2024/06/03 のログ
天使 夕 > 相手の心の中に要らないアーカイブが一つアンロックされたことなど知るよしもなく、少女は変わらず変なぬいぐるみだなぁ、と眺めているだけだった。
地面に下ろすと何処か安心した風に見える。
ヒトとして、なんてテディベアから皮肉の利いたブラックジョークが聞こえれば、目を瞬かせて首を傾げた。

「……どういたしまして?」

お礼を言われることでも無ければ、どう致しますこともないはずだが決まり文句を返して
名乗りを上げる自称天才魔術師をぼんやりと見据えて、一応と言う様に小さく二度ほど手を叩いた。誰がなんと言おうと拍手だ。

「そう。深見……は、テディベア……なのに、魔術も使える……凄いぬいぐるみ、なんだ……ね?」

何やら間違った解釈をして首肯し、名乗られたなら返すべきと此方も薄い胸に片手を添えて言う。

「……私は、天使夕。テンシって書いて、アマツカ。……自由に呼んで良い。えっと……善良な…学生、をしてる。…よろしく?」

深見透悟 > 「いや、正確には凄いぬぐるみにもなれる天っっ才魔術師……あ、でも魔術師って別に人間に限った話じゃないか……
 ええと、まあ……うん! 凄いぬいぐるみで良いや!!」

柔軟に概念を捉え過ぎる所為で自己の確立があやふやになって来ているが、最終的に行き着くのは「俺は俺」なので問題無いテディベア。
得意げに胸を反らし、返される少女の名乗りにほぉーん、と頷きながら、

「天使と書いてアマツカ……天使って御使い様の事だよね?
 なるほど言われてみれば確かに御使い様っぽさがある、いや実は知り合いに御使い様が居るんだけど、言われてみりゃ似て………る気…が、したけど……」

ほうほう、と少女の事を眺めていたが、不意に言葉が濁った。
知り合いの天使に比べれば何と言うか、非常に……薄い。どこがとは言わないが。

「こほん。……まあ、御使い様って地域によって色んな姿をしてるっぽいし!
 ともあれ、アマツカユウ、憶えた。自由に呼んで良いならユウさんって呼ばせて貰おう。よろしくよろしくー!」

あくまでもそういう名前であって少女が天使であるわけではないので大変に失礼な事を言っているのだが。
言ってる本人(本クマ)はどこ吹く風で無表情なれどにこやかだった。

天使 夕 > 「? ……うん、深見は凄いぬいぐるみ。覚えた」

何か言いたそうにしているようにも見えたが、多分気のせい。だって本人が明言しているわけだし。
頷き返して問題は解決した。かに見えたが――

「うん、意味は……多分そう。でも、苗字だけで…ただの人間……本物じゃない。
 深見……は、御使い?の知り合いがいる…の?
 神様に仕えてる……ってこと? それは凄――――……………何?」

ぬいぐるみの語る話に機嫌を損ねる事は無く、むしろ興味を引かれ、相槌を打っていた。
……のは途中までで、その視線に違和感を感じ、スンッと静かになって問いただすような無言の末に尋ねるのだった。

「……ふーん。地域による、ね。私も……本物の御使い?って見てみたい」

「ん。…よろしくの、握手」

明るい声で一瞬固まりかけた空気も多少は軽くなったか。
よろしくと言う声に応えるように、丸いふわふわの手を取って握手をしたい。

深見透悟 > 「ユウさんも御使い様見てみたい?
 一応この学校で先生してるって言ってたけど、結構気分屋で自由人っぽいから、いつか会えるくらいの気持ちで居た方が良いかもだ」

失言というか失態度に場の空気が凍り付いた気がしたが、図らずも自然解凍されたらしい。
間一髪で危機を回避した事も知らず、能天気なテディベアは話中の天使を思い浮かべる。
きっと今頃もどこかでふわふわしてるんだろうなあ、と思いを馳せたところで我に返り。

「あ、はいはーい、握手握手ー」

ふわふわの手を少女へと差し出して、こちらから握るのは形状上難しいので相手を待つ。
そうして握手を交わした後は、新たな出会いに満足気に肯いて。

「よしよし、当初の目的は果たせなかったけど新たな知り合いを得られたので差し引き無しで大満足。
 ユウさん、俺、そろそろ帰ろうと思うんだけどユウさんどうする?……なんか脱走とかって言ってた気がするけど、このまま逃げ切る?」

行くなら途中まで一緒に行こう、と誘ってみたり。

天使 夕 > 「先生、なんだ。
 んー……うん、神様の使いなら…多分、厳しい先生じゃない……かもだし。会えるの、気長に待ってみる……」

件の御使い様が先生だと言われると、ついつい眉根が寄りそうになるが、いやいやでも、と途中で思い直して留まる。
自由人らしいその人を想像しながら話半分に聞いて、差し出された柔らかな手を取り握手を交わした。

「満足? それは……良かった、ね?
 ん。……そうだった。先生に見つかったら…連れ戻されて、補習……」

先生の怒り顔がチラリと頭によぎったが、今戻っても明日顔を合わせても、どちらにせよ怒られるのなら今は保留にしたい所存。
フルフルと頭を横に振って怖い先生のことを記憶の片隅に放り投げ、テディベアの誘惑にしっかりと深く頷いて答える。

「……一緒に行く。先生に見つからないように…静かに、そーっと……お願い」

頼もしいぬいぐるみの魔術師に願い事を一つ。

深見透悟 > 「オッケーい、任せといて!
 あ、ついでに抱きかかえて運んで貰えるとめっちゃ助かる」

少女とテディベアでは歩幅もだいぶ差があるため、非常にゆっくりとした進みになるのは想像に難くない。
まだ今日は何も怒られる様な事はしていない己はともかく、少女の方は何やらワケありの様子を察すれば、
運んで貰う方が逃げる分には早いと判断しての提案だった。

「その代わり逃げ切るためのフォローは魔術でするからさ。
 杖が無いから申し訳ないくらい最低限のフォローにしかならないと思うけど……」

例えばちょっとだけ二人の影が薄くなる、とか。
見つかった時に指向性を持たない小さな不幸が追跡者の身に降りかかる、とかその程度の魔術。おまじないともいう。

ともあれ、教師に見つかるか見つからないかはともかくとして、退屈はしない逃避行と相成った事だろう。

天使 夕 > 「りょーかい……。フォローはお願い、運ぶのは……泥船に乗ったつもりで、任せて…」

冗談か本気かわかりにくい承諾の返事と共に、相手の脇の下に手を差し込んで持ち上げると両手でしっかり抱きしめ、軽くてふわふわの毛並みに気を良くしては僅かに口角を上げた。

ぬいぐるみの魔術師が使う魔術は不思議で、他の生徒や先生がいる部屋の前を通り過ぎても誰も気づかない。
まるで透明人間になったかのような錯覚をしてしまいそうだ。多分、普通に声を上げたらバレてしまうのだけど。

小さな歩幅に合わせて歩くよりは多少早いが、少女の動き自体は変わらずとろくさく、一人と一体はのんびりとした歩調で廊下を進み外の世界を目指すのだった――。

ご案内:「訓練施設」から深見透悟さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から天使 夕さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に先生 手紙さんが現れました。
先生 手紙 >  
学生証で認証。板張りの床をぺたぺた裸足で入室するのが一人。

「えーっと、そうそうこれこれ」

訓練施設はトコヨスゴイキノウがあるのだ。端末をぴこぴこ弄り、

「……木人1、と」

ウィーン。床から木人が生えた。スゴイ!

先生 手紙 >  
軽く柔軟体操。手首をぷらぷら。足首をぷらぷら。

教本を片手に開き――実技の。えっ、定期テスト? ははは。ははは。

「えー、右脚上段」

教本を見ながらゆっくり脚を上げて木人の頭部に蹴り脚……ぴたり。

「蹴り脚を軸に跳び……左膝を顔面――いやストップモーションでできないでしょコレ!」

先生 手紙 >  
脚を戻す。

またゆっくりと……今度は連動。右脚上段、中段、下段は回して払うように。

ぴた、ぴた、くるん、 ゴッ

最後だけ回転分の速度が乗り、踵が木人の芯に入ってしまう。

ご案内:「訓練施設」から先生 手紙さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に先生 手紙さんが現れました。
先生 手紙 > (一旦止めてね。学生証をもう一度ピッします。)
先生 手紙 >  
「えー、何だっけ」
頁を開きなおす。今度は左脚。

下段回し蹴り、中段脇、上段側頭。リズミカルに。

コッ パンッ ガッ

「っと来て、よッッ」

蹴り脚を軸に飛び上がり、逆脚で膝。

ゴ。と乾いた音が孤独な訓練場に短く響く。

反動でやや下がり、三点着地。蜘蛛の力を得た超人系のアレで。

先生 手紙 >  
教本を置き、今度は両手でコンパクトに連打。

パコパコパコパコパコッ――…

終いに上下同時――山突き。 ゴン。

「……ぃ良し。温まってきたかな」

首を回し、指をパキリと鳴らし……また端末に向かう。

先生 手紙 >  
ぴぴぴっとな。役目を終えた木人がウイーンと床下に収納される。

「さ、て、と。次はー……」

ご案内:「訓練施設」に葉薊 証さんが現れました。
先生 手紙 >  
【対人/武器あり・想定】……と打ち込んでいた手を止めた。

「ンお」

キャンセルボタン。

葉薊 証 > 常世学園という学校は凄い場所だ。
何が凄いって、なんでもあるのが凄い。
義務教育課程では考えられなかった充実ぶりだ。完全に持て余している。

「やっぱりすごい広い…!」

以前も一度来たことがあるが、それでも広大な場内を眺めているだけでも楽しい。
中学の体育館なんて比べ物にならないその広さに圧巻の一言である。
動きやすさ度外視の制服で入場した今年入学したばかりの新入生。
初めてかのようにキョロキョロしながら内部を探索する。

目的は風紀の先輩にオススメされた木人を殴れるという訓練施設。
教えてもらった通りに進めば、先客がいたようだ。

彼も木人を殴りに来たのだろうか?

「こんにちは。木人を叩ける場所はここですか?」

先客の生徒と思わしき人物に立ち止まって微笑みかけながら挨拶をする。
同級生だから全員分かるという訳ではないが、知らない人だ。
先輩だろうか?

先生 手紙 > おお。目がきらきらしている。見たところ一年生……かな!

「あいあいお晩サン。木人もヒトも叩ける場所は此処ですよー」

端末の前に立っているのでおいでおいでする。

「おれ三年のセンジョーね。君は?」

葉薊 証 > 「僕は一年生の葉薊 証です。よろしくおねがいします」

誘われるままに歩み寄りながら明るく挨拶。
名乗って、軽くお辞儀。先輩に対する礼儀としてこれぐらいは普通の事だろう。

「委員会の先輩に木人を叩いてみるといいって言われてきたんです
でも木人なんて初めて聞くもの全然分からなくて。
もしよかったら教えてもらえませんか?」

木人と聞いて、最初はそういう種族かと思ったぐらいだ。異邦人差別と一瞬勘違いして焦った。
サンドバックの様なものと聞いているが、一体どんなものなのだろう。

先生 手紙 > 「葉薊クンね。よろしく」

こちらはチャラい。手をひらひらと振るに留める挨拶だった。

「委員会? 木人叩いてこいって言いそうな連中でパッと思い浮かぶのは風紀かなァ」

武にしろ魔にしろ、力が求められるところだし。

「ンで木人ってのはアレだね、打ち込み稽古で使うー、実物見た方が早いか。ぴぴっとな」

先ほどのデータを履歴で再アップロード。ウイーンと床下から木人Aが生えるのであった。

葉薊 証 > 「そうですそうです。僕風紀委員の新人なんです」

二か月経っても未だ新人。危ない仕事は一切させてもらっていない。

「それでどれくらい出来るかやってみろ、って言われたんです
データもとって来いって言ってました」

結果次第では簡単な任務への同行が許されるとか。
と言っても危険性の低いものになるようだが。

「おー 案山子みたいですね」

遠目に見たら一瞬人と間違えそうな形状。そんな印象。
近くで見る分には違う。

「さっそく叩いてみてもいいですか?」

少しうずうずしながら尋ねる。
ここでならある程度自由に異能を使っていいと聞いているからだ。

先生 手紙 > (風紀委員と縁があるなァ。いやきっと治安の問題だろう。なにせ彼らが存在しなくばこの学園の無法レベルが爆上がりすること山の如しなので。)

「ふぅン? なら存分に叩くといいよ。おれもさっきまで殴ってたし」

――超常を常とするのがこの学園だ。木人の一体や二体、ぶち壊すことは前提よりも前にあるだろう。

「モードも色々あるから、今度教えるよ。異能も魔術も使い放題だぜ?」

葉薊 証 > 「わかりました…!証、木人を殴ります!」

存分に叩くといい、その言葉にふんすと興奮を見せる。
元々喧嘩が好きという訳ではないが、体力を持て余していたのは否めない。
運動では発散出来ないそういう何かが異能にはある…!

「まずは…!」

木人に近づき、映画で見ただけの空手のような姿勢をとる。
腰を落とし(落とせてない)、拳を引き(がたがた)、体を傾ける(変な方向)。

(この興奮を…力に!心象具現!)

木人を殴る、という行為に対する興奮。
異能を自由に使えることへの解放感。
その二つが混ざり合った気のようなオレンジ色のエネルギーが引いた拳に集まる…!

「ハー!」

ドへたくそな正拳突きのような技を放つ。
素人丸出しの情けない姿勢で放たれた正拳突き擬きは、木人に直接は当たらなかった。
だが、拳に集まったエネルギーが木人に向けて飛び…

小規模な爆発を引き起こした。
小規模だが、外側へはじけ飛ぶエネルギーが木人の表面ではじけ、風を生む。
木人は無傷だが、爆破痕がしっかりと頭部っぽい部分に残った。

「おおおおおおおお!」

久々の異能の無制限の行使に興奮冷めやらない様子。
小さく跳ねるように全身で興奮を表現している。

先生 手紙 > 「おおおおおおおお!?」

挙動を見て「格技素人かなー」とほのぼの眺めていたら流石の常世学園。見事なまでに外じゃ見られないブツが飛び出したのである。

ピーーーと音が鳴って木人のデータにダメージが記録された。

「えっ何いまの。ハドゥーケン的なアレ?」

葉薊 証 > 「そんな感じです!」

笑顔でふり向き応える。
異能についてべらべら話したい気持ちはあるが、必要以上の異能開示は良くないと聞いた事がある。
エネルギーの放出、という意味では間違っていないと思うし、まあいいや。

「もっと打ってみます!」

再び腰を落とし、うららら!と雄たけび?を上げながら連続パンチ。
一見、平均以下の体躯から放たれる小学生の喧嘩顔負けの貧弱パンチだが、その一発一発から先ほどのような爆発するオレンジ色の気弾が放たれる。
先ほどよりも薄く、一発一発の威力も下がっているが、それでも確かな威力が木人を連続して襲う。

(たのしい…!)

身体を動かすだけでは得られない興奮を感じつつも、興奮が高まるのと反比例するように尽きたのは体力。

「おら…ぁ!」

へなへなのパンチの先から最後の爆発がはなたれ、木人に着弾。微弱に爆ぜると同時に尻もちをついた。

「ハァ…ハア…」

体力なし。そのまま後ろへと倒れ込んだ。

先生 手紙 >  
「フツーに授業で武術あたり選択して覚えたらおっかない化け方しそうなー」
軽く笑っている。波動のあれそれは武術の先っぽくはあるが、順序が逆なのは異能故か。なんにせよ伸びしろ充分――かどうかは教師陣と風紀の先輩方の判別するところだろう。

ピピピピピ、と彼が倒れたタイミングで端末の戦闘ログを記録する。自分の携帯端末にそれをダウンロードして、彼にオッツオッツと言いながら近づく。

「まァ、能は隠してナンボだしあれこれ聞かないでおくよ。今の木人ダメージ値出たから送ってあげるよ。あと水飲む? 空けてないやつあるし」

もう片方の手に水の入ったペットボトルを揺らし、空いてる方の手で彼に手を差し伸べるのでありました。

葉薊 証 > 「いろいろ…ありがとうございます…
水いただきます…!」

差し出された手を掴み、よいしょと立ち上がる。
急に動いた故の息切れだからか、そこまで辛くはないが、それでも自分の体力の無さをひしひしと感じる。
もっとしっかり運動するべきだろう。体力づくりも。

「生き返る~~~」

水を受け取ってごくごくと胃袋へ流し込む。
一口で三分の一程度を飲んでしまった、勿体ない。
でも、運動後の冷えた水は至福だ。仕方がない。

水から幸せを摂取して、息を整えながら先輩の方を向き直る。
この人はどういう戦い方をするのだろう。少し気になったのだ。

「そういえば、先輩はどういう風に戦うんですか?」

正直戦う風には見えない。自分が言える事ではないのだが。
尋ねてみよう。

先生 手紙 >  
うーん素直。さぞ委員会で可愛がられていることだろう。

水の一本で幸福を全面に感じられるスレのなさ。見習いたいね。

と、

「ン、おれ?……まァ、そもそも戦いは無い方がラクでいいよね。でもヤることになったら何でもするかなァ」

煙に巻くような言い方だが、異能の端を――秘密の一つを見せられたのだ。のらりくらり躱すのはこう、その、アレだ。不義理、というモノなのだろう。

「説明するのが億劫という理由で一手だけやるから、見ててよ」

元々ひとりで、ソレの為に此処に来たのだ。端末に戻り当初のデータを入力する。

【対人/武装あり/剣術中級】


――木刀を携えた剣道部員のような人形がウイーンと生えた!

葉薊 証 > 「それはそうですね」

まだ少し荒れた息を整えながら相槌を打つ。
戦わなくていいのなら、確かにそれがいい。風紀委員に入った以上そうも言ってられないのだろうけど。
それを望んで入ったのだからそれは構わないけど。

「おお、お願いします!」

手紙の言葉に目を輝かせる。
先輩がどうやって戦うのか、シンプルに気になる。
地面から出てきた木人は武装つきのもの。
実践に近い物が見られると思うと興奮する。
邪魔にならないように、少し離れる。
そして、一挙手一投足見逃さないように見つめるだろう。

先生 手紙 > さて武器持ちか。徒手で相手取るにはひと手間かかるが、生憎とソレを持ち合わせているのも常世の常。

トーン、トーン、とゆったりとしたリズムでステップを刻み、正面で正眼に構える剣道木人を視界に入れる。

トーーーン。着地。そのまま倒れるように脱力――膝を抜いて……瞬間。次の一歩は重力のベクトルを下から前にズラされる。結果として、その一歩は間合いを一息で食らった。

俗にいう、縮地と呼ばれる脚運び。今更ながらに振り上がる木刀……がら空きとなった懐まで這入り――肘を、木人の前進に合わせてその胴に置く。

――八極・裡門頂肘(りもんちょうちゅう)――!

先生 手紙 >   
ごすん、と太めの音がした。

葉薊 証 > 「おおおおおおお!」

ぶっちゃけ何が起きたかさっぱりだったが凄いのは分かったので騒ぐ。
別に適当な反応してる訳じゃない。何が起こったか分からなかっただけだ。
目を丸くし、ぱちぱちと拍手してみせる。
自分のなんちゃって武術擬きとは違ってしっかりとした武術。
凄いぐらいしか感想が出てこないが、とてもすごい。

「凄いです先輩!」

ぱちぱちと拍手を続ける。

それにしても、先輩はあの口ぶりからして風紀委員ではないのだろう。
という事は、風紀委員の先輩はもっと強いのだろうか?
恐ろしい話だ。まだまだ自分は弱いのだなあなんて思ったり。

先生 手紙 > 「……ふぅッ」

上手く入ったようだ。これが生きてる人間で、真剣だったらどうだろう。などと思いつつ膝と肘の確認。ヨシ。きちんと動かし、きちんと当てればそうそう痛まないのが人体だ。

「まァこんな感じで。おれの手札は万能型じゃないからさ。手札の切り方で……ってなンかハズいな! 内緒だぞー」

拍手に「よせやい」と手をひらひらさせる。

「……おれ模範生徒じゃねえのよな。だから腕を磨くより風紀委員に目ェ付けられないようにバレないムーブをしてるワケです」