2024/07/30 のログ
ポーラ・スー >  
「ええっと――よしっ。
 一応善良な市民ですものね」

 匿名で通報し、座標を伝えつつ。
 さて、倒れる彼ら彼女らは、風紀委員に捕まるのか。
 それとも、彼らもまた闇の中へと消されてしまうのか。

「うーん――わたしとしては、あなた達が無事に捕まってくれるのを願ってるわ。
 それじゃあ、ばいばい。
 幸運の一欠片でも、あなた達にもあるといいわね」

 そう言いながら、路地の奥へと軽やかに姿を消してしまう。

 ――近年こうした、裏取引が何者かに妨害されるという事件が頻繁に発生していた。
 その取引で売られるはずだった人々がどうなったのか。
 それは、誰も知らない。
 

ご案内:「落第街 路地裏」からポーラ・スーさんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」にエルピス・シズメさんが現れました。
エルピス・シズメ >  
 裏通りの路地、袋を片手に歩いている少女のような少年が居る。

「生活ゴミも増えてきたなあ……」
 
 片手には生ごみを含む生活ゴミ。
 拠点としている事務所の掃除を終え、外の空気を吸いにきた。
 休憩がてら、どこか捨てられそうな場所はないかと探している最中らしい。

ご案内:「落第街 路地裏」に九耀 湧梧さんが現れました。
路地裏の一角 > 落第街の路地裏といえば危険や厄介には事欠かぬ場所。
目に見えなくても、何らかの物騒が起きている事もある。
それは商売であったり、取引であったり、”何等か”のやり取りであったり。

今回は、それがたまたま「耳で聞こえる」範囲の出来事だった、という事なのだろう。

少し離れた箇所から、何やら音と怒号、それに悲鳴。
路地裏に慣れた者ならば喧嘩か何かだろうとすぐ見当はつくはずだ。

そうして、上がる声は男のものばかり。

エルピス・シズメ >  
 不法投棄に抵抗はないが、場所は選びたい。
 ここでも良さそうだが、いっそスラムの方まで行こうか。

 時間は掛かるが、分かりやすい置き場があった気がする。

 そんなことを考えていたら、一角から怒号やら悲鳴やらが聞こえた。

「行かなきゃ。」

 怒号や悲鳴。荒事の流れ。
 そういうものが耳に入ると、思わず身体が動く。

 生ゴミを隅の箱に押し込み、騒ぎの下へと駆け付け──。

(恐怖や混乱はない。だから怪異じゃなくて喧嘩だ。)
(なら、様子は見ないで真っすぐ行こう。)

 喧噪の中心に躍り出る形で『割って入る』。
 流れるままに割り込んでから周囲を見渡し、口をはさみながら状況を再確認。
 
「なにしてるの?」
 

ならず者 > 飛び込んだ少年が目にした光景は、想定外か想定の内か。

地面に転がっている者と立っている者の大多数が、似たような服装。
恐らく何らかのチームか集団だろう。
そして、倒れている者に服装が違う者はいない。
この時点で「集団対集団」、つまりチーム同士の抗争という図式は成り立たなくなる。

そして、集団のリーダーらしき男が口にした言葉が、状況を明確にする。

「こ、このガキ……テメェ、横取りに来たのか!?」

九耀 湧梧 > そして、そのリーダーらしき声に続くように、少年にかかる声。

「何だ、増援かと思って少し焦ったが、単に新手か。」

声の主は――視界の端側。
一振りの刀を担ぐように構えている、黒いコートに赤いマフラー、右腕が和風の鎧のような装甲で覆われた男。

落第街やスラムの事情に詳しいのならば、噂位は聞いているかも知れない。
魔剣や妖刀の類を持つ無法者等から、それらを奪っていった者。
誰が名付けたか、人呼んで刀剣狩り(ブレードイーター)

噂で流れるその特徴と、ほぼ一致する外見だ。

エルピス・シズメ >  
「あっちの見た事のない集団は、ともかく。」

(『身の丈に合わない剣を下手に持ち歩くな。』)
(『手に余る剣を見せびらかして自慢するな。』)

「さもなければ、黒い男が、剣を狩りに来る。」

 "刀剣狩り。"
 
 エルピス自身も、その噂は聞いた事がある。
 外観や状況からして、そのものだと判断した。

「……単に"もめ事"が起こったから野次に来ただけだよ。
 でも、何処かの集団さんに、刀剣狩り、かぁ……。」

 刀剣狩りが噂通りの人間なら、この先の流れは見るまでもない。
 悉くを切り伏せて、不殺のままに取り上げるだろう。

 しかし思わず飛び込んでしまったので、退くにも間が悪い。
 ひとまず、ならず者の方に向き直る。
 
「……えーっと……そっちのお兄さんたち、諦めたら?
 あのお兄さんの噂ぐらい、知っていると思うんだけど……。」

 なのでとりあえず、
 無益な争いだろう、と、降参を促した。
 

ならず者 > 「ち、畜生…ひと財産のアテが…!」
「何言ってんだ! ガキ一人増えただけだろ、一緒に畳んじまえば…!」
「バカかお前、あの腕見ろ…! どんな能力持ってるか分からねえ相手だぞ…!」

まだ立っていられるならず者たちはぼそぼそと何事か…をこっそり話し合うにしては、
随分と耳に届きやすい声量で、何事かを話し合っている。
幾分か時間を置いて、

「く…クソがっ! 覚えてやがれ!!」

立っている男たちが地面に転がっている男たちを何とか担ぎ上げ、コテコテの捨て台詞を残して遁走する。

九耀 湧梧 > 「おーおー、さっさと帰った帰った。
二度と俺が回収した代物を奪おうとか考えるなよ。」

ひらひらと手を振り、黒いコートの男は逃げ去る集団を見送る。
追撃を加えようという気は一切見えない。

「――と、それで、だ。」

男の視線がすい、と義手の少年に向かう。
コートの裏から手品のように鞘を取り出すと、担いでいた刀をすらりと納刀する。

「お嬢ちゃ…いや、声の感じだと男か?
ま、それは置いておくとして、だ。

――まさか、お前さんも「奪い」に来た……訳じゃない、よな。
今しがた、野次に来たって言ってたばかりだしな。」

空いている右手で、顎髭を軽くさする。
かしゃり、と和の鎧のような装甲が音を立てた。

エルピス・シズメ >  
 集団が立ち去れば安堵する。
 『取り合い』による無益な戦いは少ない方が良いとの判断だ。

(根から悪い人たちかもしれないけど、それはそれ。)
(逆に友達の不良集団の知り合いだとしても困るし。)

 なんてことを考えながら、"刀剣狩り"に向き直る。

「大分お金には困ってるけど、流石に"刀剣狩り"から奪うほど愚かじゃないよ。」

 首を横に振る。
 獲物を奪うつもりではない、と。

「……一応聞いておくけど、僕の腕まで刀剣判定しないよね?」

 "機械で出来た二本の右腕"を回す。
 これを奪われるのは非常にまずい。

九耀 湧梧 > 「流石にそこまで滅茶苦茶な判定はしないさ。
そもそも、公安の怖いお兄さんに睨まれて刀剣狩りは少し前に廃業しててな。
今帰ってったあいつらは、俺が回収した物を奪おうって考えてた連中さ。」

あっさりと種明かし。
既に刀剣狩りはやめてしまっているらしい。

「全く…金にするにしろ得物にするにしろ、簡単に手に入れた代物を当てにするようじゃ
碌でもない結果になるとは思わんのかね…。
態と噂になるように仕向けたとはいえ、流石にこうも多いとため息も出て来る。」

と、大きくため息。
どうやら、同じような連中に同じような事態を何度も起こされたらしい。
噂の広がり方を考えれば当然の帰結と言えるが。

「ま、そういう訳で今は「元」刀剣狩りだ。
その腕をもぎ取って奪っていくなんて真似は端から考えちゃいないさ。」

軽く肩を竦め、手にしていた刀をコートの裏にまるで手品のようにしまい込む。
一瞬、するりとコートの裏地に刀が吸い込まれたようにも見えた…様な気がしたかもしれない。

エルピス・シズメ >  
「そっか。うん……委員の中でも公安は容赦がないからね。」
 
 委員か公安に、思う所があるらしい。
 廃業した刀剣狩りに同情を見せた。

「む……それはちょっと意見あるな。使えるものは何でも使った方が良いと思う。」
「お兄さんが回収するぐらいだから、厄介な呪いでもあるのかもしれないけど……」

 少々頬を膨らませ、"刀剣狩り"の男を見る。
 お兄さんと呼称しているが、碌に外見を見ていない訳ではない。
 
 むしろ、言葉とは裏腹に警戒心を残していた。
 持って行かないと言及した辺りで、多少緩めたが。

「なら、よかった。」
「腕を持っていかれるとイーリスやナナに心配をかけるし、お金を稼ぐのも苦労するから。」

 手品の様に出し入れされる鞘や刀剣は目で追っている。
 とは言え実力者ならそれ位の技術や種はあるだろうとの認識か、驚く素振りは見せない。
 

九耀 湧梧 > 「おっと、子供かと思ったが随分と現実的なご意見だな。」

少し驚いたように軽く目を開く。
顎をさすりつつ、固まった血のような赤黒い瞳が改めて少年に向けられる。

「使えるものは使うってのは、確かに一つの意見だ。其処は俺も否定はしない。
だが、これがこと「武術」となると話は違って来るもんだ。

力のある剣や刀を使えば、確かに手っ取り早く強くはなれる。
だがそれは、結果的に技を腐らせる事に繋がるんじゃないか?
武器の持つ特殊な力に頼り切りで、肝心の技を疎かにしたんじゃ、笑うに笑えん。

ま、一介の剣術馬鹿のお気持ちって奴に過ぎん。
聞き流してくれて構わんぜ。
それに厄介な呪い持ちを集中的に狙い撃ちにしたのも事実だしな。」

と、話を締め括ると軽く肩を竦める。

「ま、公安の方には刀剣狩りの廃業を条件に何とか御目溢しを頂いたよ。
何を言ってみた所で、所詮俺のやってる事は個人事業…公安やら風紀委員だったか?やらのように
確たる後ろ盾がついている治安維持の類じゃあない。」

自身が正義の味方とは全く思っていないらしい黒いコートの男。
刀剣狩りを個人事業とまで言ってのけている。

「何だ、随分若く見えるが、扶養家族でもいるのか?
確かに、飯の種が無くなるのは大変だろうだ。
――俺もぼちぼち、顔を隠してどっかの店で用心棒の働き口でも探すかね。」

と、世知辛い事をこぼす。
懐事情が思い知られる一言。

エルピス・シズメ >  
「う……否定はできないけれど……」
「『誰もが』何十年も修行して、達人にでもなるのを待てる訳じゃないよ。特に"ここ"だと。」

 肯定半分否定半分。思う所を口にする。
 異能により外付けの『経験』を持つエルピスにとって、経験の重要性そのものは否定がし難い。

 同時に『経験』は本来途方もない時間を必要とし、
 学生の間に得られるようなものでもないとも認識している。
 
 だとしても、"刀剣狩り"にも譲れない何かがあったらしい。

「そうだね。僕たちみたいな人は大体個人活動だ。世知辛いね。」

 暗めの口調。どこも懐事情は好くないらしい。
 善悪観について言及する様子はなく、同業者の様に思っている口ぶりだ。

「か、かぞく……いや、ううん。そうじゃないと思う。」
「一緒に住んで、協力し合ってるのはそうだけど。」

 面を食らったのか、一瞬だけ狼狽して極度に空気が弛緩する。
 繕うように持ち直した。

「用心棒が出来るのは羨ましいな。流石に僕はそこまでではないし……」

九耀 湧梧 > 「そう言う事。だから、所詮俺のは「お気持ち」なのさ。」

少年の言葉を否定する事はしない。
誰もが達人になれるまで修行を積める訳ではない。それは事実だ。この環境なら尚の事。
だからこそ、己の信念を「お気持ち」と定義する。
少年の言葉もある意味正解であり、故にこそ絶対唯一の正解などという便利なものは存在しないのだ、と。

「一緒に住んでるって…お前、そういうのは普通、家族じゃないのか。特にこんな街じゃ猶更だろ。」

少年の面食らったような言葉に、思わず若い頃の口調に戻ってしまう。
暮らしていくのも決して楽なものではないこの街やスラムで、互いに協力しあって暮らしているのは、
それは既に家族に近い「つながり」があるのではないか、と。
そう問うような。

「ま、剣の腕だけは馬鹿みたいに磨いたからな。
昔は魔術の類も武器にしてたが、今じゃ殆ど刀ひとつさ。
それが高じて、ちと厄介なものも引き継いでしまったがね。」

場の雰囲気が少し緩んだ事もあって、口が少し回る。
厄介なもの、とは、恐らく先程の襲撃にも関わるもの、なのだろうか。

エルピス・シズメ >   
「ううん……「信念」はお気持ちじゃないよ。」
「すれちがったり、ぶつかることはあるけど。」

 半ば無意識で、彼がお気持ちと言ったものを言い換える。
 彼の自虐は、エルピスにとっては見ていられない耐え難いもののように映った。

「えーと……うう……ん……どうなんだろう。
 いろいろと"わけあり"だから……。」 

 色々な意味で何処まで話していいものか。
 その上でそう認識していいのか。

 戸惑いの中に僅かな照れを隠しながら、濁すことにした。

「厄介なもの……お兄さんも色々あったんだね。
 魔法が使えなくなったってことで、推察は付くけど……」

 それ以上は口にしないことにする。
 初対面でこれ以上踏み込むのは気が引けた。

「名前、聞いてもいいかな。
 なんとなく、お兄さんって呼ぶのもおじさんって呼ぶのも、刀剣狩りって呼ぶもどれも悪い気がしてきて……」
 
 少しでも年上と感じたら『お兄さん』『お姉さん』と呼ぶ彼だが、
 目の前の彼の身の上を知れば知るほど、若く呼ぶことに抵抗が出てくる。
 かといって『おじさん』と呼ぶのは純粋に失礼だ。

「とりあえず、僕はエルピス・シズメ。普通の学生でもあるけど、色々あってこっちの住人でもあるよ。」
「そして昔は数ある事務所で便利屋をしていたけど、わけあって開店休業状態。」

九耀 湧梧 > 「――お前さんは、優しい奴だな。
ここらに住んでて、その気持ちを忘れないっていうのは、喧嘩や剣の腕が立つよりもずっと強い事だ。」

少年の気持ちを汲み取るように、軽く笑ってそう声をかける。
明日も知れない環境では、人の心は荒むもの。
その中でそうした気持ちを忘れない事は、ただ腕っぷしが強いよりもずっと強い事だと。

「成程、訳ありか。ならあまり深く詮索するのも何だな。
ま、あまり同居人には心配かけさせないようにな。
危うく乱闘に巻き込まれた、なんてなったら大変だぜ。」

今更ながら、少年が関わったお陰でならず者連中が退散したのは男だけでなく少年にも良かったと思う。
怪我の一つでもして帰ったら、同居人たちが心配する事だろう。

「ああ、言い方が悪かったか。
今でも魔術の類は使えるが、攻撃の主力にする事はすっかり無くなっちまった。
身体強化とか、こういった武器を作ったりする位にしか使ってないのさ。」

くるりと右手を返すと、男の手には赤紫色のどこか禍々しい光。
それが直ぐに形を取り、光で出来たロングソードのようになる。
光の剣を指先に乗せて少しの間、くるくると回転させると、ぐ、と握り締め、
それと同時に光の剣は硝子が割れるような小さな音と共に砕け散る。

「エルピスか。分かった、覚えておこう。
湧梧だ、九耀湧梧。

さっきも言ったが、ついこの間までは「刀剣狩り」なんて呼ばれてたが、今は無職のしがない「異邦人」さ。」

少年の自己紹介に、男も名乗りと自己紹介を返す。
「異邦人」の意味も、恐らくは分かる事だろうと踏んでの上で。