2024/12/20 のログ
紫陽花 剱菊 >  
空を、切る。
無駄なく投げられたるは白刃(はくじん)
月輪(がちりん)を反射せずの鈍い白。
命を穿つ切っ先が額に、胸に、胴へと同時に放たれる。
何よりも雄弁に、月下麗人へ返答とし弦が飛ぶ──────。

イスラ >  
「───」

笑みを浮かべるまま。
放たれた光閃は人影を4つに切り分けた。
白が散り、赤と黒が彩る様に。
猫の貪っていた塊の横へと、どちゃりと音を立て崩れ落ちる。
冬風に乗り、紅い飛沫は路地に散り血霧が舞った。

「──少しひどいんじゃない?」

声は、男の後ろから。

「この時代の服って複雑で再現するの、結構大変なんだから‥」

口をとがらせたような物言い。
千切れ富んだ筈の声の主は一糸まとわぬ姿で男の背後に佇んでいた。

「あ…。
 乱暴されるぅ~。助けてぇ~。犯されるぅ~。
 って大声あげてみたほうが面白いことになったかな…」

どう思う?と、にこやかに問いかける。
もはや"魔"の纏う空気を隠さずに。

どうせ、どういう存在かはバレちゃっているんだろうし───。

紫陽花 剱菊 >  
血潮が舞う。手応えはない

「…………」

人ならざる麗人と心得ている。
然るに不死の類。殺せぬ程ではない。
手間はかかる。白刃(はくじん)では命に届かず。
死闘と交えるには、被害を禁じ得ず、
民草を思うが故に、ままならぬ。

「……貴様が今迄踏み潰した命に比べれば、到底」

酷いことなど、有りはしない。
武人剱菊、振り返る事もなくさゆる程に零度が燃える。

「……、……其方の言葉か?
 或いは、今迄弄んだものの猿真似か?」

魔性が背筋を撫でおうて、慣れた仕草を崩すこともなし。

イスラ >  
「失礼な人だね…それじゃ、まるでボクが命を弄んでいるみたいじゃない」

地面に散らばった血肉が、ずるずると溶けてゆく。
赤黒い染みとなったそれは地面を滑る様にして、イスラの足元へと移動し白磁の肌を這い上ってゆく。
それらは再び制服の形を為し、形作ってゆく──ところどころに解れが見えるのは言い放った通り、再現が難しいという嘘偽りのない言葉か。

「ボクは仙人じゃないからね。霞を喰って生きるなんてわけにもいかない。
 踏み潰したなんてとんでもない。ちゃんと命にはボクなりの敬意を払っているよ♪
 キミみたいな人なら、ボクの言葉がウソかホントかなんてすぐに理解るんじゃないかな…?」

どう?と、歩み寄りながら言葉を投げかける。
その歩みは無防備だ。再び刃を震えばその身を斬り散らすことは容易だろう。

「そんなコトよりもっと身のある話をしよう♪
 キミは強いよね。 この世界では何番目? 下から数えたほうが早いなんてことはないよね?
 キミみたいなのがうじゃうじゃいるとするなら、ボクも身の振り方を考えなきゃいけないわけだからさ♡」

親しい友人に、隣人に語りかけるような、気の軽い口調。

「答えてくれても良い筈だよ。だってキミって、ボクと同類でしょ?」

紫陽花 剱菊 >  
一度振るえば生命が散る。
血桜が咲き乱れては、肉が芽吹く。
一切合切、如何なる存在を葬り去った。
立ちふさがる者、尽くを滅した。
是非も無し。戦人成れと生きてきた。

「───────」

見返り間際、白刃一閃(はくじんいっせん)
さやか、躊躇などあるはずもなき淀み無き一閃。
携えし白刃、打刀の鈍白と、血肉を浴びる剱菊の姿。
月光煌き、黒糸は紅と染まりてざっくばらんと翻す。

「……自然の定め成れば、人もまた血肉。
 然るに、貴様の言の葉には淀みがある。
 敬意とは、対等を示すもの。貴様のは思い上がりだ」

見下す故の軽薄さか。
何をいわんや、剱菊は怒りを隠すこと無く、怒気を強める。
死にはしない血肉の怪物。我ながら何と吠える、滑稽な。

「貴様と話す舌は持たぬ。
 我等の宿業は、生死の狭間のみ」

泰平の世に仇なす者、刃で語らう他無し。
即ち、武人は命をある種の理不尽、暴威。
麗人の言葉に同意せずとも、如何にして雄弁と表してしまったか

イスラ >  
一閃にて、悲鳴をあげる間もなく斬り飛ばされた身体は血露と消える。
赤黒い飛沫があちこちへと染みを造り、霧となって立ち込める程に色濃く──。

『寂しいね。意思疎通する手法を持ちながら争うしかないなんて。それじゃ獣と大差がない』

霧の中で聞こえる声は木霊のように反響し、男を包み込む。
男程に鋭ければ、すぐに感づくだろう。その霧、剣閃に散った血風の雫一つひとつが。
その場に有る"力"をこそぐ様に奪っていることを───。

「そう獣、人にはできないことを平然とできる。
 ……キミなら、"私"でも斬れそうだよね。どう?」

ず…と男の眼の前に形作られた姿は、童の姿ではなかった。
血の霧が、男の記憶を、過去を…僅かずつでも吸収したか。
赤黒とは違う"朱"が、男の眼の前に影を落とす。
男のよく知る。知りすぎている。会うことの敵わぬ姿を顕現させる。

それは──単なる"興味"。
"それ"を再現したら、この揺るぎない、迷いのない刃はどんな姿を見せるのか。
ほんの少しの興味に過ぎない。

紫陽花 剱菊 >  
欠落。某と言わぬ。機敏一つ揺らめいた。
存在の増幅。得も知れぬ軽さ、自らの何かが欠如した。
然るに、斯様こそげ落ちたと気づくのは数刻後。
鬼面宿して武人に作法に一寸の音も無し。
静寂よりて、然も当然とも居住まい。

「……話す相手を選んでいるだけだ。
 故に、獣を狩るならばより都合も良い」

獣心と謗るなら尚良し。
獣狩りには十二分。揺らぐ心一つも無し。
刃を撫でれば、立ち所に紫紺が揺蕩う。
稲光。如何なる者を断つ雷神の紫電。
稲妻が爆ぜる此方より、(うろ)は目撃してしまう。

「─────……!」

夢幻である。
決してその夕暮れ刻は見知らぬ景色。
鬼面綻び、感情に崩れて複雑怪奇。
度し難い表情は正しく剱菊に宿す、人心の"揺らぎ"。

紫陽花 剱菊 >  
 
 
               ───────兎角(とかく)、稲妻は振るわれた。
 
 

紫陽花 剱菊 >  
雷鳴轟く紫紺一閃。
然は然りとて、振るえてしまう
人心と共に強く根付く刃の生き様。
如何に親しく、如何に愛おしく、殺せてしまう


故に、戦人足らしめたのだ。

イスラ >  
紫電煌めく。その一閃に縫い合わせる様に、もう一条の紫雷が奔る。

「刃は記憶に因われない…」

「身体は刃でも、心はもう"人"だね…。
 ふふ、あるいは心なんて持ち得ないほうが、キミはキミ足り得たのかもしれないね──」

何にせよ揺らいだそれは、隙に他ならない。
己をまるで放たれた紫紺の一閃と同じく"変え"、まるで鏡写しの様に。
紫雷と化した"朱"は、辿り着けば人の…"朱"の形となり虚へと寄り添っていた。

「抱きしめてあげなよ? ずっとそうしたかったんでしょ? く、ふっ…ふふふふっ」

抑えきれない様に、見紛う筈のない顔から、唇から、異彩の言葉が漏れる。──同時に。
その身だ腕を伸ばし、男を抱きすくめる様に───爆ぜた。
身体を中心に華が咲くが如く、鋭い針が無限の花弁となりて、四方北方へと突き刺さる。

忘れられない愛は刺さって抜けない棘のようなもの。なんでしょ? "人"にとっては───

そんな嘲るような声が聞こえたか、聞こえなかったか──戦人には相応しからぬ人の心の棘へと、触れた。

紫陽花 剱菊 >  
「……あか……、……!」

吐露。既に遅く、互いの紫紺は綯い交ぜ爆ぜる。
怒号、紫紺が宵を切り裂くと寄り添う逢魔時。
変わりはしない。脳裏に過る素顔と瓜二つ(ありえざるもの)
面妖なり。見てくれど、寄り添う体温の気味悪さ。

「貴様……!!」

煮えたぎる(はらわた)より、戦人としての機敏が勝る。
爆ぜる寸前身を翻し、旋風筵の針を舞い上がらせる。
長槍。武芸百般の武人成れば、一蹴せしめてみせた。
舞い上がる砂埃の中、一歩、二歩、後退り。

「っ……ぐ、私は……"斬ったのか"……?」

張り詰める驚愕、恐怖。
然るに動いてしまった自らが憎い。
身体に傷は無くとも、確かに刺さった。
確実な急所、紫陽花剱菊を人たらしめる(モノ)に深々と。
如何なる武具より鋭く、如何なる毒よりも苦しむであろう。
引き際を弁えるからこそ、静寂が訪れた時、既に姿はなし。


麗人が紐解き、突き刺した毒牙は、如何様にして芽吹くであろうか……───────。

イスラ >  
愛すべき者の死の包容。
逃れて見せた武人を追うこともせず、咲き誇った紅朱の棘の花弁は血風へと変わり、(イスラ)を形作る。

「ふふ、逃げちゃった…♡」

パリ…と掌に走る紫雷に視線を落とす。
まるで稲妻。人にはありえない凄い剣速だった。
吸収(ドレイン)によって体験し得たそれは、明らかに人の領分を越えている。
でも、それでも心は人に近いものを備えていた。

「怖い怖い…あれで完全に人を捨ててたら……。
 いや、あれは後付なのかな…? ふふ、とにかく"人"である部分があって良かった」

ズ…。と一面に立ち込めていた紅い霧と赤黒い染みが、飲み込まれる様にイスラの足元へと収束し、身体へと飲み込まれる。
最初にこの場に在った様に、制服に身を包んだ少年…あるいは少女の姿が形作られ、ふぅ…と深く溜息をその場に零して。

「猫も彼も逃げちゃった。今日はもういっか…」

まだ身体に残る紫雷の残滓を感じながら、踵を返し白髪の童は歩き去る。

猫ちゃんは兎も角、また会えたらと思わなくもない。
かすかに、それでも確かに触れた彼の人の部分は、余りにも脆く温かで、心地の良いものだったから。

ご案内:「スラム」から紫陽花 剱菊さんが去りました。
ご案内:「スラム」からイスラさんが去りました。
ご案内:「スラム」にF.U.R.Yさんが現れました。
F.U.R.Y > 「…随分な荒れようだなァ」

スラムの一角、何物かが争った形跡のあるそこを眺め。
どうやら、この辺りで誰かしら共がやり合ったらしい。それだけならいつもの事、だが……

「手練れが二人、並の奴じゃねェな」

戦い、戦いだろうかこれは?
一人は争ってるという風でもないような、そんな感じもする。
もう一方の使ってるのは刃物か?斬撃の痕跡が少し残っている。

どうにも、妙な感じだ。
相当のやり手がいたのはわかるが、戦いはどうも中途半端に終わったような、そんな跡。

F.U.R.Y > 「オレの縄張りには来ないたァ思うが…」

来たら面倒くせェな。
場をかき回そうっつう魂胆が見える。こういう連中は殴った程度じゃ凝りねェ場合が多い。
来るなら、来るで追い返すだけだが……だとしても面倒な事が起きるには違いねェだろう。

「嵐が来る前ってカンジだな」

やることは変わらない。縄張りを侵す奴に容赦はしないだけだ。
とはいえ、嫌な気配。気には留めた方がいィか。


F.U.R.Y > 「…」

ここ数日、”縄張りにいた連中”が何人か消えた。
どいつもあてのねェ、学もねェ、力もねェ雑魚だ。
だから俺の所に縋りに来た、どうしようもねェ連中。

それが消えたからどうなる、と言われればその通り。
俺の知った事ではない。縄張りに勝手に寄ってきた連中だ、情なんざあるわけもねェ。

だが、周りでウロチョロされる分にはいいが……”気に入らねェ”匂い振りまく奴に近寄られるのも望まねェ。

それに……

「趣味の悪ィ真似しやがる」

乱雑に積み重ねられた、肉の塊。
その肉の匂いはよく嗅いだ事がある。
”人間”の肉だ。

大量のハエが集った血肉、殺しの跡。
自然の摂理だ。ここじゃ弱い奴はこうなる。

こんな光景、何度でも見てきた。





だからこそ、ムカッ腹も立つ。
”こういう真似”が元で、俺は”こうなった”。
あの日……落第街を燃やしにきやがった一人の風紀委員の暴挙のせいで。

F.U.R.Y > 「嫌な事思い出させやがって」

左腕の異形がきしみを上げる。
腸煮えたぎってる証拠だ。今すぐ何かを殴りたい衝動。
それを腕に籠めながら、怒りの炎をぐっと抑える。

これを解放するのは、”スジの通らねェ奴”がやってきた時だ。
今じゃねェ。

ご案内:「スラム」からF.U.R.Yさんが去りました。