2025/01/09 のログ
ご案内:「常世神社」に東山 正治さんが現れました。
ご案内:「常世神社」に宇賀野 実さんが現れました。
東山 正治 >  
常世神社 某日。
東山は仕事以外でこんな所に滅多に訪れることはない。
こういう場所は何の因果か、思ったより事件は起きないからだ。
寒風が吹き抜ける境内は、正月も抜けて人もあまりいない。

「実ちゃん、あんまり走り回るとこけるよ」

では何故来たのか。旧友にせがまれて渋々だ。
最初は断ったが駄々こねられて仕方なくやってきた。
押しに弱い訳では無いが、元の姿を知っていると駄々こねを眼の前でやられるとまぁまぁきつい。
そんなわけで足元でちょろちょろする友人を尻目に、肩を竦めていた。

「にしてもその服……また女物なんじゃあ……?」

宇賀野 実 > 秋の間、自分の異能は強い発動…暴走一歩手前の状態にあった。
冬を迎えるにあたりそれは改善されたものの、さすがに看過できぬと思い、
本土の実家に連絡して数日。 送られて来たのは可愛らしい振り袖風の衣装であった。
意図を尋ねると『初詣に使いなさい。神様に相対するにはきちんとした衣装が必要』とのことであった。 本当?
とはいえ、肉球のついた手袋はあたたかそうだし、ピンクのカラータイツも防寒性はバッチリ。
ただでさえメコメコな成人男性のプライドを更にバットで数回殴りつければ済む話であった。
でも初詣は行きたくないな…。 でも行けば加護が得られるかもしれないしな…。

そして今―――――――――――――――――――

「人あんまりいないからこけたりしませんよー!!」
ぺこぺこぺこぺこ……。(遠ざかる音)
…こぺこぺこぺこぺこぺこ。(近づく音)

歩くと可愛らしい音が鳴るブーツに、可愛らしいねこちゃん振り袖装備。
すっかり女児めいた服装に身を包む、女児……青年男性の姿がそこにあった。
久しぶりの外出が嬉しくて境内を走り回る様はまさしく子どもであり、
ひとしきり走り回ったあとは友人…せーじさんの元にぴたっと戻る。

「…いやー、実家がこれを着ろっていうんですよ。
 神様の加護を得るなら、初詣という儀式にふさわしい衣装にしろって。
 …本当ですよ?」
両手の肉球をぷにぷにと合わせながら、相手を見上げてお返事。
飲み会で適当なことを嘯くのと同じテンションだった。

東山 正治 >  
「…………」

そりゃね、もう何とも言えない顔をしているよ。
一体何を見せつけられているんだろう。
確かにその変わり果てた可愛らしい姿で色々コスプレしたのは知っているが、
何だこれは。本当に正装かこれ。百歩譲って服は良い。
何あの猫耳肉球装備……。

「詐欺合うタイプじゃん、気をつけなよ実ちゃん」

真顔。そりゃ信じるわけ無いでしょそんな言い分。

「……まぁ、その辺りに詳しい訳じゃないけどさ。
 時代が移り変われば正装も変わるのは本当だけど……」

東山はこの変わり果てた時代を許容こそしないが、理解はしている。
そうでなければ、今でも現行法律や教育に携わることは出来やしない。
しかし、得も言えぬ感情に歪んだ首を軽く振れば、足元の旧友を見下ろし一言。

「豊穣の神って狐とかじゃないの……???」

なんで猫なんだよ。

宇賀野 実 > 「はっはっは!せーじさんは冗談がうまいなあ!
 38歳がそう簡単に詐欺なんかに会いませんよ!
 あー、でもどうかな…『異能を抑えて今すぐ元の姿に戻れます!!』とかだったら、
 ちょっと考えちゃうかもしれないけど…。 まあウソでしょうからね。
 ワイドショーのときのCMでやってた『雑草エキスで健康!』みたいなウソ感があるし
 あと、正直な話をいうと血筋に関しては実家の方が詳しいんですよね。」
自分の血筋には、豊穣神のそれが入っている。 それが暴走して今のような姿なのであるし、
なにより豊穣神として『誰かに食べられる』…相手を”誘ってしまう”。
そんな状態については悩んでいるのだ、と相手の言葉に方をすくめてみせた。
だってすがる相手が実家しかないんだもの。

「えっ、知らないんですか? 猫も豊穣の神様なんですよ。
 ほら、ネズミを捕まえたりするでしょう。 にゃーん♡
 …神様ならいいけど、先祖が直接猫と子ども作ってたらちょっと考えちゃうな…」
ねこちゃんの手の構えを取って、一声鳴く。
尻尾がゆらゆらと揺れ動いた。
鳴き真似をしてから我に返ると、一瞬すごい表情になった。

東山 正治 >  
「スゲェな、説得力の欠片も無い」

一刀両断。
現在進行系でそんな姿で言われてもな。

「知らないし知りたくもないね。
 ……、……今友人の猫仕草見せられた俺の気持ちは???」

そんなもののルーツがなんだろうがどうでもいい。
変わらないはずに友情に、自分の景色をいれるものなど、認められるはずもない。
何処か吐き捨てるような東山の目は冷ややかなものだ。
同時にその表情は複雑だった。一種の諦めに近いのかもしれない。

「その実家言ってること、本当に元に戻る方法なのか怪しいモンだけどな。
 狂人の真似をしたら、って言うだろ?神様(ソレ)に近しい格好なら余計に……」

「つか、初詣の正装に神の格好させるのなんか違わない???」

ますます怪しくなってきたぞ。
かがみ込んで視線を合わせればじと、と睨んだ。
だいたいなんだこの尻尾に猫耳。なんで動くんだ。
むんず、と無造作になんかムカつくから尻尾を握って引っ張ってみた。

宇賀野 実 > 「あります~実家はちゃんとしてます~~」
唇を尖らせて反論。 子どもである。

「せめて『うわキツ』とか言ってくださいよ! 
 せーじさんはすごい顔になってる時ツッコミも入れてくれないんだもんなー。
 ほらほら、1年のなんか…アレを…祈るんですし? 気持ちを整えておかないと!」
こまっちゃうな、ってぶつぶつ。
「いずれにせよ、いきなりポンとは戻らんでしょう。
 異能の制御からですからね。やるにしてもね。
 …なんか違わないかっていったら……。」
ごくり。真剣な表情で息を呑む。

「…ぶっちゃけ、違うと思います…。 でもこれめっちゃあったかくて…。」
目線の高さを合わせてもらえただけで、ぱあっと表情を明るくしたが、
相手の言葉には重々しく頷く。 体が小さいと寒さに弱い。
生き物の物理的なルールである。 そして名より実を取る功利主義であった。

「実家の話はまあ半分に聞くにしても、ここの神社の神様の力を使って、
 少しでも異能の力を抑えようというのが魂胆なんですよ。
 そのためには目立つ格好をするのもや”む”にゃ”い”い”いぃ♡」
尻尾を握られると、猫のような鳴き声をあげ、ぴんとつま先立ちになって硬直した。
目を見開き、ぶるぶると体を震わせながら口をぱくぱく。
いいか悪いかは別として、強いショックが与えられたことは明らかであった。

東山 正治 >  
「!?」

物凄い、こう、良くない顔と悲鳴が聞こえる。
そりゃ東山も凄い顔になります。でも東山も大人。
どういうものかはちょっと察する。だから余計に真顔になった。
幾ら人がいないとはいえ、流石に公共の場。言及は控える。

「わ、悪い、つい……まぁ、その、何だ……元気出せって」

そういうことなら余計に実家の胡散臭さが増していく。
だが待ってほしい。来たのが本人の意志なら……いや、これ以上考えまい。
思考を切り替えよう。東山は大人なのでそれくらい出来ます。
コホン、と咳払いして立ち上がる。

「まぁ、とりあえずその初詣しようか。
 俺が忙しくて時期じゃないけど、挨拶くらいなら良いでしょ」

いくよ、実ちゃん、と小さな手を握った。
暖かく硬い、中年男性の手を小さな女児の手を包む。

宇賀野 実 > 「…えっ? …えっ!??!?!?!?
 ちょっとまって、せーじさん!!!違うんです!!聞いて!!!
 これ腰に貼り付けてあって感覚はあるんですけど、違うんですって!!!卑猥は一切ない!!」
なんかに”気付いた”みたいなムーブをする相手に必死に訴えかける。
違うんです。 これはねこちゃんせっとの装備であって、別に癖を満たす装備じゃないんです。

「ねえ~~~~!!!」
すがるように両腕で相手の体にすがりつく。
必死の訴えをする女児のように情けなく無力であった。

「…う、うん。じゃあ初詣ね、初詣しよう。 ちょっと余計なことを考えるのはやめよう。」
大きなごつごつした大人の手に、自分の手を重ねる。
小さくて幼い手は、今でも自分のものとは思えないそれだ。
すっかりお子様になってしまったのだと自分で思うし、そんな自分に付き合ってくれる相手を
大事にしなければならない。 そう考えながら二人で賽銭箱の方に向かうことにする。

東山 正治 >  
「大丈夫」

大丈夫。たった一言にそりゃもう膨大な情報量があった。
どっちにしろろくでもない代物に違いはないのだ。
東山にとってはどうであれ、好ましいものではない。

「…………」

当然だが元の実と手を繋ぐような仲ではない。
だが、今包む小さな手は誰のものなんだ
あの何処か情けなく、明るく、気兼ねない中年男性のものでは決して無い。
先祖がなんであるかなどは、不可逆な事実だ。
だが、現代(イマ)を生きる此方からすれば、全てが"今更"だ。

「(……こんな再会は、望んじゃいなかったんだがな……)」

どうして大変容後(この時代)は、自分から何もかも奪ってしまうのか。
なにかもが濁ってって見えて仕方がなかった。
淀んだ両目。冷えた表情。疲れ切った表情がは、とする。
気づいたら御前、賽銭箱の前だ。

「そうだな……ほら、祈りなよ」

宇賀野 実 > 「全然だいじょうぶじゃない!!!
 せーじさんがそういう反応する時絶対ろくでもない結論に至ってるでしょ!!
 ねえ―――!!!!」
必死の訴えをしようとしていたけれど、相手の複雑な表情にほっぺたを膨らませただけで済ませる。
大人だし。 ぎゅーっと小さな手で相手の手を握る。 変なこと考えるの禁止!という訴えだ。

「よーし、じゃあお祈りしましょうお祈り! うーん、そうだな~…。」
肉球を合わせるようにしてお祈りの構え。 祈ることはいっぱいありすぎる。
異能のパワーを抑えたいし、元に戻りたいし、駄菓子屋をもっと繁盛させたいし…。
でもそんな色々を差し置いて祈ったのは、すぐとなりの…
せーじさんが平穏に暮らせるようになってほしいということだった。

「(いつも難しい顔をしてるの、つらそうだし…)」
もちろん自分がこんなふうになってしまったというのもあるのだろうけど、
ちょっとでも笑っていてほしい。 そんな思いを神様に強く念じた。

東山 正治 >  
くつくつと喉を鳴らして笑みを浮かべる。

「まぁまぁ、落ち着きなって。冗談だよ」

半分は。

「はいはい……」

そう言いながらも東山は隣の実を見ているだけだ。
祈ることはしない。別に神頼みをしなかった訳じゃない。
していたのは、それこそ大変容前(むかし)だ。神が神秘であったからこそだ。
今や神も"ヒト"である。隣人に何を祈るっていうんだ。
そんなものをありありと表しているのが、眼の前の先祖返り(みのり)なのだから。

「……もしかして今、俺のこと考えた?」

なんとなく視線を感じたし、昔なじみの仲だ。
考えていることはなんとなくわかりやすい。
ヘラリと笑い、何処かからかうように。

宇賀野 実 > 「せーじさんのこと考えましたよ!
 もうちょっと肩ひじ貼らずに暮らせる世の中が来るといいねって。
 だってせーじさん、いっつもこうですよ、こう!」
眉を潜めて、眉間にシワを作る。 それを指さして見せた。

「まあ俺がね、もとに戻りますからね!そうすればせーじさんもちょっとは眉間のシワが減るかもだし。」
のんびりした調子で答えてから周囲を見回す。うーむと小さく唸った。

「せーじさん、お祈りも終わったからお酒飲みましょうよ、お酒。
 白酒飲みたい!!」
日本酒もなければお屠蘇でもない。二人が飲む酒であるそれを口に出しながら、
相にすがりついてぐいぐいひっぱる。 喋っている内容はおじさんだが、行動は見た目も含めてだいぶ女児だった。

東山 正治 >  
皺ばかりのいかつい表情(かお)
自覚はあるさ、言われなくても。
だからこし指摘されれば、苦笑いしか出来なかった。

「……そうだなぁ、少しは減るかもしれねぇけど、
 流石にもう昔みたいにゃ笑えねぇよ。なぁ、実ちゃん」

ゆるりと振り返り、見下ろす表情(かお)

「俺はね、もう何もかも許せないんだよ。
 変わっちまった世界(イマ)も、実ちゃん自身もな。
 ……ちょっと気を抜くと誰でも殺したくなっちまう

全てが変わってしまった大変容後(あの日)から、
司法に失望してしまった法律家(じぶんじしん)が、
変わってしまった何もかもを理解しても、許容(許す)ことなんて出来やしない。
引きつった失笑の奥には、何時だって抑えつけてるどす黒い感情があった。

「……俺も昔みたいに付き合いたいんだけどね、それでも飲みに行く?」

勿論感情のままに動くのなら、とっくの昔に常世学園(ココ)にはいない。
それを制御できるから教師になったとも言えるが、本質は変えれない。
此処が関係性の分岐点だ。諦めて離れてくれれば、楽なんだけどね。

宇賀野 実 > 「フーム…じゃあ今の笑い方を身に着けないとダメなんじゃないですか?
 生徒から怖いって言われちゃいますよ!」
元気よく答えるけれど、相手の剣のんな言葉を聞いて言葉が詰まった。
やれやれ、と言わんばかりにため息をつく。
そう簡単に切り替えができる人もいるし、できない人もいるのだ。

「わかりました!年始めからそんな話してても仕方ないから、
 お酒お酒!行きますよ、飲みに! 今ならお店も開いてるでしょうしね。
 白酒一人一瓶チャレンジしますよ!」
色んな思いはあるし、それが個人のものであるなら…自分がどうこう言える義理なんてない。
けれど一緒にお避けを飲むことぐらいはできる。 手袋つきの手で器用に端末をつつき、
近場の飲み屋を確認してから、相手に頷きかけた。 いけるぞ!という合図である。

東山 正治 >  
「いいんだよ、俺の授業は学びたい奴が取れば良いんだ。
 教師としての努めは果たすけどな、一々生徒の顔色なんて伺わないの、俺はね」

今の今までそういうスタンスで努めてきた。
生徒と教師とはいえ、此処には学園都市としての社会性もある。
どんな事情であれ、旧友でも誰でも特別扱いする気はない。
ふ、と肩を竦めれば徐ろにその体に手を伸ばした。

「わかったわかった……そこまで言うなら行くよ。
 まったく、そういう所だけは昔から変わらないねぇ……」

辛気臭い事情を置いといても、気遣い上手なんだ。
だからこそ、そんな彼を望まぬ姿にしたものが許せないとも感じてしまう。
小さな女児の体を持ち上げれば、そのまま肩車状態だ。

「そのちっさい足だと疲れるだろ?送ってあげるよ」

なんて、からかうように言いながら歩き出す。
そう。まだそういう優しさが残っている限り東山も人間でいられる。
せめて、姿は変わっても……変わらぬ関係を、望むだけ。

ご案内:「常世神社」から東山 正治さんが去りました。
ご案内:「常世神社」から宇賀野 実さんが去りました。