上げて、美味しそうに食べてる様子を盗み見る。
笑いかけたら、笑い返してくれる。
その笑顔を見れただけで、来てよかったな、って思うのは流石にちょろすぎだろうか。
「ぅん?」
呼びかけられて手を止める。
とろりとした黄身が流れた。
そうして告げられる言葉は――言葉に。
違和感なく、まるでそう在ることが当然だというような流れに。
はたり、と、不思議そうに瞬いた。
男の言葉の意味するところ。
その真意を探るよりも先に、尚も続く言葉に一先ずは耳を傾ける。
沈黙を埋めるよう、止まっていた手を再開して、
黄身にまみれたハンバーグを一口。
ちいさい頃から刷り込まれる、『よく噛んで食べましょう』っていう極々普通の価値観に沿って繰り返される咀嚼。
その長い空白は、まるで勿体ぶるようでもあるのかもしれない。
が、異能に関して別段隠しているわけでもないので、口の中のものを呑み込んでしまえば容易にそれは開示される。
「どんな、っていっても、前に言った通りのチカラだよ。
好きな人に、あたしの全部を捧げるチカラ。
具体的に言うと、そうだなぁ……
異能を発現する為のエネルギーってあるでしょ?
魔力って言われたり、魂って言われたり、そういうの。
それをそのままあたしが惚れた人に与えるの。」
恋愛脳の少女故、異能学に関しては少々おざなり。
だから説明する声は時折言葉を探すように曖昧に惑う。
「好きな人が出来るとね、目の色が変わるんだ。それが合図。
普段はね……あたし結構、力――これはパワーって意味ね? が、あって。
多分それはその有り余るエネルギーを変換する方法を学んでないから、
判り易く使い易い筋力ってカタチで顕れるんだろうってセンセーは言ってた、かな。」
「受ける側にそのエネルギーがどういう風に反映されるかは結構人それぞれだったりする。
あたしみたいにパワー的な力が強くなったり、元々その人に備わってた異能が強化されたり、
あ、運がよくなった!ってギャンブルにハマった人もいたかな。」
ストローを咥え、無糖の紅茶で喉を潤す。