2024/08/20 のログ
ご案内:「研究施設群・第三会議室」にリビド・イドさんが現れました。
ご案内:「研究施設群・第三会議室」にDr.イーリスさんが現れました。
リビド・イド >  
 常世島北部。
 研究区として様々な研究所が密集している研究区域。
 その中を慣れた足取りで歩くものがいる。

「……とまぁ、この区域はこんな感じに賑わっている。
 多くの科学者が、切磋琢磨して研究に勤しんでいる訳だ。」

 最寄りの交通機関で待ち合わせ、研究施設群を軽く案内し──。
 ──込み入った『本題』を話す為に、会議室へと足を踏み入れる。

「少しはキミの刺激になったかい。Dr.イーリス。
 それとも社会科見学の授業は、退屈だったかな?」 
 

Dr.イーリス > 《英雄開発プロジェクト》について調べていると、リビド先生にやがて行きついた。
そうしてメールでリビド先生とコンタクトを取り、イーリスはリビドさんの研究所に訪れる。

しがない野良の科学者として、研究区には凄く興味があり、スラムの貧民だった頃も頻繁ではないものの極まれに訪れていた。
もちろん、実際に研究所に入れるわけではない。外から研究所を眺めるだけだった。
当然ながら、外と言っても、一般の人が入れる区域までだ。関係者以外立ち入り禁止区域に、イーリスは足を踏み入れた事はない。

「私、研究区にはとても興味を持っておりました。研究所を外から眺めている事はありましたが、研究所に入るのは初めてです。ここで、頭脳明晰な科学者達が、人類発展のために切羽琢磨しているのですね!」

リビド先生にご案内していただきながら、イーリスは研究区域を見回して瞳を輝かせている。
そうして、会議室へとご案内していただいた。

「とても魅力的でした! よろしければ、後ほどリビド先生の権限で許されている範囲で構いませんので研究所の内部も見学してみたいです!」

イーリスは双眸をキラキラさせながら、リビド先生にそんなお願いをした。

リビド・イド >     
「まあ、間違ってはいないな。
 多くのものが、自分なりの形でそうしているよ。」

 ほん少しの含みを持たせた口ぶりで、適当な席に座る。
 礼儀は適当でいい、と言わんばかりの気軽さだ。

「僕のプロジェクトは終わっているから、見せられるものはあんまないぞ。
 ……まぁ、来賓・生徒向けに間口を開いている所もある、社会科見学の名目で予約しとこう。」

 変わった形状の端末を開いて、パブリックな研究グループを見繕う。
 当たりを付ければ、予約を入れた。
 
「産業区・農業区向けの機械を開発している研究室の一つに予約を入れておいた。
 『生きるための食糧』を担う大事な研究室だ。話が終わったら案内する。」
 
  

「……で、本題に入るか。ここからは込み入った話になるから、改めて自己紹介をしておこう。」 
 

リビド・イド >  
「改めて。僕はリビド・イド。常世島では教師をしている。
 内容が内容だ。まどろっこしい話は抜きにしよう。」

 大きく息を吐き出し、間を作る。
 イーリスの瞳を、鋭いもので見据える。

「僕は《英雄開発プロジェクト》の主任で、⦅英雄継承プロジェクト⦆の主任とは腐れ縁だ。」
「同時に、僕とそいつは『門』を介して、少し先の異邦からやってきた人造の神でもある。」
「少し先の異邦の知識を下敷きに、両プロジェクトは稼働していた。」

 彼女の疑問を先回りするように、己の正体を明かす。
 明かすに至った心中は、窺い知れない。
 
「とは言え、信仰なき人造の神だ。造られた怪異とは何ら変わん。
 ……まあ、これで少しは話しやすくなるだろう。僕も思うところはあってね。」
 

Dr.イーリス > 「ここにいる皆さんは、ご自分の興味を持った事を探求なされているのですね! 素敵です!」

その純真な瞳は、リビドさんの含みを持たせた口ぶりのその意図に気づいていないようでもあった。
イーリスの瞳が示すのは、純粋な好奇心。
そうして、イーリスも席につく。

「《英雄開発プロジェクト》は……打ち切られておりますからね。ありがとうございます、リビド先生!」

にこっと笑みを浮かべて、リビド先生にお礼を述べた。
リビド先生が扱う変わった形状の端末を興味津々に眺めている。

「産業区・農業区に関わる機械! 凄く興味深いです! この島で消費される食料をつくるとても重要な機械……。まさしく、この島で人々が暮らしていくのになくてはならないものですね! とても楽しみです!」

イーリスは楽し気な笑みで、身を乗り出していた。
だが本題に入る、という事で表情が引き締まる。

「よろしくお願いします、リビド先生。改めて、私はDr.イーリス。落第街のしがない科学者です。今はエルピスさんと暮らしています」

リビド先生の言葉に、目を見開く。

「人造の神……。リビド先生は、神様だったのですね。継承プロジェクトの主任さんと同じ世界から訪れたという事でしょうか。神をも造り出す異界……。とてつもなく科学が発達しているのでしょう……」

イーリスが訪ねようとしていた事、こちらが問う事もなくリビド先生は教えてくださった。
人造神、イーリスはそんなリビド先生をとても興味津々に眺めている。

「人造神が造れてしまうような世界……どのような世界だったのでしょう?」

それはもう、人造神ならあの素晴らしき技術《感情魔術混合炉》を造れてしまうのも納得である。
本題はリビド先生の出身地ではないけど、イーリスの好奇心が知りたいと思ってしまった。

リビド・イド >   
「…………ああ、ありがとう、か?
 『彼』の事情は聞いた。複雑な状況となっているから、後で話題にする。」

 純粋な瞳と言葉に少々あてられたのだろう。
 大分考え込んだ後、皮肉を付けずに素直に受け取ったような、困惑気味な素振りだ。

「ただ、万能ではないな。
 発展の系譜が違うだけで、この常世島も引けを取っていない。」

 常世島に言及した一瞬だけ、口元が緩む。

「僕らが産まれたのは、喪われた信仰まで科学でどうにかしようとして、
 『やらかした』科学者共が要るからだ。人類の過ちだな。」

 ペースを取り戻し、問いに答える形で身の上を語り終える。
 自身が決して善性の生まれではないことを、皮肉交じりに含ませる。

「まあ、十中八九滅亡している。帰る気もない。
 ここで教師と研究者をやっているのも、大きな理由はない。
 望むものがいるからやっている。……まあ、この辺は神っぽいか。」

 身の上に矜持を持っていないらしい。
 どうでもいいことのように、話している。

 

Dr.イーリス > 後で話題にする、と聞いてこくんと頷く。
複雑な状況……。
エルピスさんは確かに複雑な状況……。
リビド先生なら、イーリスも知らないエルピスさんの事を何か知っているのかもしれない。

「人造神であっても、完璧な存在……というわけにはいかないのですね。技術は、どこまで追求しても完璧に近づく事ができない奥深さを感じます。だからこそ、楽しくもありますね。常世島の技術も、とても発展しておりますからね」

神様をも造り出してもなお、万能、完璧に至らない。
人類の発展が神様に行きついても、なおもそこが終着点ではないと感じさせる。

「信仰を科学で……それで、人造神が生み出されたのですね。発展の末の滅亡……。まるで、グレート・フィルターですね……。発展を阻み、滅亡させる壁……。」

イーリスは視線を落とした。
グレートフィルター。知的生命体が進化をしていく過程で、立ち塞がり滅亡に導く仮設上の出来事だ。一定の進化を遂げた知的生命体が、それ以上発展する事が困難とされる領域。
滅亡させる要因はAIの反乱だったり、核戦争だったりと色々考えられる。

「リビド先生もまた、信仰で動いているのですね。《英雄開発プロジェクト》も望まれて行われたものという事になるでしょうか」

神様らしい、という言葉にイーリスは微笑みながら頷いた。
人々に望まれて、何かをやる。願いを聞き届ける神様のよう。

リビド・イド >  
「……今、僕の嫌いな単語が出たな。
 根に持つつもりはないが、少しだけ言わせて貰う。」
 
 "完璧な存在"。
 その言葉はこの教師にとっては、好まぬ単語であったらしい。

 話題を遮って、口を開く。

「僕から見れば、機械(マキナ)は万能ではない。神は(デウス)絶対ではない。」
機械仕掛けの神など以ての外だ(デウス・エクス・マキナ)。完璧な存在を設計しようと思うなよ。」

 苛立った口ぶりで、八つ当たりの様に向ける。
 今にも暴れ出しそうな程に険しい表情ではあるものの、教師としての側面が衝動を抑え込んでいる。

「いや、言い過ぎたな。……造るのは人の自由だ。だが、造ったのなら自覚を持て。
 前向きに言うなら、造ったものはキミの力だ。決して甘えず、主従を逆転させるなよ。」

 口を挟ませずにそう言い切り、暫くの沈黙の後、口を開く。

「とは言え、ここを踏まえて貰った上で話をしたい。
 ……キミの準備が出来たら、本題に戻ろう。」

Dr.イーリス > リビド先生の主張をイーリスは神妙な表情で聞いていた。
どうやら、リビド先生にとって不快に思う事を言ってしまったようだ……。

「気に障ったなら申し訳ございません……。しかし、お言葉ながら、聞き入れられません……。私の技術が、《機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)》に到達するかは分かりません。いえ、到達しない可能性の方がむしろ高いでしょう」

イーリスは、リビド先生を真剣な眼差しで見据える。

「私は、科学が発展したその先が見たいです。出来るかどうかはともかく、完璧な存在の設計を私は目指します。《機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)》に到達してさえまだ完璧に行きつかないなら、私はその先を見据えたいです。グレートフィルターを恐れては、その先にある輝かしき神秘に辿り着きません。発展し続けてもまだ先があるなら、それを知りたいと思います」

リビド先生の苛立った口ぶりに、真っ向から反論する内容。
イーリスの好奇心は、どれだけ発明しても満たされず、常にその先を知りたいと思ってしまう。

イーリスは、微笑んでみせて。

「ご教授ありがとうございます。そうですね、機械は人類に役立てるためにあります。主従が入れ替わらないよう制御するのはとても大切な事ですね。そのあたり、私は徹底していたりしますよ」

イーリスのメカは、その多くが体内コンピューターにより制御されている。
数ある発明品は、基本的に主従がはっきりしていた。
例外として、イーリスそのものが紅き屍骸の“王”により殺害欲を植え付けられた際は、制御されているメカがそのままエルピスさんに牙を向けてしまったが……。

リビド・イド > 「……。」

「純粋な意志で、真っ向からの希望で反論されるのは久しぶりだ。
 エルピスが入れ込むのも分かる。いや、彼か。」

 イーリスの純粋な覚悟には、参ったと言わんばかりに口元を緩めて見せた。
 確固たる意思を示す反論は、この教師にとっては好ましいものであった。

「だから僕があの子(シズメ)を選んだという話は置いといて、本題に戻ろう。」

 明かすつもりのなかった理由を話題に混ぜて流し、本題を思い出す。

「まず、信仰っても神秘は無いぞ。そう設計されている。」

「そして、この世界で英雄を望まないものなどはいない。
 だから《英雄開発プロジェクト》は、あっちの主任との取り決めに則って行った義務だ。」

 行動理念に神秘は無い。それらは自分の力にしない。
 だからこれはただの設計だと、自身の神秘と信仰を否定した。

「ちなみに、故エルピスがやらかしたことで、今は両プロジェクト共に凍結状態だ。
 交互に活動し、互いに不干渉。あっちの主任とは、そういう取り決めで動いている。」

「だが『彼』はどっちの設計でも動いている。だからどっちも動けん。
 これが《英雄開発プロジェクト》の現状だ。設計理念は……キミの感想を聞こう。
 多分、そんなに間違っていない。