2024/09/28 のログ
崛葺 茉璃 >  
「………………」

これ以上は、語るべきことではないのだろう。
これ以上は、言うべきことではないのだろう。
この身には過ぎた言葉となるだろう。

「そうですね。 根の国も三寸先ほどにはあるといってもいいでしょう / 三寸先程度にあると言ってもよかろう。
 一呼吸の間に、命が消費されることもあります / 一息の間でも、人が死んでいる。」

死が近い、とはそういうことである。
存外に、根の国がそこにある、というのも嘘でもないかもしれない。

「あ、よいのですか? いえ、怖がられていたのでよいのかと思いまして……
 ああいえ、いいのです。お気になさらないのであれば……はい」

ろくに友達がいない女その2も、だいぶ挙動不審であった。

落花彩晴 > 「――死は遠くにあるようでとても身近にあるものですからね…誰の身にも。」

不老不死の存在とかは…知り合いにも居ないので何とも言えないけれど。
根の国がすぐそこにあるのならば、自分が死んだ時はこの呪いの群れを埋めて欲しいと思う。

「いえ、茉璃先輩自体は別に怖いという訳では無いので…。」

監視対象だろうと曖昧に見える存在だろうと、彼女が実際どれだけ危険なのかも分からないけれど。
――怖いのは、彼女ではなく”自分を知る”古巣の誰かと出会う事だから。

「…じゃ、じゃあ連絡先交換しておきます…か?」

おずおずと、端末を取り出しつつぎこちなく尋ねるのはぼっち属性が強い弊害かもしれない。

崛葺 茉璃 >  
「そのとおり、です。死はいつでも、どこにでもあります。
 そして、死を迎えたあとも安らかに過ごせるようにする……それが、私の職務です。」

それもまた、自分の身近の話。
浄化と、成仏。

「あ、は、はい……ぜ、ぜひに。
 ええと、こう……でしたか?」

ぎこちない手つきで、自分の連絡先を提示する。
曖昧なはずの女は、はっきりと駄目になっていた

「なにぶん、こういうことは慣れていませんので……」

落花彩晴 > 「――死を迎えた魂が、その意志が荒御霊になってしまうと困りますものね…大事なお役目だと思います。」

自分は、ただ殴って祓うくらいしか出来ないから…それが、簡単なようでどれだけ難しいのかは何となく分かる。

「え、えぇ…それで、こうして……あ、無事に出来ましたね。」

少女は流石に扱いは手慣れているが、連絡先が増えるのは矢張り嬉しい反面緊張する。
それでも、何とか彼女の連絡先を登録してこちらの連絡先も送る…登録はまぁ、最悪自分が彼女の端末を借りてしておいてもいい。

「…茉璃先輩、こういう現代機器というか科学の最先端とかは相性悪そうですね…。」

そういう所は、監視対象がどうのではなく一人の人格なのだろうな、と思いつつ。
個別の連絡先が増えた事を嬉しく思いながら、いそいそと端末を仕舞い込み。

「――あ、茉璃先輩。ずっと墓地で立ち話もこれはこれで眠ってる人たちに失礼ですし。
その、取り敢えず近くの公園なり静かな場所に移動してお話しませんか?」

と、今更ながら改めてここが墓地である事に思い至れば。
こういうおしゃべりで長居し過ぎてしまうのも良くないかな、と先輩に提案を。

崛葺 茉璃 >  
「……」

大事なお役目。それゆえに。思い出したこともあるのだが。
祭器はその思い出を深く底に沈めた。
死者が生者を惑わせてはならない

「おお……おお……」

無事に連絡先を交換した。
これほど嬉しいことはない。

「いえ、その……お、お電話などは出来ます」

つまり、それ以外はからきし、ということだろうか。
曖昧な女は、色々な何かを露呈したように思える。

「死者の場を静寂に……というのは、人の思い込み、ではありますが / 人の信念とでも言うべきか。
 まあでも、場を移すのも悪くないですね / 悪くなかろう」

どこか、ウキウキとした感じに、思えるだろうか

落花彩晴 > 何か凄い喜んでいるのが、例え姿が曖昧でも気配や声の調子で伝わる。
少女もこれでやっと二人目の正式な友達だ…道のりはまだまだ長いとても嬉しい。

「…むしろ、電話は出来ないと色々と困りますからね…。」

魔術で代用したりとか、不要な人も勿論いるのだろうけれど。
ただ、何となくこの人に対するイメージが少し変わってきたかもしれない。

「じゃあ、行きましょうか――あ、さっき移動販売の車があったので、一緒に何か買い食いでもしますか?」

と、そんな感じで少女なりに頑張って提案などもしてみつつ。
一先ずは、この偶然と縁により”再会”した古巣である祭祀局の一員で監視対象の先輩と。
和やかに談笑?…にはまだぎこちないが、それでも少しずつ打ち解けは出来ただろうか?

やがて、共同墓地も元の静けさを取り戻すのだろう。
墓に添えられた花束だけが、静かにただ残されるのみ。

ご案内:「常世島共同墓地」から落花彩晴さんが去りました。
ご案内:「常世島共同墓地」から崛葺 茉璃さんが去りました。
ご案内:「宗教施設群」に奥空 蒼さんが現れました。
ご案内:「宗教施設群」にフィスティアさんが現れました。
奥空 蒼 > なんてことない
宗教施設群の一画

蒼いのはいつもと違って
妙にしんみりした雰囲気を纏って

名も亡き神の名の記された場の前に
紙切れの束を手に握って佇んでいた

(なんだかなー……)
(適当に誰か捕まえて話すかなー)

センチメンタル、ってやつさ

フィスティア > 今日はもうお仕事も授業もありません。
慰霊碑への訪問も、前回からひと月ほど経っていますから手を合わせに来ました。
花束はありません。そもそも故郷で花束を供える風習が無かった事はありますが、お金もないので…

「どこかで見たような…」

各委員会の慰霊碑のある場所へと向かっている最中でした。
見覚えのある姿を見かけたのです。
青い髪の女性…

「まさか…」

すぐに思い出しました。というか、あれほどの事を忘れる事は出来ません。
以前落第街で出会った風紀委員の名も知らない青い髪の女性…
まさかここで見かけるとは思いませんでした。

少し怖いですが、話しかけるべきでしょうか。
ここでなら落ち着いて話も出来るでしょう。
とはいえ、少し怖いです。立ち止まって考えます。そもそもあちらは私を覚えているでしょうか…

奥空 蒼 > 「やあ」

貴女へ目を向ける事もなく、
さりとてその声は明らかに貴女に向けられたものだった。
青い髪。
一口で言えば、蒼いの。
見間違えようはずもないその青色は、
迷っているうちに声をかけ。

「みーたーなー」
「ってね」

脅かすようで
おどけるような言葉遣い
されどもあの時と比べると
若干大人しい風だ

「ちょっと、今は感傷に浸ってるところでさぁ」
「一つ二つ、話でもどうかな?」

一つ、間を置く。
あの時
私は名乗らなかった
貴女も名乗らなかった



呼びかけはこうだ

奥空 蒼 >  


        「―――不殺を願う優しき弱者さん?」


 

フィスティア > 「…こんにちは」

どうにも私には選択権は無かったようです。
悩んでいた時間は覚悟の為の準備時間だったようです。
視線も向けずに話かけてくるのは…なんだか、とても遠い所の存在という感じがします。
緊張が走ります。

「……是非、お話しましょう」

そういえば名乗っていませんでしたね。
願う…ですか…
的を射た表現です。ぐうの音も出ません。
その評価を覆そうとは思いませんが…最近ついてきていた自信に刺さります。

ゆっくりと覚悟を決めながら歩み寄ります。
足取りが重たいです。あなたと出会った時のあの街を歩く足取りよりも重たいです。

「風紀委員会のフィスティアと申します。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

青い髪の女性の近くまで到達すれば、名乗ります。
先日は名乗り損ねましたから。

奥空 蒼 > 「こんにちは。」
「風紀委員会、ゴミ処理係。奥空蒼(オクソラアオイ)。――蒼で良いよ。フィスティア。」

挨拶も、名乗りも
去れたら返さないと失礼だからね。
横に来たら、いつもとはまた違った、
何となく意地悪そうな雰囲気のない、
優しそうな笑みを向ける事だろう。

「ふー」
「なんだろう、是非、だなんて。」
「いやじゃないんだ?あっはは。」

一息。
どうも。
なんでかこの話を
よりによって
貴方にすることになるとは。
――でも、"どう答えてくれるか"ってのに興味津々でもあった。

「今ね」
「私」
「今さっき――一人、殺したんだ。」

ね?

不殺を願う貴女に振るには、
随分重々しい話。

「いや」
「殺したっていう表現は、語弊がある。」
「正確には"現実に存在しないもの"にしたんだ。」

紫色の絵が描かれた紙束と、
何かの痕を見比べた。

フィスティア > 「分かりました。蒼さん、よろしくお願いします」

ゴミ処理係という事はイーリスさんとは同じ部署の方なのですね。
…それにしても、以前出会った時と比べて穏便な雰囲気です。
場所が場所です、何かあったのでしょうか。

「挽回という訳ではありませんが…言われっぱなしも悔しいですから」

蒼さんが何を思ってああいうのか。それを知る為にも…もっとしっかり話したいのです。
物事には全て理由があります。

なんて、少し悠長に構えていた私がいたのですが

「……そう…なのですか……」

…人を殺した。突然の告白に私はこぶしを握り締めました。
続く言葉も、わたしにとっては意味が変わる物ではありません。
ですが、これは怒りや激情ではありません。
覚悟の為の握りこぶしです。

「どうして…そのような事をしたか…
お聞かせ願えませんか?」

冷静を装って尋ねます。
内心はやはり乱れています。苦しい気持ちでいっぱいです。
それでも、理由はある筈です。ここにいるのも、その理由が関係あるのでしょう。
だから、まずはそれを知りたいのです。

奥空 蒼 > 「あはは、いいね。聞いてくれるんだ?」

どうしてそうしたか。
そういう風に聞いてくれると、心地よかった。

「"どうしてそうしたのか"――これが実は私もそう思ってるんだ。」
「その子はね。」
「――暫く、良くしてくれていた、いわば神って種族の存在なんだ。」

緩やかに、目を閉じる。
うんうんなるほど。――ああいいな。
無関心じゃない、その態度。
そういう風に振る舞ってくれるから話す甲斐もある。

「ただただ"存在していたくなくなった"そうだ。」
「どうしても、苦しみを終わらせたい。だって。」
「……理由は、知らない。ただ、切実だった。」
「神格なんてもっちゃったから、傷ついてしまったのかね?或いは、何かに絶望したのか?単に飽きたのか。それすらわからない。……分からない。」

神なんてもん、気まぐれだからね。
……まったく。

「だけれど、まあ…なんだ」

「神なんてものはね」
「簡単には死ねない。滅ぶ事すら難しい。完全に存在を消し果てるのは、自分でも無理だったんだろうね。」

「だから破壊神(わたし)が終わらせてあげた。」
「存在していること自体が苦しいのなら」

「存在していない事にしてあげるのが、良いだろうから」

なーんていうけど。

「はぁ。」

そんなもん、最悪の中の最悪の選択肢だってのはよくわかってるさ。

フィスティア > 「何も知らずに責めるような事はしません」

そうじゃない場合もありますが、今はそういった事情もありません。
偶然出会った二人です。
それに、話をしたいというのですから、話をするべきでしょう。

「神…ですか?」

神様は…居ないと思っていました。
宗教としては居るのですが、人間の世界には居ない。故郷に居た頃はその考えで合っていました。
ですが、こちらの世界では人と同じ世界に神様がいる。そういった事はそれほど珍しくないと知りました。

そんな調子ですから、神様が何を考えているのかなんてさっぱりなんです。
どれほど生きて、どういう価値観で、何を目的に、どう生活しているのか…さっぱり知りません。
ですから、神様が消滅した、殺した聞いても…いまいち実感が湧きません。

「存在したく…ない…ですか」

要するに、自死の道を選んだのと同義…でしょうか。
他人事かもしれませんが、それは…悲しい事です。
続きがあるようです。

「…本人がそう願ったのであれば…」

終わった話です。責任の所在も、善悪も私が決められる事でもありません。
何より、自死の道を選んだ人間に否定的な言葉をかけるのは…

「それでよかった…のかもしれません」

それは、冒涜でしょう。
だから、否定はしません。
それに、蒼さんも決していい気分ではないでしょうから…

「自死を願うまでの過程は私には分かりません。
神様の考える事は…私には分かりませんから…
人間の私には分からない苦しみがあったのかもしれません」

これでも知ったような事を言ってしまっている気がします。
続けます。

「可能なら…生き続けていてほしかったとは思います。
その神様が居なくなる事で悲しむ人は居る筈です。築いてきた縁も想いもある筈です。
それを…置いて行って欲しくはないなと…思います」

私が死を嫌う理由はそれですから。
置いて行かれた側の苦しさは計り知れません。
死者を責めたくはありませんが、話す機会があるのであれば…伝えたいです。あなたが死んで悲しむ人がいると。

奥空 蒼 > 「ふっ……」
「あっはっはっは!」

笑う。
笑う、蒼いの。

「君は」
「あの子の名も知らないだろう?」
「どんな姿で、何を司っていたかさえ、知らないのに」
「何故そんなことが言える?」
「生き続けていてほしかった――と?」

意地悪な笑顔で、その言葉を詰るように。

「だけど。」
「それは。」
「――同意だよ。」
「置いてかれた側には、残酷だね。」

けれども、詰るだけでは終わらない。

「ああ、もう――あの子の名前はどうやっても"知ることはできない"。」
「そして」
「あの子が成した所業も、"知ることはできない"」

「そこに「何の名前も亡い祭壇」があるだろう?」
「ソレ。」
「ソレが本来あの子が生きていた場所だ。」

す、と視線を向ける。
最初から存在しなかったかのように空白となったソレは、
――最初から存在しなかったわけではない。
確かにあった。だが、もう誰も、知らない。

「あの子の全ては」

「この世界のどこからも亡くなった。」
「私の手で、あの子を現実から夢幻の世界へ叩き込んで、全部壊したんだから。」

それが、…この、紫色の紙束。
現実ではなくなった存在が宿り、「虚構のお話」として存在している――

ああ!
分かりにくいか。
言っちまえば「絵本」なんだよ。コレ。

一息。
そして。

「――いやあ。それでさあ」

「―――年位前まで、凄く良くしてくれてたんだ」
「ところが、お互い少しずつ連絡を取り合わなくなって」
「それで……」
「それで。」
「久しぶりに再会したら、ああだったんだ」

「……もう少し」

「あの時」

「もっと話そうとしていたら」
「もっと仲良くしていたら」
「もっとそばに居ようとしていたら」

「こんな結末にはならなかったのかもしれない」

「こんな気持ちになるって分かってたんなら」

「どうして」

「もっと…強引にでも、仲良くしようと思わなかったのかな、ってね。」

独りよがりな独白さ。
大切な友人、
されど
連絡が途絶えて消えていくなんて、よくある事だろう?

特に…

私らみたいなヤツには、ね。

フィスティア > 「…」

静かに話しを聞きます。
聞けば聞くほど、悲しい話です。

「名前が…無い…」

神様には、名前があります。
ない神様もいるかもしれませんが、何らかの呼称がある筈です。
ですが、その祭壇には何も書かれていません。
まるで、生きた証すら残っていないようです。

「本当の意味で神話になってしまった…のでしょうか」

存在しない神様の存在しないお話。
誰の記憶にも残らない…誰かと過ごした時間も、ただの物語に…
…苦しいお話です。

お話を最後まで聞いて、私はゆっくりと口を開きます。

「…置いて行かれた側の気持ちは…痛い程分かるので。
そして置いて行ってしまった側の後悔も…分かります」

私は、置いて行かれた後に置いて行きました。
思い出も、日常も、平穏も…
置いて行かれて、おいてきました。
だから、分かるのです。
皆が皆同じ気持ちだとは思いません。ですが…

「置いて行かれた側が…自分を責めてしまうのも…置いて行かれてから後悔することも…
苦しく思わない人なんて…居ないでしょう」

蒼さんも、私から見れば苦しそうです。初めて出会った時とはまるで別人…
いえ、むしろ、どんな人も…神様も…置いて行かれる事は辛いという証左なのかもしれません。

「それに…悲しいじゃないですか…」

ゆっくりと、潮が満ちる程の速度で何かが上がってきています。

「置いて行かれて…思い出す事も出来ないだなんて…」

存在した営みが、全て消え去る…それは、どれほどの苦しみなのか。
私は分かりませんが。
それでも

「存在した証すら残さないだなんて…どうして…」

苦しいです。その神様が消えた事で、どれほどの想いが失われたのか…
私は、苦しいです。辛いです。悲しいです…

奥空 蒼 > 「そう、そうだ。」
「あの子が生きて来たって証は」
「ぜーんぶ、私が壊した。」
「どうしてだと思う?」

存在した証すら残さない。
何故か。
それは

「神ってのは人の想いや記憶、崇拝を喰って生きているからね」
「あの子は一切、誰からの想いも受け取れないようにした」

「名前も」
「存在も」
「記憶も」

「何もかも」

「現実には"存在しなかったもの"になった。」

「――そこには本当は、あの子の名前が書かれてたんだ。」
「って、言わなくても分かるよね。」

神としてあった。
全てを。
この手で消し果てた。

「ところがどっこい、」
「全部消したはいいけど――」
「私だけ、覚えちゃってるんだよなぁ。」

「そしてこれが。」

紙束に描かれた、
今は亡きあの子の姿を、
チラつかせる。

「――この世界で唯一の、あの子が存在している場所。」
「虚構のお話になっちゃったんだよ。」

「中途半端に思い出せる断片が残ってる方が、悲しいかもしれない。」

いっそ全部消えちゃったら良いんだけど。
どうしても、私は忘れてあげられなさそうだ。

「あの子に大切にしてもらっていた」

「一緒に遊んだ」
「人に言えない秘密を共有した」
「つまんない事で喧嘩した」
「気まずそうに仲直りしようとした…再開の時はお互いイメチェンしたりしてて。」
「――そんな記憶が、少しだけ。」

蒼いのと、紫色の2人が、
穏やかに過ごした日が、

紙束の
僅かなスペースに記されていた。

「せめて」
「この物語の中では」

奥空 蒼 >  


        「苦しくない日々を過ごしていると、良いなぁって――」


 

フィスティア > 「神様にも生きる糧は必要なのですね」

食事や睡眠のようなもの。それが想いや記憶、崇拝…信仰なのでしょう。
それがある限り死ねないのでしょうか。だから、断つために…

「その束がその神様のお話…なのですね」

もしそうだとすれば…随分と……
紙束、と言っても…その程度の量に収まる様な物語ではない筈です。
長い時間を生きて、様々な時代を見てきて…様々な人と交流して…
それが…こんな紙束に…

「蒼さんが楽しかったのでしたら…きっと…その神様も同じ気持ちですよ」

そう思っていた方が…救われます。

「蒼さんが苦しいのなら…残った記憶も…」

消してしまうのも一つの手かもしれません。
私はそういおうとしました。ですが、やめておきます。

「いえ…なんでもありません」

一度終わらせた命を…もう一度終わらせるようになんて、言えません。

「そのお話は…どうするのですか?」

話を聞く限りでは、誰に目にもつかない場所に大切に保管されるのでしょうか。
それとも、完全に終わらせてしまうのでしょうか…

奥空 蒼 > 「――ああ、そうだね。」
「正確に言えば、これは。」
「私がこの子を認識できる部分のお話に過ぎない」
「もっと言えば、その中でも特に重要だと思った部分に過ぎない」

貴女の想像通り、
これに全部が収まってるわけじゃない。
これは、ちょっとした物語。
あの子と私が覚えてられる、僅かなひと時をつづってこの世に残したもの。

「実のところ…」
「これをどうするかは、決めかねてるんだ」
「いやあ、しかしまあ」

「あんなに胡散臭くて余裕たっぷりだった奴が」
「こんなに紙屑なっちゃうなんてな」

記憶ごと、この物語も消してしまう。
きっとそれだって選択肢の一つだろう。
分かっている。
分かったうえでそうしていない
遍く全てを破壊する者の、使命だからね。

「楽しかっただろうって?……そうだといいね。」

だったら。
なんで。
私を置いて逝ったんだか。

とても、そうは言えなかった。

「キミはあの子じゃないだろうに。もう名前もない、あの子とは。」
「あはは。」

「聞いてくれてありがとう」

穏やかに目を向けて。

「改めて名乗るね。」

聞いてくれたお礼に、ね。

「奥空蒼――万物を破壊する邪悪な神様。それが私。」

破壊神を名乗るにしては。
随分とセンチメンタルでサイレントな雰囲気だろうけれど。
それでも纏う雰囲気は厳かに。
それでいて悪戯っぽく。

フィスティア > 「そう…ですね」

1人の人間の人生を表すにしてもその紙束では足りないでしょう。
更に長い時を生きたであろう神様ならば…猶更。
ですが、紙屑なんて…言わないでほしいと。他人事の筈なのに、そう思ってしまいます。

「出来ることなら…本当に少しだけでも…楽しかった思い出だけでも…生かしてあげて欲しい…です」

生きた証が消えるのは恐ろしい事に思えて仕方がないのです。
ですが、その負担は全て…蒼さんに覆いかぶさるでしょうから。
きめるのは、蒼さんです。

「破壊の神様…そんな気はしていましたが、蒼さんも神様なのですね」

神様を消せるのは神様しかいないでしょう、なんてただの先入観でしたが。
神様なのであれば、初対面の時のあれだけの所業も納得です。

「お話を聞いた限り…邪悪だなんて…思いませんでしたよ」

どこか人間味すら感じたほどです。神様には失礼かもしれません。

「これは…余計なお世話かもしれませんが」
「蒼さんは…自死の道を選ぶだなんて…しないでくださいね」
「苦しい時は私が聞きます。ですから、蒼さんとの想いを…親しい人を置いて行くなんて…しないでくださいね」

神様の苦しみは、私が背負うには荷が重いかもしれません。
ですが、私がここで話を聞いたことを少しでも快く思ってくださったのであれば…
また…いつでも…
誰かの苦しみを無くせるのなら…

奥空 蒼 > 「あっはっはっは!」
「面白いねぇ、キミは。」
「この私が――破壊を統べる私が自死なんかを選ぶわけがないでしょうが」

笑って、その言葉を聞く。

「破壊の邪神は、いつだって――見送って"壊す側"だ。」
「万物流転って言葉が流転せずに永劫に残っているように」
「私はこの世界の破壊というソレ、そのものなのだから」

破壊ってのがなくなることは、永劫あり得ない。

「まあでも、なんだ」
「たまーにこうして、壊したものを見てセンチメンタルになる時はあるからさ。」
「話くらいはするかも」
「でも――キミの想い通りにはできないね。」
「殺さないでほしい、生かしてほしい、壊さないでほしい――破壊神の真逆だ。」

その上で。
だからこそ。
話せることも、あるのかもしれない。

「しっかし、甘いねえ」

「私が"邪悪ではない"だなんて――」

「今までの話が全部ウソで」
「一方的に虐殺して笑ってたかもしれないのにな!」

ちょっとだけ、露悪的に振る舞う。

フィスティア > 「そういうもの、なのでしょうか」

何かを終わらせる概念が終わってしまったら、破綻する。
確かにその通りです。
ですがそれは、蒼さんは終わることをを選べないという事でもあるのではないでしょうか。
勿論、終わって欲しくはありません。生きていてほしいです。
ですが…それは、とても残酷にも思えます。
神様とは、そういうものなのでしょうか。

「そうでしょうね。
破壊の概念が蒼さんという事でしょうから…
その役割を私の一存で奪う事は出来ません」

終わりを求める不滅の存在を終わらせる役割だって…担っているのです。
それを無くせだなんて、私には言えません。

「私の目には蒼さんは嘘をついているようには見えませんから。
私は蒼さんを信じます。あんな…悲しそうに嘘を吐くとは思いません」

私の目は節穴かもしれないですが、それでも…
信じたいのです。

「それに、蒼さんは露悪的にふるまっていますが…
何でもかんでも殺したり、壊したりはしていないのではないですか?
あの時も、牢屋に送っただけで…結局何も壊しても殺してもいない筈です。
それに…特別な人とはいえ、終わらせたことをこうして…悲しんでいるじゃないですか」

破壊神としての振る舞いなのかもしれません。それを指摘するのはルール違反かもしれません。
それでも、私は奥空蒼さんという神格…いえ、人格をそう思っていると、伝えます。

「私が知っていることだけではあります。
それでも、蒼さんはご自身で仰る程邪悪でも破壊の化身という訳でもないように…私は感じました」

死を含む破壊は…恐ろしいものです。恐れるものです。
ですが、蒼さんはそうではないように、思うのです。

奥空 蒼 > 「――何でもかんでも壊していたら、壊せるものがなくなっちゃうだろ?」
「だから、ちゃーんと分別する」

「終わりを求めるものに、望まれるものに、終わりを」
「そうしてれば」

世界が少し綺麗になるかなって」

破壊ってのは、そういうもんだ。
大それた力を持っているようで、
結局やっていることはといえば、
漠然と、ただ少しだけ
世界を綺麗にするってだけ。

「言葉を換えれば、必要ってやつかね」
「全てが永劫に終わらない、壊れないのなら」
「そこに新たなモノが生まれることはない」
「破壊と創造は表裏一体」

「けれどほら」

「誰だって破壊される事、望まないじゃん?」

当たり前すぎる問いを、投げる。
ああ、今日のあの子は、例外だけど。

「だから結局、私は悪で良いのさ。」

「最初にキミに脅しをかけたように――憎まれ役の方が慣れてんのよ。」
「恐怖と力によって、恐れられて悪と見られるのが、破壊神(わたし)だから。」

あの時の行為の意図を告げる。
良い感じに憎まれながら、恐れられながら、それでも警告は成した。
必要悪、として。

「ほら」

「よくある英雄譚でも。」
「勇者たちが魔王を倒し、それで最後に立ちはだかる絶対悪――」
「そういうものとして描かれてるよね――」

「ふふ――」

「君が見ている私には、それとは違うように見えるのかもしれないな…」

あれも。

私なんだけどな。いくつかは。