2024/06/02 のログ
ご案内:「訓練施設」に深見透悟さんが現れました。
深見透悟 > 「ライバルは海老フライだよ、前世はきっとチョコレイト……っと」

てぽてぽ、気の抜ける様な足音のオノマトペと共に、訓練施設の廊下をテディベアが歩いていた。
その中身は深見透悟、魂魄まで不可視と化してしまった、字面にするとちょっと意味不明な幽霊である。
今日は丹精込めて作った通常活動用ヒト型ボディが知恵熱を出してしまったので、特殊活動用クマ型ボディこと大切な宝物のテディベア『リリィ』の姿を借りての活動だ。

「いやしっかし、土塊で出来てるくせに知恵熱とかどっから熱出してんだろうな……」

てぽてぽ歩きながらテディベアが首を傾げて独り言。
訓練施設に来たのは人体理解の為の人間観察が目的だが、
思春期真っ盛りの男子的には人間観察にかこつけて可愛い女の子の頑張る姿を眺めたいというシンプルな欲望も同時に併せ持つ。

深見透悟 > 「さーてさて、時期的に天気が崩れがちなお外よりも屋内の方が利用者が居るだろうと踏んで来てみたけども。
 スタイル抜群なキュートガールとか青春の汗を流してたりしないかなあなんて期待してみたり」

ファンシーな見た目の癖して欲望駄々漏れの台詞をしゃあしゃあと口にする。
深見透悟とはそういう幽霊である。原動力は基本的に煩悩。
訓練施設のトレーニングルームの前に通り掛かる度にコソォ……と覗いてみたりするが、
日曜日という事もあってかあまり人は居なさそうで、
空き部屋であることを確認するたびに肩を落としてまた歩き出す、と繰り返していた。

「それでも俺はめげない、天っっ才魔術師だから」

もう天才も魔術師も関係ない煩悩塗れのいち男子でしかないけれど、
梅雨時の気圧の如く落ち込みかけた気を、ぐいっと持ち直させて崇高な目的へと邁進するのだ。てぽてぽと。

ご案内:「訓練施設」に天使 夕さんが現れました。
天使 夕 > 訓練をボイコットするのはお手のもの。
本日も不真面目な生徒を補習に連れ出した先生の目を盗み、スルリと訓練室から抜け出して身を隠せそうな場所を物色する。
そんな折、視線の先のT字路を小さなテディベアが闊歩していくのを見た。

「……クマ?」

誰かの能力かとも思ったが、周りに操作している人間の姿は見当たらない。
廊下の影に身を隠し、こっそりとぬいぐるみの後ろ姿を見据え、そろり、そろり……猫のように足音を殺して背後へと近づけたなら、

「…………かくほー……っ」

謎のテディベアを持ち上げ捕まえようと手を伸ばす。
けして素早いとは言えない、ゆっくりとした動きなので躱すのは簡単なことだろう。

深見透悟 > 「フッ……やっぱりさすがは常世島だ、そう簡単にむちぽよガールにちやほやされる未来にはたどり着けないってか……面白ぇ
 そっちがその気ならこっちだってとことんまで戦ったr……なんじゃあああああ!?」

本日通算12敗。内訳、覗いた空き部屋の数10。ちょっと遅れ気味の青春の汗を流してた筋骨隆々な男性教員1。
何だかよく分からない儀式をしていた集団1。
パライソとは容易にたどり着けないからこそのパライソ、と厳しい現実に直面し流石の天才も心がみしみし言い出した頃。
捨て台詞を履いてもう帰っちゃおうかと心で涙ぐんだところで、不意に背後から掛けられる声と共に確保された。
たとえ相手の動きがゆっくりであっても元々運動の得意でない魂の入ったクマのぬいぐるみ、勝敗はギリギリ相手に軍配が上がった。

「何だ何だ、俺なんて食べても美味しくないぞ!
 基本構成分は綿だからきっと腸閉塞とかになると思うし!……あ、そういうのが主食で内臓も特化された異邦人の方だったりする?
 ……じゃあ諦めるしかないか……」

あっさり捕らえられるも、もふもふと両腕を振り回しながら抵抗を試みる。
テディベアを確保したのが如何なる人物か、そもそも人物かどうかなのかさえうかがい知る事の出来ない状況ゆえにあらゆる事態を想定し、
何故か捕食されてしまうという結論に落ち着いて、ぐったりと抵抗を諦めた透悟であった。

天使 夕 > 「――!」

何とか捕獲したテディベアは、思いの外活きが良くて人間味に溢れていた。
ふわふわ、もこもこの布と綿で出来た体は柔らかく、一生懸命手を振り回す仕草は可愛らしいが、持ち上げている少女的にはマグロの一本釣りをして吊り上げた本マグロを抱えているときのような気分だ。

「ん、しょ。おぉー……」

ようやく大人しくなった頃、物珍しい生きるぬいぐるみをよく見てみようと、くるりと回してこちらに顔を向けさせようか。
何処からどう見ても愛らしい玩具にしか見えないそれに、小さく感嘆の声を上げる。
電池でも入っているのか、それとも魔法とかそう言う物なのか。はたまた誰かが操っているのではなく、本当に生きたぬいぐるみが童話の世界から迷い込んできたのか。興味は尽きない。

「喋るテディベア……初めて見た。……動くのも、初めて。私は、ぬいぐるみは……食べない……よ?」

だから、安心して良いのだと、何を考えているのかわからない眠たげな眼をして、ゆっくりとした口調でテディベアに語り掛ける。
ニコリともしない無表情はぬいぐるみを不安にさせるかもしれないが、そこは諦めてもらって。

深見透悟 > 「そんなこと言って、油断したところを頭がグパァ…って開いてこの布と綿の詰まったプリティなぬいぐるみを頭からバリバリ食べちゃうんでしょ!ホラーSFみたいに!ホラーSFみたいに!
 ……いや、さすがに常世島でもそれはないな。
 主食が布と綿のエイリアンとかいやまあ縫製産業的には恐怖の象徴みたいな生態だけども」

どんなホラーSFなのか、それは言ってる本人にも分からない。
ささやかな抵抗が割と功を奏していた事も知らず、無抵抗のままくるりと捕獲者に振り返らされれば、よく言えば大人しそう、悪く言えばなんか野暮ったい少女と対面させられた。

「ホントに?食べない?……なんか狭いボール状の携帯用カプセルに詰め込んで、似た様なぬいぐるみが現れた時に『ゆけっ!』って戦わせたりもしない?
 可愛い顔してエグい事するからなあ、あの世界……その世界の人だったりしない?」

無表情の少女へと穏やかなアルカイックスマイルのクマが問い掛ける。
多少雰囲気で表情を変えられているような気もしたのだが、哀しいかなクマのぬいぐるみ、表情筋に関してはほぼ皆無な為無表情という点では負けていないのだ。

天使 夕 > 「食べない。でも……美味しいなら……少し、味見はしても…いいかも?」

どう見てもただのぬいぐるみなので、まったくもって食欲はそそられない。が、その中に詰まっているものが綿菓子やスポンジケーキだと言うのなら話は別だ。残念ながら、その可能性は極めて低いのだけども。

「あぁーー……ん。 …………冗談」

SFホラーとはちょっと違うけど、目の前で口を開けて噛みつく真似をする程度に悪戯心を出す。小さく歯のぶつかる音が聞こえれば少しは恐怖体験をしてもらえるだろうか?
まあ、怖がらせるつもりは無いので早々に悪戯は止めにした。
そんなつぶらな瞳で、また妙な心配を始める声に緩く首を傾ぎ、

「うーん……。圧縮カプセル、は……聞いたことある。けど、私は持ってない。……貴方は、ポケットにINされて……戦わされるのがご希望?」

哀愁漂う声のせいで、表情なんてあるはずのないクマのぬいぐるみに濃い影が落ちたような気さえする。変なクマ。それが少女の中の第一印象となった。
このままでは不安症なぬいぐるみの妄想が大変なことになりそうなので、そーっと廊下に下ろして自分も目線を合せるように膝を抱えて座り込む。

「……貴方も、脱走中?」

深見透悟 > 「た、タベナイデクダサイー!」

悲鳴っぽい声は上げてみるものの、どう見ても今目の前にいる少女は主食:無機物な感じではない。もしそうだとしたら既に齧られてる気もするし。
そして目の前で少女の口腔内を見る実績を強制的にアンロックさせられた。
歯科衛生士でもなければアンロックしないんじゃないかと思しき実績解除に、流石の透悟も複雑な心境になる。そういうフェチ持ってなくて良かった。

「いやいやバトルなんてノーセンキューでございますですわよ!
 ……おっ、降ろしてくれるの? ありがとー、やっぱりこう地に足ついてないと落ち着かないよねぇ、ヒトとして」

廊下に下ろされれば足踏みするように床の存在を確かめて、ほっと胸を撫で下ろした。
そして改めて少女を見れば、わざわざ目線を合わせてくれさえする、根は良い子なんだろうなあと思わずほっこり。

「ほんで、ええと、キミはどちらさん?
 あ、俺は透悟。深見透悟っていうの、見ての通り今はテディベアだけどその実態は天っっっっ才魔術師!」