2025/01/21 のログ
ご案内:「異邦人街」に睦月 ルメルさんが現れました。
ご案内:「異邦人街」に東山 正治さんが現れました。
睦月 ルメル >   
「陸の上でも船みたいなものはあるのね。早かったわ!」

支給された公共鉄道の年間パスを使い、鉄道を経由して異邦人街へ。
学生地区や商業地区の現代的な街並みとは違う独特な雰囲気はルメルにとっても新鮮なもの。
オリエンテーションの帰り。少しばかり寄り道をしてみることにしたのだ。

「いろんな人間さんがいるわ。不思議ねえ……。」

獣人や異邦人もルメルにとっては『人間さん』。
ルメルにとって『人間さん』は自分以外の他を指す言葉に近い。
特に探しているものもないため、のんきに街並みを観光している。
  

東山 正治 >  
異邦人街。この島にも異邦人たちが生きようとする場所がある。
"人"が孤独で生きていくには余程の力がなければ難しい。
動物も動物で群れを無し、社会性を築き上げている。
この街も、そんな中の一つだ。行き交う様々な人々を横切っていくのは何の変哲もない「地球」人。

「どーも、その後姿。睦月ルメル……ちゃん?でいいかな?」

そんな「地球」人の気さくな声が後ろから聞こえる。
目に熊をつけた、全体的にやつれた中年男性。
その脇には分厚い本を抱えたまま、まずは軽く一礼。

「俺は東山正治(ひがしやまさだはる)。常世学園で教師をやってる。
 小鳥遊ちゃんのこと……世話になってるみたいだってな。一目見たくてね、何かの用事中?」

睦月 ルメル > 視線を年間パスから離し、声のする方へ振り向く。
自分の名前を呼ぶ見知らぬ顔の"人間さん"を認めた。

「ええ。苗字が寂しいから睦月(1月)を貰ったの。……こうかしら?」

少し遅れ、見様見真似で礼をする。
記憶が確かなら、この動作をあいさつ……と言っていた気がする。 

「特に用事はないわよ。
 ええ、たかなしさんには色々教えて貰っているわ! ただ、その……。」

視線を泳がせる。本来ならば負い目などは感じないのだが、少しばかりの事由がある。
小鳥遊 日和と抱き合った翌日。過度に影響を与え、彼で会った彼女の"人魚もどき"をより深化させてしまった。

最初は愛でて、眺めていたが……
声と記憶が飛んでしまった状態は不味いのではと直観が働き、
いわゆる"119"で保険委員を呼んだのだ。
"人間さんなら何とかなるのよね!?"と言って困らせたりもした。

負い目。
ルメル自身もその感情を十分に理解できていない。
そのようなものとは無縁の世界で生きていた。

故に何と言うべきか──声を喪った訳ではないのに、言葉を作れずにいる。

東山 正治 >  
やつれた顔にはヘラヘラとした笑みを貼り付けている。
どことなく胡散臭い感じはあれど、敵意はない。
少なくとも友好的である印象は与えれるだろう。

「へぇ、もらった名字ねぇ……職業柄、"色々"調べたりはする。
 確か異世界(別のとこ)から来たんだってね?どう?少しは慣れた?」

勿論教師としてでもある。
膨大な数の生徒数だが、"ある程度"は把握している。
特に、異邦人や人外に関しては真っ先に目をつけるようにしていた。
それなりに活発的な人物であるとは聞いていたが、話題の人物には淀みが見える。
じ、と虚ろな視線は彼女をじっと見ていた。

「そ。慣れてないんなら、ちょっと見てく?
 教師って職業だとね、一応色々知ってるんだわ。
 異邦人街(ココ)のことも、よく知ってる。……にしても……」

「随分と仲良しなんだな?
 まぁ、小鳥遊ちゃん人いいもんな」

ある意味では無防備、危機感がないとも感じる。
あれでフィールドワークのために危険地帯登るっていうんだからわからない。
人は見かけによらないとは言うけどね。くつくつと喉を鳴らして笑えば首を振った。

睦月 ルメル >  
「海からきたけど……異世界なのかしら?」

首を傾げる。
異世界と呼ばれるものではなかったような気がするが、確証はない。
ただ少し、異世界かと言うと違和感がある様だ。

「色々なことを教えて貰っている最中だけど……慣れたって言うのかしら?
 ひとつ質問したら、そのひとつから気になることがいっぱい増えいくのがとても不思議で新鮮だわ!」

人間の社会はルメルにとっては未知の山。
疑問に対する答えがあるのに答えの中に疑問がある。
キリがなくて考えることを打ち切っても、また気になる。
慣れた、と言うには毎日が新鮮過ぎる。

「ええ。たかなしさんはいい人間さん!
 それで……東山さんも色々教えてくれる東山せんせいなのね!
 東山せんせいも、何か教えてに来てくれたのかしら?」

東山 正治 >  
「あらそう。元からいたタイプなのね、ふぅん……。
 まぁ、遠路遥々ご苦労さん?って所か。海の事情とか知らねぇけどさ」

報告ミスでもあったか。
まぁ、どっちもでも東山に取っては変わらない。
異世界でも、元からいたものでも、"どっちみち"だ。

「まぁね、今や地球社会ってのはだいぶ複雑になっちまったよ。
 こんなチンケな島一つとってもとんでもねぇことになってるからな」

こんな島一つでも異邦人街(こんな場所)落第街(あんな場所)まで出来る位だ。
時代の最先端の地とはいえ、その複雑さは他の国と相違無い。
特に(ルール)一つ取り上げても、その膨大さはさもありなん。
その学ぶ姿勢、前向きな姿勢に関しては好感が持てた。

「……、……そうだな、良い"人間"だな。
 まぁ、とりあえず一つ地理について教えてやるか。
 オタクも多分、その"ナリ"なら異邦人街(ココ)で世話になることも多いだろうさ」

異邦人街(ココ)のことを知っときゃ、間違いはねぇだろうよ。
 ……ま、立ち話も何だしいこうや。買い食いは好きだったりする?」

そう言って抱えていた本を軽く振って手招き。
何も無い、無地の表紙を揺らして、ゆるりと歩き出す。

睦月 ルメル >   
「とんでもないこと?
 確かに最近の人間さんの船はすごく変わったけど……人間さんに何があったのかしら?」

暢気に海で過ごしていたルメルは人間さんの歴史や事情を知らない。
"とんでもないこと(大変容)"の渦中にある存在だが、"それ"を"そう"と認識していない。

「ええ、宜しくお願いするわ! 陸の上の地理は迷いやすいのよね~
 買い食い? 多分したことないわ! 外でお金やクレジットを出して買って食べることかしら?」

招かれるままに路を浮いて泳ぐ。
買い食いとやらに興味津々の人魚に警戒の文字は無さそうだ。

東山 正治 >  
敢えて、その価値観には言及することはない。
事実、彼女にとっては"その程度"の事だと思っているから。
口に出すことはなく歩く先は異邦人街の大通り。
所謂商店街めいた所であり、多くの人々が行き交うと同時に、
無数の店が連なり、更には忙しなく鉄板から煙がある屋台まである。

「海と違って水ばかりってわけでもねぇしな。
 まぁ、この辺とか人も多くていいんじゃない?
 色んな店があってよ、生活に困ったらこの辺かな。」

「異邦人街ってのはそういう連中の集まりだ。
 まぁ、同じように文化を築いてるけど、こういう場所はある程度"人情"ってのもあるからな」

困ったときはお互い様。
無論対価は要求されるが野たれ死ぬ事も無いだろう。
ゆるゆると歩きながら、おいていかないようにに歩くスピードは一定に保つ。

「あっちが……本屋だったかな。
 地球の文献もそうだが、それこそ色んな世界の本が集まってる。
 何かしら学びてぇってんならいい場所だ。……あんまり立ち読みすんなよ?」

「あっちは麺処たな香っていうラーメン屋。
 学園の生徒が経営してる店。この島は、生徒の自主性を社会性に組み込んでる。
 もし、やりたいことがあれば生活委員会にでも相談すりゃ、店の一つでも出せるかもな」

「で、あっちは……美容院。主にオタク等向けの。
 髪以外にも鱗の手入れや角の手入れとかしてくれるぜ?
 値段はそれなりにってところだけどな。……あれ、食う?」

流れるように店一つ一つを指さしてご紹介。
それこそその形態は地球の文化と本当に相違無い。
向こうが迎合したのか、真似したのかは知らない。
ともかく、彼女が済む分には間違いなく便利なのは違いない。
そんな中、徐ろに指した屋台は唐揚げの屋台。
ヘイフロッグと呼ばれる外来種のカエルの唐揚げ。

「(……紹介しといてなんだけど、人魚ってカエル食うのか?)」

内心訝しんだ。もしかしてミステイクか?

睦月 ルメル >  
「…………?」

言及が無い間、少しの沈黙が生まれる。
ほんの少しだけその間に疑問を持つが、話題が切り替わればそれも消えた。
気になることは一つではないのだ。

「へぇ、色々な人間さんが生活しているのね。
 人情?……ええと、東山せんせい、"人情"って何かしら?」

人間社会の外にあったルメルにとって知らない単語。

『助かった』『困ったときはお互い様。』『これで貸し借りなし。』
それに準ずる感情や感覚は有すれど、単語が持つ意味は分からない。

「本……読めない文字が多いのよね。
 ことばは分かるのと、なんとなくわかるのと、教えて貰った単語ぐらいしかわからないわ!」

頻出する単語や数字は教えて貰い、覚えた。
それ以外のものは、ひらがなとアルファベット位しか分からない。
その知識は何処から吸い上げられたのかは自分でも覚えていない。

「立ち読みはしちゃいけないのね。
 落ちているものを自分のものしたり、物を買わずに店を出て行っちゃいけないのと同じ理由かしら?
 本屋も麺処たな香も美容院も、お金を払って物を貰うお店よね。
 ……美容院は物を売る訳じゃなくて、ホテルや委員と一緒の役割を持つ『仕事』なのかしら?」

自分の知識と照らし合わせながら説明を吸収していく。
覚えたことを口に出すと、また少し疑問が消えて別の何かを覚えた気分になる。

「あの茶色の衣は、揚げ物っていうのよね!
 それで……あんまり海では見たことないけど、カエルだったかしら?
 揚げ物の濃い味はまだちょっと抵抗があるのだけど……試してみるのは大事よね。食べてみるわ!」

揚げものであることに抵抗は示したが、一応食べる気らしい。
元々食べる訳ではないが、それ以上に興味が勝った。

東山 正治 >  
「……思いやり
 他者を気遣う上で必要な心。立場とか、種族とか、
 そういう柵とか関係なしに気を使う、優しくするってことだよ」

海の底ではどうかは知らないけど、社会性の根底にも根付いている。
彼女にどう理解されるかはさておき、伝えるのは"教師"としての役割だ。

「店の利益になんないからね。
 それに、欲しい本をそいつが持ってたらどう思う?
 文字に関しては……これからだな。今は昔より数も多いからねぇ」

口頭だけの説明じゃ難しい。

「落ちてるモンはまぁ、モノにもよるが委員会に。
 "バレなきゃ犯罪じゃない"けど、調子乗ると痛い目見るからな。
 ……そう、金。地球社会の決まり事、わかりやすい対価の形だよ」

「まぁ、そうだな。島の外じゃ『仕事』と同じ扱いだ。
 此処は全体でみりゃ一つの島に過ぎないからな。
 何れ出てく奴もいる。その時に、手に何か無いと生きてけねぇからな」

少なくとも此処は学園都市である以上、無責任な真似はしない。
ツラツラと言葉を並べ、逐一答えるのは教師であるからだ。
はいはい、と適当に返事をしながら現金ぴったし。
フードを目深に被った怪しい異邦人の店主から布のカップを受け取った。

「あー、まぁ、油わかる?油。
 それを熱して、食い物を温める感じを"揚げる"っていうの。
 こういう感じに"衣"をつけるものが多いかな。ほれ、奢り」

そう言ってカップを差し出した。
味は……食べたことがあるかは知らないが鳥に近い。
が、淡白だ。味付けに使われる調味料の味が際立つ肉になっている。ほろほろ。

睦月 ルメル >
思いやり。 他者を気遣う上で必要な心。
 立場とか種族とか関係なく気を遣う……優しくする……。
 ……たかなしさんが優しくしてくれるのは、思いやりなのかしら?」

転移荒野で手を差し伸べ、人魚もどき(おなじ)にしても街に案内してくれた愛らしい人間。
人間さんではない自分にそうしてくれたのは、思いやりと呼ぶものだったのだろうか?

「人間さんの作ったルールには色々な意味があるのね。
 利益に、仕事に、お金に……なんだか、海とは(自然)真逆。」

形のあるものもないものもそこに意味や理由がある。
波で削られる岩のような現象が先に来て、結果が生まれる自然とは真逆のように思えた。
単純な感想を感慨深そうに呟いた。

「いただくわ!……こういう時はありがとうって言うのよね。
 ありがとうかしら、東山せんせい!」

奢られれば受け取って口に運んだ。
これも思いやりなのかしらと思いながら、カエルの揚げ物を口に運ぶ。
揚げものはやっぱり濃い味だが、カエルが淡泊なので思ったより食べやすい。

「食べながらだと人間さんにぶつかっちゃいそうね……。」

そう言って、案内を外れる形で人気のない路地へ進む。
食べ歩きに慣れていないが故の、半無意識な行動(しゅうせい)
 

東山 正治 >  
「……、……優しい教師だからな、小鳥遊ちゃんは」

まぁきっとそれだけではないだろう。
彼のことはそれなりに知っているつもりだ。
敢えて、下心的なそれは名誉のために語らないでおいた。
何とも言えない表情で、思わず肩を竦めた。

「誰もが"平等"に生きられるためだよ。
 自然は弱肉強食。強ぇ奴が生き残るが、淘汰ばかりじゃやってけねぇ。
 オタクみたいなのも受け止めるために、誰かを守るために(ルール)が作られてるんだ」

この変わり果てた世界において、最も変わり始めたものでもあるだろう。
急速に増えた人種を受け入れるために、柔軟に、誰かのために。
こうして世界はより拡張子、文明は急速に進化した。

「……どういたしまして」

思わず失笑を浮かべてしまった。

「まぁ、確かに人も多いからな。
 ……、……ちょうどいいか。そっちにも案内したい場所があった」

勝手によろよろ泳ぐ(あるく)彼女を尻目にゆるりと歩を合わせた。
こっちこっち、と案内していけばこっちこっちと、商店街の裏側。
裏路地方面へとやってくる。人気もなく、明るさもなく、小汚い。
あまり人がいるような場所もなく、どことなく不気味な場所で……。

「おっと、手が滑った」

もう、ここなら十分だ
徐ろに脇へ抱えた本をゆるく、放り投げた。
本当にゆるりと、軽いトスのような、視線誘導
東山は職業上、"隠す"のが得意だ。だから、その一連の動作に殺意は一切ない。
空を切り、ルメルの腹部めがけて放たれる掌底。名もなき技、皮膚ではなく内臓に響かせる"技"だ。
何の躊躇いもなく、その一撃は無辜の人魚へと放たれる。

睦月 ルメル >  
「東山せんせ、おとし、」

反射的に本へと身体を飛ばす。
直後に飛んできたものは、痛烈な痛み。
何が起こったのかは分からないが、とにかく──

「い、った……いっ……!?」

サイレンの様な悲鳴をあげて、掌底の威力と重力と衝撃に任せて転がる。
人間のつくりとは異なるとしても痛いものは痛いのだ。

それっぽくとも明らかに異なる内臓の造りはこのものが怪獣であり、
理外の人外であることを暗に知らせる。

「東山、せんせ……どうし、たの……!」

意図が隠されているのであれば、理由も察さない。
純粋な疑問をそのまま口にする。

東山 正治 >  
落ちた本がはらりと地面で開かれる。
何も無い無地のページ。東山だけには見えている。
人ならざるものを裁く、悪法が記されている。

「……人魚(サカナ)のことは知ってるつもりだったが、
 思ったよりも効いてねーな。全く、思ったよりも頑丈だな」

舌打ち。明らかに悪意にまみれたものだった。
先ほどとは打って変わり、ルメルを見る目は冷めきっていた。
ヘラヘラと笑っていた表情も冷え切り、射抜く眼光は鋭い。
それは明らかに、明確な敵意を持っている。

塞翁の本(ブックオブメーカー)
 『無断改造』の罪により、『静かなる銀幕(シルバー・ヴェール)』を発令する」

地面に落ちたページが光り輝くと、周囲に巻き上がる銀の霧。
聖なる霧は、如何なる神秘、魔術の効力を許さず霧散させる。
この方に記された、とある島民の異能。こっちまで改造されたらたまらない。
あらゆる人ならざるものの存在を許さない、悪法の刑。
懐から取り出すタバコを咥え、静かにジッポライターに火をつけた。

「────これからやることは、学園の意向は存在しない。
 誰かに指図でも、命令でも無い。俺個人の意思による行動だ」

素早く伸ばした手が、その髪を掴まんとする。
掴まれれば最後、何の躊躇もなく地面に叩きつけられることになるだろう。

「先ず答えろ、小鳥遊日和に何故あんな事をした?」

睦月 ルメル >  
豹変した人間。
冷え切った視線は明確な敵意と悪意を人魚に知らせる。

「海にいるもの、頑丈よ……!」

痛みに悶え、よろめきながらも身体を起こす。
銀色の霧はルメルに多少の効力を齎してはいるのだろう。
触れても変調は起きないし、伝えるものはない。

但し──、容易く一方的に封じられるやわな存在ではないらしい。
魔力らしきものは銀の霧の内で留まったままであり、ルメルの異能の発露も許したままだ。

無造作に引っ掴むこともできる。
霧の内にあるものを刺激せず、気を緩めなければ安全だ。

「『そうしたかった』……もの。そうしたかったから、そうした。
 生活委員の特殊治療ナントカの人間さんにも、同じことを聞かれた、わ……ぶっ、」

抵抗もなく、声を絞り出して答える。
予想できるであろう人外らしい単純な動機だ。

そして、乱雑に地面に叩きつけられた。