2024/08/16 のログ
ご案内:「常世神社」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 >  
草いきれ、炎天下を涼風が攫う。
大暑焼け付く炎天の青空。境内、縁側居座る男が一人。
猛暑違わぬ涼しき顔にて、細指が絡める木細工。
然るに骨組みである。一つ、編んでは円筒と成りて。
一つ、また一つ。蝉時雨に紛れてゆるり、ゆるりと。

「…………。」

汗みずく事無き涼しき顔。
当て所なく、顔を上げれは青海原。
水平線が薫る涼風が黒糸を散らす。
心地よき静寂である。

紫陽花 剱菊 >  
ゆるり、ゆるりと木骨を撫でる。
木皿に乗せ、白紙(しらかみ)を張る。
灯籠である。精巧では無い。簡易的なもの。
近い時、せせらぎと共に行く魂の拠り所。
鎮魂である。当に血濡れ、幾度も命を奪いし刃也。
此れは贖いでは無い。既に詮方無き事。
只々己が罪を今一度、然るべきと見つめ直す刻で有る。

「…………。」

来し方行く末、刃とは畢竟(ひっきょう)人斬り包丁。
心の塵に成らず。斯様、目を逸らせば外道に落ちる。
刃成れど、人たらしめる故に向き合わなければならない。
如何に心身を苛もうと、歯痒く思おうと、逸れる事罷りならぬ。

紫陽花 剱菊 >  
つとに、消えることは無い。
幾星霜向き合い、堆く積み重ねるであろう。
ことり、ことり。材料も無くなり、縁側を埋め尽くす灯籠。
事も終われば音もなく、やなけ蝉時雨だけが其処に残った。

ご案内:「常世神社」から紫陽花 剱菊さんが去りました。