2024/06/17 のログ
ご案内:「堅磐寮 部屋」にマトさんが現れました。
マト >   
堅磐寮、マトの自室
人を今まで上げたことが無く、お世話になり始めてまだ日が浅いマトの部屋には当然、まだ物が少ない

あるのは小さめの本棚と机に椅子、最近習い始めた魔術関連の道具といったものが小さくまとめられている
何故か本棚の隅っこに小さくタオルがかけられている事以外気になるようなものはないだろう

「どうぞ入って、飲み物はお茶でいい?それしかないんだけどね」
「あ、お茶菓子は……寮母さんに貰ったおせんべいでいいか」

そしてそこに帰ってきた主は、今日は一人の少年を連れていた
部屋に入ったマトはそのままコップに二人分のお茶と、おせんべいを皿に乗せて持ってくる

部屋には備え付けの座布団が二枚敷かれており、その一つにちょこん、と座ってお茶とおせんべいを床に置いた

ご案内:「堅磐寮 部屋」に風花 優希さんが現れました。
風花 優希 >  
穴での一件から数日後、まだ十全な回復が成されていない状態で彼はマトの自室に訪れていた。

一先ずは玄関から上がり軽く一礼、周囲を見渡し内装を確認する。
あまり物がないあたりは、単にまだ日が浅いからか。
或いは己と同じように、必要なものは置かない性質であるのか。
そんな考えを巡らせながら、今はマトに言葉を返す。

「ん、おじゃまするね。
 その辺りはなんでもいいよ、拘りはないし」

ともあれ、そう答えつつ用意された座布団に腰を下ろした。

マト >   
「何も無いだろう?特に置くものも今は思いつかなくてね……その内増えるかもしれないけれど」

内装を確認するあなたに向かってマトは苦笑するように笑う

「ん」

座るのを見てお茶を一口

「それで、今回は僕から誘ったわけだけど……優希、ちょっと疲れてるみたいだけど、何かあったのかい?」

今回優希を誘ったのはマトの方である、あるのだが、先ず気になったのは優希の少し消耗した様子であった

「僕もちょっと優希に聞きたい事があって呼んだんだけど、もし無理させていたならごめんね?」
「まぁ、此処まで連れてきておいて今更ではあるんだけれど……」

そういいながら更にお茶を一口飲みつつ、じぃ、と優希を見つめる、その姿は……
何時もより何というか、緊張しているように見えるかもしれない

風花 優希 >  
「それを言ったらボクも似たようなもんだよ。
 共用部屋だから、結構モノには溢れてるけど」

つまりは自分の私物があまりないという事なのだが。
被造物ならば、これくらいが普通だろうと。

「あぁ…まあちょっとこの間、色々あってね。
 腹に穴が開いたり実質誘拐されたりしたもんだから、少し消耗してるのさ」

さらりと少年はそう返し、ずずっとお茶を軽く傾ける。

「まぁ、ちょい魔力がいつもより無いってだけだから気にしなくていいさ。
 それで、聞きたいことって何かな?」

それから視線をマトへと向けて、話を聞く体勢に。
その表情から真剣な話だろうと直ぐに感じ取れた。

マト >   
「ああ、ルームシェアって奴だったね、結局この前男子寮に行ったときは合わずじまいだったけど……」

少し前の雨の日の出会いを思い出しながら

「穏やかじゃないね、でも、君が"そう"なったって事は……」
使命(オーダー)絡みかい?」

一瞬、ぴくっ、と指が跳ねるように動き、そのまま、長い髪をさらりとかく

「それなら、いいんだろうけれど……ん、あぁ、どれから話すべきか」
「あー、えっと……そうだな、之にしよう、優希、君の体について何だけれど」
「君のその体、その姿に由来はあるのかい?」

真剣ながらも、同時に何から、どう話すかを悩んでいる事が瞳の揺らぎからも伝わるだろう

実際の所マトが優希を呼んだ理由は他でもない
マトは之までの優希との交流、それによって齎されたものに対して明確な感謝を覚えている
有体に言えば、お礼がしたい……何をすればお礼になるのか、それを知りたいと考えていたのだが

「……僕の体、姿の由来は記憶に無いんだけれど、参考までに聞きたくてさ」

お礼をしたいただ之を伝えるだけでいい筈なのに、敢えて遠い質問から入ってしまうマトがいた

風花 優希 >  
「そうだったのか、すれ違ってしまったね」

いつの間に来ていたのか。
少しばかり間が悪かったな、と思いつつもお茶をで喉を小さく鳴らす。

「ああ、使命絡みさ。
 ちょいと荒事になってね、してやられたってわけだ」

あれは結果としては此方の敗北であった。
無論、手痛い目にも合わせたが、此方の目的は果たせなかった。
まあ、元より勝つ見込みは薄かったことだ。
最低限の利を得る事が出来ただけ、良しとしよう。

「ふむ、いくつかあるのか」

いい淀み、選ぶような物言いに苦笑しながら。
続く言葉に返答する。

「由来か…ああ、この身体は『前』のボクの所有者の似姿だね。
 それなりに長い付き合いだったし、参考にし安かったのさ」

マト >   
「うん、まぁサプライズってやつだったし、代わりの出会いもあったからね」

ふふ、と今度は小さく笑って、楽し気に目を細める

「そうか―― まぁ、それならしょうがないね、怪我自体は、だけど」
「だけどそうか……優希が負ける相手か、手ごわそうだね」

しょうがない――そう、それが使命(オーダー)絡みなら、してやられたとはいえ無事に帰れたのは幸いだ
使命(オーダー)とは時に自身を危険に晒しても遂行するべき事、覚えておらずとも人造生命体(ゴーレム)であるマトは理解していた

「……必要なら呼んでね、僕も一応仮契約とはいえ、優希の手伝いはしたいから」

だから、今のマトはそう伝えるに留まるだろう、実際無事でいてくれたことはいい事なのだから

「成程……前の所有者か、どんな人だったんだい?」
「長い付き合いだったって事は……その姿は所有者の若い頃って所かな」

優希の説明に納得がいったようで頷いて、そのまま興味深げに質問を続ける

風花 優希 >  
「初めは交渉するつもりだったんだけどね、それが失敗したんだからしょうがない。
 ボク単独で勝ち目そのものは見えない相手でもあったしな」

何よりあの戦闘に置いての勝利条件は通常の勝敗とは異なっていた。
アーティファクトを回収の可否が勝負であったからこそ、戦いが成立していた。
純粋な戦闘であれば、よくて先日手がせいぜいだったであろう。

「とはいえ、実際に荒事になるって分かってたら流石に頼るさ。
 ボクだけで出来る事に制限があるのはよく理解しているからね」

故に、そうした事態であることが事前に分かっていれば手を借りたと。
少年はひとまずは、そう返すことにした。

「そうだね、若かりし頃の姿ってやつだ。
 一言で言うと生真面目で、どこか儚い子だったかな。
 なんだかんだ、それなりに長生きしたけどさ」

マト >   
「うん、交渉は大事だ、無駄な戦いはお互いにとって不利益になるしね」
「それでも譲れないのならしょうがないのだろうけれど……」
「本当に、無事でよかったよ」

あの戦い(エロ本奪取戦)を思い出し、一瞬だけ部屋の本棚、のタオルをかけてある場所を見つめる
……そして頬が一瞬赤くなって、慌てて目を逸らした
彼女にとっては至って真面目であり、会話内容もそうなのだが……まぁ、ものがものである

「うん、そういってくれると嬉しいな」

頼る、という言葉に打って変わって嬉しそうな声色で頷いて、続く言葉に耳を傾ける

「成程、今の優希にも通じるところがあるね、生真面目で儚げか……」
「という事は君がその姿になったのは前の主を見送った後なのだろうけれど」
「……その、答えづらいならいいんだが、君の人格というか、自己認識にその人の影響はあるのかい?」

生真面目というのは初めてあってからの優希への印象と一致する
そして儚げというのもきっと彼の醸し出す雰囲気に言えるのだろう
だとするとやはり、其処が少し気になったようだ

風花 優希 >  
「なぁに、無事に逃げ帰る算段は一応あったからね」

とは言えそれも、場合によっては危うかったのだか。
あの場所に監視の目があっったのなら、ここまで上手くはいかなかっただろう。

そんな会話の最中、一瞬顔を赤く染めたのを、少し奇妙に目を細める。
今はまだ、それを追及したりもしないのだが…。

「うん? まあ…多少はあるんじゃないかな。
 ボク自身に自覚はないが、長年の積み重ねというものはあるからね。
 影響がないという方が不思議だろうさ」

何より本当に契約したのならば、魔術的な繋がりも結ぶという事。
そこから影響が欠片も出ない、何てことは考えづらい。

「あとはそうだね、身体はちゃんと人のそれでもあるからな。
 食欲だとかそういう類も、一応はあるんだよこれでも」

マト >   
「まぁ、今此処にこうしている事がそれを証明しているからね」
「僕より余程事前の策を持ってることは理解してるさ」

こくこく、と小さく頷く、ある意味自身の師でもあるあなたへの信頼は確かにあるのだろう

「そう、だよね……関わるという事は、お互いを知り理解するという事だ」
「人間同士でもきっとそういった部分はあるんだろうし……いや、話を広げ過ぎだね」

ぶんぶん、と首を振って、軽く頬を揉むようにする

「あぁ、ご飯も食べてるし……睡眠もちゃんととるし」
「人と混ざって過ごす分には、その方が好ましいだろうしね、それで、えーっと」
「優希の場合は、自己認識は……男、という事でいいのかな?住んでいるのも男子寮な訳だし」

食欲、睡眠欲……に並ぶ三つ目の欲求については口に出さず、そのままあなたの自己認識について質問する

「僕は正直、そういった自身の性別に対する認識は余り無かったからね、体も……初めからそういうものだったし」

風花 優希 >  
「明確なオーダーがある分、それでもボクらは”ブレない”んだろうがね」

逆に言えばそれが無いからこそ人は、関わり合う事で変わるのだろうと。
マトの言葉に、少年は静かに首を縦に振った。

「人として暮らす上では、衣食住はちゃんとしないとだしな。
 変にそのあたりを見せないでいると疑われちゃうし」

と、そこでどうにも言いよどむような口ぶりに、小首を傾げた。
どうにもまだ、少年にはその意図を汲み取れていないのだ。

「だからまあ、借り物ではあるけど身体のままの自己認識も持ち合わせているよ。
 これでもちゃんと男だっていう認識は明確にあるわけだけど…それがどうしたんだい?」

マト >   
「そう、だね」

ブレない、あなたのその言葉に、一瞬だけ息を漏らす

「いや、えっとだね……」

唸る

「その……」

二度唸る

「う~~~ん…… 」

意を決す

「……あのさ、優希実の所、僕が此処に君を呼んだ理由なんだけど」
「何か、君にお礼というか、好きな事を知りたいとか……そのくらいの理由だったんだ」

「だけど、ちょっと前に少し……特別な出会いがあってね」
本とゴーレム、僕にとって興味深い出会いと経験だったんだけれど」

「結果的に、手に入れたものが、あって、だね……」

再度、優希を見て、本棚を見て、視線を戻して、小さくつぶやく

マト >   
「優希はさ……エロ本って…… 知ってる?」

風花 優希 >  
何となくだが、妙な予感を感じ取る。
思い悩むような、躊躇うようなその感じから、重要な何かであるのは見て取れる。
きっとマトにとって大切な事であろうことは感じ取れる…のだが…。

そう、空気が微妙に違うというか…
妙な空気というか雰囲気を感じ取っていた。

「あぁ…お礼か…
 別にいいって言う所だけど、まあ其処は気持ちの問題だし好きなものくらいは答えるが…」

「でも…だった?」

本とゴーレム。何かしら、マトの様子を変える出会いがあったのか。
それが如何なるものかは分からぬが、こうまで変質する事となるとよっぽどだろう。
そう思っていたのだが──
(→)

風花 優希 >  
「は?」

続く言葉に、空気が凍った。色んな意味で。

いやまあ、知っている、知ってはいるが…。
もしかして特別な出会いとはそれなのか?と。

思考回路にクエスチョンマークが乱舞していた。

マト >   
「えっと、だね……」

そして彼女は話し出す、その出会いを
田中浩平という少年に出会い、偶々男子制服をしていた自分が声をかけた
エロ本を知らず、そして本を回収しゴーレムと相対するという内容に
図書委員として、ゴーレムとして気をひかれたマトは田中くんへの協力を願い出る

「結果的に、そのゴーレム……オフェニムとは和解で来たんだけれど」

エロ本を詰め込んだ本棚ゴーレムと和解し、そして本を手に入れて初めて知ったのだ、彼女は

「エロ本を、その、分け前という事で貰ってきてね……」

ざさっ、と本棚に駆けられたタオルをどけると

『ひよこババア戦記』『エロ玉乱太郎』『ハァ? 私が腰ぶつけっこなんて遊び、知らないわけないでしょう!?』
等の名著が並んでいる

「一応その、貰ってから最低限の知識は調べて得たんだが……」
「こういうのが好きな男子、というのは多いらしいじゃないか、だからえっと」
「い…… いる?」

たらり、とマトの額から透明な液体が垂れる、それが汗なのかは分からないが
あなたが知る限り、此処まで動揺、或いは混乱しているマトを見るのはきっと初めてだろう

風花 優希 >  
「なるほど、わからん。
 ……いや分かるんだが、肝心な部分にノイズが多すぎる」

率直な感想であった。

まあ…流れとしては理解は出来たのだ。

マトはその田中何某に協力を要請されたのだろう。
そして、本を得る為にそれを守護していたゴーレムを協力して相手した。
その過程で、同族故にマトとゴーレム…オフェニムは和解。
二人は無事に本を手に入れる事が出来た…と。

そこだけを確りと切り抜けばああ、ちょっとした青春の美談だろう。
その本がエロ本でなければ。

いや、エロ本だからこそ青春の美談という説もあるが、それはさておき。

「で…あぁ……まあ、なんだ……」

それのせいで何だか、妙な感じになってるのかと看破した。

まだ己は相応に長く人の世界に居て耐性やら、その制御なんかが出来ているが…
マトは恐らくこれが初めて、未知の情報の揺れ動きにこうなってるのだろうと。

「流石に遠慮しとく」

おずおずと差し出してくるのは辞めてほしい。
なんだかこう、こっちも変な気分になるからと。
優希は素直にそう思った。

マト >   
「すぅ……」

思わず取った行為は深呼吸、というべきもの
吸って、吸って、吐く

「あぁうん、ごめんね……何というか、その」
「僕にとっては色々初めてな経験、でね、少し普通ではない、自覚は、ある」
「知識として欠片は持っていたはずなんだけどね、ごめん、変な事言って」

流石に動揺、混乱の自覚はあるのだろう、ぐびっ、と残ったお茶を飲みほした

「そ、っか……うん、わかった、じゃあ之は自分で持っておくね」

残念なのか、それともほっとしたのか、恐らくマト自身も分かっていないだろうが
頬を赤らめたまま、エロ本をそっとタオルの部分に仕舞い直す

「じゃあ、えっと、そうだ元の話だ、代わりに欲しいものとか、好きな事とか、優希はあるかい?」
「行きたい場所とかでもいいよ、梅雨が終われば遊びに行くなんてことも、一般的な学生はするだろうしね」

二人の間に流れる妙な雰囲気を払拭させるかのように、マトは何時もより少しだけ早口で言葉を紡ぐ
まぁそもそもマトがエロ本の話題を出さなければこんな空気にならなかった、というのはそうなのだが

風花 優希 >  
まあうん、そういう反応にもなるだろう。
一先ずは今は、生温かな視線で見ておこう。

断じて少し、ドキリとしたなんてことはない、ないのだ。

「いや…うん、初めてだもんな…。
 そうなるのは分かるというか、理解はするというか…」

ともあれ、受け取る方がこの場合は気まずい。
というか持ち帰れば、それはそれで周りにいろいろ言われそうで困るのだ。

「ああえっと…好きなもの…好きなものか…。
 甘い飲み物とかは好きだね、あとは海には少し興味のある者があるかな」

マト >   
何だか所在なさげに少し座布団の上で少し体を揺らして
手持無沙汰なのか、傍にあったポシェットを胸に抱く
頬にはまだ、淡く朱が差していた

「うん、本当に……何というか、頭を酷く揺らされた気分だ」
「人は、こういった感情もうまく制御して生きているん、だよね、なら僕もちゃんと受け止めないと」
「それは、分かってるんだけれど……ふぅ」

ぱん、と頬を叩いて、気を取り直したようにすっ、と視線を上げた

「甘い飲み物に、海か……なら、梅雨があけたらどこかのタイミングで一緒に海に行こうか?」
「僕も海は未経験だし、甘い飲み物もその時に一緒に買いにいけそうだ、悪くないと思うけれど」

どうかな?と、何時もの様に屈託のない笑みを浮かべながら淡い桜の匂いを漂わせる髪を揺らす事だろう

風花 優希 >  
「そうだな…感情というか欲情というか……」

制御というか処理をしているんだろうが…流石に言うまい。
というかそういう感情も存在するのか…やったのか?とそんな思考が過る。

どうにも己に妙な思考が今走っているのも、消耗しているからだろう。
普段なら無意識化で働く精神制御が、今はどうにも調子が悪いらしい。

何処か可愛らしくポシェットを抱いて頬を染める姿に、そっと視線をそらしていた。

「ああ、海に行くのはいいね。
 キミのおごりで何か、海の家あたりで飲み食いするってのもは悪くないだろうさ」

淡く甘い香りが鼻を擽る。
どうにもなんだか、妙な感じに包まれる。
脈打つ音が、いつもよりも早く感じられた。

マト >   
「欲情……か、それもうん、きっと人らしい感情なんだろうね」
「エロ本を求める浩平は、実際……僕でも分かるくらいに強い意思で満ちていたから」
「……」

小さく、何かを言おうとして、止める
それが『君にはあるのかい?』という質問を止めた事である事は、気づこうと思えば気づけるだろう

「うん、バイトもその、最近やってる『とこトレ!』関連で日雇いが結構あってね」
「ある程度賄えそうだから、期待しててよ、美味しいもの奢ってあげるからさ」
「あ、でも本は海……潮風には余り強くないんだっけ?まぁ優希なら大丈夫か」

視線を逸らす姿に、小さく息を吐く、ほっとした、残念そう?そのどちらの感情も満たせるような息遣い
先ほどまでの妙な空気こそ収まったものの、二人の間に流れる空気が今までとは少し違っているのは確かだろう
ちょっと冗談めかせて潮風を心配する仕草を見せながら、ぱりっ、とせんべいを割って口に運んだ

風花 優希 >  
「三大欲求の一つだからね…。
 年頃の男子となればそれはもう、時に食欲すら上回るって言うし」

言葉を止めた、その意味は何となしに分かってしまう。
恐らくは、気になったのだろう。
それは己にも在るものなのだろうか?と。

「とこトレ…あぁ、あの例のミスコンみたいなやつ。
 バイトもやってんだなぁ、アレ。それなりに大規模らしいしそりゃそうか」

「あぁその辺りは大丈夫だ、処置とかはちゃんとしてるし……」

その返答を先送りにしていたから、或いは誤魔化したからこそ歯切れが悪い。
何を問うつもりだったのかを知っているのに、答えなかったのが、どうにも気になってしまう。

ならば、それは晴らしておくべきだろうか。
”いつも通りならば”抑えていたであろうその言葉を、彼は告げた。


「……あとその、あるよ、ボクにも」

マト >   
「あはは……それは大変そうだね、僕は食欲は希薄な方だけど、それでも何も食べないのは少し不快感があるし」

きゅ、と少し強めにポシェットを抱きしめる――或いは、近いうちに抱くものを彼女は買うのかもしれない
衝動的に、或いは無意識化にやるようになったその仕草は、心情のいかなる変化によるものか

「主に増設された会場や移動の際の資材運搬だね、之でも普通の男子くらいの力はあるから」

「流石に潮風に吹かれて力が出ない、なんてなったら困るしね、少し前に読んだ絵本じゃあるまいし……」

潮風で湿って力が出ない~~となっている頭が菓子の男を思い出し――そして引き戻された
勿論、その後に続いたあなたの言葉によってだ

「え?ある、って?」

自分が紡がなかった言葉、それ故に返されるはずも無かった返答
それに対する答えをいきなり浴びせかけられ、思わず彼女はきょとんと眼を丸くしてあなたを見る事だろう

風花 優希 >  
その仕草は無意識のそれなのだろう。
少し前までは見せていなかった、”らしい”仕草は、どこか初々しくもしっくりとくる。
視線をそらしながら、視界の端でふと見てしまう位には。

「……だから、ある。そういう欲も」

だから、なのだろうか。
きょとんとした顔で反復された言葉に、そう続ける。

短くも簡潔に。
何に対しての返答なのか、伝わるように。

マト >   
硬直
  
「――」

拝聴、認識、反芻、理解  結果

「そ、っか…… へ、へぇ……」
「そう、なんだ」

今までの反応ならばそうなるだろうな、といった照れた顔で目を逸らすマトの耳には、僅かに朱が差していた

「流石、だね、 ほら、人の中で生きていくには、出来るだけ人に近い方がいいだろうしね」
「その……ありがとう」

最早何に対してか分からないようなありがとうの言葉と共に、縮こまる様に座布団の上に座るマト

「参考にさせてもらうよ、うん」
「あっ、お茶飲み切っちゃった、お代わり持ってくるけど優希も飲むかい?」

何にだ、というツッコミを入れられそうな言葉と共に、半ば逃げるように立ち上がって台所の方に向かうだろう
ばたばたと慌ただしい音を立てながら

風花 優希 >  
なんでそそんな反応を見せるんだ?
と、少し気まずい感覚を抱きながらついつい思う。

なんというかその、それで嬉しそうに思っているのはどうなのかとか。
どういう意味なんだとか、そういう思考が頭を過る。

「いや……まあ、うん。
 知りたがってそうだったし、ね」

本当に何のためのありがとうだというのか。
何だか胸が痛い気がする。
……単に鼓動が高鳴っているだけなんだろうが。

「あ、うん、そうだね、もらおうかな?」

渡りに船とばかりに、その問いに曖昧ながらも答える。
慌ただしく台所に向かう姿を見つめて、どうしたものかと思案しながら。

マト >   
どうしてそういう反応をするのか、まだマトには理解できていないだろう
それを知ったばかりの高揚と困惑?それを同類も持っていると知っての安堵?或いは……

「オッケー、お茶だけはそれなりにあるからね、幾らでも飲んでいってよ」
「といっても、飲み物ばかりだとお腹たぽたぽになっちゃうだろうけれどね?」

ともあれ、冷えたお茶をコップに注ぎ、氷を入れて渡す行為は僅かなりとも――
その場の空気をクールダウンさせてくれるだろうか

「はい、お待たせっ」

そういって、氷がたっぷり入ったグラスを差し出すのだ

風花 優希 >  
「流石にがぶ飲みはちょっと」

からからと、その姿が目の前に無ければいつものような苦笑が浮かぶ。
そのやり取りで少しずつ空気は落ち着いてきて、その色は元に戻って来た。

「ありがと」

グラスを受け取り、直ぐに軽く傾ける。
ごくりごくりと、数口、冷たい水が喉を通り抜ける。

よし、これでもう大丈夫だろうと。