2026/02/18 のログ
ご案内:「万妖邸 管理人室」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 >  
深々と夜も過ぎ去りし刻。
蝋燭が陽炎のように揺らめく一室。
禅を汲みし、すずろの儘に筆をなぞる。
自らの職務を果たすと共に、千々に思いを馳せるばかり。

「…………。」

何時ぞやの凶人と傷はとうに癒えている。
傷の治りは常人より遥かに早い。
日ならずして、幕引きが近いことを戦人は見ていた。

「……また、一段と冷えるな……。」

未だ空風。小春日和は遥か遠く。

紫陽花 剱菊 >  
墨が名を刻む。事柄をなぞる。
百首夜行。混沌の邸とて斯様な仕事は如何様にでもある。
己が管轄。住民を把握するのは至極当然であった。

「周は……元気にしているだろう。」

逍遥と彷徨う霞の徒。
然りとて強か。必要以上に心配する事も無い。
然なきだに、先を行く者無くば、導く者に非ず。
静寂の隣人。とやかく謂うまい。

「…………。」

色も無く吐息。
たかが数年。然れど幾星霜と感じる程に、この地にいる。
幾度の事柄が炳とした走馬灯のように脳裏を流るる。

紫陽花 剱菊 >  
戦人は泰平の世を望む。
此の地は、己が故郷より遥かに近しい。
いわんや、未だ馴染めぬのは性分か。或いは────……。

「…………。」

筆を擱き、表情が強張る。
幾度と言葉が耳朶にこびりつく。

「我欲、か……。」

暮色蒼然。斯様なものは、置いてきたはずだ。
待ち人なると決めた日、(まみ)える事非ずとも、と。
彼の地にて、諸人を守護する者と成れ、と。
凶人行きずり、奥に陽炎揺れ動く。
紛うこと無き、かの怪物のせせら笑い。

「……違う。」

己は、斯様な怪物とは違う。
やきもき。吐き捨てねばならぬ。
そうでなければ、言い聞かせられぬ。

紫陽花 剱菊 >  
行雲流水。すずろの儘に、八千代迄。
持つべきものの責務を果たさん。
然も無くば、己は同じ────……。

「────────。」

一呼吸。
水面を揺らがす波紋がゆるりと静まる。

「……成すべき事を成す。
 泰平の世に馴染めずとも、礎あらん。」

刃成れば、今昔(こんじゃく)も変わらず。
心底に沈む涅槃は邪念だ。決して覗くべきではない。
今一度、筆を手に取り、墨をなぞる。
蝋燭の火が消える、その時迄。

ご案内:「万妖邸 管理人室」から紫陽花 剱菊さんが去りました。