2024/06/12 のログ
ご案内:「スラム」にポーラ・スーさんが現れました。
ポーラ・スー >  
「――あらあらまあまあ」

 青年の元に、あまりに場違いな、穏やかな女の声が響く。

「迷子さんかと思って追いかけてきたのだけど。
 なんだか困ったところに出くわしちゃったわぁ」

 口元を着物の袖で隠し、目を丸くして驚いたような表情をしている。
 その目は、光を反射しないほどに深い蒼色をしている。

「ねえねえ、おにいさん?
 あなたは学生さんかしら?」

 そう言いながら、上半身を左右に揺らしながら。
 ゆっくりと一歩ずつ、大柄な青年に近づいていった。
 

虞淵 >  
「───…何だ?お前は」

見下ろす巨躯の男。
さしたる興味の色を示す視線ではないが。

この地には色々なやつが訪れる。
異邦人、不法入島者、二級学生、そして怪物までも。
落第街を良く知る男の眼には、場違いとは映らず。

「無警戒に近づいて来るところを見れば、俺様のことを知らんと視える」

「学生、だった…が正しいな。
 知らん。学籍が残ってるなら、まだ学生だろ」

煙草を吹かしながら、そっけなくそう答える。
近くには、まだ重症の風紀委員がくたばっているままだが。

ポーラ・スー >  
「なんだお前、と聞かれたらぁ。
 通りすがりの、せんせーかしら?」

 す、す、と足音も微かに青年の顔を見上げられるような位置に移動しつつ、両手で口元を隠しながら目を細めて面白そうに笑った。

「ふふっ、もちろん、知らないわあ。
 だってあなたとは初めて会ったもの。
 ――初めまして、よね?」

 そうゆったりと首を傾げた。
 そして視線だけ風紀委員の少年の方へ向ける。

「まあ、生かしてはいるのね。
 殺してしまう方がよっぽど簡単そうなのに」

 そう言って、肩を揺らしながらくすくすと笑った。
 

虞淵 >  
「…先公がこんな場所に?
 通りすがるような場所でもねェだろうよ。適当なコトを言うな」

笑みを浮かべる女に見上げられる。
場所が場所だ。その様子を不気味に思う者もいるかもしれないが。
生憎、この男はそういった精細さには欠けている。

「さあな。お互い覚えてねェだけ。って線もなくはねェだろ。
 生憎俺様は喧嘩好きなだけで人殺しが趣味じゃねえ。
 最近はそんなヤツもウロついてはいるみてェだがな」

何が可笑しいのか、くすりくすりと笑う女を紅い視線が見下ろす。

「…それで?センセイはこんな場所に何の用だ」

じり…とフィルター近くまで吸い込んだ煙草を足元に落とし、踏み潰しながら。

ポーラ・スー >  
「あら、ここは『歓楽街』だもの。
 せんせいが通りすがることくらい、たまにはあるわ?
 なにせ、最近はすこぉし物騒でしょう?」

 楽しそうに笑いながら、ひらひらと袖を揺らした。
 青年の場慣れした雰囲気、貫禄とも言えるものを感じてなお、面白そうにしている。

「あら、わたし記憶力がいいから、そんなに忘れたりしないわぁ、たぶん?」

 そう答えて首を傾げつつ、青年の言葉に『ふうん』と興味と好奇心を隠そうともせず。
 かと言って倒れている少年を、助けるわけでもなかった。

「見回りついでに、迷子になりそうな風紀委員さんを追いかけてきたのよ?
 だからそんなに怖い顔しないで、暴れん坊のおにいさん?
 ――いもうとさんは、とってもいい子に学生をしてるわよ?」

 そう、相変わらず楽し気に笑いながら言った。
 

虞淵 >  
何が面白いのか、笑いを浮かべ続ける女。
確かに、落第街は歓楽街のエリアの一つ。
この呼称も非公式のものに過ぎない。
しかし確実にそこに在るものとして、学生に近づかないように言われていることもまた事実だ。

「風紀委員が迷ってりゃ世話ねェよ。
 だったらそこの雑魚を拾ってさっさと帰りな。生死をさ迷ってる」

生徒を助ける素振りすら見せない、自称"せんせい"に。
親指で意識のない風紀委員を示しながら。

「───………」

妹、という単語にその紅い眼が細まる。

「顔は生まれつきだ。
 ………お前がそれを知っていたとして」

「どういうつもりで口にしてんだ?
 妹は妹。今更俺が保護者面をする気もねえし向こうもそう思ってねェ」

ポーラ・スー >  
「そうねえ、拾って帰らないとダメそうねえ。
 でも死なない程度にしてくれたんでしょう?」

 『それに自業自得でしょう?』なんて言いながら、ひややかな目を半死半生の少年へ向ける。

「迷子じゃない、ただのおバカさんは少しくらい痛い思いをした方がいいわ。
 ここは腕章を着けて大きな顔をしていい場所じゃないもの。
 そうでしょう?」

 そう言いながら、青年を再び見上げて、蒼色を細く細く。

「ふふっ、別にどういうつもりもないわ?
 保護者面はしなくても、気にならないと言ったら嘘になるのでしょう?
 わたしには、あなたがそこまで身内に無関心になれる子には見えないわぁ」

 両手を合わせて、唇を三日月の様に大きく歪めて笑う。

「ああでも――ナニカのつもりで口にしてたら。
 あなたはもしかして、面白い事をしてくれるのかしら?」

 

虞淵 >  
「───気骨の在る奴なら再起してまた喧嘩を売りに来るからな。
 …言ってンだろうが。俺様は別に人殺しがしたいわけじゃねェ」

少しくらい、と言うには重症ではあるが。
そんなことを宣う女には特に言葉を返さず。
学園の教師も幅が広い、こんな考えの女もいるだろう、と。

「血縁を無関心だなんざ言い切るほうが不自然だ。
 それでも互いに別の道をもう生きてンだ。
 いちいち気にすることもしねェよ」

「さぁな。アンタにとって面白いことかどうかは知らねェ。
 此処は落第街だ。…アンタが二度とこの街を出られないカラダになったってそいつはよくあること、だ」

眉を顰め、見下ろす紅い視線は鋭く、冷たい。

ポーラ・スー >  
「あらまぁ。
 あなたも大変ねえ」

 青年が頻繁に喧嘩を売られているとわかると、ほんのりと同情の眼差しが向けられるだろう。
 そして青年の答えに、やんわりと微笑んだ。

「いいおにいさんね。
 でも、時々でいいから、気にしてあげるといいわ。
 だって大事な『かぞく』なのでしょう?」

 そう言ってから、どこか満足げにゆっくりと頷く。
 その表情は、歪な笑みが消え失せ、子供を見るような柔らかく穏やかな笑みに変わっていた。

「んふふっ、あなたが『わるいこ』だったら、それも楽しそうだけど。
 わたし、『わるいこ』以外にお仕置きをするつもりはないのよ?
 だからきっと、わたしは元気なまま、この街から帰れるわ」

 そう、紅をとても嬉しそうに蒼色で見上げた。
 

虞淵 > 「血が繋がってるだけだ。家族としての情はねェよ」

辟易したような表情を浮かべ、もう一本、煙草に火を灯す。
ステンレス製のZIPPOを仕舞い、再び視線を女へと戻して。

「元気に出ていきたいならさっさと失せろ。
 俺に喧嘩を売ってくるなら話は別だが」

「──あんまり人を買い被るのは辞めときな。
 今日はたまたま死ななかったが、加減をしても死ぬヤツは死ぬ。
 オマエが思うような『良い子』では決してねェよ」

何がそんなに嬉しいのか。
そんな笑みを浮かべ見上げてくる女。
鬱陶しさこそあるものの、不快という程でもない。
なので、とりあえず言動は"さっさとどこかにいけ"と。

ポーラ・スー >  
「あら、そんなこと言って。
 だめよ『かぞく』に、代わりなんてないんだから」

 す、っと指を伸ばして、青年の前に立てる。
 そして『めっ』と言いながら、子供を叱るような調子で眉をしかめた。

「そ、れ、に。
 『わるいこ』じゃないとは言ったけど、『よいこ』だとは言ってないわ?
 そしてわたしも、『いいせんせい』ではないもの。
 おバカさんが自業自得で、運も悪かったとしたら――わたしはそんな子を助けるつもりなんて毛頭ないわ」

 すぅっと、蒼い瞳を細め。
 口元だけ小さく笑った。

「まあ――わたしに救いを求めてくるのなら話は別だけれどね?
 よかったわ、今回はあなたと『おゆうぎ』をしなくて済むみたいで」

 くすくす、とやはり楽し気に笑いながら、血塗れの少年へと近づき、ひょい、と軽々持ち上げた。

「それじゃぁ、また会いましょう『おにいさん』
 今度は仲良く遊べるとうれしいわ。
 ――お酒とか、持ってきた方がいいかしら?」

 そんな事を言って、相変わらず愉快そうにしながら。
 少年を担いだまま、かろやかに立ち去って行こうとするだろう。
 

虞淵 >  
どこまでも、子供扱いをしてくる。
耳障りの良い(悪い)言葉を並べ立てて、女は去ってゆく。

それも軽々と、満身創痍の風紀委員を抱えあげて。

呼び止めることこそしないが、
なんとなしにその立ち振舞、言葉の奥行きに底しれぬものを感じてはいた。

『救い』だの『おゆうぎ』だの…
一見、男には縁のない言葉を多く置き去りに。

「…喧嘩売りに来る連中なら歓迎なんだがなァ」

また会いましょう。

また出会う予感に、後頭部をやれやれと掻きながら、男もまたその場を後にした──。

ご案内:「スラム」から虞淵さんが去りました。
ご案内:「スラム」からポーラ・スーさんが去りました。
ご案内:「スラム」に紅き死ノ花さんが現れました。
紅き死ノ花 > 要対策怪異

紅色


毒々しき紅色


その色をしたソレは


紅き屍骸、と

常世学園内では

そのような名で
知られている

紅き死ノ花 > 貧民の街に咲き誇る

大輪の花

鮮血の如き花びらを持つ巨大な深紅の花



毒であることを自ら示すような花

紅き死ノ花 > ―――そう

紅き屍骸の感染経路は

動物でなければならぬ
という事はない

紅き死ノ花 > 花に

意志が宿り

ソレに滾るは



 殺 害 欲

紅き死ノ花 > まるで意志を持つかのように

ぶわ、とばら撒かれる紅き毒の粉

悪意を凝縮したかのような


美しき紅色の風が街に舞い
降り注ぐ

紅き死ノ花 > ―――殺し切れなくともよい

少しでも傷つけられれば良い

痛めつけられれば良い

苦しめば良い




感染する可能性が1%でもあれば良い

紅き死ノ花 > 人知れず
貧民街のどこかが


紅色の毒に
悪意に


染め上げられた

ご案内:「スラム」から紅き死ノ花さんが去りました。