2024/10/04 のログ
ご案内:「転移荒野」にメルイエルさんが現れました。
メルイエル >  
「ここは……?」

見渡す限りの荒野
先程迄居た森の仲とは随分と景色が変わっている

呼吸の問題、無し
魔力も…変わらない
森の精霊のこうぁ流石に聞こえないけれど、どこかに飛ばされてしまったのかもしれない

「だめね、退屈しのぎなんて考えたら。
とりあえず水場でも……ッ!」

持っていた鞄の中に手を入れ、蒼褪める
中身が殆ど消えている

ただ荷物を失うだけなら問題はない

ただ、1つだけ失くせない物が有った

「筆…っ、筆はどこっ!」

周囲を探す
大切な品、思い出の品を見つけるために

ご案内:「転移荒野」に『流れ』さんが現れました。
『流れ』 > 転移荒野ってのは、
頻繁に面白いもんが流れて来る。

それっていうのは日々の刺激がさらに増して
より楽しい時間を過ごしてやれる。
だから男は暇つぶしに転移荒野を散歩することもよくあった。

今日はなんだか、楽しいものが流れて来る、
――そんな予感がしていた。

緩やかに荒野をうろつく男は、
荒野の空間の、
まるで砂嵐のような不安定な時空の歪みに揺蕩う、
宙に浮く何かが目についた。

よく見てみるとそれは、
魔力を持った筆…のようなものだった。
はっきり言って…この世界で言えば珍しい、ものではなかった。

「……ふむ。」

だが。
この転移荒野に、こんな綺麗な状態でこんなものが流れてくるのは、
恐らく珍しいのだろう。
もしかしたら、落とし主がどこかにいるのだろうか?

男は歪む次元の流れを淀ませて止める。
そして、手を伸ばして筆をとった。

どうやら……最近どこかから、運ばれてきたようだ。

メルイエル >  
「無い、無い、どこにも…ッ!」

辺りを見回す
無い、見つからない

風を巻き上げ周囲の小物を浮かび上がらせる
元々鞄の中にあった小物は幾つか有った

だが肝心の筆がない

「くぅ…っ!

……冷静に、落ち着いて。
これらが有るならどこかには有る筈。」

拾った物を鞄に収め、ここには無いと見切りをつける
だが諦めた訳ではない
近くには必ず有る筈なのだから

風を纏いふわりと浮かぶ
そして数十メートル程空へ

「あれは……人間?」

遠くに見えるのはおそらく人間
猿の親戚の下等種族
そんなのに構っている暇はないのだが、あの人間何かを持っている

遠見の魔法で見ればその手には筆らしきもの

風の弾丸と化して男の元へ
暴風と共に話ができる距離までくれば少し宙に浮いた状態で見下ろす

「人間、言葉は分かるか?」

『流れ』 > 「おっ…?」

転移荒野では、ありがちな光景だった。
異邦人が勝手分からず暴れたり、怪異が暴れたり。
だが、それでも
ただの人間には刺激が強い光景だった。
暴風の、弾丸。
それが自分を目掛けて飛んでくるのだから。

暴風の中身は…
おや。
これは美しきエルフ。
……エルフか?あれ。
尋常じゃないパワーを感じる。

「こんにちは。」
「俺は人間の流れというんだ、言葉は分かるよ」
「……その質問をするという事は」
「もしかして、迷い込んだのかい?」

見上げる、風に包まれるエルフを。
その言葉は極々紳士的で、優し気で。
しかしながらこのクズは良い奴のふりをするのが殊更に上手かった。
そして、異邦人の相手の仕方も慣れていた。

「警戒しなくていい、俺は危害を加える気はない。」
「分からない事があれば答えられる範囲で答える。」

……とりあえず、慣れない地で不安だろう。
コミュニケーションが出来る相手がいるという事は安心感が与えられる、
そう思って、言葉が通じる事は積極的にアピールして。

メルイエル >  
健康そうな人間の男
衣服は割と良い仕立てだと見れる

会話も真面にできない相手ではないらしい

「言葉が分かるのなら、先ずその手に持った筆は私の物。
大切な物なので返してもらいたい。」

人間がハイエルフの自分に危害を加えない
人間がハイエルフからの問いに答えてやる
そんなふざけた事を言われたのは26年ぶりだったが今は置いておく

そんな事よりも今目の前の人間が手に持っている物の方が優先される

「もし、その筆に妙な事をしようとしたら私は冷静でいられなくなる。
返すというなら人間相手だろうと礼はしてやる。

その辺りを慎重に考えて答えると良い。」

なので出来る限り優しく分かりやすくこちらの要望を伝える

『流れ』 > 「ん?ああ、勿論。ほらどうぞ。」

どうも相当大切なものの様だ。
こういうのを無理矢理奪い上げるとどうなるか、
クズはクズ故によく知っている。
ちゃんと段階を踏まないとえらい目に遭わされるし、
目の前の存在は恐らく――

かなりヤバイやつだ。

そういう判断は付く。
今まで悪いこといっぱいやって何が危険か良くしっているから。
そういうわけで、魔法の筆を差し出す。

心臓が高鳴る。

緊張―――


では、ない。
なんだか。
ドキドキ、ワクワクしてきた。

「…失礼ながら。お名前を教えてくれないか?」

何だか面白い事が起きそうな流れを、感じる。

メルイエル >  
「よろしい。」

筆を手に取る
傷は無い、汚れも無い
妙な細工をされた形跡もない

安心感からか地に足をつけて風も穏やかに
しっかりと筆の感触を確かめればまた鞄の中へ

「ふぅ…人間とは言え礼を言おう。
名前?私の名はケレビミア・メルイエル、見てわかる通りハイエルフだ。

お前は…まぁ人間と分かればいいか。ここの地名、国の名前は分かるか?
分からなければお前が知る限り大きな場所の名称を言えばそれで良い。」

農民や奴隷には見えないけれど、やはり人間
知っている事についても大きな期待はせずこの場所のヒントでもあればと問いかける

『流れ』 > 「……ふむ。人間ではないようだね。ケレビミアさん?ああ、ええっと……」

ハイエルフと名乗られた。
ハイエルフ。
いや見ての通りでは分からんが…

エルフと何か違うのか?とか聞いたら逆鱗に触れそうだし、やめておこう。

目の前に立たれた
可愛らしい、が少し流石に威圧感がある。

「さっき名乗ったよ、流れだ。流れ。」
「あとあんまり種族名で呼ぶのはよしとけ、この世界には…色々いるからめんどくさい事になる。」

さっきから当たり前のように呼ばれてるけど、釘はさしておこう。

「ええっと。常世島、ここは転移荒野。
んで向こうにやけにでけえ常世学園っていう都市がある。
えーっとだな、地図でいえば……」

それとなくスマホに手をかけて現在地のマッピング情報を見せてみようとするだろう。
何のことはない、指先一つで操作しつつ、このあたりが転移荒野のどの辺で、どっちに歩けばでかい建物があって、みたいな。

メルイエル >  
「まさか…見てわからないとでも?」

白銀の髪に青い瞳なのに分からない様子に若干の落胆を感じる
着飾ってはいるが知恵は農民以下なのかと

「流れ?
……変な名前だな、人間を人間と呼ぶ事に何の問題がある。」

人間がハイエルフの自分に物言いとは自殺志願者かと疑いたくなる
先程からどうも話が噛み合わない

少し嫌な予感がする…

「…人間、いや流れだったか。
とりあえず地名については構わなくなった。

ここが私の知る世界でないという事もな…」

頭が痛くなる
魔力も使わず魔道具の様に地図らしき絵を映す板を直に見れば嫌でも理解する

ここは自分のいた世界とは別の世界だと

どの大陸でもそんな道具は存在していない
実際に見て回ったのだから断言できる

『流れ』 > 「わ…わからんが……?」
「……んんー、名前っていうかなんて言うか。
まあ、ケレビミア・メルイエルさんみたいな名前じゃあないよな。
異国、異世界だから、そういう名前もあると思って。」

本当はちょっとその中でもわけありなんだけれど。
敢えて説明することもないだろ。
俺は流れ。
それだけだ。

「ああ、やっぱそうか」
「ここは転移荒野っていうだろ」
「妙な事に、他所の世界の存在が流れ着く場所なんだ」

「……?」

「気になるかい?」

何だか物珍しそうにしている気がしたから、スマホの画面目に触れさせて問いかける。
或いはこの場所やこの世界について気になるのだろうか。

メルイエル >  
「……世界が違うのなら常識も変わる。」

真坂飛ばされた先が異世界とは

となれば、話し方接し方も少し考えなければならないかもしれない
一先ず情報が欲しい

異世界への移動なんて流石に聞いた事しかない
すぐに戻れる訳もない、この世界で暫くは過ごす事になる

「転移荒野…様々な世界の存在が流れ着く?」

そんな特異点の様な危険地帯があるのかと
そして目の前の人間はそんな場所で何をしていたのかと気にはなる

ただ、それ以上に気になるのが目の前のスマホという板の事

「…気にはなる。私のいた世界にはそういう物は無かったから。」

見ている限り地図で有り辞典の様なものでも有るらしいが、まだまだできる事は多そう

しかもそれだけの有用な道具なのに魔力を感じないというのが殊更おかしく感じる
興味があるか無いかなんて分かりきっている

『流れ』 > 「……?ああ!分かった。」
「そうか、キミの世界では、人間とエルフは別物として存在していたらしい。」
「悪い悪い、俺もこの世界での生き方が当たり前だったから」

言われてみれば。
当たり前のようにこの世界の生き方が常識になっていた。
気付いたように訂正する。
さて、無知に付け込むという事は考えないでもなかったが、
―――そういうことをすると、いずれ痛い目を見る。
クズはクズ故に、不誠実さが招く悲劇を知っている。
故に、クズ故に誠実に振る舞う。

「そうか、こいつはまあ…スマートフォン、携帯電話、スマホとかいうんだが。
元の世界にないなら、かなり不思議だろう。
一説には全貌を理解している人間はほとんどいないそうだ。
……機械、って馴染みないのか?」

「――気になることは何なりと言ってね

…興味が引ける様だ。
色んな意味でこの子とは仲良くなってみたいし、
これから面白い流れが見える。

緩やかに、会話の流れを操っていく。
それは強制するものではなく、
単に、話しやすくなるだけの流れ。
興味がある事、ない事、気になる事、
そういうのを言語化しやすくなるように話の流れを作っていく。

メルイエル >  
「人間とエルフが…同じ?」

余りの言葉に頭痛がする
人とゴブリンは同じだよねとゴブリンに言われたと言えば分かりやすいのか

けれどこの流れという人間から情報を得なければならないのもまた事実

「機械…ドワーフと人間がちょこまかと工作をしているのは知っていたけれど、こんな物は少なくとも見た事は無い。
興味は有るけれども何分初めてが多すぎる。」

頭痛もおさまり始める
段々とやらないといけない事については整理がついてきた

先ずはこの世界の知識、常識を知る必要が有る
それも可及的速やかに

「何なりとと言うが、正直何もかもを知る必要が有る。
流れ、私でも入れる図書館の様なものは無いか?これだけ未知の技術を持って居るんだから本くらいは有るだろう?」

『流れ』 > 「……色々いるんだよ、この世界。人間、エルフ、ゴブリン、サキュバス、竜、霊、ゾンビ。
……あとあんま思い出したくないけど破壊神とか。
そういうのが一か所に集まって存在してるから、別物って意識がないんだ。」

人種のごった煮みたいな世界。
故に、人であるか、人でないかの境界は…正直どうでもいいとすら思う。
意識があって、言葉が通じて、学生証を持っていれば、概ね同じだ。
持っている力や見た目に差異はあれど。

「ん?ああ、ええっと。本なら図書館や禁書図書館に山ほどあるが、
……文字通り、山ほどある。」
「先ほど言った通りこの世界には色々いるだろうから。」
「著書なんかもう数えきれないほどある。」

図書館、あそこは情報探しに漁る事もある。

「が、…そういえば学校の関係者でなければ正式に入り込めない。忍び込むことはできるだろうけれど。」
「ふむ……」
「――良ければ、知恵を貸そうか?」

「それに」

「見てくれ」

スマホの画面を再び晒すと…

「今時、本を漁らずとも――検索、という手を使えば大概の情報はコレで手に入る。」
「例えば…」

ハイエルフ、という名前で検索してみよう。
真っ先に表示されるのはエルフ耳の美女の姿で、
文字でハイエルフの説明が書かれている。

「えーなになに…超長寿種族で仲間意識が強く排他的、魔力が高く独自のコミュニティを築いており、自然を愛する。
プライドが高く、他種族を見下す傾向が強いが、近年は他者に友好的な者も見られる――あってる?」

人が書いたものだから、間違ってる点はあるかもしれないが。
情報を集めるなら、本なんか漁らなくてもすぐ手に入る、それがわかるだろうか。

メルイエル >  
「種族が多いのはこちらも同じだが…それらを同列に扱うのは初めて聞いた。
ゴブリンや霊など魔獣とほぼ同じだし、破壊神?神迄この世界には顕現してるのか?」

煮込みみたいな世界
常識が通用しないのは理解したがそれでも納得はし辛い

「図書館は分かるが禁書図書館とはどういう事だ?
禁書なのに図書館に納められているのか?

まぁいい、ではそこに……学校?」

確か…下等種族の子供に知恵を着けさせる場所だったか
スマホとやらが生まれる程の技術が発達している世界なんだから不思議ではない

問題は学校の関係者にならないとダメ、と

「知恵に…検索?」

文字…そう言えば別世界なのになぜ私はこいつと話が出来て文字も理解できるのかと不思議に思う
世界を超えた時に何か有ったのか…便利だから良いのだけれど

ハイエルフと検索した結果を流し見る

「ふむ、凡そその通りだとは言える。
けど友好的なハイエルフなんて私は見た事ないな。

流れよ、それを貸してくれ。私が自分で調べる。
どうも文字と言語はなぜかこの世界基準で使えるようになってるらしい。」

当然のようにまた手を差し出す

『流れ』 > 「どいつもこいつも居すぎるから、分類できねえんだよなもう。」
「……あーうーんそれの話はやめとくぜ…。」

目を反らしてやんわりと話を流すと、本題に戻る。
どうやら思い出したくもないような事があるらしい…。

「えーっとだな、メルイエル?」
「――パーソナルスペース、というものがあって。」
「基本的に、こういうものは貸してはならない。」
「個人の情報、大切なデータ、金銭に関わるもの、知られたくない事が沢山ある。」
「……自分の想い出の道具入れを他人に漁られて見られたくないだろう?それと同じ。」

恐らく常識ってものが成立しないのだろうし、
スマホを知らないなら無理もないのだろう。

下品な画像だの対立煽り動画だの、特に俺は見られたくないデータがいっぱいある。
が、表向きにはマナーとしてやんわりと断りを述べて。

「だが、断りきるというつもりじゃないんだ。大体の手段は示そう。
……部室来る?もっといいものがあるぜ。
でけえコンピューターっていう、コレの上位互換の性能してるもの。
貸し出し用のやつがある。」

「或いは……こっそりお前用のを買ってやってもいい…が。」

とはいえ、だ。
良い事すると、自分に帰って来る事が往々にしてある。
クズはクズ故に「良い奴のフリ」するのもまあ上手かった。

「どっちにするとしても。」
「……仲良くしてくれるという意思表示を、一つ頼めないだろうか。」
「俺も根っからの善人ではないから、初めて会った相手に何でも与える事はできない」

故に
この様に相手と友好的な関係を結ぶ方が得だとも知っている。
その方が自分にとって得だと思えば迷わずそうする。
それがクズ。

メルイエル >  
「む、貸せないと?」

なら仕方ないと首を落として…居ただろう元の世界なら
そもそも人間に命令して拒否されるなんて殆ど無い経験

「コンピューター……うむ、じゃぁその部室とやらに行こう。
買う?そのスマホとやらは簡単に売買できるのか?」

地図を売り買いなんてしたら凡そどこの国でも処刑が常なのに
技術、文化が発展すればその辺りも大いに変わるのだろう

さて、この人間いまいい…が。と言った
何かしら交渉事を持ちかけてくる気らしい

余りにもふざけた内容なら、情報源とは言え…

「仲良くする意思表示ぃ?」

はぁ?と思わず首を傾げる
人間とハイエルフの自分が仲良く、という所から疑問だが更にその意思表示と来た

これなら明確に金品を求められた方が余程わかりやすかったのに

さて、メルイエルは悩む
意思表示を示せと言われてもそもそも誰かと仲良くしようとなんてした事すらない

『流れ』 > 「……好意に預かりたければ、まずは相手と仲良くする事だ。」
「好きでもない相手に、協力したくなるか?」

「それに。」
「外の世界から来たんじゃ、金銭も物品もないだろう。」
「それに強制労働をさせようというのも宜しくない。」
「故に、最低限今キミが出せそうなものを求めたんだが……」

というわけでだ。
金品を求めるわけでもなければ、労働を求めるわけでもない。
実のところ、この男にとっても、最も益のあることは仲良くなる事である。
金もブツも、そう困らないが。
今目の前の少女と仲良くなれる機会は、恐らくこれっきりだろう。

メルイエル >  
「好意に預かるとはまた初めての体験だな。」

ハイエルフが人間に言葉を送る
それはほとんどの場合で通告、命令の類

相手の好意に甘え協力を求めるというのは生まれてこの方やった事も無い

「金品が欲しいなら用意はできるが、まぁ人間にしては面白い提案なので良いだろう。

それで、具体的にはその仲良くする意思表示とは何をすればいいんだ?
生まれてから今までそんな事をした事は無い。故に何をすればいいか見当もつかない。」

素直に聞く事にする
そもそも種族として違う相手が未知の望みを口にしている

そんなもの分かる訳もないし推測すら難しい

『流れ』 > 「……え?」

帰ってきた言葉は、意外だった。
仲良くする意思表示…したことないの…?
……そんなんで生きてて楽しいかコイツ……?

「え。ええと、なんだ。な、ない……?のか?本当に……?」

男はクズである。
楽しい事が大好きである。
楽しい事には、他者が欠かせない。

積極的に楽しみを共有する相手を求めて好意を伝えるし、
楽しい時間を過ごしてやろうとするのだ。
動画を共有するのだって他者を煽り立てて楽しいからであり…

改めて男は認識してしまう。
この子は別世界の考え方の全く違う異種族であるのだと。
信じられないものを見るような目で、その答えを聞いて驚く男。

「そ、そうだ。知っている事と好きな事、嫌いな事を語ってもらおう。
あとは――握手でもしようか。友好の証と言えるし。」

メルイエル >  
「無い、人間含めた別種族どころか同胞にも無い。」

必要がなかったとも言える
ハイエルフはほぼ完成した種族

個として完成しすぎている為その数も少なく
才能が有ったメルイエルは早熟でもあり誰かの助けをほぼ必要としなかった

故に、仲良くなろうと誰かに歩み寄るといった経験も皆無だった

「好きな事は未知を感じる事と絵だ、嫌いな事は私が不快に感じるもの。

悪手…いや、握手か。
手で手を握るんだったか…ほら、これでいいか?」

そう言って手を差し出した
昔どこぞのエルフがやっていた動き

『流れ』 > 「……た、楽しいか、それ……?」

男は、あっさり言ってのけたエルフに、心底不思議そうにしていた。
楽しさを求めて中学生活を蹴って自分から日本を抜け出してくるような男だ。
誰にも仲よくしようなどと考えない彼女を前に、
思わず言葉を投げかけてしまっていた。

楽しい事は生きる意味である。

ハイエルフは先ほど調べた通り、超長寿種族。
……楽しくない状態で長い時間を生きるなど苦痛ではないか……?
多くの生命は、それを求めて生きているはずだ。

「ああ…そうか、好きな事と嫌いな事は、ちゃんとあるんだね…。
未知、絵。……不快に感じるものってなんだよ。
ああ、はい。ええっと。」

手を伸べて、握りしめる。

男はクズで悪い事に慣れているとはいえ、
まだ20にも満たぬただの人間でもある。

……やはり、自分とは違う存在なのだろうが、
こうして手を握った事で、少しは同じ視点には立てただろうか?



近したことで余計に視点が違う事が明かされたような気がした。

メルイエル >  
「楽しいか、か…まぁそんな事人間のお前には関係あるまい。
悠久の時の中での暇つぶしの連続、面白い事も有ればつまらない事もまた有るだろう。」

生を終えるまでの暇潰し
それに耐えられない物はエルフ独特の病にかかり死んでいく

ただそれだけの事

「私が不快に思うもの全てだ。

ふぅん…側が人間に似ている別物と言う訳でもないのだな。」

握って感触を確かめる
肉と血、後は骨が詰まった一般的な生き物的感触

鉱物の様な感触だったらそれはそれで悩みの種が増えていた

「さて、これで仲良くする意思表示は済んだか?
済んだのなら部室とやらにいきコンピューターとやらを使わせてもらいたいのだが。」

恐らく彼が真に求めた行為とは違うのかもしれない

が、求められそれに応えはした
これで文句は無いだろうとでも言いたげである

『流れ』 > 「い、いや…人間というか……なんだそれは……」
「何のために生きているんだ…ッ?!」
「いや…そうではない。そうではないだろう……」

達観している。
だがその達観はなんとつまらないのだろうか。
うわごとのように、否定する言葉を零す。

「こんな生き方をしている生き物があるのか…?!」
「悠久の時での暇つぶし……だと…」

もし自分がそうだったと思ったら、恐ろしくなる。
楽しくない生き方をするならば。



死んだほうがましだ。



「ああ、そう…だな……」

(本質的に、違う…。)

だが男にとって目の前の存在は非常に信じられないものだった。
いっそ哀れにすら思えた。

どんな種族でも人格はあって、少なからず自身の楽しみの為にとあれこれするものであろうに。
楽しくない悠久を過ごしている…
…そんなものが幸福なはずないだろう…

「約束は守るよ。ええと、メルイエルで良いのか…?何か長いけど…」

「そうだ。あとさ。」

「折角だから、部室行った後、そのうち連れて行きたい場所があるんだが……」
「筆の礼にでも、付き合ってくれよ。」

けれども、応じてくれたのは、事実。
男は妙に面倒見がよく律儀である。

メルイエル >  
「いきなりごちゃごちゃとどうした?ほら、さっさと案内をしてくれ。」

ブツブツと独り言が激しいが、まぁそういうたちなのだろう

それよりもコンピューター
話しの通りならあのスマホよりも便利な物らしい

「あぁ、異世界なのだからその呼び方で仕方ない。
私から言えばお前の名前が短すぎるのだ。

部室の後?
……その時の状況次第だな、先ずは部室とコンピューターだ。」

ここで過ごすためにも、そして未知の為にも最優先はそれ
失った鞄の中身はまだあるが、筆さえ戻ってきたのならそれで良い

人間の流れの案内に従って、荒野を進んでいくのだった

『流れ』 > 「……ああ、そうだな。」
(でも……)

「その筆は。」
「大事なモノなんだろう……?」
(そういうもの、一つはあるんなら。)
(やっぱりこいつも、楽しい、って感情はあるんじゃないだろうか)

酷く、酷く哀れに感じてしまう。
クズはクズだが、それはそれとして、
人情がないわけではない。
人を騙して受益するより、人に益して受益する方が得だという事を知っている。

なんだか、この少女がとても哀れに思えて仕方ない。

若しくは、自分の楽しみを求める性質を否定されたくなくてムキになっていただけなのかもしれない。

「異世界からのブツや化け物が湧いてくることもある、気を付けてくれ。」

彼女が

楽しみを知らぬ

化け物ではないと、良いのだけれど…



そう思って、二人して転移荒野から部室へ移っていくのだった。
道中で落とし物を拾ったり、異界からの異物でも見ながら、
緩やかに学園地区に踏み入り、こっそりと部室に招き入れる事だろう…

ご案内:「転移荒野」からメルイエルさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」から『流れ』さんが去りました。