部屋説明常世島の学園地区と学生・研究区の境目の境界に密集する医療施設群。
大小の病院のほか、小さな診療所や医療研究施設などが林立する。
また、病や心身に受けた大きな傷、異能性障害によって療養を余儀なくされた者たちを対象とした療養所、いわゆるサナトリウム的長期療養施設も存在する。
多くの病院では、休学を余儀なくされた学生に対して、本人の希望があれば遠隔での授業受講も可能な設備が揃っている。
それぞれの委員会は、機密の保護などの観点から独自に病棟や病室を所持している場合もある。

科学的な医療技術を用いる医療従事者のほか、《大変容》以後の情勢の中で出現した魔術医・巫医・呪術医なども医療従事者として活躍している。
霊障による障害なども存在するため、科学的手法だけではなく魔術による治療も現在では一般的になっており、ケースに合わせて臨機応変に治療が行われる。
《大変容》後の世界においては、「お祓い」・「狐落とし」・「悪魔祓い」なども、症例に応じて正しく用いられるのであれば、立派な医療行為の一つである。

これらの医療施設群の中でも規模の大きいものは生活委員会の保健・医療担当部門が主に運営を行っているが、医療系部活などの「私立」病院や療養施設も存在する。
なお、常世島内の医療機関はこのエリアにのみ存在するわけではなく、様々なエリアに存在する。
気軽に通うのであれば校舎内の保健室が待ち時間など含め推奨される。
また、担当の保健担当教員時代では保健室でも高度な医療行為を受けることは可能である。

将来医師を目指す学生に対しては、医師免許課程の中で本医療施設群での実習が行われるのが基本である。
常世島の医療技術は世界最高峰であり、常世島の外で治療不可能と判断された患者が、一縷の望みをかけて治療のために常世学園に入学するというケースもある。

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参加者(0):ROM(1)
Time:18:36:50 更新


ご案内:「某医療研究施設 〇ロ号処置室」から緋月さんが去りました。 (03/29-01:08:17)
ご案内:「某医療研究施設 〇ロ号処置室」からネームレスさんが去りました。 (03/29-01:07:49)
緋月 >  
「――難しい質問ですね。」

つい、真顔で考えてしまう。
人の歩んで来た、生命の歴史。17の小娘が答えを出すには、少々難しすぎる問題だが。

「これが、自分達に出来る「可能な限り良いやり方」だと思った以上は、
それを信じて進むだけです、私は。

それが罪かどうか、罰が下るのか……それはその時になってから考えましょう。」

言い方は真剣だったが、ある意味問題の先送りである。
割と図太いのか、あるいはそういう価値観なのか。

ともあれ、今は次の作業の為の休息に向かう事になるのだった。
(03/29-01:04:58)
緋月 >  
「詳しい大きさを知ってる訳じゃないですよ!?
身体があった時に、何度かお見舞いに来てましたから…その時は患者用の服でしたし。」

普段の服装よりは身体の線が出やすい。
つまりそういう事であった。種が割れれば大した事もない理由。

「分かりました、そういう事ならしっかり面倒と護衛の方、頑張ります。
まあ、今は兎に角先生に繋げられる身体をしっかり作ってから…なんでしょうけど。」

お仕事の依頼という形になれば気合も入る。
子供達と病み上がりの先生の護衛、という流れとなれば、子供達に気取られない程度に
真剣になりながら頑張らねば、という気持ち。

「人脈の開拓、ですか。確かに、そちらはあなたの方が得意そうな分野ですよね。

そして…肝心の相手は慎重派、と。
静かに、機を見て動く方の手合いか…確かに厄介ですね。
何を仕掛けて来るか読めない相手は…ええ、怖いというのとは、別の、嫌なものを感じます。」

仕掛け方が分からない相手程、相手にし辛いものはない。
必然的に後手に回らざるを得ないのが痛い所である。
相手の先手が、蜂の一刺し(致命の一打)とならねば良いのだが。

「分かってくれてるようで何よりです。
ちゃんと連絡、くださいよ。」

頼って貰えるなら、安心したように頷きつつ、その後に続こうとして、
(03/29-01:04:49)
ネームレス >   
「……始まりは(はい)からだというケド。
 骨髄には、血を産む機能もある。
 いまもボクたちの体内で、骨のなかで血が造られてるんだ」

肩越し、つくられた器官、骨。
神山舟によって再現された骨髄は、代謝し、造血するのだろうか。
いましも体に流れる美しく深い紅。光沢のない柘榴石。
多くの記憶と歴史を宿しては流れ続ける紅い河。

血。薔薇の色。多くのひとと関わり、より意識することになった自分の色。

「まるでひとつの命を育んだみたい。
 ……これは罪になると思う?」

施術室を出ながら、そんなことを。
気安い調子で、笑って問いかけたのだ。
(03/29-00:41:56)
ネームレス >  
「なーんでセンセのサイズ知ってるのかなぁ、キミはぁー?」

違和を口にする彼女に、わざとらしくそんな声をあげるのだ。
それでも――まだ、背後の、当の本人は起きない。
言葉を交わすことがあるのかどうかもわからぬ相手だ。まあ、エデンは聞いているかも。

「詰めてる時は、先生と子どもたちの護衛も兼ねて、って感じだね。
 ……やれそう?じゃ、そのぶんの報酬はちゃんと用意するから。
 しっかりお姉ちゃんをまっとうしてちょーだいっ。ボクのガラじゃあないしな、そういうの」

仕事の依頼、という形になる。

「……ボクはそんなこんなで、表立って動けないからさ。
 この件に関わってるヒトたちのなかで、顔見知りの相手のサポートをお願いされてるんだ。
 ああ、キミが引き合わせようとしたエデンにね。
 暇があるときに、何人か当たるつもりだ」

有名人になってしまったので、と胸を張りながら。
神山舟との共鳴がすぐに起こらないよう、いまは眠ってもらっているが。
現在の事件の関わり方は、そういう形になっている。
計画の阻止が第一ではあるが、自分がそのキーマンになることは、おそらくない。

「それとは別に、ちょっと難題も押し付けられてたりもして。
 ――気をつけるケド、クラインがそこまで気を逸らせる理由があるかどうかだね。
 ボクの想像していたよりも、更に慎重なヤツかも。
 臆病ではないぶん恐くはなくても、厄介な相手であることは間違いない。

 キミの力が必要になったら、そのときは……
 ……まあ、悔しいケドちゃんと頼らせてもらうから、……行こうか?」

離れてる時に不意を打たれたりなんかしたら、また怒り狂ってしまいそう。
そう考えれば、重々気をつけようという気にもなった。
それくらい想われているなんていう思い上がりも胸に秘め。
ひとつまとまったので、彼女を連れて一旦、施術室を辞そうとし……、
(03/29-00:41:48)
緋月 >  
「ああ…確かに、何か甘いものが欲しいです。
和菓子みたいに上品でなくていい、もっとこう、暴力的にあまいもの…。」

指摘を受けると、確かに甘いものが摂りたくなる。
炭水化物や肉はその次でいい。

「調整……。」

ちょっと想像してみた。違和感がけっこうすごい。

「…違和感が凄いです。」

思い切り言葉にしてしまった。
作った身体に繋げる予定の方に知られたら、ちょっと後が怖くなる会話と想像図だった。

「孤児院、ですか…。
先生、随分と長い事離れていますからね…子供達も、心配していないと良いですが。
うん、いけると思います。」

その子供達が、「人質」に取られる形になって、先生たちが風紀委員などに頼れなかった事を、
書生服姿の少女は知る由もなし。
彼女の内の友と、血の髪の人との間で交わされた会話を、内なる友は未だに黙して秘としていた。
もしも漏らしたなら、それこそそんな真似をした事にまたまた少女の頭に血が上るだろう。
其処の所、以前に内緒話をしていた二人は「分かって」いる方だろう。

「確かに、上手く繋いではい元通り…とはいかないと、授業でも習いました。
リハビリ、でしたっけ。ポーラ先生も、暫くそれが必要になるかもですし。」

先生や子供達の面倒や様子を見に行くという提案は、割とすんなり受け入れられそうな少女。
それが出来るようになるかは、また次の作業の精度次第だ。
内心、少し気合いを入れ直す。

「まだ動向不明、ですか…。それでも、あれだけ目立つ真似をしたんです。
逆にいつ接触してくるかが掴めなくて怖いですね。」

不意を突かれないように気を付けてくださいよ、と案じる声。
人間、誰しも思いつかない方向からの一撃には弱いのだ。
(03/29-00:25:37)
ネームレス >  
「食べてイイんじゃなーい?特に甘いヤツ。
 体が求めてるものは適切に補給すんのが、万全ってコト。
 キミがおなかがすいてる……物理的な餓えで強くなるならともかくだケド。
 チョコレートとか、いまなら甘すぎるくらいのカフェオレだって一気にいけちゃいそうだ」

糖分を体が欲している気がする。
公演の後の、塩を欲しがる体とはまた少し違った感じ。右脳の消耗とは斯くなるものか。

「にしても残念だよ。肉もボクに任せてくれればなあ。
 ボク好みのサイズにしっかり調整したのに……」

はあ、となんとも落胆もあらわに肩を落とす。どこのサイズかは言うまでもない。

「…………そか」

紙コップの中身を干して、水分を一気に体に取り込む。
視線を外して伸びをする。今ならぐっすりと眠れてしまいそう。

焔城鳴火(あのひと)、ポーラ先生がこうなってからオーフィニッジ…
 …孤児院?だっけ。そこで先生のかわりに子どもたちの面倒みてたんだケド。
 いま忙しくなって……学外にいて、生活だか保健委員会に委託してるんだったっけ」

ウソは言っていない。彼女への恩返し――になるとすれば。

「先生は目が覚めても、しばらくは今まで通りとはいかないと思うし。
 もしかしたら、また連中がちょっかいかけてくるかも。
 いろいろ落ち着いたら、先生と子どもたちの面倒をみるとかさ」

できる?と問いかけてみる。
介助というほど密接に世話をする必要もないだろうが、焔城が戻るまでは助けになる。

「あそこ、ボクの顔みると泣いちゃうコがいるんだよね……
 その点キミなら、普段は無害そうな顔してるし?
 ちっちゃいコが苦手とかなら、また考えるケドさ」

肩をすくめる。自分にはできないことでもある。
出来ることがあるとすれば、思いつくのはそんな方法。

黒幕(K)は、正直動向が読めないね。
 ボクを避けるか、会いに来るか……世間的にもちょっと顔が割れたからな、ボク……
 そのあたりはまた、なにか思いついたら話すよ」

会わせられるかは、難しいところだった。
一切接触がないまま、カレンダーの日付が進んでいる。
(03/29-00:01:03)
緋月 >  
「そこまで用意が済んでいるんですか…。」

仮眠室まであるというのは、正直有難い。
このまま作業続行も充分考えていたので、休みを入れながら作業が出来るのはとても助かる。
思い切り集中していたせいか、頭がぼんやり熱を持ったように感じる。
最も、蓮華座開花を使った時に比べればずっと軽い症状だが。

「そうですね…集中も途切れてしまいましたし、眠れるなら寝たい気持ちです。
頭がぼうっとし過ぎてしまいそうなので、食事は…控えめがいいかも知れないですけど。」

一度眠る事を考えれば、軽い食事でも充分眠気が回りそうな疲労ではあるが。
今更だが、随分と汗を掻いた感じもある。
下着や肌着が、思い切り肌にくっついている感触。

「――確かに。人ひとりの身体を…今まで生きてきた時間を、創ろうって言うんです。
一気に作るのは…それは、無理がありますよね…。」

口の中の水を飲み干すと、はぁ、と大きく一息。
中々長丁場になりそうだ、という見立てと、続いてかけられた質問。
少し、考えてから口を開く。

「……そう、ですね。
この件が上手く進んで、先生の目が覚めて。
動けるようになったのなら――きっと、それで「おしまい」にする事も、出来なくは…ないんでしょうね。」

依頼の方は無事に…自分の髪と目の色が変わった位で…済ませ、今回の施術が万事完璧に終われば、
以前の怒りと悔恨は…埋め合わせる、とまではいかずとも、傷としては小さくはなるだろう。
そこで、「おしまい」にしても…文句は、言われない、かも知れない。

「――――――――前に、此処に先生の心臓を運んで来た時、」

唐突に、以前の話に戻る。
それはもう、昨年も末の事。

「子供みたいに、お願いしますしか言えなかった私に、「任せなさい」って言ってくれた「先生」がいたんですよね。」

関りとしては、本当に、それだけ。
だが、あの人のお陰で、今こうして、この作業が出来る状況には持って来られた。

「焔城先生――でしたっけ。
あれきり、会う機会もないですけど。

――もし、あの人がこの一連の件に関わるか、巻き込まれてるなら――あの時の恩をお返ししたい。」

後は、と言葉を継ぎ、

「…強いて挙げれば、前とあまり変わらないです。
「K」のお陰で迷惑させられた…なんて軽いレベルじゃないですね。
その分の「返済」位、してやりたい…そんな、子供みたいな理由です。」

本当に、子供っぽい、エゴ丸出しの…故に、真っ直ぐな理由。
(03/28-23:43:30)
ネームレス >  
「………」

唇を濡らす。お腹を冷やすわけにもいかないので、こちらもちびちびと。
一気に干したい気持ちもある程度には渇いていた。
視線は横目に、疲弊の様子を視た。

「少し寝る? 仮眠室もあるってさ。
 ぶっ通しで最後までやろうとは考えてない。
 最高のパフォーマンスのためには休息も必要不可欠。
 ……ボクもちょっとシャワー浴びたくなってるし」

気遣う。必要以上のそれではない。最大の成果のために必要なこと。
汗ばんだ肌に張り付く髪。バンダナが吸ってくれているものもあるが。
想像以上の集中を要した。正直、手術着でも良かったかもしれない。

「人間がこうして生まれるまで。
 このかたちに成長するまで。
 ……進化するまで、すごく長い時間がかかってる。
 ひといきにやろうっていうのは、大変なコトなんだろうな」

大仕事だ。時間はかかるものだろう。

「あー、うん。それでさ。
 キミは今後(これから)どうするかって話。先生の目が覚めたら……ああ、
 臓器とか肉は、ちがうひとが別の技術でやるって話だから、
 桜が咲く頃になると思うんだケド……先生の目が覚めてさ。
 道具を使ったり、歩けるようになったあと、キミはこの件にどう関りたいかってコト」

護衛の仕事は全うし、少なくとも眼の前で行われた凶行、
それになにもできなかった――これを知っているのは朔との秘密ではあるが、
あれほど怒り狂っていた悔恨を取り戻せたなら、降りて日常に戻るという選択も当然あるだろう。
どうしたいか、を問う。常々のように。
(03/28-23:14:30)
緋月 >  
「……代替の手段があっても、生まれた時から、人は「これ」を自分の身体に持っている。」

問題なく動く脊椎の様子を見届け、大きく息を吐く。
考えた事は、正に今、血の髪の人が口に出した事だった。

「――すごい、ですよね。
何を言っても、今は、何だか…陳腐な言葉になりそうで。
それしか、言葉にならないです。」

今まで、自身が形を創り、友が細かい修正指示を出して、完成した、要となる器官。
それを成し遂げられたのも、他でもない、自身の身体の中に在る同じものなのだと考えると、不思議な気持ちだ。
人の身体は、それそのものが…ある種、奇跡にも思えて来る。

動いて、息をして、思考する。
その為に必要なものが、身体の中に全て詰まっているという事は。

「――えっ、ああ、はい。」

声をかけられれば、今までの集中の反動か、少し反応が遅れてしまう。
同時に、結構な疲労が――肉体的には兎も角、精神的にかなり来ている事が理解できる。

書生服姿の少女も、少し遅れて飲料水サーバーの方へ。
水を紙コップにそこそこ満たすと、軽く口を付け、口の中で温くするようにして少しずつ飲んでいく。
冷えた水を一気に口にすると、体調を崩しかねない事を知っている飲み方だった。
(03/28-22:59:49)
ネームレス >  
「ボクらの体内(なか)にもあるんだぜ、コレ」

奇しくも、似たようなことを考えていたかもしれない。
屈曲し、どこか蛇を思わせる稼働を見ながら、
少し猫背になっていた腰を伸ばし、反らしてみる。
体のなかにある数十の節の背骨の駆動。幸いなことに健康だ。理想的なほど。

「……代替となる手段も。
 いまこの世界には、いくらでもあるケド」

欠けて生まれた部分はあろう。
それでも互い、肉体、四肢五体は十全だった。

「……スゴいよな」

人間は。
汗ばんだ手のひらに視線を落とし、五指を開閉する。
それだけで、どれほどの機能が同時に働いているものか。
少しだけ現在から遠くを視る黄金瞳が、なにを視ているかといえば、
この肉体を授けてくれた、遠い、もはや触れることも叶わぬ……家族の記憶(こと)

「ねえ、緋月」

声をかけたのはひとまずの休憩だとばかり。
立ち上がると、飲料水を供するサーバーのほうへと向かう。滅菌室ではなかった。
最も肝要な場所は作り終えた。しかし、四肢も決しておろそかにしていいものではない。
作業領域でいえば、まだまだ大半の面積が残っている。
(03/28-22:48:51)
緋月 >  
頸椎、完了。
胸椎、完了。
腰椎、作業中。あと半数――。

ひとつの脊椎を作るだけで、随分と時間がかかるような気がする。
実際は然程の時間も経っていないのだろうが、集中力が極度に高まった状態の少女には
体感時間が普段のそれより、そして実際の時間の流れより、大きく、遅く感じられる。

(…………。)

主治医を務める麗人と同じく、少女の額にもじわりと汗の玉が浮かび、頬を伝って顎から落ちる。
形が定まった星空の色は、学園で見た事のある骨格標本のような色と質感へ。

(――――これは、奇跡だ。)

そんな事を、僅かな休みの合間に少しだけ考えてしまう。
小さな骨がいくつも連なる「それ」が、人の身体を動かす為の重大な役割を果たす器官。
それが働くからこそ、人の身体は「当たり前」のように動き、歩き、運動が出来る。
掌で掴めてしまいそうな大きさの、骨の柱の集合体が、だ。

緻密に作られたそれは、「生き物が動く当たり前」を実現する要と言える。
そんな身体を持って生まれ、自由に動かせる事が、当然で――同時に「奇跡」だと。
預かった学習書から、嫌と言う程学んでいたが、実物を目にすると、更にその気持ちは大きい。

(――感謝を、忘れられませんね。)

身体は大切に。
当たり前のその言葉が、実はとても重い意味を持つと、今更ながらに思い知る。

そうして、声をかけられれば、1つ大きく息を吐き、

「――分かりました。」

人の背骨の形となった神山舟へ、「動く」ようにイメージを伝える。
普段、己が身体を動かすように。走り、剣を振るう――とまでは行かずとも、日常的な行動を。

――果たして、作られた脊椎は反応を見せる。
まるで、人が動くかのように、確かな――理想と言える反応と動きを。
(03/28-22:36:28)
ネームレス >  
液体のなかに沈められた神山舟が、数を変え、姿を変える。
生命が育まれていくように、役割(かたち)を与えられていく。
硬質な組織体は、そうして輪を備えた連続性を持つ姿を得ると、
星空の色を、光沢のない象牙色へと塗りかわった。

ひとつそうして削り出されるたびに、
クッションとなる椎間板も同様の素材から創り出される。
集中しているがゆえに、時間は遅く感じるか、それとも速く感じるか。

ひとたび無言の時がくると、みずからの片割れと意を交わす彼女に対し――
こちらは唇を閉じたまま無言だ。じっとりと滲む汗が、次第に顎を伝い、胸へぽたりと落ちた。

同時に行っている、脊髄の生成――
脳から続く、人間の中枢を担う器官を編むことがこちらの役割。
かたちを削り出す彼女に、なかみをつくりだす己にと、
ふたつの視点でもって、擬似的で、かつ極めて本物と相似した人骨と髄が液体のなかに生まれる。

「………………、はぁっ……医療従事者のミナサマにはアタマが下がるな、ホント」

ひとりで行えば、どれほどの時間になったろう。単純な倍では効くまい。
そうして創り上げられた、首から伸びる30に迫る数の骨が連なった、一本の中核がつくりおわるころ、
思い出したかのように息を吐いた。

「動かしてみて」

首から一本の管がつながった、食べ終えた魚みたいな状態になってしまってはいるけれど。
それでもさっきに比べれば、いくらか人間に近づいた有り様。
背骨は、(ふし)だ。椎間板と骨の相互配置、そして脊髄がうまくいっているか。
同じく神山舟の所有者である彼女に、生まれた脊髄を動かしてみてくれと、
汗をにじませながらも、まだ疲れが浮かんでいない顔で頼んだ。
(03/28-22:15:09)
緋月 >  
「……そうですね。惜しいと言えば惜しいですが、私の手にも正直余りそうな代物です。
手放すと決めたなら、一番後の役に立つ形で、ですか。」

とても他言出来ないやり方で創られた代物。
しかし、創られたもの自体に罪があるかと言われれば、それは難しい。
手放すと決めたなら、ただ手放すよりは、手放しても惜しくないと思える形で使ってしまうのは、成程、悪くない。

「――――また、こんな時に答えるのがむつかしい質問をしてきますね、あなたは。」

訊ねられた事を一言で返すのは…正直、難しい。
覚えた事は頭に入っているが、そこからいちいち引き出さねば振るえない技は、果たして修めたと言えるのか。

兎も角。今はその答えは先送りにして置く事にした。
指示が出たなら、手を動かす番だ。

「背骨、ですね。……中々、重大です。」

背骨を傷めて――結果、神経に負傷を負い、身体の一部が不随となったという話は、割と聞く。
最初から最後まで楽などない作業と覚悟はあったが、初手にして最も重大な作業に、
しかし書生服姿の少女は躊躇わず手を動かし、神山舟を取り出して形を創っていく。

《少しズレがある。其処の、そう――其処を――》
(……こう、ですか。)

独立した思考を持つ友人が居るのが、この時は有難い。
己の主観のみに留まらず、もうひとつの視点からの声がある。

普段は刃を振るう手は、今はひどく繊細な作業に。
星の鍵を、己が手の中で形を変え、整え、新たな形とする様は、粘土細工というよりは飴細工のそれに近い。
助かる点があるとすれば、高温の飴の形を整えるような苦痛が伴わない事と、
冷えれば固まってしまうという「制限時間」がない事であった。
(03/28-21:50:57)