落第街の大通りから一筋外れた路地裏では学園都市の闇が燻っている。
事件が起きても闇から闇へ、よほど大規模なものでなければ判明することは難しいだろう。
路地裏は非常に危険な場所であり、危険な取引もここでなされる。健全な学生はまず近づくべきではない場所だ。
参加者(0):ROM(1)
Time:04:14:22 更新
ご案内:「落第街 違法パブ『地獄の門』」から女郎花さんが去りました。
ご案内:「落第街 違法パブ『地獄の門』」からオルニスさんが去りました。
■オルニス > 「命があるうちは……か。
それは何とも……刺激的な話だね?」
くすり、と笑ったその瞳はかすかに紅に染まる。
刺激を求める自分はきっとやっぱり、この世界にはなじめ切れないんだろう。
どこまでいっても裏側を知る人間は、表になじむことは難しい。
表側の刺激では足りなくなった、裏側の日常に入り込んでしまっているのだから。
「可愛げ……かわいいと思ってもらえるなら、うれしいけど。」
ぇへ、と笑顔を浮かべて、口の周りをふいてから立ち上がる。
きっとまたこの店には足を踏み入れるのだろう。
たぶん、ご飯を食べに来るのもあるけれど、貴方に会いに来ることが刺激の一つになっているのだから。
「相談役……うん、憶えておく。
それなりに近いうちに相談?しに来るかもね、そんな重たいものじゃないだろうけど。
普通にお話もしたいからさ。」
ありがと、とあなたに伝えてから、ぎゅとハグを一つ。
それはオルニスの精いっぱいのお礼の印。
その間に懐にお代もを少し多めに入れておく。
チップみたいな渡し方だけれど、ここではそれがよく似合っている気がしたから。
「ふふ、相応の対価……今日の分は支払っておいたからね。
またこんど、だよ。
オミナさん。」
此方もご機嫌そうに、その姿を見送ってから店を後にした。
次に来るときはどんな話をしよう。
どんな相談を持ち込もう。
どんな土産話を持っていこうか、そんなことを考えながら。
黒い翼の外套は闇に紛れて消えていった……
■女郎花 >
あまり大食いには見えない相手が、
あっという間に平らげてしまう様子を、何処か嬉しそうに見た後。
「――然らば、ようこそ吾人達の住む落第街へ。
この街は、刺激を求める御身を、きっと歓迎することじゃろう。
そう、刺激には事欠かぬ街じゃからナァ……」
カウンターからしなやかに躍り出て、皿を掴むついでに
もう一度顔を覗き込んで。
「御身のようにまっすぐで、可愛げを見せる者は嫌いではない。
命がある内は、いつでも来ると良い。
一店員として、腹が空いたら飯と飲み物は用意してやろう。
困った時は、相談にも乗ってやろう。
これでもこの街の相談役として、それなりに名を売っておってナァ」
そう口にすれば尻尾を揺らし、
カウンターの奥に引っ込んで行きながら、
最後にふと立ち止まって、そちらを振り返り。
「……ま、相応の対価はいただくがノォ?」
妖しげな笑みを残して、そのまま奥へと去っていくのだった。
■オルニス > 「むぐ……むぐ、ぅっ……!?」
一口入れた途端に伝えられる言葉、そして口の中にちょっとばかりの辛みを感じる。
とはいってもこの小鳥にも耐えられる程度の物で、決して食べられないようなものでもなく。
パクパクと食べ進めて行く。
辛いけれど、トマトと香辛料のうまみと香りが食を進めて行く。
こどもらしく口の回りをトマトのソースで汚しながらもぐもぐと勢いよく。
きっとそれはそれはおなかが減っていたのだろう。
あっという間に食べきってしまうほどに。
「よくわからなけど……」
ご馳走さまです、というのは案外早かった。
オルニスは本来小食で食べるのもゆっくりだったからこそ、この食事はとても美味しいものだと思った。
自分の世界ではきっと高貴な人が食べるものなんだろうな、と思ったりして。
「深入り……後戻り。
こっちの世界に来ちゃった時点でもう後戻りも何もないよ。
今更平和な世界に住みたいってわけでもないし。
なにより……」
すこし手を止めて、貴方の顔を見て。
「向こうは平和だけど、ちょっと退屈だもの。」
平和すぎて、刺激がなくて。
友達は少しはできたけど、楽しいと思えるような趣味もなく
どこに散歩に行っても刺激的な遊びも見つかりはしない。
すくなくとも、自分の知っている限りでは。
「……わたし、おかしいかな?」
■女郎花 >
そして、その一口をオルニスが食べようとしたその瞬間。
「――黄泉戸喫」
女郎花は、目を細めて笑うのだった。
その笑いは、これまた今までにない。
妖の雰囲気を纏った、埒外魔性の笑いである。
「幽世の食べ物を口にしたら最後、現世には戻れなくなるという話がある。
ま、実際はパスタ一皿で戻れなくなるようなものでもないがナ。
それでも、老婆心で伝えておいてやろう。
浅瀬を歩くのは止めぬ。
じゃが……深入りすればどうなるか分からぬぞ?
後戻りするなら今じゃ」
そう口にしてから、ふっ、と。
普段通りの悪戯っぽい笑みを浮かべる。
さて、パスタを口に運ぶのであれば。
辛みと――そして、濃厚な旨味がググッと
舌から口中に広がる感覚があるだろう。
辛みの壁をどう感じるか、それは食べた者次第であるが、
少なくとも辛み以上の旨味が、そこにはぎゅっと凝縮されている筈だ。
辛いものが少々苦手な程度なら、どんどん口に運んでしまえる程には。
■女郎花 >
「おや、詳しいのじゃナァ。
スパゲッティ・アラッサッシーナ。
そう、俗に言う暗殺者のパスタというやつじゃ。
全く茹でずに麺をフライパンで焦がすやり方もあるようじゃが、
少しだけ茹でてから焦がしに行くのが発祥元の味らしくてノォ。
少々真似てみたのじゃ」
おそろいと言われれば、ふっと飛ばすように笑うのだが、
それでも少し機嫌良さそうに、緩急をつけて尻尾を振る女郎花。
■オルニス > 「ぁ~……そっちかぁ。
それはハードルが高いなぁ……」
別に嫌というわけでもないけど、単純に身体的にハードルが高い。
あれこれ説明するような場面でもないからいちいち説明はしないけど……
というかご飯の前にさすがにそんな話はしたくないし。
するにしたって食べた後にしたいところ。
「あぁ、それくらい別に気にしないよ~。
こっちでも今更珍しくもないだろうしさ?
オミナさんも尻尾があるんだし、一緒一緒。
むしろおそろい?だからちょっとうれしいくらいだし。」
へへ~と頬を柔らかに笑って見せる。
親切にしてくれる綺麗な人とちょっとだけおそろいというのはそれなりに嬉しいものだ。
おそろいって言ったって尻尾があるか無いか程度の話でしかないし、動物的な特徴としては似ても似つかないのだけど。
小さな共通点を見つけるのは結構好きなことの一つだった。
「パスタ……トマトの香り。
ちょっとこげてる…・・・?
あ、私是知ってる、暗殺者のパスタってやつだよね!」
暇つぶしに見ていた雑誌に確か乗っていた気がする。
これが大外れだったら顔を真っ赤にして恥ずかしくなるところだけど。
「あれ、でも思い出してみれば辛い物って食べたことないかも……?」
刺激物、という意味なら慣れてはいるけれど。
辛い料理として食べたことはたぶんない。
だって無効では香辛料は意外と貴重品だったし。
貴族とか商人がこぞって売り買いするものだったのだから当たり前と言えば当たり前か。
「えーっと……いただきます、でいいんだっけ?」
此方の流儀に乗っ取った食事前のあいさつをして。
慣れた手つきでフォークをつかい、おアスタをくるくるとまいてから恐る恐る一口……
■女郎花 >
「夜伽じゃよ。ふっ。分からぬなら、それで良い」
敢えて言葉の意味は説明せずに置きつつ、それでも悪戯心に投げて寄越す。
そうして視線をその腰元へやれば。
「オルニスよ、尾羽が見えておるぞ」
今までとは違った少しばかり優しい笑みを浮かべれば、
カウンターの奥へと引っ込む。
鳥人か、或いは別の何かであろうか。
異界から来た存在を目だけで捉えることは、難しい。
さて、少しだけ間を置けば。
女郎花は、大きな皿とフォークを持ってやって来る。
カウンターの上に置かれたそのパスタは――少々焦げているように見える。
全体を覆った赤いソースは、香りからしてトマトであろう。
麺の中から赤唐辛子がちらりと見えている。
にんにくとオリーブオイルの彩りも伴って、食欲をそそる香りが
辺り一帯に立ち込め始めるだろう。
「麺を殆ど茹でず、焦がして作るパスタ……小麦を使った麺料理じゃ。
濃厚なトマトが麺の髄まで染み込んでおるぞ。
さてしかし、少々辛い一品ではある。
御身には少々刺激が強いかノォ?
じゃが、味見役なのじゃから文句は言うでないぞ」
くく、と笑いながら、カウンターに肘を置いて口元を袖で隠せば、
また先の様に尻尾を揺らして、そちらの様子を見守る。
■オルニス > 「私にとって価値のある物……肉体。 労働……物品、……体そのもの?」
ふむ?とす腰ばかり首を傾げた。
それはいわゆる臓器売買とかそういうあれだろうか。
こっちの世界は随分医学が発達していると聞くし、そういうものにも価値があるのかもしれない。
もちろん彼が全く別の意味を差している可能性もあるけれど。
ゆらゆら揺れる尻尾を目で追いながら……なんだか少し楽しそうかな?なんて場違いにも思ったりして。
「楽しそうかな?
試しに何かお願いしてみてもいいよ?
まぁ、お願いに寄るけど……ご馳走になったお礼くらいはしたいし。」
ふむ、とすこしばかり興味につられてそんなことを口走る。
彼女はわたしにどんな体験を用意してくれるだろうか、なんて。
「味見役? うん、それはもちろんっ!」
こくり、とうなずいて快く了承。
指し示された席にぽすんと座り何が出てくるのかとちょっとワクワクしながら待っているのだろう。
立っていると目立たなかった尾羽が、座ることで外套の下からその形を主張しているのにきっと猫は気づくのだろう。
「へぇ……あながち間違いでもなかったんだ。
じゃぁオミナさんって、私も呼ぶことにするよ。
よろしくね、オミナさんっ!」
にこり、と覗き込んでくる猫に微笑みを返した。
■女郎花 >
「決まっておろう。御身の持つ、価値あるものを差し出すべきじゃ。
金がなければ価値のある物品、
それもなければ、肉体を。
労働、或いは――」
くつくつと、悪戯っぽく笑うその目が、今までにないほど細められる。
それは、例の品定めに近い目であったろう。
妖しげな光を湛えたその瞳は、埒外の世界に生きる者の瞳である。
「――身体そのものを対価に差し出すのも良かろう」
そんな言葉を寄越しながら、女郎花はカウンターの向こうで依然として、
ゆらゆらと尻尾を揺らしている。
緩やかに、ゆっくりと、しなやかに。
「さて、御身にあれこれ要求すれば楽しそうなところじゃが……ノォ?
何。丁度、先ほど作ったばかりの料理が一皿あってナ。
味見役を探しておったところじゃ。
どれ、一つ労働を買って出てくれぬか?」
澄ました顔で、女郎花はそのように口にする。
淵の下が膨らんだ、ノニック・グラス。
パブ定番のそこに冷たい水を入れて、
オルニスの前へとやって来れば、カウンター席を指さして座るように
伝えてから、そこに水を置くだろう。
「名前のことじゃが、おみな、と。呼ばれておったこともあったノォ」
そんなことを、顔を覗き込むようにして伝えながら。
■オルニス > 「うん、それはそう思うよ。
一応恩人くらいには思ってるし。」
そう、けれど所詮はその程度。
恩人であり、師でもあるけど、今とは関係ない。
そもそも二度と会うこともないだろうし、会いたいとも思わない。
悪い人でもないけど、良い人とも思ったことはない。
ただ、生きていくためにお互いを利用しただけ。
そんな関係性だったからこそ、思い入れもそこまで深くもなく。
あるいはそういう風に先生が仕向けただけなのかもしれないけれど、そんなこと考える理由もなかった。
「おみなえし……だから。
ミナさん、とか?
うぅん、どんな呼ばれ方が良いとかないの?」
一部を切り取るとなんか別人になってしまいそうで、読んでも一瞬誰かわからないなんてことになりかねない。
それはなんか本末転倒な気がするから、あえて本人に聞いてみることに。
「浅瀬……あ、そっか。
だから門なんだね。」
出入口にあって、そして歓迎するかされ開花はその人次第。
あるいは門番次第?
彼、もとい彼女が門番をしているというわけでもないのだろうけれど。
なんとなくそんな雰囲気を感じ取った。
まさに自分はきっとこの人に試されているのだろう。
自分がどんな人物なのか。
……とはいえ、親切心?で声をかけてくれたのも間違いではなさそうだけど。
わざわざ忠告してくれる裏の人間なんてなかなかいる者ではないのを、オルニスはよく知っている。
「お金はあるけど……別の物って例えば何?」
それは興味本位で聞いてみる。
自分にとっても相手にとっても金で支払われる方がきっといいのだろうけれど。
それはそれとしてこっちの『裏』は何を要求してくるのかという興味もあった。
扉が閉まる音に、揺れる尻尾が目に入る。
まるで化け猫に化かされているような気分にもなるけれど、いたずらっぽく笑うその人はきれいだなと思った。
■女郎花 >
「良き師に、巡り合ったようじゃナ」
如何にも子どもらしい仕草の中にも、しかと探りを入れて来ている。
その視線を向けられる度に、
にこりと柔和かつ艷やかな唇を光らせて、
妖しげな笑みを返す女郎花。
――ただ無謀にも迷い込でしまった童、というわけでもないかノ。
見てくれはどう見ても『表』の人間である。
しかし、オルニスの見せる様子は、女郎花の中で先の推測と繋がり、
眼前の人物が何かしらの暗闇を生きてきたことを感じ取るに至った。
おそらく、その『先生』とやらに出会った元の世界で、色々とあったのだろう。
続くオルニスの言葉で、それは確信に変わった。
「名は呼び辛ければ、好きに呼ぶが良い。
……幾分か心得てはおるようじゃが、
此処はまだ浅瀬じゃからナ。
奥に行けば行くほど、危険な地ではある。ゆめ、忘れるでない」
そんな受け答えをしつつ、カウンターへ。
「無論、金は払って貰うぞ? 商売じゃからナ。
金がなければ、別のもので払ってもらうまでじゃが」
背後から、地獄の門の扉が閉まった音がする。
カウンターの端を白く指でゆっくりと撫でながら、
ノワールジャズの旋律に会わせて、揺れる尻尾。
女郎花はその目を見据えて、悪戯っぽく笑う。
■オルニス > 「ぇへへ、先生がよかったのかもね。
あ、こっちじゃないよ?
向こうの私の先生。
色々なことを教わったけど、難しいって思うことはなかったから。
きっと教え方が上手かったんだよ。」
その『先生』は生徒の呑み込みの早さに舌を巻いていたりしたのだが、それはまた別の話。
瞬きしては頬を掻く姿を不思議そうに眺めては首をかしげている。
歩を進める猫の後ろを歩いたと思えば、立ち止まればその周りをくるくると回ってみたり。
廻りながら服装や背丈や人相をじぃっと観察したりするのだ。
まさに興味津々な子供の仕草と言って差し支えないのだろうが……その視線の行先はどうにも『表』のそれらしくは視えなかったかもしれない。
まさしく先ほどの猫のように値踏みをするような……否、いかほどの脅威があるかを確かめているかのような。
「おみなえし、さん?
な、名前……なんだよね? 不思議な感じ。
それにちょっと呼びにくいかも……
ぁ、自己紹介してもらったならちゃんとお返ししないとだね。
わたしはオルニス。
一応学園の生徒ってことになるのかな?
ここにはいろいろ探検に来たんだっ♪」
ふふ、とどこか楽しそうにいってのける。
この落第街を、表の人間が散歩する……というのも大分奇妙な話ではあるが。
風紀委員や、普段からこちらに出入りするような雰囲気にも見えないだろう。
そうというにはあまりに小奇麗すぎる。
「店員が一匹……本当に猫さんなんだね。
妖……向こうにもそう呼ばれる存在はいたけど、こっちにもいるんだね。
でも意思疎通ができて友好的なのは初めて見たかも。」
獣人とは違うんだ?なんて首をかしげてやっぱりどこか不思議そう。
似ているようでも細かい所が違うのはやはり異世界というべきだろうか。
「そうだねぇ……流石の私にも天国には見えないかな。
でも表の世界より幾分こっちの方がなじみ深い気はするかも。
それに住みやすそう……って言ったら怒られそうだね。」
好きで住んでる人はきっと珍しい類だろうし。
表側に住んでいる人間から言われれば腹の立つ人もいるかもな……と少し想像した。
その時はさっさと逃げるとしよう。
「おぉー……なんか、大人なお店って感じ。
これはお酒の匂いかな……」
すんすんと鼻をまたひくつかせてあたりを観察。
学園島にこんな場所があるなんて、少し意外かも。
「飲めなくもないけど、こっちで飲んだら怒られそうだよね。
だから~……お任せしようかな。
好き嫌いはないよ、なんでも食べる。
……あ、お代は?」
■女郎花 >
「歓迎の雰囲気。うむ、そういうことじゃナ。
他者の言の葉を噛み砕き、己がものにするということは、
知恵がなくてはできぬこと。
御身はそれを、しかと備えておるようじゃナ」
子どもの様な仕草を見せてはいるが、
ただ純粋に、好き勝手生きてきた童ではないのだろう。
言葉を交わす中で、女郎花はそれとなく眼前の相手の輪郭を捉えた。
さて、そのように評価を投げて寄越した女郎花ではあったが、しかし。
ぴょんと跳ねる様子を見れば、猫の瞳を丸くして、ぱちぱちと数度瞬き。
その後に頬を掻けば、ついでに一言を投げて寄越す。
「猫。まぁ、間違いではない。猫の妖じゃからナ。
吾人の名は女郎花。
この地獄の門の店員が一匹じゃ」
あまり落第街には居ない手合なものだから、少し調子が崩されたのであろう。
咳払いを一つした後にそう告げれば、置いていかないようにゆっくりと
店内へ歩を進める。
「この先に続く落第街、よもや天国には見えまい?
この先へ進むというのであれば、それなりの覚悟が必要ということじゃ」
店内に入ればすぐに、
落ち着いた雰囲気のノワール・ジャズが流れてくる。
何処か暗い店内。今は客は他には居ないようだ。
大きな木製のカウンターの向こう側に、
いかにも無愛想なマスターが一人、グラスを磨いているだけだった。
「さて、酒は……飲めぬか?
然らば水と、まぁ適当に料理でも作ってやろうかと思うがノ。
して、味付けや素材の好みは?」
先導していた猫はそこでふい、と後ろを振り向いて小首を傾げる。