2024/09/05 のログ
ご案内:「転移荒野」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
竜王 > ──────初めに覚えたのは、怒りである。
竜王 >  
其は竜王と呼ばれる巨竜。
強靭な銅の鱗に山岳の如き鋭き爪。
人々に神格と崇められし、畏怖されし存在。
信仰と引き換えに豊穣と安寧を齎す者。
しかして、その神秘性も恐れが勝り、人々は離れた。
その結末が、此れか。得も知れぬ土地に流された。
掌返しか。此れを怒らずして何と言えよう。
漏れ出す吐息は烈風の如し。
大気すら歪ませ、地を焦がす。
みぞろに蠢くだけで大地が歪む。
一切合切を灰燼に帰す。即ち暴威である。
この地を焦がし、必ずや彼の大地も焦土に変えよう。
転変とした感情は留まることを知らず、怒れる水晶が歪んだ。
稲光が、水晶に乱反射──────……。

紫陽花 剱菊 >  
紫紺、迸り雷鳴を轟かす。
曇天たなびき大地を穿った落雷の一刀。
千歳より雄弁に、千々になかんずく轟雷也。
紫電纏いし唐竹一閃。如何なる寡聞とて曲が無く
兼ねて一振りにて終幕。巨影を前に、男は静かに銀刀の血を払う。
地を泥土を注ぎ、巨影は二つと地に沈む。
斯様な存在を知る由も無し。
然れど、学園の脅威と成れば此処に稲妻は迸る。
逆巻く土煙が黒糸を、衣服をはためかせた。
暴風を受け、瞬き一つせず銀刀を収め、合掌。

「……名うての龍と存じ上げます。
 其の瞳、居住まい、其方の怒りは所存は知る事も無し。
 然れど、此れもまた我が宿命。許されよ、とは言うまい。」

暴威を以て暴威を制した。
故に不条理を重ねたのみである。
救われぬであろう事を承知であり
せめて斬ったものへの餞、と。

紫陽花 剱菊 >  
怒号を宿す水晶に射抜かれた。
綯い交ぜの感情。何よりも強く、肌を撫で回す怨恨。
成ろう事なら、斯様な行い罷りならぬ。
然りとて、被害を出すわけには行くまい。
怨恨も血潮も、御身一つで受けるに充分。

「……幾らでも私を恨むと良い。
 末代まで祟ると良い。何れ、私も彼方に……。」

畢竟、因果は巡る。
戦しか能なき刃、此度も暴威を暴威にて抑え込んだ。
何れ己も同じ行きずりて髑髏(しゃれこうべ)
如何に今日に非ず、明日は我が身。
地を泥土の色に染め上げたる龍は、写し身也。
其の生命尽きるの刹那迄、怨嗟に祈りを捧げるのみ。

紫陽花 剱菊 >  
故に、まだ終幕では無い。
自らに課せられた宿業は自ずと巡る。
与えられた役割、自らの生き様を与するのみ。
水晶が色を無くした時、両の手は離れる。
未だ此の島は渦中也。
暗れ惑う民草、草葉の陰に涙在り。
武しか芸無くば、存分に発揮させるのみ。

「……さて……。」

踵を返し、泥濘む泥土を踏み抜いた。
閑日月を送れる日は遠いであろう。
既に此の手に刃は無く、(うろ)の双眸地平をなぞる。

「……例の異能事件、ギフターか……。
 万一が在れば、だが……出る幕も在るまい……。」

暗部を騒がせる仮面の男。
いわんや、悪名轟かせす謎の異能者。
民草に所在無き力を与えしもの。
かつての記憶。彼方の故郷を思い出す。
然るべき結末を辿るで在ろう。
既に風紀も動いている。
個々の正義によって動いてもいる。
幕引きは何れ。雷鳴が轟くのは万一が無ければ、或いは。

「……あの男も見かけたな……。」

刀剣狩り、九耀 湧梧。
公安、影よりして見定めし目は其の絶技を目にした。
魔剣士。相違て恐るべき、名にし負うに値する。

「私には無い技だ。
 斯様、外道で無いが心強い。
 ……が、何れ道を外れるなら……。」

斬らねば成るまい。
なまじ、持ち得し流浪こそ恐るべし。
民草に刃が向いたその時、何れまた刃も交わろう。

紫陽花 剱菊 >  
かの刀剣狩りと成れば、宿業が巡る。
剣鬼、血をすする魔性の女。
其の身を潜めし、跳梁跋扈。

「……ぞぉく。」

何故(なにゆえ)発音が些ずれる。
横文字苦手だからね、しょうがないね。
当の剱菊は思案を巡らせ、真面目そのもの。

然は然りとて、悍ましき集団。
自らの力をおくびも出さず、無秩序に生きるもの達。
力により弱きを虐げる悍ましき者々。

「……如何様に力を持とうと、人を虐げる道理無し。」

何れ天誅が下る。悪が栄えた試しも無し。
斯様、あの剣鬼と共に一切合切斬り伏せるのみ。
自らの宿業、さやかと悉く(しがらみ)を断つべし。
泥濘み、しとどと靴底濡らし、そよ風が黒糸をさざめかせる。

紫陽花 剱菊 >  
また、争乱の影に隠れし者在り。
(うろ)が細まり、地平をなぞる。

「覇伝洲……海藤 宗次……。」

落第街を潜む此れもまた悪鬼羅刹共。
如何なる外道、悪道を歩みしもの。
音に聞く悪逆の数々。
なまじ、生業だけで在れば違反組織は何処と知る。
然るに、自らの危険を承知で風紀の懐に入り込んだ。
絡繰は分からぬ。其の中身に手をかけたと可能性があると聞く。
闇に目あり、影に耳あり、斯様泰平を守るは風紀だけに非ず。
諜報は公安が成すべき所に在り。

「…………。」

目的不明。
然れど、斯様な存在が侵入したことが問題だ。
無論、留まる事は知らず。
遠近と目を向ければ、幾らでも転がっている。
全てにかかずらう事も無し。
縁が巡れば、相対する。

「……何れにせよ、動かねば成るまい……。」

影の道。
行くと決めた以上如何様にでも。

紫陽花 剱菊 >  
巡り巡りて、者も、物も、輪廻の内。
紫紺稲光、既に男の影は無し。
次に刃が抜かれるのは、何処か──────…。

ご案内:「転移荒野」から紫陽花 剱菊さんが去りました。