2024/08/24 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」にエルピス・シズメさんが現れました。
エルピス・シズメ >  
 落第街の路地裏。
 久しぶりに時間も空いたので、路地裏に入って座り心地のよさそうなガラクタに腰を預ける。

 やることもなくなったので、静かな裏路地で足を運んで休憩。
 誰もいない路地裏を占有して、ちょっとした秘密基地の様な気分を堪能する。

「静かな夜。……今の所は。」

 あくまで、今の所は。
 落第街の夜で、静寂を堪能できる時間はわずかでも貴重だ。
  
 暇そうに足をぶらぶらさせて、路地の隙間から大通りを眺める。

エルピス・シズメ >  
 空を見上げる。
 路地裏は仄かに暗いから、星と月が良く見える。
 風流とかは分からないけれど、ぼんやり出来るのは心地がよい。

 それはそれとして、スマホを開く。
 スケジュールの確認をしてから、ここ最近の情報を確認する。

「ナナも言ってたけど、最近は【悪竜】って話題を良く聞く。
 白黒の仮面のギフトにまつわるトピックだろうけれど……。」

 事がそれなりに大きくなっている出来事の一つ。
 風紀委員や公安委員も対処に出るだろうけれど、
 ここに住まう以上いずれは巻き込まれるかもしれないと留意はしておく。
 

エルピス・シズメ > 「それよりも、ナナかな。
 本格的に追っ手がどうの、って話はしていたし……。」

 不穏な報告を思い返す。
 今の所はらしきものはないが、警戒するに越した事はない。

 昨日の平穏な素麺のお祭りを思い出す。

「素麺買って帰ればよかったかも。」

 ひとつぐらいはお土産兼業記念で買って帰ってよかったかもしれない、と、ふと思う。
 

エルピス・シズメ >  
「一番の問題は……。」

 手をぐーぱーさせる。

「僕がいまだに魔術を使えないこと。
 今も……使おうとすると……。」

 眼を閉じる。
 左手に魔力を集中させ、教わった通りのコマンド・ワードを行使する。
 
「《魔法の矢》──痛っ。」

 結果は失敗。
 轟音と共に、手元で爆発が起こる。

「うん、やっぱりだめ。」

エルピス・シズメ >  
 流れを追って、魔力のようなものを感じ取ることはできる。
 それが分かれば力のルーツや、紐解き方も分かる。

 感じ取れた魔力の流れを、良い様に見立てることもできる。
 熱だったり、火だったり、木だったり。知識の元に分別することもできる。

 だから、魔道具の類はそれなりに使える。
 ソラで魔法や魔術を使おうとすると、どうも上手く行かない


金から水を

 ガラクタに手を置き、汎用的な術を試みる。
 勿論、結果は失敗。水の変わりに爆発が起き、手が痛む。

エルピス・シズメ >  
「やっぱり肌に合う魔道具が要るのかな。あるいは……」

 決まった術や式を行使する魔道具を使う分には十二分に使いこなせる。
 ただ、自分が思うがままに魔法を起こそうとすると、どうにも失敗する。

「うぅん……。」

 気を落とす。

 このまま適合する魔術体系を見つけるか、
 それとも無理矢理にでも体質を変えるか。

 魔法や魔術は魔道具で済ませ、諦めるのもひとつの手。

「どうしようかな……ちょっと休憩。」

 魔術の知識の重さだけが、頭の中を圧迫する。
 それはそれとして、一旦は諦めて思考の隅に追いやる。
 

ご案内:「落第街 路地裏」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 >  
つど、気配は影よりまろび出た。
然るに(うろ)嚆矢(こうし)よりて先を見入る。
自らの手元を二度痛めた失敗の光景。
斯様、気落ちする肩を背後より見下ろす者。
声も掛けず、静寂と共に在り。
兎角(とかく)、忽然と罷り越した故、亡霊めいた所行。
果たして、如何様に感じるか。

エルピス・シズメ > 「…、…。」

 ふと、妙なものを覚える。
 既視感を引っ張り出して、漸く何かがあると気が付ける。

 誰かがそこにいる。
 右から左に逆巻いても、いつ、と、分からない頃からそこにいる。

 報せはない(死は感じぬが)が、今はそれすら恐ろしいもの。

 冷や汗と共に、後ろを振り向き、下がる。

「……アイスキャンディーのお兄さん?」

 かつて氷割り祭りで見た、アイスの棒で氷を斬り分けたお兄さん。
 そのものがここにいること、警戒は怠らずに声を掛ける。
 

紫陽花 剱菊 >  
見返れば音もなく、何処となく気配も淀む。
しかと目の前に男はいる。然れど静寂に溶け込む隠形(おんぎょう)は些か不気味。
路地裏の影より、(うろ)の双眸は曲も無い。
しずしず、(かみしも)を脱ぐには剣呑。

「……私は桃味が良い……。」

最初に発した言葉は言筋(ことすじ)より逸れた。
何者も斯様な言問わん。ヤンナルネ。
ほんの束の間、朗らかな空気は瞬く間に鉄の如き冷たさに変わる。
情緒のジェットコースターめいた感情操作。
静かに口元に立てるは二本指。彼方よりの作法。

「どうも……公安委員会。紫陽花 剱菊。
 影より迷える背を見かね、罷り越した次第……。」

僅かな一礼。艷やかな黒糸がはらりと乱れる。
隠密機構故、剱菊は敢えて名乗る事に意味を持つ

「……其方(そなた)の行いを影より見ていた。
 術の類……成功はせぬようだな。不得手であろうか……?」

エルピス・シズメ >  
 音は震えず物は動かず風は流れず。
 常世の静寂に溶け込んでいるそのものが、こちらを見据えている。

 そのことを理解しながら、会話を続ける。

「僕はソーダが好みかな。」

 空気が緩んだ間を掴んで、思考と呼吸を整える。
 何故ここに居るのか、どうして僕を見ているのか。

「紫陽花…剱菊さん、だね。
 僕はエルピス・シズメ。カーテンもなんでもない……ただの生徒。」

 少しだけ含みを持たせながら、名乗りに答える。
 波に委ねるように持たせた含みも、漣の泡ぐらいの些細なもの。

 優雅ではないが、人並にぺこりとおじぎをする。

「うん。どうにも魔術を使おうとすると、上手く行かなくて。
 何というか……言う事を聞いてくれないみたい。」
   

紫陽花 剱菊 >  
かつ、一歩爛れた石畳を歩み鳴らす。
自ら敵意が無い事を示す証左(しょうさ)也。
影よりまろび出し男もまた、一見何の変哲も無い。
然るに、行住坐臥は常に戰場。
自ら姿を表したとて、居住まいに乱れは一糸も無い。

「失礼、干戈(かんか)を交えるつもりは無い。
 歩みも構えも、身に染み付いたもの故……。」

戦、即ち殺しの作法也
おくびにも出さず、眉一つ動かさず。
空事(そらごと)にも非ず、淡々と。
涼を運んだ会場とは違う。此の島の暗部。
影歩きする様こそ本来の在り様。

「エルピス殿。かの会場にて、其のご尊顔は勝手乍拝見させて頂いた。
 ……縁もたけなわ。今宵は隣、二人の姿は無きご様子。」

ゆくりなく、嘘を綯い交ぜ。
(うろ)は影より事見据える。
即ち、隠密機構の御業也。
然れど、程なくして嘆息が漏れる。

「……否、腹芸は得意では無い。無作法を詫びよう。
 今は其方(そなた)を言及しに来た訳では無い。
 只々、私個人が其の在り様に興味を持ち、罷り越した。」

先ずは非礼に一礼。
ゆるりと表を上げれば、些か視線は鋭い。

「……所感では在る。
 焦眉(しょうび)の急。其方(そなた)の居住まいに焦りが見える。
 何故(なにゆえ)斯様に合わぬ術を使おうとするのか。」

「がむしゃらに続けようと、愁眉(しゅうび)が開く事は敵わぬ。
 見当違いで在れば、其れでも良い。力をお求めで在られるのか?」

エルピス・シズメ >   
「大丈夫。警戒し合うのも、ある種の礼儀だから。」

 会話を重ねながらも、二つのことを徹底する。

 彼の空気に呑まれすぎぬように(萎縮せず、冷静に振舞う)
 彼の呼吸から眼を逸らさぬように(礼節を払い、意を交わす)。 

 武器としての礼節を以って(無礼討をさせぬよう)、かの者と向き合う。
 公安委員を名乗った彼に、礼節を払いながらも自分の呼吸(ペース)を維持する。

「二人……? あ、うん。僕もその方が助かるかな……。
 ……えっと、お仕事だから、無礼じゃないと思う。」

 あの場における『二人』が誰を示すか絞り切れない所で、種明かしがされて納得の素振り。
 腹芸の後では推測はつくものの、それはそれ。

「それは……合う術が、まだ見つからなくて。」

 剱菊の見えている通り、合わぬ術を使っている。その理由も、見えているものが見えていれば分かるもの。

 このもの──エルピスの魔力と呼ぶべきものは、ちょっとどころではないじゃじゃ馬だ。
 多くの者が魔力や妖力、霊力などと呼ぶべきそれは、『彼の感情の意のままにしか動かない』。

 流す事は出来るため、魔道具の類に籠めるには問題はない。
 だが、彼の理性によって引き起こされる術理には、応えない。

 そんな一際我儘な魔力こそが彼の魔力の正体だ。だから術理のある魔術は使えない

 

エルピス・シズメ >  
「……そうだね。色々あって、力は欲しいかも。」

 続く問いにも、頷いて、単純に応える。
 語るには長いし、油断も出来ない。