異邦人街の落第街境界付近に学園草創期から存在するアパート。
不自然なほどに家賃が安く――

概要(クリックで展開)怪異や妖怪がアパート内部で出現し、霊障や心霊現象なども頻繁に発生しており、このために「怪異を封じたアパート」「化物集合住宅」などと呼ばれることもある。
まさしく事故物件的集合住宅であるといえるだろう。

日本の極めて古風な二階建てアパートといった外観をしているものの、これは祭祀局と万妖邸内部による偽装結界による虚像であり、実際には混沌とした多層構造を持ち、頻繁に内部が変容し新たな部屋が生成されるなどの「妖怪屋敷」「幽霊屋敷」的性格を持っている。

住人の多くは妖怪や悪魔、吸血鬼、異世界の亜人種などであるが、人間の住人も存在する。
頻発する怪異の出現や霊障などに対応することさえできれば、人間であろうと問題なく居住が可能である。
正規学生・教職員も二級学生も区別・差別なく受け入れており、居住において出自を問われることはない。
万妖邸に仇なすような存在でなければ、住人として居住すること自体は容易である。

アパート内の管理は「管理組合」の複数の「管理人」によって行われているものの、住人の自治性も強い。
部屋の改造やアパート内の増築・改築も許されており、住人による自由な改造の結果、建物内は極めて混沌とした状態となっている。

結界の外から見れば二階建の建物であるものの、上述の通り実際にはそれ以上の階が存在している。
万妖邸の「公式」の共用施設・設備は1~3階であり、談話室や食堂、大浴場、遊技場などが存在するものの、実際にはこれらの階層以外にも共用設備・施設は作られている。

地下最下層にはとある「要石」を擁する空間があり、「要石の間」と呼ばれている。
万妖邸そのものがこの要石と連動する形で、この土地の極めて危険な「門」を封じ込めており、「管理人」や一部の住人によって封印が常に行われている。
封印された「門」の向こう側から出現しようとする危険な怪異が「要石の間」に出現することもあり、その際は「管理人」や住人達による戦いが行われることとなる。

無許可で作られた違法建築であるが、とある理由により常世学園との間に協定を結んでおり、学園による撤去を免れている。

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参加者(0):ROM(1)
Time:08:27:39 更新


ご案内:「万妖邸 庭」から緋月さんが去りました。 (08/22-23:39:49)
ご案内:「万妖邸 庭」からネームレスさんが去りました。 (08/22-23:39:26)
ネームレス >  
「引きこもりのヨハネが、優れた作家性の持ち主だというコトは、
 しっかり考慮に入れなきゃならないケド……」

肩を竦めて苦笑する。
福音書の内容も、この時代では――きっと、現実的に有り得なくもない。
そんなふうに語られているのかもしれない、なんて思うところもあった。

「ボクの流派で、生体生成に特化した達人(アデプト)がいるのなら。
 そういうことも不可能じゃないかも、とは思うかな。
 異能か、魔術か、はたまたどんなロジックでなされたことかはわからないケド。
 異邦の地、教徒でもユダヤ人でもない者たちに振る舞われた、五つのパンと二匹の魚……」

きっと美味しかったに違いないし、何より。

「5000人を笑顔にしたっていうなら、どんな仕掛けがあったって奇跡だよ。
 そう呼ばれるものはだいたい人の力で、後々そういうコトになる」
 
成し遂げられたことは、きっとそういう話。
白鳥が湖面でバタ足をしているみたいに――そう、うまい話はどこにもない。

「ボクもキミも、百年先では奇跡を起こした人間ってコトになってるかもよ」

へらついて笑って。

「この一年で、キミは――……キミの理想(なりたいじぶん)に、
 近づけたかな?ボクはもちろんのコトだケド……」

ひとつの栄光、ひとつの成果。結果として証明された事実。
まだ一年、もう一年。しかしもう還らない一年。
過ごす時間の速度は同じようで違って、

「……………」

なにか、を。
言おうとして、開きかけた唇は、しかし。
どこかとぼけたような彼女の言葉に、…それを飲み込んで、笑った。

「試してみる価値はあるんじゃない?
 あれ、味っていうか歯ごたえメインだし――……
 むしろ揚げてみて添えるってのもアリだろ。挑戦(チャレンジ)してみよーよ」

今じゃなくてもいいし、打ち明けなくってもいいか。
そうやって、じんじん痛む頭をさすりながら、ひとたび陽光を避ける屋根の下へと。
眩しい夏はそうやって、また濃密に、過ぎていく。
(08/22-23:36:39)
緋月 >  
「世の中、そう上手くは出来ていないって事ですね。
授業で習った、パンと魚を増やして沢山の人に食べさせたという「奇跡」も、そんな理屈に近かったんでしょうか。」

聞いた話から思い出したのは授業で習った事。
「奇跡」と言われているそんな出来事も、実はそんなリソース()(仕掛け)ありきの出来事だったのかな、と。
生命力を切り売りするような術でそんな真似をした日には、使った人間が干からびそうであるが。

「うーん…まあ、音楽家・歌手としてあなたを知ってる人からすれば、そういった…神秘性、でしょうか?
そんなものは感じられるのかも、ですけど。」

偶像(アイドル)というのも難儀ですね、などと言葉にはせず頭に留めながら、ナイショとされれば
軽く苦笑しながら首肯する。
自分が変な事を吹聴した所で、イメージと言うのは案外馬鹿にならない。どれだけの人間が信じる事やら。
そもそも変な事を言う心算もないけれど、と頷いておく。
心の中にしまっておくだけで良い事も、この世には多くあるのだ。

「……あれから、色々な事が起こりましたからね。
気が付いたら、旅をしていた時より波乱に巻き込まれたり、首を突っ込んでたりした気がします。」

今までに身の回りで起きた事件や大事を、思わず思い出す。
手を引くひとが関わった事も、関わらなかった事も、自分から首を突っ込んだ事も、気が付いたら中にいた事も、
本当に色々とあった…と思う。
それが、もう1年。随分と、密度の濃い1年を過ごしたような気がしてくる。

「カレーですか…蓮根は、カレーの具にありだと思います?」

続けて出た言葉は、本人は大真面目だが傍らではボケとしか思えないような言葉だった。
(08/22-23:16:54)
ネームレス >  
「あぁ……魔術の(リソース)はボクの生命力だからね。
 お水(H2O)を生成したり必須アミノ酸(EAA)とかを錬成はできても、
 それはちぎったお肉を自分で食べてるようなもの、というか。帳尻が合わない。
 延命はできても差し引きで、いずれ限界は来る感じ……支出で(マイナス)になるっていうか?」

いつぞや、廃神社で大喧嘩した時もそうである。
人体の損傷や消耗を簡単に回復できるようなら、主の去った場であれ神域で眠ることはなかったろうし、
数日の休養なぞ取る必要もなかったろう。生体生成は苦手な分野で、
特に行使する魔術の規模と使用する魔力量の釣り合いが取れていない。

「おかげで、美味しいものを楽しむコトもできるワケ。
 なにかを取り込んで、細胞が活きて入れ替わってる感覚が……。
 いっぱい動いたあとに、塩をいれたオレンジを飲むとすっごく美味しい」

これこれ、とちょっとぬるまったボトルを揺らして、へらへら笑う。

「でも、そゆので死なないようなヤツって思われたいトコもあるんだよ?」

キミは例外のひとりだけど、と付け加えておく。
只人(ただびと)でない――ネームレスという偶像はそうでなくてはならないと。
だから、ナイショ、と唇の前で人差し指を立てておく。パブリックイメージも商品なのだ。

「用意のお手伝いも当然しますよ。キミがシェフ、ボクは助手。
 緋月もお料理、上手くなったよね。だから食べたくなっちゃうんだ。
 海鮮いっぱい買ってきた。野菜ある?カレーにしよ」

調子のいいことで、やらかしたばかりなのに上機嫌だ。

「…………夏祭り。あれから、まだ一年かあ。
 なんかすっごい昔のコトみたいに感じる」

出会ったのは蒸し暑い梅雨の時期。
じわじわと蝉の声の遠く夏の日、ふと見上げてぽつり。
(08/22-22:56:22)
緋月 >  
「あなたが色々規格外なのは…「あの一件」で嫌と言う程理解しましたけど、だからといって飲まず食わずで
生きていけるようなひとではないでしょう。」

違います?と、小さく付け加え。

かつての一件で、濁水の龍を一撃で消し飛ばした、あの業。
確かにアレは常識を超えた業ではあるが、それを扱う者が人知の外にあるかと言われれば、答えには詰まる。
水分を摂れなければ人は長くは生きられない。
この暑い夏、熱中症の注意喚起も多いし、何なら旅をしていた間に当の自分が少し危ない事になった事もある。

「……ほら、しっかり食べないとダメなひとじゃないですか。」

手をにぎにぎされながら、そういうところだぞ、とつい口を出してしまう。
「仕事」である以上、一人の身体という訳でもなし。
せめて結果次第で危なくなりそうなら、自分でなくてもどっかに連絡くらい入れろ、と言いたげに視線を向ける。

「其処まで意地悪くはないですよ。
さっきの一発で少しでも反省してくれたなら、それで充分です。」

手を握り返し、ほんの少し力を入れて軽く引っ張る。

「食材の用意もしてるんだったら、それも連絡に入れて下さいよ。
そしたら台所の準備くらいは整えておいたんですから。」

少しばかり迂遠な、でも確かな了承のお返事。
拳骨と一緒に釘を刺した事で、お怒りはすっかり収まってしまったようである。
(08/22-22:38:51)
ネームレス >  
顔について言葉にあがると、思わず頬にふれてしまう。
昨年の末……もうずいぶん昔のことだ。でも未だに思い出される。痛かった。

「思ったより、ちゃんと人間扱いしてくれてるんだね」

へら、と笑う。心配事が、ずいぶんと等身大なもの。
それくらいで死ぬ人間、と意識されていることが、嬉しいような、悔しいような。
こちらもいつもの顔が戻って、立ち上がりならまだ痛む頭に触れ……

「…………」

見た目にはわかりづらいけどたんこぶが出来ている。
キャップを被っていて良かった。帰る時にも治らなかったらと思うと。

「ありがと。っていうのもヘンか。
 ちゃんと生きてるよ。絶対死なない、とは言えないケド」

その拳に手のひらを重ねて、ちょっと労わるように。
物理的に手が速くなっている気がするが――

「……やらかしたぶん、夏祭りはフリーパスってコトで」

ダメ?
そうおどけるように笑って首を傾ぐ。全部奢りますよということ。

「でー、おうち。お邪魔してもいい?
 このままだとカラカラになって倒れちゃうし、焼けちゃうし。
 お泊りの予定で食材も買ってきてるんだケド……」

ダメです入れません、という可能性もあったので、ちょっと語尾はか細くなった。
おててをにぎにぎしてみる。
(08/22-22:25:06)
緋月 >  
「……一週間ですよ。
水分摂れないでいれば、命が危ないのを通り越してる時間です。
それに、裏の常世渋谷がどうかは知らないですが、ここ暫くのこの暑さです。」

言外に、下手したら緊急通報も視野に入れてた事を漏らす。
幸いにというか、元気そうなので遠慮なく一発入れたが。

「事情があったのも分かりました。だから一発だけ、顔も勘弁します。」

其処まで言うと、大きく一息。
表情から憂鬱さや険が消え、普段の雰囲気に戻っている。

「心配しますよ。連絡がつかない、しかもこの夏。
何処かで行き倒れてるんじゃないかと、委員会に通報も考えたんですから。」

解いた手を軽く左右。
拳骨を落とした先は充分固い場所。当然、其処に思い切り拳を落としたのなら痛みは自分にも来る。
それでもお叱りの一発は落とさねば気が済まない事情だった。

「……無事でよかったです、本当に。」
(08/22-22:17:38)
ネームレス >  
「お礼……どうだろ……?」

なんか妙な反応をする。
そもより――"友人"の話を出すことは、殆ど無い。
交友はそれなりに広くあっても、それらをして"友人"と形容することはない。
故に、これの友人であるため、それなりに奇妙ではあるのだろう。

「そう、」

防御のタイミングは完璧だった。
完璧に踏み込みに合わせ、攻撃に先んじてすらいたといえる。
しかし拳闘(ボックス)よろしくのアームブロッキングが守っていたのはその貌であり、
完全な夜道替えだった。落雷の如く叱責の拳が脳天に直撃した。

「いっっっ」

ごいん、と頭蓋から全身にじんじんと響く痛み。
膝からへたんと崩れ落ち、あわやカウントを取られる姿勢だ。

「っったぁ~~……!」

両手で頭を押さえて、じわと涙を目に貯めながら。
響いているのは痛みだけでなくて、声もそう。そうだ。
しょうがないじゃん、といつもの言が口に出るより先に、
唸る犬のように、ぅ゛~、と喉を鳴らしてから、
やがて両腕を落として、もごもご動かした唇を解く。

「…………ごめん…」

まあ、それこそ好奇心旺盛な獣のように、
危ないところにもふと一直線に進んではしまうのだが。
それでもちゃんと、涙ぐみながらも詫びてはおく。
……視線がずれた。

「でも心配してくれたのちょっとうれしい」

余計なことも素直にいっておく。
(08/22-22:08:27)
緋月 >  

「危ない真似をするなら、連絡出来る内に
言伝の一つでも残しておけ、この莫迦――!!」

 
(08/22-21:55:03)
緋月 >  
最後の認める言葉を聞けば、直後に笑顔がたちまちに崩れ、憂鬱そうな表情に。
瞳の鋭さは衰えぬまま、はぁ、と大きく息を一つ。

「……どういった理由で、何が起こって、どう解決できたかは、一通り「納得」が行きました。」

起承転結。それをしっかり聴取して、咀嚼して、結論を出す。
恐らく機嫌がよろしくない少女にしては、随分と理性的ではある、かもしれない。

「「お仕事」であるなら仕方がないです。私が口を挟める事を超えてますから。
不慮の事故だった、という事も納得しました。
ご友人の事に関しては寧ろお礼を言いに出ないといけないでしょう。」

ひとつひとつ、聞き出した事に対して結論を告げていく。
意外にもそれらに対して出て来る事は「納得」の言葉である。
聞き分けがいいというか、何と言うか。
兎も角、しっかり情報を出して説明すれば、即座に牙剥いて襲い掛かる程理不尽でもない、のだろう。
それでも納得いかない事に関しては納得いかないと「NO」を突き付けるのがこの少女であるが。

「――詰まる所、悪いのは、」

そういう訳なので、最終的に収束する先はただ一点。

「迂闊な思いつきを試して、出られなくなった。そういう事ですね。」

その言葉と同時に、たん、と床を蹴る軽い音。

握られた拳が振り下ろされる先は――頭頂部。
即ち、脳天へのげんこつ一発。
(08/22-21:54:27)
ネームレス >  
「……くたばったヤツの分ってワケじゃないケド。
 今後はボクが弾き倒すつもり。あとは、音を出せる場所を……」

あ、思ったより感触がいいな。
そうあえて思考のなかで言葉を紡ぐのは、実際のところ嫌な予感が拭えないからだ。
二人で笑い合う、一見和やかに見える真夏の風景のなかで、
風を取り込んだ背筋が寒い気がする。

「あー」

視線を横にずらした。
一週間で戻ってこれたのは、むしろ上振れた結果だったのかもしれない。

「まぁ、うん……」

視線は上に。
日にちにまだ余裕はあるけど……たとえば。
行こう、と約束していた夏祭りであったり、諸々の予定に響く可能性もあった。
……なんで伝えなかったんだっけ。今更の後悔と、その場の勢いの記憶。

「……そういうことになるね?」

にこっ……。
(08/22-21:38:20)
緋月 >  
「ふむ。」

少しだけ、笑顔が穏やかになる。目つきは相変わらずだが。
そのまま暫し、語られる言葉に耳を傾け。

「成程、お仕事。確かに、それは断るのが難しいですよね。」

うんうん、と軽く頷く。こちらもほんの一時、ギターケースに視線を向け、あまり不躾に見るものではないな、と
いった雰囲気で視線を戻した。
笑い声が上がれば、少女の方もあははは、と軽く笑い声をあげて、

「つまり迂闊な真似をして戻れなくなった上に、そのご友人と偶然出会わなければ更に行方不明の
期間が長くなっていた――と、そういうことですね?」

ごまかされなかった。
色々揉まれて来たのもあって、こう言う所だけは鋭くなっている。
唯一、救いらしい救いがあるとすれば、以前の「お勤め明け」の時よりは心持ち…なんとなく、
雰囲気が柔らかめだというところ、だろうか。多分、おそらく。
(08/22-21:31:01)
ネームレス >  
「入ってみた感じ、人間の集団意識が作り上げた異界、結界の類と仮定したケド……
 正体はわかんなかったな。去年にも迷い込んだコトがあるんだケド、よくわかんないまま」

実在は確かだ。全員が同じ裏常世渋谷のことをいっているとは限らないけれど。
五体満足で帰参した身は、熱を帯びた長髪を持ち上げ、涼しい風を背に取り込みながら息を吐く。

「そこに」

何か言葉を紡ごうとしたと時に、彼女の"つまり"が重なった。
真面目くさった顔は目を丸くして、唇は噤まれた形。

「いやあ……」

出会ってから一年を超えて、随分と解像度も上がったものである。
迷い込んだのだろうという認知を刷り込む手段が断たれたので、
結局、素直に言うしかなくなった。
観念したように息を吐いて、肩を落とすと。

「うちのボス(プロデューサー)に」

著名な人間が上に就いている、という話はしたことがある。

「消えた演奏者の安否確認を依頼されてね。
 ボクらがこの島に来る前の在校生。
 ……ま、遺品の回収って形になったケド、そのお仕事で入口を探してた」

視線は、日陰のなか、クーラーボックスの横で壁にもたれている、
ギター用のハードケースに一瞬向けられた。

「そぉそぉそれがさァ~……なかなか入れなかったから、ちょっと思いついたコト試したんだよ。
 そしたら入れちゃったうえに、普通の出方じゃ全然出られなくって!
 なんか偶然友達と出くわしたもんだから出られたんだけど、参っちゃうよね!」

くしゃ、と自分の血色の髪をくしゃりと掻き混ぜながら、たははー、と笑顔を見せてみる。
笑って誤魔化してみよう。会えなかったぶんいっぱい笑顔を見せちゃう。そんな魂胆だ。もしかしたら通るかもしれない。
(08/22-21:20:49)
緋月 >  
「脇が開いていて、中々涼しそうでしたので。
部屋着やちょっとした用事で外に出る位には丁度いいかな、と。」

袖が長いので、刀を抜くにはあまり向かないかもですが、と言いながら右腕を肩の高さまですすい、と持ち上げる。
ひらりと靡く袖の下、右の腰にはいつもの刀袋。
左腰に差してない事も含めて、此処で抜く意志はない事を言外に示しているものであった。

ホールドアップの姿勢の人物が、釈明のように口にした言葉には、微笑みを浮かべたまま軽く首を傾げる。

「――噂には何度か。異界か何かの類…でしたっけ。
奇妙な力を持つ物品が手に入るとか、異能が身に着くとか、そんな事は学園で噂に。」

そう答えると同時に、ギュッ、と小さな音。
見れば、肩の高さに持ち上げた手が、がっちりと握り締められている。

「つまり――其処を探しにでも行ったんですか?
私の当てずっぽうですけど、そんなに出入りに手間もかからないだろうな~、なんて適当な検討でもつけて?」

にっこり。
下手に誤魔化して、見破られれば――いつぞやのお勤めの出迎えの再現である。
(08/22-21:04:24)