2024/12/27 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に泳夢さんが現れました。
泳夢 >  
今年も残すはあと数日。寒空の下、雪のような白髪が、吹く風に揺られていた。
少女の座る車椅子も、この寒さで冷え切っている。
だが、少女はそんなことを気にした風もなく、何処かへ向けて車椅子を走らせていた。

その行き先は、人気もなければ治安のよい場所でもない。
言うなれば、人の悪意が渦巻き、無関心が行き着くこの島の掃き溜め。
欲望のままに生きる者たちが根城にする、違法な店が立ち並ぶ通りである。

少女は以前、偶然行きついた際とは違う生き方を事前に調べ上げていた。
そうして遠回りに、しかし着実に目的地へ進んでいた。
人気がないのは単に、それが路地裏である為だ。
ある種、落第街の大通りよりも危険な其処へ、少女は導かれるように足を踏み入れる。

泳夢 >  
「……"穴"はこの通りからでもいけそう、かな?」

路地裏の道を進みながら、少女は人知れず呟いた。
恐らくは、少女が目指そうとしている目的地が其処なのだろう。

尤も、その実態を知っていれば、車椅子ではとても通れない場所であるのだろうが。
残念ながら少女はその事を知らず、そしてどこか命知らずで軽率な行動をとっていた。

無論、少女も危険を知らずに其処を目指したわけではない。
最低限…実際にそれで十二分化はさておいて……危険地帯に足を踏み入れる準備は整えていた。
今も周囲への警戒を欠かさずに、その進路を定めていた。

ご案内:「落第街 路地裏」に廿楽 紫音さんが現れました。
廿楽 紫音 > 「お、不良生徒だ」

見たことのある車椅子、この街の雰囲気に似つかわしくない少女の姿に気が付いて。
マスク越しでその姿を眺める。

落第街の路地裏。いつだかクマネズミを名乗るお兄さんに会った場所のすぐ近く。
死体はもうどこかにいって、ゴミばかりが溜まる汚い道を、車椅子が苦戦しながら進んでいた。

「こんなところに一人なんて、自衛意識が足りてないんじゃない?
 …なんてね。やぁ、えいむちゃん。
 何やってんの?こんな所でさ」

声をかけながら、マスクを外してにこりと笑う。
このマスクは身元を隠すためだけど…やっぱりつけてると警戒されやすい。
知り合いと話すのなら外した方がいいな。

泳夢 >  
覚えのある声がした。少女は振り向き、目線だけをまず声の主へと向ける。
其処にいたのは如何にもなマスクをかぶった、見知らぬ誰か。
今時ペストマスクなんて、ファッションでも身に着ける人はいないだろうに。

「……先生こそ、そんなマスク付けてこんなとこで、何やってるんですか?」

車椅子の速度を緩め、そこで漸く首を振り向かせるようにして視線を移す。
マスクを外すのを見れば、ああやはり少し前に図書館で出会った、親切な先生であった。

「私は散策…って言っても、さすがに誤魔化せませんよねぇ~」

廿楽 紫音 > 「たまにこうして暇つぶしに来てんだよね。
 こういうアングラな空気が好きでね~」

はははと笑って、マスクをくるくる。

「教師が入り浸ってるってバレたら面倒くさいから、こんな仰々しいマスクまでしてるのさ。
 えいむちゃんもこの辺うろつく機会多いなら対策しときな?かわいい子はここだと直ぐにパクっとされちゃうからね」

来るのはダメとは言わない。自分が入り浸ってるのにそんな事は言う気もなくて。

でも、何しに来たのかは少し興味がある。

「ははは、無理かな~
 口止め料って事で教えてくんない? お互い悪い子らしくさ」

泳夢 >  
「なるほどそういう……。
 でも、なんでペストマスクなんですか? 趣味とかです?」

生徒や講師問わず、理由もなしに入り浸るような場所ではないのは違いない。
よくよく考えれば身バレも考えると、自分も対策すべきだったかな?と思案して。
けれども直ぐに、こんな手足と車椅子じゃあ無理だろうなと両手を上げた。
偽装の為の変身魔術なり幻影魔術なりを覚えなければ、そんなのは夢物語である。

「まぁ…口止め料って事なら言わないとアレですね。
 口約束だから信じるしかないですけど、それはお互い様ですし」

適当に、こちらが嘘を言ってしまっても分かりはしない。
其れすら見抜ける異能や技術か、そうした類があるなら話は別だが。

「興味があるんですよ、怪異とか、妖怪だとか、そういうのに」

だから嘘でこそないけれど、理由になってると思えぬ理由を口にする。

廿楽 紫音 > 「ん~…なんとなく?
 趣味と実用かねてかな」

ペストマスクは、元は病気対策に作られたもの。
菌を操る自分にとっては、何かあったときにその対策もできる代物はあると大助かりだった。
もう一つの理由は、単純に自分に似合うものを探した時に見つけたのがこれだった。
だから、趣味と実用。

「へぇ、怪異や妖怪……
 この辺確かに怪異みたいなバケモノいっぱいいるけどね。
 左腕が溶岩みたいなバケモノとか。

 危ないぜ?って一応教師らしい事言っておくけど、行きたいって感じか」

そもそも、車椅子でこんなところにまで来てるのだ。
道だって殆どあってないような場所、ここまで来るのに苦労もしただろうに。

それ相応の目的がある、って事だろう。

「付き合おっか、不思議さがし。
 一人だとちょっと危ないしね」

泳夢 >  
「趣味と実用かぁ……」

そういえば、最近を操る事が出来るのだったなと、そこでふと思い出す。
ペストマスクの本来の用途を思い出せば、多少はそれに納得できる。
もっとも効果だけなら今の時代、よりよいものもある筈であるが…
顔を隠し、その上で趣味に合うものを探したらそれだったのだろうとは、思い至れた。

「へぇ…そんな噂話は初めて聞いたけど、そんなのもいるんだ。
 そうですね、行きたいというか…知りたいというか……」

その言葉はどこか曖昧に。明確な理由は暈すように、少女は答える。

「……って、いいんですか?
 正直、流石にダメかぁ~って思ってましたけど」

廿楽 紫音 > 「興味を持つのは良い事だし。
 ダメって言ってもどっかでまた来る気がするし?
 なら、一緒にいた方がまだマシじゃん? 男一人いるだけでこういうとこのトラブルは減るもんだし」

これでも背は高い方。
背が高い、というのはそれだけで絡まない理由になってくれる便利な身体的特徴だ。
チビで弱そうなものを誰だって襲いたい。フィジカル面で負けてる相手にはケンカは売らないのが基本だ。

「それにほら。
 不良生徒もいれば…不良教師もいるってね?
 オレも興味あるんだよね、怪異とか。
 研究の一環でさ」

泳夢 >  
「……確かにそれは、一理…いや、二理あるかも~」

傍から見れば、車椅子で少女一人、それはあまりにも食べてくださいと言っているようなもの。
その傍に大人の男性が一人いるだけでも、周囲からの印象はガラッと変わる。

そして興味がある限り、ダメと言ってもまた来るというのは図星そのもの。
何れ機会を見つけて、少女はここにやって来ることになるだろう。
……最も、ここで目的としているものを見聞きしたとしても、興味が失せるかはまた別なのだが。

「お礼できるものはないけれど、先生にも利があるのなら、お願いします」

ぺこり、と少女はお辞儀をして、同行を頼むことを即決した。

廿楽 紫音 > 「よし決まり。
 でも大丈夫?こっから先はさらに道が荒れてるけど。
 車椅子じゃ厳しいんじゃない?」

道が荒れてるかどうかは落第街では危険度の目安みたいなものだ。
道にゴミが落ちてる、程度ならまだマシ。
コンクリが露出していないほどの瓦礫でまみれてる、なんてこともよくある。

たいてい、そういう所には”先客”が来ており、トラブルが待ってる事が多いということを紫音は経験で知っていた。

「ま、通れなさそうな道は負ぶってけばいいか。
 で、どこ行きたいの?」

泳夢 >  
「んー……まぁ、いけるところまでで十分です。
 抱えられるにしても、車椅子置きっぱなしだと、後々困りそうですし」

盗まれたり、解体されたり、壊されたり。
少なくとも適当に放置して無事では無かろうと、少女でも推察できる。

では運べばいいと考えてしまうが、電動車椅子は中々重い。
少女の体重の数倍は間違いなく重いそれを、流石に運んでもらうのは酷だろうと。

「"穴"の方に。そこからいろいろ出て来てるって話を聞くんで」

廿楽 紫音 > 「そりゃそうか。 ん、オッケー。

 …穴?穴ってもしかしてー・・黄泉の穴って奴?
 また珍しい所にいきたいんだなぁ。
 ま、いいけど」

黄泉の穴。といえば確かにここから近いが。
落第街からはまた毛色の違う”危険”な場所だ。
その分、なにやら不思議なアーティファクトやら魔導書やら…

「もしかして、穴で見つかる魔導書が目当てだったり?」

最初に会った時も魔術を知りたがってたから、もしや、なんて。

泳夢 >  
「たぶんそれです。
 実際どんなとこか…そもそも行けるとこなのか、確かめたくて」

だから、行けなかったら行けなかったでも良い、と彼女は暗に告げた。
車椅子じゃ辿り着けそうにないのなら、他の手段の模索が必要なのだから。

「んー…それもないではないですけど…。
 本命は……其処に”居る”……かもしれないやつというか…」

……と、其処まで言ってから少女は口を閉ざす。
否、思案する言葉そのものが曖昧になり、言葉に詰まったというほうが適切だろうか。
何にせよ、少女が其処を目指しているのには、相応の理由はあるのだろう。

廿楽 紫音 > 「怪異の方の、みたいな?
 怪異探すってのも殊勝だね~。怖いもの見たさってわけでもなさそうし。
 それに何か昔やられたとか?」

素朴な疑問を投げかけながら、マスクをつけなおして案内していく。
行けそうなところまでの付き添い、そこから先は…多分入るにはもう少し苦労しそうだけど。

「えいむちゃんも随分珍しい趣味もってんなぁ。
 ま、面白くて俺的には嬉しいけど」

泳夢 >  
「ん、怪異の方……。
 でも昔なんかあった、とかじゃないかな。たぶん」

こんな身体になる以前の記憶は少女にはない。
だから断言もできず、けれども形容しがたい興味と意欲がそこには在った。

「趣味…なのかなぁ?
 でもまぁ、勉強じゃない事だし、趣味って事でいいかぁ」

ぼやくように、少女は自身に疑問を投げかけながら、荒くなっていく道を進んでいく。
そうしていれば、やがては車椅子では少々難しそうな道へと変じていく。

安全を期して戻るのならばここまでが限度、であろうか。

廿楽 紫音 > 安全を考えて、なんてことは気にしない。
この娘はどうかわからないけど、自分はこのアングラな街の奥に興味があった。

だから、彼女が行くのならついていくだろう。
この今にも崩れそうな道のりを。

「いく?えいむちゃん」

泳夢 >  
少女はしばし考えるように義手の指先を口元に当てる。
目的地の"穴"はまだ見えない。
そこに至る道だけが、薄らと、穴のように続いている。

「……いや、今日は辞めておきます」

それか程なくして、少女はまだ平坦な道で車椅子をUターンさせた。
鬼が出るか蛇が出るか、それを確かめられるのならばよかったが……
魂が告げていた。今日は行くべきではない、と。
今はまだ、その道なりを確認できただけでも上々だろう、と。

廿楽 紫音 > 「いいの?」

穴は目の前というわけではないけど、もう目前だろうに。
急く気持ちもあるだろうに、…不安も交じってるんだろう。

「これは勘だけどさ。
 この先の穴の前、何度も行ったり来たりする姿が思い浮かぶよ。

 止はしないけど、踏み込んだ時は一瞬だ。
 なにか変わるといいね、そこに飛び込んだときに」

ちょっとだけ、教師の側の思考からのアドバイス。
これで何か変わるか、何も変わらないかは、今はぶっちゃけどうでもいい。

泳夢 >  
「……はい、今回はこれでいいんです」

彼の勘は恐らくだけど正しいだろう。
なにせ自分でも、もう数度は行き来するだろうという予感があるのだから。
しかして、自分の直感と言うものから目を逸らす事もまたできない。

だから、今はこれぐらいでいい。
何も変わらないならそれはそれで、今後もチャンスはあるのだから。

「たぶんそう、まだ早いって事なんですよ。
 機が巡るまで、変わらないほうが良いっていう」

……と。少女は自分の直感をそう解釈する事にしたらしい。

「それじゃあすいませんけど…このまま戻りますね?」

廿楽 紫音 > 「ん、帰りまで送ってくよ」

ここまで付き合ったんだ、最後に襲われたじゃ笑いものにもなりはしない。

「面白いもの見つかるといいね、えいむちゃん」

これは本心。
本心で、面白いものが見つかって、彼女自身が面白く変わっていけたらいいと思う。

そしたら、きっといいものが見れそうだから。

泳夢 >  
こくりと頷きつつ、また小さく礼を今一度伝えて。
 
「……そういう先生こそ、何か気になるものがあったから、付いて来てくれたんじゃないんですか?」

それからそんな、ちょっとしたカマかけを投げかける。
それもまた何とも形容しがたい直感のようなもの。
教師だから、というだけで、付き合ってくれたわけではないのだろうと。
推察にも満たない、妄想に近い想像からの問いであった。

廿楽 紫音 > 「ん?あぁー・・ないことはないけど」

頭を少し掻いて。

「強いて言うなら、えいむちゃんに興味があるって所だよ」

手足のない乙女に興味があった。
その体で、まじめ、、、ともまた違う、知識を求める様に少し異様さを感じた。
その探求の為に落第街の奥の奥までやってくる向こう見ずさも。

生物として謎多き少女に、知ってみたいという興味があったのは、事実。

「なんて、ナンパみたいか。
 さっき言ったように、怖いもの見たさかな?
 オレ、スリルは結構好きみたいでさ。リスクは負いたくないんだけどね。」

後は冗談めかして、そんな風に煙に巻く。
これもまた、嘘でもないし。

泳夢 >  
「私に? それこそ、ナンパでもそんなこと言う人、中々いないと思いますけど」

そう返すのは隠すことのない本心だ。
手足がないことに興味を示すのならば、まだ普通。
容姿を見て狙うとすれば、ある意味下種の思考。
真っ当なナンパをするのならば、車椅子の時点で除外だろう。

彼の言葉を借りて言うなら、一目でわかるリスクの塊が泳夢という人間だ。

だからこそ、興味の理由を怖いもの見たさと称されたのには、少しだけ驚いて。
けれどもくつりくつりと、変り者を見るような視線を向けて少女は笑う。

「何が出るかもわからないのに、よくやりますね」

落第街の外、帰路へと付く道を進みながら、肩を竦めて少女は語る。
彼の冗談を、同じく冗談で返すように。

廿楽 紫音 > 「何が出るかもわからないから、面白いんじゃない?」

やっぱりリスクの中にいるのは、面白いから。
そう言う意味で彼女は、火傷する可能性も大きい分、魅力的にも見えた。

異性としてはちょっと若いけど、そんなのは些細な差だ。


「何か面白いものが出るの期待してるよ。じゃ…そろそろいこっか」

車椅子を押して、そのまま、岐路に向かって。

泳夢 >  
「ガチャみたいで?」

ギャンブルを楽しむかのような心持、というやつなのだろうか。
少女に賭け事をする趣味は無かったが、それでも人々がそれが好きなのは知っている。
だから、冗談めかして返せるくらいには納得して。

「鬼も蛇も出てこなくても、がっかりしないでくださいね」

案外と、そう思われるのも悪くはないなと思いながら、車椅子に背を預ける。
今はその言葉を新設に甘えて、少女は帰路へと付くのであった。

廿楽 紫音 > 「笑えそうなら笑ったげる」

なんて、人の不幸をつまみにするのは失礼だろうけど。
でもこのくらいの冗談を言える方が、楽しいもんだ。

だからこの帰り道は、はははと笑いながら冗談言いつつ、帰ったことだろう。

ご案内:「落第街 路地裏」から廿楽 紫音さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」から泳夢さんが去りました。