2025/01/28 のログ
■エデン-H-プランク >
「そうよね、それは驚くわよね」
うんうん、と妖精も同意する。
「突然、自分がもーっと可愛い女の子になってたら、誰だって驚いちゃうわ!」
その理解は、随分と少女とズレていたが。
この妖精の場合、それが本気か、わざとなのか測りづらいのが難点だろう。
「――緋月は謙虚ね」
くすくす、と愛おしそうに妖精は笑う。
もしそれだけの業を身につけたとして。
少女は一体、何を、どこまで、斬るのだろうか。
末恐ろしいとはまさに、少女の道先の事を言えるのかもしれない。
「そうねえ、完全に暴走していたものね。
最悪、大爆発が起きて島ごと沈んじゃったりとか――は、ないわね。
この島に限っては」
ふふ、と不敵に笑う。
そうなのだ、ここは「常世島」である。
並大抵の事では、揺らぐことはないのだ。
「あら?
もしかして緋月は、あの場所に行ったのかしら」
意外ではない。
少女には十分にその素質があり、また、同行していた魔術師にも十分すぎるだけの資格があった。
あの、原初の星の海へと踏み入れるだけの資格が。
■鄒 >
「その『人』というのは、志鳥の事だね。
意外だな、彼女の意識は、もう目覚める事はないと思っていたけれど」
そう言いながら、長身の医師が湯飲みにお茶を入れて持ってくる。
少女の前に湯飲みを置くと、自分は二人から少し離れて、研究室の椅子に腰かけた。
「志鳥は、エデンや僕の昔馴染みなんだ。
心身の制御に熟達していて、多くの人が彼女――いや、彼、かな。
志鳥から教えを乞おうと訪れたものだよ」
自分は少し濃いコーヒーを飲みながら、やはり懐かしそうに語った。
■緋月 >
「――あの人と話した時、最後にお二人に宛てて、どうか元気で、と伝言を預かっていましたが。
やはり、お知り合いだったのですか。」
妖精さんと白衣の青年の名を出した事で、何らかの形で面識らしいものはあったのだろうと
見当はついてはいたが…当たり、のようである。
「…私が星骸に呑まれて、意識を囚われていた、あの世界。
あそこから「覚める」目途がついた時に、引き込まれた…と言えば良いのか。
何処までも続く星の空と、何処までも続くような水平線。
起源の海・夢幻の星海、と、あの人は語っていました。
顔は…分かりませんでした。ずっと、後ろ姿しか見せなかったので。
其処で、「手合わせをしたい」と言われて。
一時的に、あの黒水の龍の身体を使う形で、私が相手になったのです。
その前に、赤い羽根のようなものも貰いましたけど……。」
其処まで言うと、ちょっと呆れた顔。
「――うちの文化人が、「ハンデなんているか」って、握り潰してしまったんです。
全く…あの時使わないでも、此処に持ってくれば悪だくみの材料にはなったかも知れないのに…。」
使う気はさらさらなかったのは確かだが、流石に握り潰したのは勿体ないと未練っぽい少女。
と、空気を改め、質問に。
「……あの人は、自分を「序列の十二」と語っていました。
13人の『星を追う夜鷹』…と。
――一体、あの人…いえ、『星を追う夜鷹』とは何なのですか?
それも…「これ」に関わりのある存在なのですか?」
そっと、星核が収められた箱を軽く持ち上げ、問いかける。
■エデン-H-プランク >
「まあ志鳥ったら、そういうのは、自分の口で伝えるものよ?」
そう言いながら、白い指先が青い結晶に触れる――ように見えるだけ。
実際は触れ合う事はなく、通り抜けるばかり。
少女の話を聞いて、妖精はおかしそうに笑いだす。
「ああ――もう。
そうね、確かにあの魔術師さんならそう言いそうだわ。
それに、志鳥らしい話」
まったくもう、と呆れたように言ってみせるが。
その声に滲む親しみは隠せてはいない。
そんな調子のまま、少女の問いに妖精は自信満々に、それこそどこか誇らしげに答える。
「星を追う13人――それは、私たちが確かにこの世界にいた証。
『星を追う夜鷹』は、叶わない夢のために集まった、たった13人の反逆者たちの事。
拳と刃を天へと振りかざした、理不尽に、不条理に抗う意志」
そう答えた時の、妖精の瞳には。
間違いなく力強い輝きが灯っていた。
「星核と関係があるか、と言われたら、そうね」
けれど、その後に続く言葉には。
「星骸と星核。
それらは、私たちが創り出してしまったものよ」
紛れもない後悔と、深い悲しみが滲んでいた。
■緋月 >
「うちの文化人も、同じ事を言ってました。
伝えられるかどうかが分からないので、代役ですみません。」
お人好しが出て来てしまう少女であった。
結局こうして、メッセンジャーをしっかり務めている。
妖精さんの語る言葉には、無言で耳を傾ける。
まるで、大事な過去を語るような、力強い輝きを放つ瞳と、言葉。
そして、続く言葉に感じられる、深い後悔と悲しみの響き。
「……これと、あの黒水を、作り出してしまった、ですか…?」
手の中の箱に収まる、二つの星核。
そして、この場にはないが、あの巨龍を形作っていた黒い水。
――よく考えれば、その存在の作られ方は聞いた事があっても、その「大元」までは知らない。
「……話したくない、と言うなら、無理には訊ねませんが。」
少し卑怯な聞き方だ、と自分でも思う。
それでも、話したい事があるならば、聞く準備はあると。
星を追う13人の反逆者達、そして星核と星骸の始まりについて。
無論、話したくない――あるいは、話すべき時ではないなら、深くは訊ねないが。
■エデン-H-プランク >
「もうっ、緋月ってばほんとにいい子なんだから」
抱き着く様に、立体映像が動いて、少女を抱きしめるように動く。
そして、少女の頭を撫でて、嬉しそうに笑っていた。
触れ合う事は出来なくとも、その真似事ならできる、と。
「いいのよ、緋月には知る権利があるもの。
ただ、今からすれば随分と昔の事。
13人の夜鷹が集まったのは、大変容の頃――大戦の最中まで遡らないといけないわね」
少女を抱いたまま、その肩に頭を乗せるようにして、妖精はすでに半世紀以上も昔の話を始める。
「このお話は、世界で一番の美少女と、素直じゃなくて可愛らしい科学者が、大戦の中を旅する所から始まるの。
美少女の名前は、エデン。
そして科学者の名前は――メビウス。
私たちは戦友で、ええ、きっと、親友だったの」
そうして、大きな大戦の影に隠れた。
小さな反抗の話が語られるのだった。
ご案内:「医療施設群 医療研究施設」からエデン-H-プランクさんが去りました。
ご案内:「医療施設群 医療研究施設」から緋月さんが去りました。