2024/08/12 のログ
ご案内:「【期間限定】常世大ホール 常世島関係物故者慰霊祭 会場」にシアさんが現れました。
シア > ――これはいつかの出来事

「慰霊……」

人の死を悼み、人の死を想う行事。
少女の目の前で、多くの人間が花を添えたり、祈ったりして去っていく。

「……不思議」

少女は小さく首を傾げる。その行動の意味がわからない

「終わりだよね、死んだら。」

小さくつぶやく。
思えば、先日怪異と戦った時にミアは憤っていた。
それは、怪異に喰われ殺されたことへの怒り。
そして、怪異に喰われ殺されたことへの哀しみも抱いていた。

なぜだろう?

シア > 「……」

なんとなく、ジャージの下にしまったグルカナイフをいじる。

「わからないな、ボクは。でも。
 霊とかになってるのかな、死んだじいさまも」

また、小さく首を傾げる。
霊、というものがもうよくわからない。
死んだのなら、死んでなければいけない。
死んだモノが出てきてしまったら、ダメだろう。

「……」

じっと、祈りを捧げる人たちをまた見つめる。
誰も彼もが真剣そうに祈りを捧げている。

「祈っているんだろう、一体何を?」

シア > 「なにも言ってくれないのに、死んだ人は」

死者は語らない。それは事実だ。
ただ、異能という力が蔓延っているこの島であれば、ひょっとしてそういうことが可能なのかもしれない。
そう思ってきてみたが、やはりそんなことはないようだ。

「……残念だな」

ぼそ、と口にした。

ご案内:「【期間限定】常世大ホール 常世島関係物故者慰霊祭 会場」に廿楽 紫音さんが現れました。
廿楽 紫音 > 「慰霊の意味、知らない?」

ひらり。
物憂げな少女の方に向けられた、声。

銀色のくるくる髪と、虹色の光彩の瞳を持った長身の優男が、にこりと笑っていた。

「やっ。
 何か悲し気?物憂げ?だったからつい声かけちゃった。
 
 慰霊祭に思うところでもあんのかなー、ってね」

生憎青年にとっては、この島で縁のある者で死者は出てない。
だからこの場所も偶然、ふらりと寄っただけで回りほどの熱はなかったけれど。

「この島で知り合いが誰か死んだ?」

なんて。
軽い口調で尋ねてみるかも。

シア > 「……」

声をかけられた。
小さく首を回してそちらを向けば、銀髪と不思議な虹色の瞳の男が立っていた。

「知らないと言うかわからない、慰霊の意味が」

正確にはそういうことだ。
だから、不思議でしょうがないのだ。

「死んではいないよ、この島では」

それは見当違い。
だから、此処にいる意味はない。
慰霊、というものを見に来たというのが正しい。

「……貴方は?」

当然の疑問をぶつける

廿楽 紫音 > 「簡単簡単。
 生きた人間が踏ん切りつけたり忘れないようにとか、そういうのが根本の理由なワケ。

 墓も同じ。死んだ連中じゃなくて生きた人間の気持ちの整理をするために、金かけて準備しまくって線香炊きまくったりするの。

 宗教によってその理屈は結構変わるけど、意図するものはだいたいそんなもん」

だから、必要ない人間には無用のものだ。
自分のように。

「俺?あー…ここで教師やってるモンだよ。
 ってもまだ2,3か月くらいしかやってないんだけど。
 
 君中……高校生?ならどっかで授業受けるかもしんないね。
 廿楽紫音(かぐら しおん)ね、よろしく」

ははは、と顔面が崩れない程度に笑い。
慰霊碑の方をとりあえず、眺める。

「死んだら終わりなのにね。
 生きてた奴は死んでもだいたいの奴は何か残すんだよ。子供とか、友人とか。
 だからこんなもんが必要になるワケ」

シア > 「なるほど。
 生者向けなんだ、死者向けじゃなくて。
 理解した、変なことするなと思ったけど。」

死んだらそれでおしまい。誰かが一人抜けるだけだ。
抜けた分の補填は必要だろうが、それ以上でもそれ以下でもない。
なるほど、そういう意味では生者が納得する必要は……あるの、だろう、か。

「先生、ああ。
 よろしく。シアだよ、ボクは」

授業をサボっているわけではないが、とりあえずあった覚えはない。
でももしかしたら、この先どこかで授業を受ける機会もあるのかも知れない。
ひとまず挨拶を返す。

「うん。終わりだよね、死んだら。……そう思うんだ、廿楽先生は。
 じゃあでも。こんな施設があるの、どうして?」

この教師は必要性を感じていないらしい。
それなら、こういった施設は本来必要ないのではないか。
なぜ、存在するのか。作られた理由はわかるのだけれど、作る必要性があったのか、という疑問である。

廿楽 紫音 > 「それじゃ耐えらんない人がいるから」

貴方の問いに、ぱっと返答を示す。

「俺はそんなに気にしないんだけどさ、世の中にはいるのよ。
 恋人だとか、親だとか。そういう”自分の中枢に位置した人間”の死に心が押しつぶされるような人らが。
 だから、祀って忘れないようにしたり、やるだけやったって忘れる手助けをしたり…
 死んだ後には天国が待ってるって幻想で死に救いの設定を付与する感じ?

 結局、感性は人それぞれだし?
 で、俺くらいさぱっとしてる奴っていうのはまぁ…ほどほどに少数派なワケ」

もしくは。
自分にもどうしても大事な人、なんてのができたら変わってくるのか。
出来てみないとわかりやしない。

「シア…ちゃん?はどう?
 死者に会いたいと思う?死者を弔って割り切りたいと思う?
 自分が死んだときにどっか良いところに行きたいと思う?

 そういう風に思うなら、この施設はそういう想いの為にある…んじゃないかねぇ」

あくまで一般論。
本人にとってはそういうもんか、と思ってる程度のものだけど。

「さっきの口ぶりじゃ、死んだ誰かに何か言ってほしそうだったけど」

シア > 「耐えられない……」

耐久力の問題だった。
それにしても、心が押しつぶされる。だから忘れないようにする、だから忘れるようにする。
不思議なものだ。矛盾した、どちらにも対応できるというのか。

「少数派……そうかもしれない、確かに」

また祈りを捧げに来た人を見て、考える。
もう、何人目だろうか。確か、いまので29人目だったと思う。
まだいるだろうし、もっといただろう。
こういうことをしたい人が多数派なのだろう。

「ボク?
 別に構わない、ボクは。おしまい、死んだら。
 ただ――」

一つだけ引っかかっていることはある。

「知りたかったとは思う、じいさまの言いたかったこと。
 死んじゃったから、途中で。教えだったのに、ボクへの」

小さく肩を竦めた。
それだけが少女に引っかかった小骨のようなもの。

「少し困る、教えがないのは。
 でも。諦める、ないなら。」

ないものは、ないのだ。
それにいつまでもしがみついても仕方ない、と少女は思っていた。

「いい、こんな感じで?
 先生的に」

廿楽 紫音 > 「いいんじゃないの。
 それで本人が生きてけるなら、それが宗教の一番の意義だし」

無神論者の自分にとってはそれに言いがあるとは思えないし。
死者に思いをはせ続けるならそれは立派な宗教だろう。

「でも、生きてる奴にも目を向けた方がいいんじゃない?とは思うよ。
 人生長いんだし……別の大事な相手、なんてのもできたらさ。
 やっぱ面倒でしょ、死者を引きずり続けると」

だってそれは”楽しくない”

「…ま、もしも悩んだら、先生の所にでもきなよ。
 俺結構暇してるからさ、食事がてら相談くだいはしたげるよ。」

手をひら、と振って

「じゃあね、シアちゃん。
 いい勉強になったら何よりってね。
 教師っぽすぎるか」

そのまま、その場を後にするだろう…

ご案内:「【期間限定】常世大ホール 常世島関係物故者慰霊祭 会場」から廿楽 紫音さんが去りました。
シア > 「なるほど。いいか、生きていけるなら。
 意義なんだね、宗教の」

生きていけない者に、生きていく力を与える。
それには確かに意味があるのだろう。

「そうだね。気にしても仕方ないね、死者を」

あっさりと受け入れる。さっぱりと言うべきなのか。
少女の感性はそのようなものであった。

「先生、さようなら」

去っていく教師の背中を見送る。
それから、また祈る人々に目を向け、しばし眺めてから少女もまた去るだろう。

ご案内:「【期間限定】常世大ホール 常世島関係物故者慰霊祭 会場」からシアさんが去りました。