2024/07/22 のログ
ご案内:「落第街裏通り」に九耀 湧梧さんが現れました。
ご案内:「落第街裏通り」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
■九耀 湧梧 > 落第街の裏通り。
大通り以上の怪しさと危険さが漂う通りの一つ。
その一角で、多数の呻き声が響いている。
地面に散らばるのは、明らかに堅気とは思えない雰囲気や服装の無法者達。
ただ一人立っているのは、黒いコートに赤いマフラーを靡かせる男。
男の手には、鞘に収まった一振りの刀が握られている。
花を思わせる丁寧な透かし彫りの入った金の鍔に黒の柄巻、柄巻の間から赤色の柄が見える。
その刀身は、まるで血を吸ったように真っ赤であったが、今は桜が描かれた鞘に収められて刃を隠している。
「……全く、これまた危なっかしいものを。」
ため息を吐きながら、鞘を握ったまま軽く今回の「回収物」を回転させる。
手にした者の膂力をブーストするが、同時に理性を飛ばして人を斬る事に何の躊躇いも持たなくさせる妖刀。
それが、今は地面に転がっている無法者達のリーダーから奪い取った刀であった。
「とっとと仕舞って、お暇した方がいいな。」
ぼやきながら、男はコートの内側を探り、古びた和綴じの本を取り出す――。
■紫陽花 剱菊 >
黄昏の刻。兵共がしどけなく野垂れ咲く幽世の影。
金鍔、咲かぶく手中は狩人の手中に有り。
既に血潮も土への還りて静寂がさざめく。
故に、影は綻び、まろび出る。静寂を中を音無く歩く、男の歩。
波残りが如く、気配のみ背より現れし。狩人を気づかせるには充分なもの。
「……勝手乍、お手並み拝見させて頂いた。
見事な手際、感服致した。戦慣れしておられる。」
静寂よりて現れては、起伏無き声がそう告げる。
虚双眸はしかと見据える。幽世の影、現世を監視する目が一つ故に。
艶黒の髪を持つ男、剱菊は二本指を立て一礼。
斯様、居住まいは凛然とし、侘びしき風体は場違い也。
然れど、幾度の経験を得ていれば理解し得よう。
天道の匂いに隠しきれぬ、噎せ返るほどの血の匂い。
「卒爾乍、音に聞く剣の狩人は其方と見受けた。相違無いな?」
静かに、言問う。
■九耀 湧梧 > 気配がすれば、黒コートの男はゆらりと振り返る。
手にした妖刀と和綴じの本に気を払いつつも、現れた新手にも油断を見せない。
服装こそ今様だが――
「…随分とまた、時代がかった口調だな。
覗き見は悪趣味だぜ……という程、大したものでもないか。」
黒コートの男の瞳――流れて固まった血のような赤黒い瞳が、新手の男を素早く精査する。
――率直に見て取って、「出来る相手」だ。
今までの「回収相手」だったチンピラや無法者とは、「モノ」が違う。
「…何だ、もう噂になっていたのか。
もう少しくらいは広まるのが遅れて、横着が出来れば良かったんだがな。」
ふぅ、とため息。
同時に、片手で器用に和綴じの本を開き、白紙の頁に手にした妖刀をぐ、と突き入れる。
「噂になったのは不本意だが、如何にもその通りだ。
怪我はさせたが、今まで相手にした連中は殺しはしなかったんだがね。」
その言葉と共に、突き入れた刀がまるで泉に沈むように本の中へと吸い込まれていく。
柄の先まで本の中に吸い込まれると、白紙の頁には今しがた吸い込まれた刀が墨絵となって浮かび上がる。
「それで、兄さんはその狩人に何の用かね?
こっちとしちゃ穏当に済ませて貰いたい所なんだがね。
――あんたからは、随分と血の匂いがする。」
その言葉と共に、ぱた、と和綴じの本が閉じられる。
■紫陽花 剱菊 >
冴ゆる夏風が互いの髪を撫でる。
しとどと肌に濡れ込み露気の空気。
どんよりと漂う剣呑の空気。然れど凛、と表情一つ変える事は無い。
「……異邦の地より罷り越した次第。
斯様、此の喋りは中々抜けぬ故、許されよ。」
此方においては、物珍しいと良くぞ言われる。
やも知れず、言語とは似ていようとも一つ覚えば思い通りにはゆかぬもの。
「公安委員会とも成れば、必定。
此の目は天道、此の身は影、此の耳は空。
人の口に戸は立たぬ……故に音も鳴り止まぬ……。」
「故に、必定也。」
学園切っての隠密機動。
壁に耳あり、障子に目あり。
如何様にも無く、何処にも無く、委曲を尽くす成ればこそ。
其処に身を置き、自ら死地へ赴くので在れば、耳朶に染みるは全て必然。
狩人の手の、桜が紙に還る。
武具を狩り、如何様に持ち運ぶか合点も行った。
紙の数だけ武具を収めんとすれば、確かな腕前。
肌身を撫でる戦の香りは本物か。些か、眉間の皺が深まった。
「戦人故、必然。」
其れ以上の答えは無い。
瞬きもなく、虚は狩人を見据えたまま。
「……公安委員会が一人、紫陽花剱菊。
其方の活躍を音に聞き、目にし、此の幽世の影に罷り越した。
同じく、彼方より迷いし身成れば、其方の身を案じている。」
起伏無く、故に表裏も無き言の葉。
隠密機動、公安委員会は特性上名を明かさないものもいる。
然れど、剱菊は名を明かすことに意味がある。
「其方の狩りの真意を聞きに参った。
……私も出来れば刃を交えたくなど無い。が……。」
わずかに静寂を揺らす淀み。刹那の殺気。
「事次第では、斬らねばならぬ。」
故に、嘘偽り無き返答を求む。
■九耀 湧梧 > 「――公安委員会。
成程、要は「公の取締り」、って奴か。しかし、一人で動いてるって事は……凡そ、単身行動主体の
ワンマンアーミー、って所か。」
凡その見当を付けながら、とうとうそちら方面が動いてきたか、と、小さく息を吐く。
理由は兎も角、やっている事は強盗紛いだ。
公権力の類が手を伸ばしてくる事は必ずあると確信していたが、それでも思ったよりは早かった。
「…ふむ、その言葉からするに、兄さんも「他所の世界」からこっちに来たクチか。
――そんなに分かり易いかね。」
少しだけ憮然とした表情で己のなりを確認する。
…確かに、現代社会では少々浮いている感は否めないかもしれないが。
「…ご丁寧な名乗り、痛み入る。
済まんが、そちらの反応次第でこちらの名乗りはちと待ってもらいたい。」
そして、話題は核心に移る。
即ち、己の行動の真意。
「真意、ね。簡単な事さ。至極簡単な事。
魔剣妖刀神剣聖剣…いずれにしろ、「手を出した」だけで、力を持ち主に齎すものだ。
それが例え、持つべきでない不相応な輩であってもだ。
そういった連中が手に余る力を持てばどうなる?
簡単だ、碌でもない奴に渡った力は碌でもない事に使われる。
だから、それを承知していない馬鹿者や未熟者から、危険な玩具は取り上げなきゃならない。
まぁ、それが主な理由さ。」
ご理解頂けたか、と軽く肩を竦める。
動作はおどけていたが、赤黒い瞳の光は、切れ味鋭い真剣さながらの光を放っている。
とはいえ、「主な理由」という事は「それ以外」の理由もあることになるが。
■紫陽花 剱菊 >
「……私達のような客人は珍しくも無いそうだ。」
異邦と繋がり、すずろに流れて幾星霜。
斯様、学園に身を置くものを入れば影に身を落とすものもいる。
流離うには、此の幽世は狭すぎる。かつて、流れ着いた己と重ねているのだ。
「……成る程……。」
行住坐臥を戰場と置く武人。
手合、武具の恐ろしさは身に沁みている。
時に其れが人智を超えた神秘を身に纏いし時、不相応な使い手には天罰が下る。
遣る方と無く、幾度と見てきた。如何に持ち得しが故に、痛い程。
自らが背負う此の一つの竹刀袋。紫陽花を一瞥しては憂鬱そうに首を振った。
「其方の真意は理解した。
神秘を持つ武具成らずとも、分不相応成れば持つべきでは無い。」
「が……。」
一入、射抜くように鋭きは根の国の虚。
「……斯様、其の身一つで行うには過ぎた行為だ。
如何に言の葉を飾り立てようと、暴力に他ならぬ。」
「其方の行いを看過する事は、私個人としても看過出来ぬ。
無頼者もそうだが、何れ泰平の生徒に及ばぬとも限らん。」
其の手に渡った都合等、聞きし及べば関係無い、と。
相応しき者。其れを示さねば縁も断ち切る縁の狩人。
不遜、理不尽、看過は出来ぬ。ゆるりと黄昏に暗雲が立ち込める。
「……何より、斯様に集めて、なんとする?」
さやか、危険性を理解せねば行わぬ行為。
狩人の沙汰、真意の底が未だ測れぬ。
真剣の眼差し。首元に届こうが剱菊は表情一つ変えぬまま。
「……何れにせよ、其方を野放しには出来ぬ。
其方の立場もまた、客人で在れど今は無法者。」
「故に、"入学"を勧める。真意はかくも、行いは理解しよう。
其の武勇。無法のままで終わらすものでは無かろうに。」
示せる道は唯一つ。
武勇等と言葉、剱菊から擦れば暴力の隠れ蓑。
いわんや、無法を働くには幽世一つ、社会にかかずらう場にて。
故に言問う。否、問わざるを得ず。返答次第では─────。
■九耀 湧梧 > 「――そりゃまた、この世界も随分と懐が広い事で。」
軽く一息。
この分では、この街の住人のどれだけが他所の世界から来た連中やら、と軽く頭を掻く。
己の行いを咎められれば、また軽く頭を掻き、
「ま、そりゃそうだわな。
どれだけ言葉を連ねようが、俺のやってる事は所詮個人事業に過ぎない。
公権力に則ったものでもないし、場合によっちゃそっち側にも手を出しかねない。
ま、そんな事が起こって欲しくはないと願ってはいるがね。」
あっけらかんと己の非についても認めてしまう。
集めてどうするのかとの問いにも至極普通に、世間話のように答える。
「そりゃお前さん、危ない玩具の行き付く先は一つしかないだろ。
捨てるのさ、誰の手も届かない場所にな。
…最も、こいつを残した先達様方も捨て場には随分と苦慮してたらしいが。
結局捨て場が見つからずに、本拠地の道場跡に厳重に封印してた位だからな。」
困ったもんだ、と、パタパタと軽く本を振る。
和綴じの本が揺れ、「捜刃録」という達者な筆文字の表題が見える。
そして、刀袋を携えた青年の提案には、これまた軽く頭を掻く。
「あー、入学ね――確か、ぶっ飛ばしたならず者連中が「常世学園」とかいうのを口にしてたな。
つまり俺も其処に入って、公の立場を得ろ、と?」
三十路を過ぎた男が学生か、と思わず苦笑しながら顎髭を空いている手でさする。
少しの間そうしてから、
「――有難い申し出ではある。実際、公の立場というか、身分証明は俺も欲しいは欲しいもんだ。」
■九耀 湧梧 > 「が、」
直後。本をコートの裏にしまい込むと、同時にコートの裏側――否、裏地から、一振りの刀を取り出す。
鞘に収まったその刀の刃渡り、恐らく三尺。
慣れた得物を手にしながら、姿勢は抜刀術の構え。
「今はまだその庇護に与る訳にはいかない。
こっちにも都合って奴があってな。
無法無頼の身でなけりゃ、都合って奴がつかない「一身上の理由」ってモノがある。」
赤黒い瞳が細くなる。
黒コートの男の身体から、ゆらりと剣気が立ち上る。
「――その血臭は見掛け倒しじゃあなかろう。
これ以上の理由を聞きたけりゃ――その技で訊ねて来な。」
同時に、弛緩した雰囲気が消し飛ぶ。
――殺気こそないが、今はこれ以上言葉で何かを聞き出す事は不可能か。
■紫陽花 剱菊 >
「────────…左様、か。」
想定内では在る。
事情を識らずとも、此の島の中核を成す以上遅かれ早かれ学園に行き着く。
識らぬ存ぜんぬは済まされぬ。組みいるか、影に身を落とすか。
如何にしても、其の業を背負うなら否とは必然。
決意を以てすれば、目に見えた返答であった。
故に、剱菊の表情は沈んだ。哀愁、失念。
幾度の血の匂いを漂わせ乍も、男の本質は争いを好まない。
泰平の世を望み、静寂を好む、草花を望むような男である。
抜かねばならぬと思えばこそ、明け暮れぬ悲しみが身に沁みた。
「……捨てる、か。"滅せぬ"と言わぬ辺り、意図が読めぬ。」
危険とわかっていれば、拾われかねない行為等意味は無し。
武具とは、折れるまで武具であり、回天の運命がすずろに流れる。
戦人故に、其の本質はよくぞ知っている。
捨てた程度では、さもありなん。何れまた、巡り巡って誰かが握るであろう。
さて、問答は此処まで。武を示せと狩人は問うた。
抜く気配もなく、数刻。剱菊の表情は、苦笑。
「無作法故、未だ成れぬ。許されよ。」
謝罪。其れが最後の言葉。
■紫陽花 剱菊 >
いとど、ひっそり閑と風が吹く。
■紫陽花 剱菊 >
其の目に如何として見えたであろうか。
土塊一つ舞い上がらず、幽鬼の如く目前。
ほんの一足で、間合いへと入ってみせた。抜刀術の構えと知りながら、何食わぬ顔で刃の懐。
───────此処は其方の間合いであろう?
目前で、視線が語るは挑発であった。
■九耀 湧梧 > 「下手に壊したらヤバい代物が、
俺が見つける前に既に封じられていた、と言えばご理解頂けるかね。
下手すりゃ島か国一つ吹っ飛ぶような余波を出しかねない代物を簡単に壊す訳にはいかないのさ。」
本を何らかの手立てで破壊するのは不可能ではない。
だが、そのためにどれだけの被害が出るかが分かったものではない。
先達が頑張ってくれたせいで、最早中身ごと本を破壊するという手立ては被害の先行きが見えず、危険過ぎた。
故に、それこそ宇宙の彼方にでも捨て去るしかないのだと。
■九耀 湧梧 > そして、刃圏に入られれば、小さく不敵な笑みを見せ、
「先ずはこれ位、捌いて見せてくれよ。」
ほんの一歩、退く。
逃げ? 否。
退く瞬間にかちり、と鯉口を切る音が響き、
瞬間、奔るは幾多の斬撃!
まるで十数本の刃が連続で振るわれたような軌跡が、踏み込んだ青年に襲い掛かる!
――もし、流し損ねて体に受ける一撃があったとしても、
身体を斬られる感触代わりに、襲ってくるのは強烈な打撃の感触。
敢えて形容するなら、斬り殺す気で放った「峰打ち」という、矛盾した斬撃。
■紫陽花 剱菊 >
剣気、空を斬り裂く数多の斬撃。
殺意に非ず、信用に寄りて放たれた矛盾の矛先。
居合抜刀。一本だけで遍く剣先は見事、達人芸と言えよう。
幾度の斬撃は剱菊の目前、肉体に触れること叶わず、寸前で金切り声。
夕闇を僅かに瞬かされる橙の火花。何時の間にか其の手に握られた銀刃が斬撃を弾いたのだ。
快刀乱魔。唯刃を作り上げる異能也。
「───────。」
虚の瞳は瞳孔と共に見開かれた。
先程までの静寂に佇む男は其処にはおらず。
猛禽の如く敵を見定め、全身に気迫滾らせる武人也。
銀刃の打刀がさざめく。すずろの如し、狩人の斬撃を滑る、弾く。
斯様、其れだけに終わらず。
一方で片手、銀の小刀が握られていた。
幽世の影にて火花咲かせる一方、斬撃の応酬、其の合間に繰り出される小刀の突き。
戦の流れ。一切の隙間、残心させ許さない。弾いては額を、胴を、首を。
ゆらりと陽炎の如し揺らめく不規則な突きを放つのだ。外れては次へ、次へ。
応酬が続く限り其の隙間縫う突きは終わらぬ。刃が弾けるか、命を奪うか、応酬が終わるか。或いは……。
派手さは無い。唯素早く、唯確実に、奪命を狙った殺しの御業也
■九耀 湧梧 > 「は――――っ!!」
放った斬撃は、対手を捉える事なく総てが受け止められた。
いつの間にか対手の手に握られていた銀色の刃。
隠し武器、という訳でもあるまい。
恐らくは何某かの術か能力で呼び寄せたか、作りだした代物か。
更に、もう片手に握られている銀の小刀が己の急所を狙いに来る。
確実に、殺す気で放ってくる、殺意の一刺し。
「いい――殺意だ…!」
その言葉と同時に、居合の構えから片手持ちに切り替え、更なる剣閃を放つ。十本で足りねば、二十本。
単純ながら暴論とさえいえる結論!
その間に己の急所を狙い来る銀の小刀には――
(…まさか、此処まで使わせるか!)
少しの驚愕と、大きな歓喜を以て、刀を持たぬ左手で迎え撃つ。
素手? 否。その手には、どこか禍々しい赤紫の光で作られた西洋風の剣。
魔力で作られる幻の如き、しかし斬るも衝くも可能な剣。故に名を幻魔剣。
普段は飛び道具代わりに小剣サイズを作る程度だが、今握られているものは刀を相手に
出来る程に魔力密度を高めた代物。
その実態持つ幻の剣で以て必殺の一撃を迎え撃ちつつ、剣閃を放ち続ける!