2024/09/22 のログ
エボルバー > 「どうやら、僕の笑顔は改善が必要らしい。」

淡々と自分のことなのに客観的に評価するような口ぶり。
とはいえ青年の思案はソレの本質を見事に突いているだろう。
感情というものが無いのに、無理矢理感情を表現しようとしている。
可笑しくなって当然だ。

「学園での変化は随分と性質が違うのか。
100回聞くよりも、1回見る方がより良い経験になる。
ありがとう、君のおかげで可能性の機会を見出せた。」

そう言うと女はクルッと軽やかに。
パーカーを揺らしながら振り返り、
男に背中を見せつつ歩き去ってゆこうとする。

だが、不意に女は歩みを止めた。
顔だけ少し振り返り
翡翠の瞳が再び青年を射抜く。

「学園に近づくにあたって
何かルールは、ある?」

それぞれの場所にはそれぞれのルールがある。
落第街と学園ではそもそもの前提が違う。
場所のルールに従わなければ
その場所での行動には非常に大きな制約がかかる。
それはソレでも知っていること。

雪景勇成 > 「…改善とはまた別の問題がある気がするんだが…まぁ、いいか。」

そもそも、この女は何か人間ではない…むしろ機械みたいな違和感がずっと拭えない。
先ほどの作り笑顔といい、機械が無理矢理人間に擬態しているような歪さを感じた。

「――別に礼を言われる事でもねぇが、学園に入学したいなら変な問題は起こすなよ。」

そういう場合、真っ先に対応するのが自分も所属している風紀あるいは生活委員辺りだからだ。
面倒な事は少ないに限る。軽やかに身を翻して立ち去ろうとする女を、相変わらずの覇気の無い顔で眺めていたが。

「――ルールだぁ?…正規の手続きで学園に入りたいなら、まぁ問題行動は慎むべきなんじゃねーの?
例えば、戦闘行為は勿論、威圧や恫喝などの挑発行為もダメだな。
…あとは…まぁ、学園社会で暮らすなら協調性とかもある程度は必要だな。
詳しい事は、もっとコミュニケーション能力高いやつとか何か入学資料を手に入れて閲覧した方が早いだろ。」

――少なくとも、落第街の”作法”はあちらでは厳禁だ、というのが大まかに伝われば問題ない…と、思いたいが。
この女、機械的すぎて何かポカをやらかさないかという疑念はちょっとある。

エボルバー > 「学園は、戦いとは対極にある存在に見える。
だからこそ、得られるものがあるのか。」

青年のアドバイスを受けて
女はどこか一人勝手に納得したような様子で歩いていく。
互いに感情が表に出ない2つの存在は
互いに踏み込むようなことは無く
単なる日常の一幕としてすれ違ってゆく。

それでもソレにとっては明確な学びがあった。
女の姿が完全に夜に紛れる頃には
チラついていた黒い粉雪も最初から何も無かったように
消え失せていた事だろう。

雪景勇成 > 「――対局であり”表裏一体”って言えなくもねーとは思うが…な。」

丁度、煙草を吸い終えたので吸殻を面倒そうに携帯灰皿を取りだして放り込み。
人にアドバイスとかそういうのは正直苦手だ…口が上手い訳でも分かり易く説明も出来ない。
女の素性など、疑念や警戒はあるもののそれ以上は今は踏み込む事は無く。
理由はシンプル―ー仕事が終わったばかりなのに、ここからアフターで厄介に首を突っ込みたくもない。

ともあれ、なんだか納得したような感じで今度こそ立ち去っていく女を見送れば一息。

「…また、変な女と知り合ったな…まぁ、いいか。」

変な奴はここもあっちも割とゴロゴロ居る。変な奴というか個性的な奴ら。
チラついていた謎の黒い粉雪も女が去るのに合わせて消えていた――と、なると。

「――案外、本体がそっちって可能性もあるのか。」

目を細めて、女が立ち去った方角を眺めていたが、やがて小さく溜息を漏らして瓦礫から立ち上がる。

「そろそろ帰投して報告書書かないとどやされるな…。」

気が進まないが引き上げるとしよう。気だるそうに白髪の男も歩き出して。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」からエボルバーさんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から雪景勇成さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
大分久方振りの現場仕事だった。
と言っても、かつての様に落第街……と呼称される区域の居住者を巻き込んだ大規模な掃討戦ではない。今時、その様な大規模な作戦行動が"受けが良い"訳でも無い。

つまるところ、それが例え常世学園の人口統計に何ら影響を及ぼさないとしても、ソレをどう扱うかと言う点についてはナイーブに捉える良識ある上層部が風紀委員会にはきちんと存在すると言う事で。
自他ともに強硬派として認識されている私としても、それは素直に良い事だ、と思う。
風紀委員会が全て私の様な思想で染まったら、それは100年以上前の独裁国家の焼き直しだろう。思想の多様性が重要なのであって、一つに染まって欲しい訳では無いのだ。或る程度の方向性を決める為に、多数派が必要だとも思いはするが。

「……そう考えると、我ながら私の異能は小回りが利かないな」

精々、威圧用のパレードめいた警邏に使うくらいだろうか?
テロリストに対して指向出来る機甲戦力…と見るべきか。無辜の難民を威圧する軍事力と見做すべきか。

何方にせよ、今日の仕事は砲弾の雨霰を降らせる事では無い。
既に鎮圧の完了した違反部活の拠点を探索、事後処理…を行う後輩達の警備である。
既に戦闘は終了し、燻る煙から鉄と肉が焼ける匂いがする。せかせか、と不慣れな様子で廃ビルから資料だのなんだのを運び出す後輩達を、対面のビルの屋上から見下ろしていた。

…あ、こら。そんな街中で見掛けた大型犬みたいなノリで私の異形に触るな。砲身をぺちぺち叩くな。私は屋上だが、下に置いてある異形はちゃんと見えているんだからな。
お前の相方が此方に向かって頭を下げているぞ。気付け馬鹿者。

神代理央 >  
小さく溜息を吐き出して無線を握り、一応注意しておく。
触るのは別に構わないが、仕事には集中する様に、と。
再度視線を下へ向けると、触っていた一年生もペコペコ頭を下げている。軽く手を振りつつ、ちょっとだけ異形の砲身を振ってやったら飛び上がるくらい驚いていた。…鍛え方が足りないな。

「……全く。いや、私も一年生の頃はあんな感じだったか?」

思い返してみる。
多分あんな可愛げは無かった。

「…………」

と言うか、今でもそうだが普通に政治家の真似事したり無辜の民に砲弾ぶち込んだりしてた。やんちゃしてた、と片付ける気は無いが、血の気が多かったなあ、とは思う次第だ。

「まあ、やれと言われれば今でもやるが…そうならぬ様に、大人しくさせるのも仕事の内か…」

懐から取り出した煙草を咥えて火をつける。
舶来品の甘ったるい煙草。未成年が煙草を吸うな、って?
今更だ。権力と体制と言うものは、自分達に都合よくルールを捻じ曲げる特権の代わりに義務を負っているのだから。

なんて、建前。ストレス発散の為に去年から咥えてみたコレが、存外気に入ってしまっただけ。
甘ったるい紫煙が、屋上から落第街へと夜風に乗って流れていく。