2024/07/09 のログ
ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」に橘壱さんが現れました。
ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」に風花 優希さんが現れました。
橘壱 >  
常世学園某日、夜。
今日も風紀委員として最前線で戦い続けていた。
鈍っていた体のリハビリ、さらなる向上心の為の無茶な特訓。
嫌に全身が痛いが仕方のないことだ。こういう時、本当に漫画のスーパーマンとは羨ましい。

「……数ヶ月で筋肉があんなに付くなら、苦労はしないさ……。」

一人吐き捨て、玄関前へと帰ってきた。痛みに思わず、口元がひきつる。
此の時間だ。どうせイヴは寝ているだろうし、先生も風花も恐らくいない、いないはずだ。
ルームメイトと最低限のやり取りとコミュニケーションしか取ってこなかった少年。
だが、最近心境の変化で心変わりが置きている。ルームメイトの事位は知っておくべきだ、と。
ドアノブに手をかけたまま、一つ考える。そう、予行演習だ。
本質は陰キャのコミュ障である。挨拶なんてまともにしたことはない。
おまけに思春期、今更スカした態度取っといていきなりは羞恥心がある。
なら、恐らく誰もいない今がチャンス。深呼吸を一つ。

「……よし。」

意を決して、玄関を開ける。

「……"ただいま"。」

此の部屋に来て、初めて言った。
どうせ一人は寝てるし他の二人もいないはずだ。聞かれることはない。
そう、そう思い込んでしまっていたのだ。

風花 優希 >  
常と変わらぬ男子寮の一室での、日常の一コマ。
戸が開く音と少々珍しい声に、少年は少し目を見開いて手にした本を横へと置いた。

「おかえりー?」

それはルームメイトの一人が帰って来た証。
一先ず挨拶の出迎えくらいはしておくべきかと、崩していた姿勢を正すように腰を上げる。

返すは簡素な挨拶ひとつ。
ひらりひらりと手を振って、自然体で出迎える。

橘壱 > ゴンッ!!!!
橘壱 >  
「~~~ッ!!」

盛大にいい音がなった。もうそりゃずっこけて思い切り靴箱にボディをぶつけた。
Gで痛めつけていた全身がより一層軋む感じがする。
思わず蹲って腹を抑えた。いや、まさか返事があるとは思わないじゃん。

「……め、珍しいな、風花。起きてたのか……。」

とりあえず痛みは己の愚かしさと一緒に飲み下して立ち上がる。
それこそ何事もなかったかのように涼しい顔してるけどちょっと足が笑ってる。弱い。
カチャリとメガネの位置を直せば重厚なトランクを揺らしながら玄関を上がる。

「他の二人はどうした?イヴは多分寝てそうだけど、意外と夜ふかしなんだな。お前。」

風花 優希 >  
「おおう、大丈夫かい?」

至って普通に出迎えた、筈だったのだが玄関からは実に派手な音が響いた。
何処かしらでコケて、身体でも打ったのか。
頭などを打ってたら流石に危ういし心配にもなる。

立ち上がり、様子を窺うように顔を出して。

「そこまで珍しくもないと思うけど…いや、部屋にいない事はそこそこあるか」

そう返しつつ、尋ねられた言葉に思考を巡らせる。

「寝てる寝てる、ボクも布団にそろそろ入ろうかなってとこではあったけど」

橘壱 >  
「……大丈夫だ、問題ない。」

あんまり大丈夫じゃなさそうなフレーズを返しながらしれっとしている。
とは言え、アホな事を除いても全身に響いているのは本当だ。
本人は至って何時も通りの仏頂面をしているが、顔色は芳しくない。

「僕は風紀に、先生もちょくちょく出ていく。
 お前も結構活動的だし、イヴはよく寝るからな。案外、四人で顔を合わせたのは初めだけかもな。」

四人が四人で色々事情がある。揃う方が珍しいのも仕方ないことだ。

「だよな。まだまだガキだし……、……まぁ、そうか。いい時間だ。」

寝るのも当然だとは思う。
とはいえ、出鼻は(勝手に)くじかれたがまたとない二人きりだ。
丁度、風花の事を知る良い機会なのかもしれない。
何気なしに変わらないいつもの部屋を風景を眺めていると、目に留まったのは一つの本。

「……風花は読書が趣味なのか?」

風花 優希 >  
本当に大丈夫なのか不安になる返しだが、顔だけ見れば問題はなさそうだ。
少しばかり顔色は芳しくないが…まあこんな時間だ、そうもなろうと。

…いや、そのいつも変わらぬ顔を見て、正確に判断できるものではないのだが。

「んー、言われてみればそうかもな。
 なんやかんやで全員揃うってなかなかないし…いや、夜中には揃ってるけどさ」

ただし全員が恐らくは夢の中。

今だって、半分はそうなのだ。

「うん? まあね、図書委員だってのもあるけど」

橘壱 >  
「それ全員夢の中だろ。……いや、一人はやたら布団入ってくるな……。」

それこそお互いどんな夢まで見てるかなんてわかりっこない。
一人はやたら人の布団に入ってくるが今は一人で寝てるし大丈夫だろう。
ごとり。重い音を立てて、適当にテーブルの上にトランクが置かれる。

「図書委員……そう言えば、言ってたような気がするな……。」

初めの顔合わせの自己紹介で言っていた気はする。
当の壱少年と言えば名前位しか名乗らない程に無愛想な挨拶なのが思い出せた。
風紀という委員会に所属してる都合上、各種委員会の内容もある程度把握している。
ただ本の管理をするだけではなく、彼等は時に危険なアーティファクト等の管理などもするそうだ。
レンズの奥、碧の瞳が風花の事を見据える。
人を見かけで判断するわけじゃないが、彼もそういった"修羅場"をくぐったりはしているんだろうか。

「そうか……お前も結構危険な橋を渡ったりはするのか?
 そこにおいてある本も、実はただの本じゃなかったりとかするのか?」

風花 優希 >  
「よかったじゃないか、毎日布団が出会いの場で」

冗談めかした言葉を返し。
ごとりと置かれたトランクへと視線を向けて。

「普通の委員の仕事じゃ、そういう機会はそんなにないよ。
 禁書管理をメインでやってるような人は、また違うんだろうがね」

「しかし、やたらめったら重そうなの持ってんね。
 風紀ってそういう奴、毎回必要なのかい?」

手元にある本については、それとなく流しつつ。
尋ねられた言葉を返してから、そんな疑問を軽く尋ねる。

橘壱 >  
表情を顰めて、肩を竦めた。

「……毎度毎度、あれが目の前にある僕の身にもなってくれ。
 目が覚めると毎回アイツが目の前にいる度に、自分が我慢強い人間で良かったと常々思う。」

橘壱はオタクである。
当然、"ソッチ"の性癖もあるのでしっかりと守備圏内だ。
おまけに、当の布団潜り犯人は顔もいいし匂いもいい。
我ながら、自らの理性の強さを毎朝褒め称えている位だ。
……思い出してきた"邪念"を、軽く首を振って追い払う。

「成る程、管轄が分かれているのか。
 ……その口ぶりからして、風花は前者か?」

それもそうだ。風紀委員だって誰も彼もが戦っている訳では無い。
書類仕事だって、立派な仕事だ。脳内で本の管理をしている風花の姿はちょっと似合うな、なんて思った。
トランクのことを聞かれるとそれを一瞥し、いや、と首を振る。

「コレをメインで使ってるのは僕位だ。
 皆自分の異能だとか武器だとか武術だとか、そんなものばかりだ。」

どかっと椅子に座る。
背中を無造作に預ける姿は、育ちの悪さが滲み出ていた。

「……僕みたいな非異能者(ぼんじん)は、寧ろコイツがなけりゃろくに前線すら立てないさ。」

風花 優希 >  
「あははは…まあちと、あの子はいろいろ危ういとこあるからね」

お風呂に一緒に入ったからこそ、尚更にそう思う。
極々自然体に、思わせぶりに誘ってくる性質なのだ、あの子は。

まあ普通の男子であれば、流石にちゃんと断るだろう。
…と、まさか目の前で話している相手が、そっちもイケるとは思っても居なかった。

「担当は一応ね。
 書庫整理やら書類まとめるのが得意なだけな子が、禁書に対応できないでしょ?」

相応に、戦闘に向かない生徒も存在する。
数だけならばむしろそちらの方がスタンダードだ。

まあ、己は戦えない側ではなく、禁書対応をしていないわけでは無いのだが…。
少なくとも、それがメインではないのは事実である。

「なるほどな。技術と道具でどうにかしてる側か、ここじゃあ確かに珍しい。
 ボクから言わせてもらえれば、戦える時点で凡人じゃあないけどね。無能力者、ではあるだろうが」

橘壱 >  
「危ういとかいうレベルじゃないだろ……誰か倫理観を教えてやってくれ……僕じゃ無理だ。」

普通の人間の男子の倫理観かつイケるってなるなら尚の事だ。
傍若無人、慇懃無礼だが根っこに善性があるせいで色々苦戦中。
正直、何を言ってもなんで?で返ってくると流石に匙を投げたくなるというもの。
はぁ、と深い溜め息を吐いて天井を仰いだ。ホロライトの光がイヤに目に刺さる。

「そうかも知れないがな……お前も異能とか魔術とか使えるのか?」

本人がそう言ってるだけで、案外武闘派なのかも。
戦う美少年、という絵面はまぁ悪くない。

軽く床を蹴りながらぎぃ、と船漕ぎ。育ちが悪い。
とは言え、顔色の悪さも相まってやや無気力気味。
実際体を痛めているわけだし、壱少年自身も少し気落ちをしていた。

「……どうかな。改めて常世学園(ココ)にいると思い知らされる。
 世界だけでも広いのに、こんな箱庭一つでもまるでモンスターハウスみたいだ、ってね。」

それこそビックリ人間展覧会だ。
今の此の時代では珍しいことではないかも知れない。
非異能者の少年にとって、それは非常に疎ましいものだ。

「風花は、ゲームとかやる方?」

風花 優希 >  
「一日片時で覚えられるもんじゃないよ、倫理なんてさ。
 あの子はまだ子供だし、気長に教えるしかないねぇ」

自分も直ぐに教え込むのは無理だ、と暗に返す。
とはいえ聞きわけはいい子だったので、時間をかければ或いは…ではあったのだが。

「うん?
 まぁ、魔術は使えるけども……ボク一人じゃね」

限界もあるし、率直に言えば本意ではない。
実際、この島での戦闘に置いて、少年が『勝てる』事は殆どないだろう。

故に戦闘は極力避けているし、使命に関しても消極的な活動に留めている。
いざ戦闘になった際にも、最終的に逃げ遂せることを念頭に置いているくらいだ。

やはり己は道具であって、使い手なしに活動するものじゃない。
……と、そうした思考があった。

「そりゃあだってアレだぞ、ココ。
 その広い世界の中で寄り過ぎりを集めて蟲毒やってるような島じゃあないか。
 びっくり人間ばっかりなのもさもありなんだよ」

「いいや、ぜんぜん」

橘壱 >  
「まぁそうなんだけど……こう、な?わかってくれ。」

早急にわかってくれないと多分そのうち身が持たないかも。誰か助けてくれ。
とは言え、仕方のない事と言われればその通りなのだ。
はぁ~~~。今日一デカいため息が出た。

「……使えるのか。まぁ、そうか……使えるよな、普通なら。」

今此の世界じゃ完全な非異能者のが珍しい位だ。
異能もなく、魔術適性もなければ、特別な力があるわけでもない。
フィジカルだって漸く鍛えて一般人の中ではという話。
強弱の問題ではない。少年にとっては、その"使える"というのが少し、羨ましい。
軽く顔を引けば、自らのトランクを一瞥する。

「わかってるさ。だから余計に、現実って奴を直視してると改めて思う。
 非異能者(じぶん)という存在が、学園どころじゃ、世界じゃ異常なのかもな、って。」

言ってしまえば障害者と変わりはしない。
普通であることが普通ではないと思うことも少なくはなかった。

「そうか……勝負事とか、賭け事は?
 人生の内でこう……"一番"になりたいと思ったこととかないか?」

風花 優希 >  
毎日のように布団に入ってくるのは確かに大変なのだろうが。
その辺りは彼の自制心と理性に頑張ってもらう事にしようと、苦笑だけを返した。

「羨むもんじゃないと思うがね。
 戦うだけなら、キミのが強いだろうさ」

卑下するでもなく、純粋な能力や技術を推察した上で事実のように口にする。
なにより魔術の有無など、それは持てる技術があるというだけの話。
無いなら無いなりに、人というものは別の技術や知識を持っているものなのだ。

「魔術やらを使えないってだけなら、先生にだっているしな。
 まあでも、断言するけど異常なのは異能者の方だよ、持たぬ方が普通だし健全だ」

「世界が変容したと言っても、世界を構成する大多数は持たぬ側の人間だからな」

その上で、だからこそ彼はそう返す。
この島は確かに世界の不可思議を煮詰めた地だが、それは世界の総てではないと。

「うーん、ボクには無いな、そういうのは。
 昔っから使われる側に甘んじてるし、慣れてる側だからさ。
 上には上がいるし、下には下がいるのは当然だろう?」

橘壱 >  
「…………。」

ギィ、船漕ぎが止まり、何とも言えない(アンニュイ)表情。
疲労感と此処最近のフラストレーション。
壱自身が無意識にルームメイトと許している節がある。
夜の暗さも相まって、思ったよりも弱気な言葉が漏れてしまう。
ふ、と漏れた笑みも何処か自嘲的。

「"隣の芝生は青い"っていうのは、わかるんだけどな。
 凡人(ボク)みたいなのかみれば、そういう"特別"な感じには惹かれるよ。」

「技術と言っても、適性とかそういうのもある。
 ……僕に出来る事と言えば、AF(コイツ)の操縦だけ。それも、世界一とは言えない。」

その通りではあるし、事実少年だって外の世界の広さを知っている。
此処が総てではないにしろ、誰でも出来ることと、出来ないことには明確な差があった。
ただAF(パワードスーツ)を操縦するだけの技術というのは、努力すれば誰もが到達出来る。
少年には才能があれど、それが決して、非凡なものではないことを自覚していた。
コンコン、と指先でケースをつつけば、風花の方へと向き直る。

「使われる?……、……。」

ちょっと良からぬ想像をした。
違う違う、と首を振って再度視線を合わせた。

「随分と妙なことを言うな。前職は小間使い……って感じはしないな。どういう意味なんだ、それ?」

明快な位にストレートな問いかけだ。

風花 優希 >  
「…憧れるっていう気持ちや理屈は分かるけどもね」

無いものが欲しくなる。
他者が持っているものを羨むのは、人として当然の事。
それこそが人の弱さでもあり、ある種のモチベーションになるのも知っている。
恐らくは、彼にとってもそうなのだろうと目を細めて。

「しかしそうかい、つまりは一番街良いんだなキミは」

何故に、己に一番になりたいかを尋ねたのかを悟って、くつりと笑う。
なんともまた、今どき珍しいくらいに単純明快な話だと。

己には共感は出来ないが、少し眩しいものである。

「委員の仕事ってつまりは、そういうものだろう?
 学校って言う上に命じられてやってんだからさ」

そうして少し楽し気な声色で返しながら、少し疑われてしまった問いに煙を撒く。
つい零してしまった事実と心境から、わざわざ己の正体に気が付かれては、隠している意味もないと。

橘壱 >  
「……そうさ。僕は"一番"になりたいんだ。
 自分が楽しいと思ったら何でも、どんなことでもね。」

何の恥ずかしげもなく、頷いて肯定する。
白衣の裏から取り出したタブレット端末を起動すると机に置いた。
液晶モニターから映し出されるの立体ホログラムに映る鋼鉄の人。
青と白を基準とした鉄の兵器、Assault Frame(アサルトフレーム)の立体図。

「此処に入学(くる)前に、僕にはAF(コイツ)を動かす才能があった。
 それが企業の目に留まって、宣伝目的でね。まぁ、正直来た理由なんかはどうでもいい。」

「僕はAF(コイツ)を動かすのが、今一番楽しい。生き甲斐といっていいね。」

そう語る壱の笑顔は無邪気なもので、子どもっぽくも見えるだろう。
凡人を超人にしてくれる機械の鎧。それを自在に操る才能が少年にはあった。
それは、少年壱にとっては正しく天啓だったのだ。ハマらないはずがない。
それが楽しくなってしまえば、その気質には抗えない。兵器は即ち、力だ。
力で世界の頂点に立ちたいと思ってしまうのは、一番に成りたいと思うのは必然だった。

「……此処にきて結構風紀の仕事は色々してきた。
 企業の連中の顔色を伺って、こんな島一つ位なら踏み台にやると息巻いてたんだけどね……。」

現実は厳しい。こんな島一つでさえ、ゴロゴロと化け物がいる。
ひしひしと高くなる壁に、心に抱えるコンプレックスと相まって気が弱まっているのだ。

「壁が高いほど燃える気質なんだけどな……挫折とか苦渋位は、何度経験しても馴れないな。
 ……風花はそういうのないのか?案外、人生は順風満帆か?」

思わず言い方も嫌味っぽくなってしまった。八つ当たりだ。

風花 優希 >  
「いいじゃないか、男の子ってやつでさ」

モニターに映し出される鋼の機人。
己には実に馴染みのない代物だが、確かな人の叡智が産み出したであろうそれ。

ああ、まるで人の──”人類”の代表として選ばれた存在のようだ。
だなんて、その立場や兵器を見て密やかに思う。

その為の野心や夢も持っていて、力もそれに伴っているのだろう。

道具でしかない優希からすれば、それこそお伽噺の中の主人公のようなものだ。
あるいはそう、かつて見たように…英雄となった人物の幼少期を覗き見たような…そんな感覚であった。

「そういうことなら、上には上がいるのは当然だと…そういうのはあんまよくなかったな。
 慰めて、折れられでもしたら色々と申し訳が立たないし」

だからこそ、素直にそう返して言葉を止める。
己の意見を言うのは簡単だが、その意と結果を予想できない程愚かではない。

「……それに、キミのそういう感覚は、ボクにはなじみが無いからね。
 できないことはできない、出来る事は出来るって思考だからさ、高い壁に自ずから挑もうとしないんだよ。
 挑まないといけない理由があれば違うけどさ…それはほら、義務感だろう?
 
 熱意ってのが無いんだよ、ボクにはあんまりね。だから少し羨ましいよ」

橘壱 >  
「熱意がないって言う割には、こういうロマンはわかるんだな。」

そう、科学の結晶。人が生み出した叡智の形。
手足のように動き、人間というものを拡張してくれる外付けのパーツ。
人が人のまま戦うための姿。鉄の力、そう、ロマンだ。
それこそからかうように言ってやれば力なく笑ってみせた。

「……ちょっと弱気にはなっていたのはあるけど、そこまで弱くはない。
 こう見えて、世界を獲った事はある。……ゲームで、だけどね。
 だから、挫折も苦悩も、苦渋だって散々舐めた事はあるさ。」

娯楽だと揶揄する輩もいるが、間違いなくそれに本気になっている人間は沢山いた。
そんな人間の頂点に、確かな成功体験を少年は修めている。それに見合う実力と努力をしてきたつもりだ。
ルームメイトと最低限のコミュニケーションかとってこなかった無愛想な少年。
何処に当てられたのか、今では随分とこの通り、饒舌になってしまった。

「だから、まだ折れちゃいないさ。まだ頂点を取ることを諦めちゃいない。
 気を使わせたなら悪かった。……というか、案外話を聞いてくれるんだな、風花って。」

少しは冷静になったらしい。
だからこそ、思い返せば結構ぶっちゃけてしまったな。反省。
こうして話して見ることで、意外と気の良い奴だと思った。

「随分と機械的……というか、俯瞰的な事を言うな。
 まぁ、人に使われやすい、委員会にコキ使われやすそうな性格ではあるけど…、…。」

見た目以上に大人びた言動だからこそ、此方が甘えてしまった節もある。
少年は非凡なことこそ無いが、凡人の中では優秀であり勘もそれなりに敏感だった。
妙な違和感。嫌に機械的なのは、どうしてなのか。訝しげには思ったが、続く言葉に目を丸くした。

「……羨ましい?僕がか?」