2024/12/05 のログ
ご案内:「落第街大通り」にオルニスさんが現れました。
ご案内:「落第街大通り」に雪景勇成さんが現れました。
オルニス > とある日の落第街、陽の落ちきった宵闇の時間。
黒い外套を身に纏った小さな背丈が蒼い髪をゆらゆらとたなびかせながら歩いている。
くるりくるりと回っては、あっちへふらふらこっちへふらふら。
大通りの店を見てみたり、人の喧騒を眺めてみたり。
まるで都会にやってきたおのぼりさんのような出で立ちで。
それはそれは落第街に暮らすものからしてみれば目立つことこの上ないだろう。
それも整った容姿と来れば余計に。

「たしかにあんまり治安は良さそうには見えないねぇ~……
 かといって秩序がないわけでもないってのはちょっと面白いな。
 ここにはここのルールがるって感じかなぁ。
 ま、それはどこでも同じことかなぁ。」

そんな独り言をつぶやきながら。
物見遊山をするように、暗がりを歩んでゆく。

雪景勇成 > 今夜は非番…いや、今夜”も”非番だ。この青年が連休になるのも実は珍しい。
…とはいえ、学生区でノンビリするのもいまいちな気分だし、自宅の或る歓楽街も少し飽きた。
自然と、足が向いたのは自身が生まれ育った地でもある落第街。メインとなる大通りを今日もブラつく。

「…地獄の門にでも一杯――は、同僚が来てて遭遇したら面倒だしな…。屋台群は…この前行ったからいいか。」

そうなると、自然と周囲をぼんやり物色しながら歩く感じになる。
――と、一瞬、色鮮やかな見覚えのある色彩が見えたような気がした。
「あ?」という感じでそちらに赤い双眸を向けて。数秒、目を細めて眺めていたが。

「あの鳥の羽っぽい外套…水色?…空色か。そんな感じの髪の色…で、あの背丈…覚えがあるな…。」

つい最近、汚染区域でばったり遭遇した顔だった。ついでに言うと一つ『借り』もある。
まぁ、それはそれとして。丁度進行方向にあちらが居るのもあって、スルーするのも味気ないと判断。

「――よぅ、何やってんだ?……オルニス。」

そう、彼/彼女の名前を呼びながら、気怠そうな歩みでそちらへと近寄って行こうか。

オルニス >
「んぇ? あ、イサナちゃんじゃん。 やっほ~」

風紀委員にばったり会っても動じない肝の座りっぷりである。
まぁ、笛を吹きながら取り締まりに来た様子でもないし、変に警戒する必要も感じなかったというのが大きな理由になるだろうか。

「どしたのこんなところで。 今日はお休み?
 こんなところで歩いてていいの~?」

あえて、『風紀委員』という単語を出さなかったのは、オルニスなりの気遣いでもあった。
此処では白い目で見られがちだろうし、何より面倒が起きた時のマイナス要因になりかねないし。
島の中には過激派?みたいなのもいるらしいし、触らぬ神に祟りなしという奴だ。

……それを言うなら落第街になんて入らない方が良いというのはもっともだが。

雪景勇成 > 今、彼/彼女に声を掛けたこの白髪赤目の男は、以前汚染区域で会った時とは違って普通に私服だった。
私服――つまりプライベートである。生まれ育ちがここなのもあって少し気を抜いているようにも見える。

「…あぁ、昨日と今日で珍しく連日非番でな。暇潰しにここをブラついてた。
…まぁ、同僚とかが巡回したりもしてるから、歩くコースは一応考えてるけどな…。」

全ての風紀委員のシフトなんて分かる筈も無いが、身近な同僚の警邏シフトなどは頭に入っている。
なので、上手く遭遇しない時間や場所を選んでダラダラと歩き回っていた。

オルニスが『風紀委員』の単語を敢えて出さないのは、こちらへの気遣い、なのだろう。
まぁ、青年自身は別にいいとしても、オルニスの方にとばっちりが行きかねない。

「…んで、そっちは落第街の散策か?ここは”あっち”と違ってかなり入り組んでるから気を付け……あー…。」

そうか、こいつ飛べるんだった。うっかり忘れていた。いざとなれば飛んで位置確認すればいいのだし。

オルニス >
「んししっ、気が付いた?」

表の街中で堂々と異能を使っていたら問題だが、裏で使う分には咎める者もいない。
とはいっても長々と飛んでいるとさすがに風紀やら、見られると都合の悪い何かをしている連中の眼にもとまりかねないから、自由に飛び回るわけにもいかない、というのが痛い所だ。
翼があったところで自由とは程遠いな、なんて少しだけ空を見る。
今宵は月がよく見える日だ。

「ま、あんまり堂々とふわふわはしてられないけどね~
 ほんと、こっちはしがらみが多くて困っちゃうよ。
 文明が進めば進むほど、ヒトは自由から遠くなるって本当なんだねぇ。」

と、少しだけ肩をすくめてみせる。
眼の前のイサナも、まさしくしがらみによっていくらかの制約があるのだろうし。
わざわざコースを考えないといけないなんて、とため息をこぼしてしまう。
本当であれば四国漫遊ぐらいの旅路が好きなオルニスにとって、この学園は些か狭いように感じられた。
もちろん、見るべきものが少ないというわけではないのだけれど、人ところに留まるということをほとんどしてこなかった身としてはどうしても気になってしまうのだ。

雪景勇成 > 「…まぁ、実際”見てる”からな一度。…それに、姿も隠せるとなりゃ取り敢えず最低限の危険は回避出来そうか。」

まぁ、この知人がそこらのチンピラレベルには遅れは取らないだろう。
あと、前回の共闘や会話で何となく察したが、かなり自由人ぽいので面倒なのは回避できるならする感じだろうし。
ふと、オルニスの視線に釣られるように見上げた。…こんな街や更に奥地のスラムにすら月は良くも悪くもそこに在る。

「…まぁ、アンタが元々居た世界(場所)とはかなり異なるだろうしな…。
この落第街だって、混沌無法に見えて…それなりの暗黙のルールみたいなもんはあるっちゃあるし。」

それを守らないモノも勿論多いが、そういうのは潰し合うか淘汰されていくのが大半。
それでも生き残っている奴は、それこそ相手にしたくない厄介な奴らばかりになる。
何故なら、彼ら彼女らこそが無法で自由を体現しているのだから。例えこの街の中だけだとしても。

「――ま、オルニスにとっちゃここは”狭い”だろ…多分。
つっても、この島の”外”も広いし見応えはあるだろうが、何処かで多分似たような感覚になるかもしれねぇな。」

結局、彼/彼女が生まれ育った世界とは別の法則、次元にある異世界だ。
馴染めたり溶け込めても、特にオルニスみたいに自由気ままなタイプには何処か窮屈さは否めないのがあるのかもしれない。

(…まぁ、そこは俺がどうこう言うんじゃなくて、オルニスが折り合いをつけるしかねーんだろうけどな。)

元の世界に帰還の目途も立てようが無い以上、どうしてもこちらに慣れる必要はある。
慣れるだけなら問題無くても、それがずっと続くとなると矢張り折り合いや落し所は必要になりそうで。

「…まぁ、学生区とかに比べたら色んな意味で刺激には事欠かないけどな、”こっち”は。
…あとは…そうだな…北の転移荒野くらいか。汚染区域以外の場所なら自己責任で歩き回っても特に咎めはねぇし。」

オルニス >
「基本トラブルは避けるに限るからね。 自分から飛び込むならまだしも巻き込まれるのはごめん被るよ。
 わたしはこれでも平和主義者だからね。」

暴力はそこまで好きじゃない、というのは偽らざる本音だ。
命の駆け引きは手段であって目的ではない。
たまの刺激はストレスのはけ口になるかもしれないが、後味の悪さは折り紙付きだ。
なにより疲れるし、異能を使うのはそれなりにリスキーだ。
付け加えるなら、巻き込まれるような状況に陥った時点で自分の実力は半分も出せるか怪しいのだから。

「せまいねぇ……すごく狭く感じるよ。
 嫌いってわけじゃないけど、それでも元の場所を比べてしまうことは否めない。
 まぁ、ヒトはそういう少し窮屈で縛られているほうが安心するのかもしれないけどね。
 自由と安定はいつだって両天秤だからさ。」

高層マンションに住んでいるような人からすれば、オルニスの求める自由とは地獄の生活と大差ないのだろう。
規範と制約によって守られた秩序と安定は生活を豊かにする、
翻って何もない自由とは安定した生活とは程遠いものだ。
そういう意味ではこの落第街こそがオルニスの求める自由により近いものかもしれない。
それでもやはり、面積的にも自由度を取ってみても、オルニスにとっては狭く感じてしまうのだけれど。

「外に行けるようになるまで、いったい何年かかるやらね。」

言ってしまえば鳥かごのようなこの場所から、出られることはいったいいつになるのか。
実際異分子である自分たちは、この世界の住人から見れば恐怖の対象にもなりえるのだろう。

「転移荒野は逆に何もなさすぎるって……興味深いものが転がってることもあるけど、それ以上に危険度も割り増しだからね。」

雪景勇成 > 「…まぁ、俺も仕事なら兎も角、今みたいなプライベートで面倒なゴタゴタは勘弁だな…。」

社交辞令でも話を合わせた訳でもなく、本心からそう思っているのか、溜息交じりにこちらも肩を竦める。
風紀としてやる事はやっているが、プライベートの時間に限ってはオルニスとはやや方向性?が似ているかもしれない。
まぁ、オルニスの話を聞く限り…あと、あの戦い方を思い返す限り。
ゴタゴタの渦中に飛び込むのも巻き込まれるのも、その真価を発揮出来ないように思える。
――姿を見せず様子を伺い、ここぞという”隙”を見計らって”一撃”で片を付ける。まさに奇襲がこの知人の最適解?な気がする。

「――俺は、生まれ育ちがこっち側で、訳あってあっちで学生とかやってるが…。
まぁ、オルニスの意見は分からないでもねぇかな…。
安定は危険も刺激も少ないが、面倒ごとにはならずに安全もある程度保証される。
対して自由は、全てが自己責任で巻き込まれてもそれは自分の落ち度だからな。
…けど、誰に気を遣う事もなけりゃ、自分の気の向くままに生きていける。
――とはいえ、異邦の翼(オルニス)にとっては、ここも突き詰めれば『大きい鳥篭』なんだろう。
空を自由気儘に羽ばたいても、今の彼/彼女の立場なり何なりでは飛べる距離も何もかも結局制限がある。

「――さてな…異邦人街っつぅ受け皿も一応あるにゃある。
こっちに帰化してガキや孫とかがこっちの生まれ育ちなんてのも珍しくねぇが…。」

それも、元の世界の生活に”折り合い”を付けてそこに骨を埋める決断を成した故の、だろうし。
勿論、異邦人達にもそれぞれの考えや想い、事情はあるのでどうこう言うつもりもない、が。

「…そうなると、あとは裏常世渋谷…は、怪異ばっかりだからむしろ危険な場所でしかねぇか。
…さっき出した異邦人街も、暇潰しにはなるだろうが…まぁ、オルニスが求めるモンには届かないだろ流石に。」

流石に、往来で突っ立って話していると変なのに因縁付けられたり面倒なので、道の端へと軽く顎をくいっと向けて誘導しつつ。

オルニス >
「それは誰でもそうなんじゃない……?
 いや、そうじゃないモノ好きもいるのかな……」

実際、そういうモノ好きは自分の世界には何人かいた。
自分から秩序を乱すやつ、自分の利益のためなら何でもやるやつ。
ある意味この場所はそういう奴らのねぐらとしては間違いなく最適ではあるのだろう。
だからこそ風紀委員が警邏しているわけで。

「私の求めるもの……か。自分でも求める者がはっきりしてるわけじゃないんだけどね。
 そりゃ、元の世界に戻りたいっていうのはあるけど。それは理想だし。
 この世界でほしい、求めるものって言われるとなかなかさ。
 それはない物ねだりにどうしてもなっちゃうし。」

誘導に従ってあとについて歩く。
キミの眼にはこの街はどう映っているんだろう……
少し気になって顔を覗き込んでみる。
 

雪景勇成 > 「一つ、俺達が暮らすこの世界と…オルニスの居た世界には”共通点”がある――と、思う…。」

それは何か。ほんの僅かに、表情を皮肉気に緩めながら至極簡潔に、その答えはもう既にオルニスが口にしている通り。

「――変わり種(モノ好き)は何処にでも必ず居る…って奴だ。
ここやオルニスの世界に限らず、別の色んな世界にそういうのは居るだろ…まぁ、勝手に俺が思ってるだけだが。」

変人(スプーキー)例外(イレギュラー)無法者(アウトロー)…なんて、落第街でも結構”居る”。
自分も昔はそっち側に居たようなものだから…あぁ、身近だしよく知ってる。

「――追い求めるか、別の”何か”を目標にするか。考え方次第…つぅか気持ち次第だな。
無い物強請りを求めても何も変わりはしねーんだし、だったら見方や考え方を変えてみるのもありって奴だ。」

自由気ままなオルニスのマイペースさを縛るつもりは無い。
だが、彼/彼女にとっては完全にアウェーのこの世界、この島で。
どう生きていくのか、どう暮らしていくのか。今すぐに分かる答えでもないが。

「――まぁ、オルニスのそういう自由気ままな所は…立場も何もかも違うが、共感は出来る…ここだけの話、な。」

そう、口にしつつ歩く青年の横顔。覗き込まれれば、汚染区域の――仕事の時とは違って。
仏頂面はあの時と同じだが、何処か肩の力を抜いているように見える。

時々、あちこちでここでは珍しくもない小競り合いやら言い合いやらを見つめる。
――何の事は無い、赤の他人同士のつまらない理由のそれを見て。…少しだけ”笑った”。

「…確かにここは『窮屈』だし、治安もアレだし暗黙のルールなんて面倒なモンもあったりするけどよ。
――こんな糞ったれな場所でも俺にとっちゃ『故郷』に変わりはねぇ…だから、暇になるとつい足を運んじまう。

――アンタも元の世界に戻ってまた自由に飛べたらいいな。」

道の端に到着。シャッターが下りた店の軒下。そこに背中を預けて一息零しながら。

オルニス >
「共通点……?」

ふむ?と首をかしげるも、紡がれる言葉に納得するように首を縦に振った。
なるほど確かに、そういう輩はどこにでもいるらしい。
もっとも、文明が進んだ分だけやり口はこちらの方が巧妙で、より精錬されているかもしれないけれど。
そういう意味ではどちらがより良いか、なんて言えないなと少し思う。

「気持ち次第……か。
 考え方はなかなか変えられないよ。
 今まで生きてきた生き方をそう簡単には変えられないのと同じでさ。」

こうして故郷に帰ってこれるキミを少しだけうらやましくも思う。
たとえ元の世界に帰れたとしても、自分には故郷なんてものはないから。
にやと笑みを浮かべる君が少しばかり眩しくも見える。

「……なんだかうれしそうだね。イサナ。」

雪景勇成 > 「…そりゃそうだ。オルニスの考え方や生き方を、知り合ったばかりの俺が変えられる訳がねぇ。
…誰にだって譲りたくない一線があるみてぇに…オルニスにとって、そういう所が譲れないモンなんだろ。」

『故郷』が一応あって、この世界で生まれ育った自分と。
『故郷』が既に無く、そして別の世界に流れ着いた彼/彼女とは。
何もかもが違うし、だからこそ違う視点から言える事は少なからずある。
…あるが、それでも助言になればまだマシで、何か打開策や展望を示せる訳ではない。

「……んな訳ねーだろ…『故郷』ではあるが、糞ったれだと思うのも本心だからな…。」

何時もの仏頂面に戻りつつ。それに、故郷とはいっても家族も無ければ家も無い。
自分がこちら側に居た頃とは、街の勢力図やら何やら目まぐるしく変わっている。
この街は”生きている”――なんて、昔誰かが言ってたな…と、思いながら。

「…まぁ、俺の事はどうでもいいだろ…取り敢えず、アレだ…あー…何だ。」

どちらかというと口下手なタイプに分類されるので、どういう風に口にしたらいいか分からない、が。

「――風紀の端くれとして、アンタの知人として俺が出来る事は殆どねぇが。
……愚痴の一つや二つくらいは聞くぜ。その程度のモンでも無いよりマシだろ。」

…ま、『借り』も一つあるしな?と。何時もの落第街の光景からオルニスに顔を向けてそう口にした。矢張り口下手…。

オルニス >
「譲りたくない一線ね、考えたこともなかったな。」

いつだって奪われ続ける人生だったから、今更一線も何、なんて少し思うのだ。
此方に来た時点で、残されたモノもほとんどが意味を失ってしまった。
今更なにを守っているというのだろう。

仏頂面の奥、少しだけ見える優しさに少しだけくすりと笑う。

「愚痴……愚痴かぁ。 うぅん。
 聞かせるような愚痴……あんまり思い当たらないね。
 いまは嘆くより、新しく手に入れる方を優先したいからさ。」