2024/06/14 のログ
ご案内:「職員寮 第四アパート」に焔城鳴火さんが現れました。
ご案内:「職員寮 第四アパート」に風花 優希さんが現れました。
焔城鳴火 >  
「あ゛~――あっつ」

 冷房を入れた部屋で、薄いキャミソールにショートパンツだけという恰好で、ぐしゃぐしゃのベッドに転がる女。
 医者の私生活なんてこんなもんだ、と風評被害を与えかねない様子の鳴火の部屋には、日本酒やワインの瓶、チューハイの缶が転がっている。

 辛うじて、ゴミは最低限一か所にまとまってるので汚部屋まではいかないが、ベッドの上には脱ぎ散らかした衣服、洗濯の終わった下着などが無造作に放り投げられているのだから、相当ひどい事には変わりない。

 なお、キッチン周りは妙に綺麗であり、部屋もまあ、テーブルがあり、大型の液晶があり。
 少し変わっているところがあるとすれば、天井と床に固定するタイプのサンドバッグが設置されているところか。
 近くにはオープンフィンガーグローブが転がっている。

「――久々の休日がこの暑さってなんなの。
 なに、私、地球に喧嘩売られてるわけ?
 ぶち壊すわよ、くそ惑星」

 一人でいても、独り言が物騒である。
 そして、客人が来ることを暑さにかまけてすっかり忘れているようだった。

 

風花 優希 >  
「えーと……ここだよな」

じめりとした空気の中、晴天の空の下。
蒼く透き通る髪を靡かせて、実に涼し気な顔をして少年はスマホ片手に玄関口の前に。
画面と建物を交互に二度見しながら歩みを止めて。

「とりあえず、失礼します~」

恐らくは間違いないことを確かめれば建物の中へ。
寮の通路を通り過ぎ、目的の部屋へと一直線。
扉の横のインターホンを軽く押して、返答を待つ。

そう、少年は約束通り、自らを呼び出した教師の自室へと足を運んでいた。

焔城鳴火 >  
「――んぁ?」

 こんな暑い日に誰だ、と思いながら起き上がる。
 ふと携帯端末を眺めると――

「――あ」

 やってしまった、と、頭を抑えつつ。
 気だるそうに立ち上がって、足元に転がる空き缶を蹴り飛ばしながら玄関に向かった。

「はいはい、今開けるわ」

 そう言って鍵を外し、扉を開けると。
 髪はぼさぼさ、だらけた部屋着の、普段の雰囲気と比べたらだらしない印象の鳴火が、少年を出迎える事になった。

「よく来たわね。
 こんだけ暑いから、来ないかと思ったわ」

 扉を開けきれば、そのまま部屋の中に戻っていく。
 部屋の中からはとてもよく冷えた空気が流れ出してきた。
 

風花 優希 >  
「あぁ、どうも。
 約束通り来まし……」

ガチャリと開いた扉を前に、反射的にまずはそう挨拶をして。
視線を向ければ、いつもの万倍はだらけた姿の教師が見えた。
整えられた髪、乱れた部屋着にほんの僅かに香るアルコール臭。

少し気まずげに言葉を止めて、視線を逸らす。

「……そりゃあ、まあ約束でしたし。
 なんというか、普段はそういう感じなんですね」

そしてぽつりと、素直に思った事を口にする。

焔城鳴火 >  
「律義なやつねえ。
 んぁ――?
 オフの日なんてこんなもんでしょ」

 と、本人はまるで気にした様子もなく。
 なんなら、大き目のサイズのキャミソールでは、体格のわりに育っている胸が余りにも無防備だったりするが。

「ほら、入んなさいよ。
 ああなんか、好きな飲み物でもある?」

 そう言いながら、扉も開けっ放しにキッチンの冷蔵庫へ向かってしまう。
 ――キャミソールの背中側がめくれあがってる辺り、だらしなさポイントが加点されていく。
 

風花 優希 >  
「まあ、否定はしませんけど」

その姿のまま、当然のように顔を出せるのは図太いと言うべきかなんというか。
一応は此方は男子学生の立場だというのに色々と大丈夫なのだろうか、とは思わなくはない。

「ともあれ、そういう事ならお邪魔しますね。
 んと…甘めの飲み物なら、なんでも?」

それはそれとして、招かれればそのまま玄関の裡へ歩を進める。
一応は視線は逸らしたまま、軽く頭だけ一度下げて室内を軽く一瞥。
中々に荒れ果てているというか、整理の付いてない惨状に少し呆れた表情を。
せめて下着くらいは直しておいてほしかった、色んな意味で。

焔城鳴火 >  
「甘めのもんねえ。
 お、丁度いいのあるじゃない」

 そう言って、冷蔵庫から350ml缶を取り出し、少年へ投げ渡した。
 缶のラベルには『ふわよい ダブルチェリー』と書かれている。
 アルコール4%、見るからにチューハイの缶だ。

「あとこれ、山芋を揚げといたのよ。
 これが雑に美味いのよね」

 そう言いながら、細切りにされた山芋に、海苔を巻いて挙げた、見るからに『ツマミ』になる物が大皿で出てくる。

「ほらこっち、適当に座って。
 ああ、その辺の座布団でもクッションでも使いなさい」

 片手にチューハイの缶、片手に大皿を持ったままテーブルの方へ行き。
 邪魔そうな所に転がっていた空き缶を蹴り飛ばして窓際の、『ゴミの山スペース』にシュートした。

「――よ、っと」

 自分はなんでもなさそうに、テーブルとベッドの間に座り、ベッドに凭れかかった。
 

風花 優希 >  
「おっと。どうも…ってこれ」

投げ渡されたキンキンに冷えた缶をキャッチして。
缶のラベルをみて流石に呆れた顔を浮かべる。
明らかにアルコールの類であるそれを、生徒に渡す教師の姿は傍から見ればちょっとアレであった。

とはいえ、此方が人ではない…
あるいは見た目通りではないことを分かった上での行動、なのだとは思うのだが。

「コレに山芋の揚げ物って…完全にツマミじゃないですか」

光景だけをみれば、酒飲みのそれである。
事実、周囲に薄らただよう匂いも姿もそれなのだが。

「えーとそれで、なんでしたか。
 ボクの事を知りたいんでしたっけ?」

ともあれ、一旦適当な座布団に腰を下ろす。

焔城鳴火 >  
「そりゃあ、そうよ。
 昼間から冷房の効いた部屋で酒とツマミ。
 休日と来たらコレよコレ」

 残念な女ポイントの加点が止まらないのであった。
 カシュ、と早速缶を開けて、少年の方に向ける。

「そうそう、お前の事。
 かーなーりー、面白そうなもん出てきそうな予感がすんのよね。
 ま、話したくない事は話さなくていいけど、聞いていい事なら一通り聞いてみたいところね」

 そう言いながら、ぐい、と早速豪快に一口飲んで、ぷはぁ、と機嫌よさそうに息を吐いた。
 加点が留まる事を知らない。
 

風花 優希 >  
「だからって、男子高校生の前でコレみせます?
 憧れてる人がもしいたら、幻滅待ったなしですよ今」

冗談めかした表情で肩を竦める。
休日の過ごし方そのものには納得を示すが、それはそれ、これはこれ。
真っ当な意見は、一旦しっかりと投げておく。

「まぁ、必ず隠さないといけない事でもないので言いますけども。
 先生は誰これ構わず、周囲に言わないとは思いますし…」

はぁ、と息を吐いてから顔を前へと。
真っすぐに視線を上げてから、言葉を続ける。

「だいたい察されていそうですけど、ボクは人間じゃあないです。
 ゴーレムとか魔剣とか、ある意味ではそういう類に近いですし」

焔城鳴火 >  
「まっさか。
 私に憧れるやつとか、どこに居んのよ」

 ないない、と、口元を歪めて笑う。
 まあ、流石に孤児院の子どもたちには、教育上見せられないとは思っているが。

「そりゃあ言わないし、私の好奇心でしかないしね――」

 そう言いながら缶に口を付けつつ。
 ふぅん、と唸りながら、どこからから爪楊枝の箱を引っ張り出して、テーブルの上に置いた。

「――つまり、人造生物?
 それとも自然発生したタイプかしら」

 それを聞いても、さほど驚くこともなく。
 人造物なのか自然物なのか、とさらに深く聞いていくだろう。
 

風花 優希 >  
「あははは…一人くらいは居そうですけど」

孤児院とかに。
流石に子供の前では気を張っているだろう…という希望的観測ではあるが。

「しいて言えば前者、ですね。
 生物かと言われると、正直怪しいですけど」

受け取った缶をテーブルに一旦置いて本を取り出す。
抱えるほどの大きさの、如何にもな古めかしい”魔導書”だ。

「だって、本を生物だって言わないでしょう?」

それを見せつけるようにとんと置いて、少し怪し気に口元を歪めた。

焔城鳴火 >  
「居るのかねえ。
 まあ――弟子が居た事はあるけど」

 それの、と言って部屋のサンドバッグを缶の底で示した。

「――へえ?」

 出てきた魔導書に、目を細めて面白そうに口元を歪める。

「なるほどね、これが『風花優希』の本体ってわけか。
 にしても珍しいわね、魔導書が単独でうろうろしてるなんて。
 いまんとこ、所有者は居るの?」

 これでも常世学園の教員である。
 基礎的な魔術的知識は持ち得ている。
 特に、『マジックアイテム』に分類されるものへの理解度は、専門と言ってもいいほどに深い。
 

風花 優希 >  
「お弟子さんが?」

師弟関係を結ぶような相手がいたのか、という純粋な驚きの声。
とはいえそれは、一旦横に置いておく。

閑話休題だ。

「そういう事です。
 ま、珍しいとはいえ其処まで稀でもないでしょう?
 自律する魔導書そのものは、あるにはありますし」

其処に人型の端末が付加している、とまで来れば事実珍しくはある。
だが、珍しいだけで前例が無いわけでは無い。
自分以外にもこの島であれば、似たようなものがいるだろう、と。

「所有者は居ませんよ。
 仮契約してる相手が一人、ってくらいですね」

焔城鳴火 >  
「居るのよ、本土にね」

 言いながら肩を竦め。

「たしかに前例がない訳じゃないけどねえ。
 ぶっちゃけ、リスクが高いんじゃない?
 ユーザーもなしで、単独行動なんてしてたら、随分と危険に思うけど」

 要するに、『脆さ』があるのだ。
 自我のある書と言えど、魔道具である以上、使われてこそ真価を発揮できる。
 つまり、信頼できるユーザーのいない状態では、力を発揮しきれないのが相場だ。

「仮契約ね。
 誰かとまでは聞かないけど。
 ――なるほど、あんたの学籍が妙なわけだ」

 『風花優希』を調べると、明らかに学籍情報と事実に違和が浮かぶ。
 巧妙に細工はされているようだが。

「随分と長いこと、この島にいるみたいだけど。
 大丈夫なの?
 風紀はまだしも、公安辺りには目を付けられてそうだけど」

 この学園の治安組織は、それなりに優秀だ。
 あの『霊亀』が居るあたりで不安要素はあるにはあるが。
 それでも、異質な物には何らかのアプローチがあってもおかしくない。
 

風花 優希 >  
なるほど本土。
巫女であった時の弟子、となれば何となくわかる。
妹弟子とか、きっとそういう類だろうと。

「リスクについては否定はしませんよ。
 ただ、”長期稼働”を前提にする上で必要な機能だっただけで」

事実、自律稼働には限界がある。
魔導書という存在である限り、それは魔術を使う存在ではない。
使われるための存在であり、使われなければ機能を発揮できない。

『風花 優希』も例外ではない。
使い手が居ない今、その機能は制限されている。

だが、そんなリスクに勝るメリットがあるからこそ、自律稼働する機能がある。

「死蔵される、安全な保管場所に存在しない。
 ただ在るだけの本では、そうしたリスクが常に付き纏いますからね。
 使い手の元に渡らず、安全な場所に自ら移動できる。
 ボクが人の身体を持っている理由の、半分くらいはそうした理由ですよ」

無論、それだけならば人の身体は必要ではないが。
ともあれ、そうした利点があるのは間違いない。

「あはは…流石に調べました?
 まぁ、そこのところは今のところはうまい事。
 後ろ盾がないってわけでもないですからね」