2024/11/03 のログ
ご案内:「落第街 ー辺境の一角―」に霞流 周さんが現れました。
霞流 周 > 今日も今日とて、特に目的も何も無く島のあちこちをフラフラと気儘に徘徊する日々。
気が付けば、落第街と異邦人街の境――それも、東側の海に近い一鶴まで辿り着いていた。

「……この辺りは……んー……気配が独特…かな…。」

途切れ途切れの、ぽつぽつとした独特の独り言を呟きながら周囲を見渡す。
この辺りは建造物も少なく、人の気配なども殆ど無い…代わりに別の気配をあちこちから感じる。

(話に聞いてる…転移荒野…だっけ…?…あっちと似たような感じ…なのかな…?)

右手に何の変哲も無い数打ち物の刀を携えながら、何か興味を惹くものでもないかとノンビリ歩く。
一見すると無防備で危機意識の欠片も無い歩みと態度だが、少女にとってはこれが何時もの自然体。

霞流 周 > ふと、何時の間にか周囲を疎らではあるが黒い蝶が飛び回っている事に気付いた。
そちらに、目に覇気や光の無い銀の双眸を何気なく向けて…ほんの僅か、訝し気に細める。

「…黒い…蝶……さっきまで…何も居なかった…気が…。」

何処かに群れでも居るのだろうか?何処か普通の蝶とは違うモノを朧げに感じ取るが、それが何か分からない。
よく観察してみれば、それは普通の蝶と違い黒い光のようなものを纏っているのだと気付いた。

「……やっぱり…ただの蝶ではない…みたいだね…。」

試しに触れようと近くを飛び回る黒い蝶に手を伸ばす。
問題なく微かに指先が触れた事からして、幻や霊魂、精霊の類とは違うように思える。

…つまり、”これ”自体に害意や悪意、敵意などは無い。少女の無意識の行動が反映されない事からも明らかだ。

霞流 周 > 背後から気配…少女の全てが凪いだ
霞流 周 > ――刹那、少女の左手がブレて抜刀と同時に背後の気配を一片の躊躇もなく斬り払う。

致命傷(手応え)には遠い。身のこなしが尋常では無いようだ。
少女は既に刀を鞘に納めており、自然体のまま左手は刀の柄に添えたままその場から動かない。

(…人や獣を斬った手応えじゃない…実体の無い存在を斬った感触に近い…けど…。)

霞流 周 > 「―――と、なると……怪異…悪霊…その類…かな…。」

気が付けば、周囲を無数の黒い蝶――【黒死蝶】と呼ばれる不吉の象徴が舞い飛んでいた。
視界が悪い――それ以外に特に害は無い。害があるのはこの蝶では無く――

「―――」

再び抜刀。誇張無しに神速に至るソレは剣筋どころか、刹那の閃光の如く。
その瞬間、少女に感情や思考は全く無い…『無念無想』…否、それとは別の境地。
何処までも己を殺し、透明のままに斬り捨てる…『無私透徹』の刃だ。

その刃で以ても捉えきれない…秒間、10を軽く超える斬閃が全方位に迸るが…掠めはすれど当たらない。
そもそも”敵”の姿がハッキリ捉えられない…怪異と仮定して、下級個体ではあるまい。

ぴたり、と少女の動きが不意に止まった…その瞬間、全方位から飛んでくる鋭い嵐の如き連撃。
その場から一歩も動かないまま、動きが止まった時に既に息を整え溜めていた膂力を解放。

全方位からの高速連撃を、片っ端から全てただの刀による斬閃にて迎撃していく。

霞流 周 > 全方位から襲い来る嵐は中々止まない。少女もほぼ全てきっちり捌いているが、このままでは先に力尽きる。

瞬間、少女の斬閃が地面を”叩き割り”、爆砕した土塊と衝撃波で周囲を舞う黒い蝶ごと”敵”を吹き飛ばす。

「……中々…面倒そうだね…。」

ただの散策に来ただけなのに、こんな怪異と遭遇するとは運が悪い。
少女は周囲の気配を探りながら、ちょっとした爆心地と化した中心部で佇みながら小さく一息。
既に刀は鞘に納めており、左手は柄に添えたまま周囲を一瞥する…矢張り姿は見えない。
…不可視の能力…あるいは風景に擬態するカメレオンじみた力でもあるのか。
姿が捉え切れない相手を斬る事は出来なくはないが、相応に集中も必要となる。

(…長期戦は…私に不利にしかならない…か…。)

今の一撃が予想外だったのか、”敵”もどうやらある程度の距離を取っているようだ。
そこは気配で何となく感じ取れるが、位置が大まかに分かる程度でハッキリとしない。

霞流 周 > ふと、少女が右手の親指で刀の鯉口を切った…かと思えば直ぐに戻す。
再び鯉口を切り、戻し、切り、戻す…単純な反復動作を繰り返し行う。
特定の動作を繰り返す事により、魔力を束ねて蓄積する《蓄積収斂》という魔術技法。
これにより、少女の抜刀の切れ味は上昇するが…致命的な問題が一つ。

(…この刀はただの数打ちだから…やり過ぎると…粉々に砕けて…詰むんだよね…。)

蓄積に上限は無いが、それに耐えきれる武器でなければ真価を発揮できないのが最大の欠点。
この数打ちでは、耐え切れる上限は低く仮に破砕しなくても刃毀れが酷く使い物にならなくなる事も。
経験則により、5回程度で蓄積収斂を止める…これ以上は刀身が持たない。

「……上位の…怪異さんだと…思うけど…私も…死にたくはないので…。」

だから、ここで斬り捨てる。上位の怪異と推定される存在とタイマン、なんてやりたくもないけれど。
四の五の言える状況でもないし、逃げを打つにしても相手の動きを暫く止める必要がある。

霞流 周 > 「…そもそも…まだ授業の課題…全部終わってないから…帰ったら…やらないといけないし…ね…。」

なんて、マイペースに呟きながらふぅぅ…と、息をゆっくりと吐き出して。
”敵”の位置と距離は大まかにしか分からない。分からないなら…。

「…じゃあ…ただの人間で恐縮ですけど…一手…お相手願います…ね…。」

思考が消える、感情が消える…機械的に無私透徹の少女が動く。
左手がブレて、抜刀――同時に身を翻し旋回。周く全てを断ち切らん、と刹那の一閃。

全方位――空中に至るまで、斬閃の波が一切合切を断ち切り割り砕く。
蓄積収斂をしたからこその、広範囲無差別斬滅攻撃…今度こそ手応えは”あった”…が。

「……けふっ…」

吐血。反撃を何時の間にか貰ったらしく、袈裟懸けにバッサリと胴体を裂かれていた。
だが、予めこれを”見越して”いたので魔力を解放。魔術【万能治癒】により、深部から治癒を施していく。

「…流石に…厳しいね…はぁ…。」

傷口から淡い光を発しながら、治癒魔術を維持したまま再び抜刀の構えを緩やかに取る。
茫洋とした銀の双眸の視線の先――月色の体毛をした六本の尾を携えた巨大な体躯の狐がこちらを睨んでいる。

(…やっと姿を…見せたかぁ…尾が6本…今の手応えからして…。)

見れば、六尾の狐の周囲に根元から断ち切られた3本の尾が見える。それは徐々に粒子のように消えていく。

「……つまり、九尾の狐さん…か…私でも大まかに分かるよ…単独で相手にするモノじゃない…。」

ただの二級学生には荷が重すぎる相手ではある。尾を3本も斬り落とせたのは僥倖に過ぎない。

霞流 周 > 月色の六尾と、霞の如き少女が暫し睨み合う――次で決まるか。…しかし。

「……あれ…?」

不思議そうに少女が呟いた。こちらを睨みつけていた狐は、そのままジリジリと後退し――身を翻す。
一瞬でその姿は掻き消えて…後には遠ざかっていく気配のみが残された。

(……退いてくれた…?…あるいは見逃されたのかな…どっちにしろ…。)

助かった…と、大きく息を吐き出しながら構えを解いた。治癒の術式は未だ継続中。
流石に、思い切りカウンターを喰らってかなりバッサリ斬られたので治りきるには時間が掛かる。

「…病院に行くべきかな……二級学生だと肩身が狭い…けど…。」

周囲を見渡すが、あれほど大量に居た黒い蝶――【黒死蝶】も、今は微かに遠目に疎らに飛んでいる程度。
…また、別の怪異やら何かに襲われてもきついので、ここらで大人しく帰るべきだろう。

「…けど、これは…風紀委員か…祭祀局に…報告…した方がいいのかな…。」

かなり辺鄙な場所とはいえ、九尾――今は六尾だが――の狐となると中々に大物だろう。
…改めて、尻尾だけとはいえよくも単独で3本とはいえ尾を斬れたものだ。

霞流 周 > 歩けるくらいには回復しているが、出来る限り自前で治しておきたいので治癒魔術は継続しつつ。

「…中々…刺激的な…散策になったなぁ…。」

事が終われば、いや事の最中も何処か緊張感が無いままではあったか。
マイペースな呟きを漏らしながら、刀を携えた茫洋とした少女はふらり、とこの場を立ち去る。

ご案内:「落第街 ー辺境の一角―」から霞流 周さんが去りました。