万妖邸1階。文字通りの玄関ロビー。
異邦人街の住民が訪れ、万妖邸の住人と交流する場としても使用されている。
入居希望者に万妖邸の概要を説明する場としても使われており、応接セットも用意されている。
住人たちが持ち込んだ様々な調度品や呪物の類が雑多な形で棚に陳列されているため、万妖邸初心者にここがどういった場所かを伝える洗礼の場ともなっている。
案内は主に「管理人」たちが行うものの、「管理人」がその場にいない場合は住人たちがそれを行うこともある。
万妖邸の案内図や部屋一覧も掲示されているが、万妖邸の性格上その内容は頻繁に書き換えられている。
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■紫陽花 剱菊 >
「然り。故に、信を置く。
……余り視線を遷ろわせぬ方が良い。
魅入られては面倒だ。何処に潜むかは私も把握しきれない」
万妖の戸入り成れど、既に根の国。
斯様、綺羅を飾りし数多の物々にも妖は潜む。
忠告だ。見えてしまうのも、最も恐ろしい。
「……然り。後は其の札に、部屋の名を決めておくのだ。
名を以て漸く其方の部屋となる。……其方が決めるのだ」
管理者の中には管理者が決める者もいる。
管理者、剱菊の方針は住居者に名を決めさせるもの。
自らが名付けて初めて、居場所に意味を持つ。
名が刻まれた契約書をひらりと手に取り、枝分かれ。
一枚は剱菊の手。一枚は周の手に。複製である。
斯様な仕組みだ。時代が変われば、契約の形も時代に寄せられるもの。
「……内容は控えの通り。
斯様、何が起こるか予測できぬような場所。
臨機応変。其方が正しきと思う行いをすると良い」
故に、管理人が責を持つと言った。
一蓮托生。言の葉の重みは、そのものの責務に連なる。
「身を案ずるのであれば、何時でも言うと良い。
退去の準備は何時でもしよう。然るに、此れは確かな出会い……」
黒糸を揺らし、口元が僅かにはにかんだ。
「霞流 周」
名が、静寂に波紋と成る。
「─────ようこそ、万妖邸へ」
新たな住民へと、ゆるりと差し出す右手。
此度の縁が、如何なる合縁奇縁を生むか。
全てはすずろのまま、流ままに……。
今は語るに及ばず。新たな幕開けとし、祝辞となるのであった。
■霞流 周 > 二級学生の身分に甘んじる理由は人それぞれ――少女にも矢張り事情はある。
だが、それでも白と黒の間の存在である事は自身が一番承知している。
…だが、正規の学生ではないという重石を抱えながらも…この立場からしか見えない景色もある。
「…そうですね…私は…最低限の情報しか…ここの事は…知らないので…。」
管理人という立場ならば、少なくとも凡そのここで暮らすための規則や注意事項は把握している筈。
示された書面を、茫洋とした銀の双眸がなぞるように文面を追う。
「……『契約』は…とても重いモノ…ですからね…。」
ボールペンを手に取りながら、改めて内容を再確認してから一息零す。
名は呪いであり、言霊であり、個を示すものである。
緩慢な手付きで、書面の契約者の名前に改めて記す名。
―――【霞流 周】。流れる霞の如く周く世を揺蕩う者。
…名を記せば、続いて札を彼から受け取ろうか。それを繁々と一度眺めて。
これは事前の話では聞いていない部分だったので、彼の説明にゆるゆると頷いて。
「…この札が……あぁ…それは…別に構いません…管理人さんが…住人の滞在/不在を把握するのは…矢張り大事だと思いますので…。」
視線が、彼に続いて案内図へと向けられる。光の無い双眸は再び彼へと緩やかに戻り。
「…紫陽花さん…他に…注意や…補足事項は…何かありますか…?」
■紫陽花 剱菊 >
二級学生。
一重に在り様は数多に渡る。
紛う方無き無法者。一身の事情により身を落とす者。
武芸者。紫陽花剱菊は未だ人を見る目は未熟。
「其方の言葉を信じよう。
気負わずとも、如何様にでも頼ると良い」
然れど、言の葉は嘘では無いと信じよう。
其の生き様は刃たれど、
為人と成り不確かを肯んずる。
「跳梁跋扈。如何なる不可思議が起こり得る場所なれど……。
望むものを、拒みはしない。先ずは此方の書面へ。契約内容だ」
来るもの拒まず、去る者は──────。
故に、万妖邸と名を連ねる。
丸机の上には一枚の紙と札。添えられしは常世筆。
書面、内容は単純明快。この邸の有り様協力せし、
然るに自らの行いに責を持つ事。以下、他住居と変わらず内容を綴る。
「内容を承諾するのであれば、名を。
……名は呪いで在り、此れは契約である。
……努々、邪な事など考えぬように……」
故に、契約。
虚仮威しでは無い。
然れど、只々その日に馴染む者には何も降りかかりはしない。
「……後は札。其れが其方の"部屋"と成る。
仕掛けは分からぬが、部屋に立てかければ其処が其方の部屋。
変幻自在、霞の邸故に、其れが鍵で在り、部屋と成る」
「……、……其方がいることがわかってしまうが、管理人にもいかんともしがたい」
案内図に目配り。
よくよく見れば、名らしきものも見えよう。
■霞流 周 > 武芸者…刀を扱う者、という意味では少女もその端くれではあるのだろう。
だが、彼女は己を武芸者とは露ほども思ってはいない。それは――数多の武芸者に失礼極まる。
(…私は…武芸者なんて柄でもないし…ね…。)
むしろ、目の前にいる管理人たる彼の方が誰が見ても武芸者と思うだろう。
居住まい正しく、泰然自若としながらも巌のように不動の如く根差したそれと。
まるで霞か霧のように曖昧で、何処か雲のように地に足が付いていない少女では雲泥の差があろう。
光を一切湛えず、されど盲目では非ずの銀の双眸をゆっくりと瞬かせて。
「……だからこそ…です。…勿論…住人の方に…迷惑を掛けるような…好奇心は…控えます…。」
こんな少女だが、最低限の礼儀は弁えているし、今この時は紛れもなく己がこの場にて一番の新参。
面白そうだからといって、あれこれ掻き回し混迷を招く事はせずと明言と誓いは今ここで。
「……紫陽花…剱菊…さん。……分かりました…その責に…泥を塗らないように…気を付けます…。」
ぽつりぽつり、途切れがちの言葉はしかし彼の言葉にそう返す。
ここはその性質も鑑みれば、決して外のように気軽に散策…とはいかぬ場所であろう。
なれば、大事なのは”折り合い”だ。彼や住民に迷惑を掛けぬ程度に、この【万妖邸】を楽しむ。
改めて、相変わらず緩慢な動作ではあるが彼の一礼に少女も一礼を返す。
「……いえ…こういう確認は…管理人さんとしては…必要だと思うので…。」
彼の背にそう言葉を返しながら、ボストンバッグと刀袋に納めてすらいない刀を一振り携えて。
音無き歩みに続き、霞雲の如き曖昧ながら流れるような足取りにて場所を変えよう。
(…こういう調度品も…年季が入っていたり…曰くとかもあるのかな…?)
そんな、他愛も無い事を考えながら彼に促されるままにソファーの片側に腰を落ち着けて。
■紫陽花 剱菊 >
ゆらり、ゆらりと揺蕩う灰色。
斯様少女の姿ではなく、居住まい。
武芸者の端くれ。虚の双眸は者、物を見据える。
自らの寡聞としても、些か合致しない数多の情報。
「(見かけに寄らぬと言うが……斯様な流派か?)」
一見、一介の武芸者に思えぬ居住まい。
まるで微睡み。涅槃の中にいるようだ。
些か双眼細めしも、黒糸がはらりと揺れる。
此度、罷り越したのは武芸者では非ず。
「……面白い、か。
然り、胆力はあるようだ。根の国に根ざし、
一つ踏み外せば烏有に帰すこの邸を面白い、と」
如何様に言われているかは存じて居よう。
怖いもの知らずか、大うつけか。
起伏無き表情。抑揚無き声音。
互いに静寂の中に揺蕩うも、虚は僅かに波紋の如し広がった。
「……否、其方が望むのであれば受け入れよう。
万の民、遍く妖を恐れぬ者よ。
唯一つ、自らの行いに責任を持つのであれば……」
「管理人が一人、紫陽花剱菊が其方の責を持つ」
斯様、此処に委員会の介在は無用。
邸に踏み入れしその時より、
公安委員会ではなく、管理人としての紫陽花剱菊。
然らば、安住を求めし者を無碍にはすまい。
ゆるりと一礼。黒糸が細れに乱れる。
「……では、契約を致そう。
其方に幾つか、書いてもらうものもある。
……立ち話も客人様には失礼であった。どうぞ、此方へ」
さやか、歩み始めるも当然の如く音はない。
其の背に付いて行くので在らば、談話の為にと
用意された木製の丸机と対を成す羽毛の長椅子。
どうぞ、と片手が先に座るように促すであろう。
■霞流 周 > 見た事の無い挨拶を返された…日本の挨拶?世界の挨拶?…あるいは異邦の挨拶?
それでも、こちらの挨拶にきちんと返礼してくれたのは理解出来る。
何処か居住まいがふわふわしている少女と違い、彼はその佇まいに全く乱れも揺らぎも無い。
「…隠れ蓑…?…いえ…家賃が安いのと…あと…面白そうなな環境だと…思ったので…。」
隠れ蓑はゆるゆると首を左右に振って、否定の意を示しながらも示す理由は単純明快に2つ。
物見遊山気分と取られても致し方ない返答ではあろうが、少女の双眸は覇気も光も無いままで。
そして、正規の手続きで学生と成れなかったもの――訳ありの者たち…『二級学生』。
紛れもなく少女もその一人であり、故にそういう視線には慣れている。
ただ、少なくとも少女は何かを企んで、あるいは混乱を巻き起こす為にここに来たつもりはなく。
先に述べた、単純明快な2つの理由以上でも以下でもない。
けれど居住の判断…決定権はあくまで『管理人』の一人たる彼に有り、こちらではない。
故に、居住の許可の代わりにペナルティーを受けたとしても、それはそれで受け容れよう。
「…もし…私が問題を起こしそうだと…ご判断されたなら…手続きの白紙や…ある程度の制限も…仕方ないとは…思います。」
■紫陽花 剱菊 >
二本指を立て、一礼。
異邦の挨拶、作法也。
衣擦れさえ無く、静寂が佇む。
居住まい些か揺らぎ無い。
「霞流周……」
記憶の坩堝を手繰り寄せる。
其の名の聞き覚えは二通り。
懐から一丁取り出す小豆色の管理表。
「然り。確かに話は承っている……。
霞流周……二級学生……斯様、万妖の懐へは隠れ蓑にする予定だろうか?」
一つ、管理人としての通達。
管理表には然りと乗る、その名前。
二つ、公安委員会としての伝達。
詳細不明。流浪の身の二級学生 霞流周。
如何様な理由かは不明。故に、要注意とされし者。
疑わしきは罰せよ。相応の身分を持たぬ者には相応の視線。
然れど、敵意無く、殺気無く、事を争う気兼ね無し。
然のみ、談話の延長線めいている。
■霞流 周 > 「……あ…どうもこんにちは…こんばんわ…?」
あれ、今は何時だっけ?…まぁ、いいや。不意の言の葉にも緩やかに振り返る姿に動揺無く。
茫洋とした双眸の先には、一人の男性の姿が在った。己と違う黒一色の髪。瞳は何処か虚ろにも見えて。
そちらへと、肩口に引っ掛けたボストンバッグを持ち直しながらゆるゆると緩慢に会釈。
「…入居希望者…です…一応…事前にお話は…通してあります…。…あ…私…『霞流周』…と、言います…。」
管理人と彼は言った。言葉はぽつりぽつりと途切れがちで覇気は無く、されどきちんと名乗る。
(…管理人さんと会えたなら…手続きもスムーズに…出来るかな…?)
最低限の話は事前にきちんと通したとはいえ、手続きはまだこれからだから。
■紫陽花 剱菊 >
魑魅魍魎、跳梁跋扈。
摩訶不思議、其処は如何なる客人も歓迎す。
「───────何か、御用だろうか?」
言の葉は不意に、耳朶へとたゆたう。
影より罷り越したように、周の背より掛けられた。
振り返れば男。黒糸を流麗と揺らし、
虚の双眸を持ち得し男。
「……入居希望者か、或いは新顔か……。
……私もまた、管理人としては未熟。然れど、望むのであれば責は果たそう」
ご案内:「万妖邸 玄関ロビー」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
■霞流 周 > 知人から聞いた話で興味を持って、学生寮からこちらへと移住を決めたのが数日前。
説明は最低限受けただけで、後は自分の目で確かめるとばかりの即断即決。
住人らしき人たちの気配は感じ取れる…ああ、人の気配もあればそうでない気配も沢山、沢山ある。
「…家賃が安いのも…納得だけど…こういう所の方が…面白そうだし…ね…。」
一通り、玄関ロビーを見渡してから応接セットに茫洋とした銀瞳が向く。
一応、入居の申請などはきちんと済ませているし最低限の注意事項なども受けている。
『管理人』さんの姿は見えないが、誰か住人の人に案内を頼むべきか。
「……あ……案内図…。」
ロビーの一角にあるそれに漸く気付いた。ふらりとした足取りで案内図と部屋一覧を見る。
「………読みにくい……。」
むぅ…と、無表情のまま小さく呻いた。それでも頑張って目を凝らす。その目に光は無い…死んだ魚みたいに。
■霞流 周 > 一歩、足を踏み入れると…そこはまるで別世界のようだった。
物珍しそうに玄関ロビーを見渡しつつ、最低限の荷物が入ったボストンバッグと刀を携えて。
「……見た事ない…置物ばかり…それに……呪物も沢山並んでる…ね。」
一見してそれと分かるか否かは個人差もあろうが、少女は直ぐに分かったらしい。
ただ――それだけだ。反応は希薄で感情も薄い。視線は直ぐに違う場所を彷徨う。
「……聞いた話の通り…確かに…ここは…住む人を選びそうだね…。」
ご案内:「万妖邸 玄関ロビー」に霞流 周さんが現れました。
ご案内:「万妖邸 玄関ロビー」からクロメさんが去りました。
■クロメ > 中にいる存在に声を掛ける。
幾つか、確認の言葉を交わす。
「ふむ……なるほど……」
金はかかるが、そう高くない。
この程度なら、どうとでもなりそうである。
「移転は? ふむ……」
寮からの移動も可能である、と
ならば、心は決まった
「……よし」
渡されている手帳と連絡先を確認する。
「……一応、言っておいてやるか」
そうして、どこかに連絡をして……
ロビーを後にした。